2019/11/30 のログ
■リヒト > 「……なんだ?そうも抵抗するなら初めから避ければ良いだろうに。
まあ、流石に急所に触れられるのは怖いか……犬扱いしていても。」
思ったよりも強い腕力には内心驚きはするが、体勢の分もあり狼の方が有利。
退かそうとするのを力任せに押さえ込み直し、何となく負かしてやった気分に。
油断に付け込んだだけなので何一つ誇れる部分は無いのだが、それはそれとして。
それ以上機嫌損ねる前に、でかい身体を相手の上から退けていき、
近場片付けてあった己の荷物の方へとのすのす移動していこう。
「雨もそろそろ止んだろう、お前はどこに行く途中だったんだ。
まさか迷ったと言うなら安く案内してやるが……――と、」
世間話めいた事今更ながら問い掛けつつ彼女に背を向けてローブを咥える。
それをひょいと器用に跳ね上げて狼の身に被せれば、中でもぞもぞと身動ぎ。
中で大きな毛玉が震えるように動いて、シルエットが四つ足から人の其れへ。
程無くして、肩やら首ごきごきと鳴らしながら、狼の時よりは体積減らした男がそこに現れる。
「それで、答えはなんだ。」
とか彼女の正体の答えねだりつつ、半裸の身体に衣服纏っていく。
どうせ人外同士、と全く気にしちゃあいない。デリカシー皆無であった。
■ルビィ・ガレット > 「……っ、犬扱いも何も、貴様が犬みたいな仕草をするからだろうが!
狼だったら、あんなじゃれつくように、人に鼻先押し付けてひっついてくるかよ。
……いや、その。急所だからとか、そうではなく――」
前足を退かすのに失敗すれば、露骨な舌打ちをして。
捲くし立てるように言う。煽りが目的ではなく、本心というか、正直な感想を吐露。
が、後半は語気が弱まっていき。言いよどむ。
くすぐったさのほかに、首筋は性感帯でもあったから――、
妙な気持ちになりたくなくて、慌てた部分もあって。
また、自分が吸血する際に狙う場所でもある。
それを他者から、自分が刺激される側になると、
なんとも言えない気持ちになったのであった。
結局、そういった内面を説明できないまま、話はうやむやに終わり。
「……知り合いの家に寄る予定だった」
巨躯から解放され、起き上がれば。土埃を体から払い。
彼の問い掛けには手短に答える。人の姿に成れと相手に促したものの、
変化の瞬間を見るつもりはなく。視線をわざと彼から外す。
そのうち、相手からまた声を掛けられ。
振り向けば先ほどの大きな狼はいない。その代わり、半裸の男がそこに立っており。
「……吸血種だ」
そう言えば、また目線を彼から逸らした。
人外同士なのは確かだが、人間らしい振る舞いが処世術として身に付いている彼女は、
ここでは無意味かも知れないが、マナーとして人の着替えを見ないようにした訳で。
■リヒト > 露骨な舌打ちが聞こえれば、意趣返ししたとばかり笑う声があったかも。
ついでに色々と本音もわかりやすく聞けて納得もあり、
着替えて戻る間、狼はそれなりに機嫌を良くしていたのだとか。
「急所でなければ、……『弱い』場所だったか?」
言い淀む彼女の口振りから、下卑た冗談言う調子で一言投げ掛ける。
視線逸らされつつ、手早く衣服は纏って、ローブ羽織り直し。
一般的な旅人、と言った風な恰好へと着替え終わるまで時間は掛からない。
マナー重視な吸血鬼へ、着替え終わったぞ、と一応声はかけておいた。
「ほう……そうか、吸血種。自称にしろ、女では初めて見たな。
道理で上手く人間に化けられている。他の姿はとれるのか?
霧やコウモリ……狼にもなれると、話に聞いたことはあるが。」
相手へ抱いた純粋な興味をぽいぽいとぶつけながら荷を背負い直す。
一緒に行くか?と首傾げて問いかけ、洞窟の外へと足進めていこう。
雨はいつの間にか止んでいるので、どうあれ彼女も外に出ることにはなる筈。
■ルビィ・ガレット > 耳はいいほうである。彼の笑い声をその耳が、拾った気もするが――、
半吸血鬼は、知らん振りを選んだ。またわかりやすく反応して、
相手が喜ぶような材料を提供するのも癪であったので。
……なんとなく、相手には自分の負けず嫌いが伝わっている気がする。
「――ッ!! ……お前には、関係ないだろう」
言い当てられて、女の華奢な肩が驚きに僅かに跳ね上がった。
しばらく、物言いたそうな目線を彼に投げつけるも、いい言葉が思いつかない。
やっと出てきた言葉と言えば、否定でも肯定でもない、曖昧なそれ。
女の頬は、僅かに紅潮していた。
「――とは言っても、人間と吸血種のハーフだがな。
祖国の純血種たちも、人の姿を取るのは巧みなほうだが。
……私は無数の、蝶の群れになれる。だが、変身はあまり好まない。
自分が誰か、忘れそうになる」
哲学的なことを言って締めくくるが、どうせこの女のことだ。
深い意味も、感傷も無かろう。戯言に近い言葉を言い終えてから、
薄い笑みを纏い。彼の問い掛けに頷くと、自分も洞窟の出口を目指す。
■リヒト > 「……図星か。いや、まあ、確かに関係ないが。
それは悪い事をしたなァ……舐めておけばよかったな。」
冗談への反応にしては明らかにおかしなものであり、
しかも頬の紅潮が見て取れれば、図星だろう事は厭でも気づく。
目を見開いてから瞬き、く、く、と喉を鳴らしてまた笑ってしまった。
尊大に余裕あった態度が、こうも揺らぐのは中々に愉快と感じられたようで。
「なあに、半分もあれば十分……蝶々か!それはまた美しいのだろうな。
ただ、そうだな、己が分かたれて何かになると言うのは、確かにぞっとしない。」
至極単純に蝶々が好きなのか、変化できると聞けば声のトーンが上がる。
しかし同じく身を変化させられる立場、想像してみれば恐怖も覚えたのか、
哲学めいた言葉には他人事ながらも納得をしていた。
薄く灰色の雲はもうどこかに消えているが、景色は薄暗さを増している。
街へと続く道へと洞窟から乗り込み、二人並んで足場悪いそこを進む。
「それで?友人に会いに行くとは言っていたが、まさかそれも吸血種か。」
■ルビィ・ガレット > 「……躾のなっていない犬風情が」
反射的に片手で自分の白い首筋を押さえながら。
低く、地の底から響くような音で。そんな言葉を吐き捨てた。
紅茶色の双眸は細められ、表情は乏しく。怒っているようにも、仏頂面にも見えたが……。
頬の赤みは、先ほどよりも増していた。
口先では彼を罵倒するようなことを言いながらも、どうやら……彼女、
彼の言葉を受けて、"そのシーン"を連想してしまったようで。
表情も言葉も、一見は冷たく鋭いものだが。
……実際のところ、内面を蔽い隠すための虚勢、ちょっとした芝居かも知れない。
「……………」
「蝶に化けられる」という下りで、相手の機嫌が明らかに変わった気がする。
すると、大きな狼の姿で、ひらひら舞い飛ぶ蝶に飛びつき、じゃれつく相手を連想してしまい。
思わず、黙り込む。この感情とかイメージを、表に出してはいけない気がしたので。
彼をバカにしているつもりはないのだけれど……でも、この内面は秘しておこうと決め。
その代わり、相手の後半の言葉を拾うことにした。
「下手すれば、自己に対するイメージが揺らぐ行為だからな。
……まァ、『自分が誰か忘れる』というのもおかしな話だが――、
もともと『確固たる自己』というものも、あるまいに」
要するに、「自分というものに、実体は無い」というのが女の言い分。
自分から「自分を忘れそう」と不安げな言を放っておきながら、後からこのように
割り切っているようなことを言いもして。
「……グールだよ。彼とは気が合うんでね――定期的に会っている」
またひと雨来ないことを祈りながら、彼の質問に答える。
視界の悪い夜道ではあるが、夜目の利く自分には関係がなく。
灯りがなくてもなんとかなる。人の振りをしたい時は、わざとカンテラを持参することもあるが。
■リヒト > 「生憎野良なものでなァ。」
首輪をされることはない、躾けをされることもない、文字通りの一匹狼。
犬呼ばわりに機嫌を悪くしなかったのは、余計に目立ちだす彼女の紅潮に気付いたからか。
また繰り返し笑いたい所ではあったが、どうにか堪えて、口元歪める程度。
短いやり取りではあるが、それとなく彼女の人となりつかめてきた感覚があった。
と言っても、彼女が急に黙り込んだ時に何を思っているのかまでは見通せない。
その頭のイメージを共有したのならば、男は再び憤慨して見せたに違いないのだが。
閑話休題。
「また随分と曖昧な話をするなあ、お前は……哲学者でもあるまいし。
長く生きると誰もそんな風になってしまうのか?いや、待て……幾つだ。ちなみに。」
ハーフとは吸血種、一般的に長命であろうと今更ながらの気付き。
言葉遣いと言い態度と言い見た目相応に思ってはいたが、実際はどうなのだろうか。
もしやすると自分の何倍も、と言う可能性はあり、恐る恐るの問い掛け。
「……、……グールの友人とはなんとも、貴重だなあ。」
グールに対しては良いイメージあまり持っていないので、微妙なコメント。
お互い灯りも無いままに暗い道を危なげなく歩んでいく。
道の遠く、山の麓から暫く行った場所には街の灯りが見えた。
そうして二人言葉交わしながら、別れるべき場所までは共に。
別れ際には名乗り、仕事の依頼があればどうぞ、なんて売り込みもしたたかに――……
■ルビィ・ガレット > 「………く」
禁句を放ったつもりだったが……予想通りというか、彼にはあまり通じなかった。
どうも、自分の顔色を見て、一時的に相手の許容範囲が広がっている気がする。
このまま感情に任せて何かを言っても、効果は薄いだろう。
彼の微妙な表情の変化に、気づかなかった訳ではないけれど……。
そこには触れないでおく。勝算が見当たらないので。
「不確かなもののほうが、好きなんだよ私は。
――いや、それはわからないが……なんだよ、急に。
私は28だが」
畏まって何を聞いてくるのかと思ったら、年齢の話だった。
「女性に年齢を聞くなんて――」という感覚は持ち合わせていないものだから、
普通に、あっさり答える。
「……無理して、無難な言葉を選ばなくてもいい」
彼なりの気遣いから出てきたコメントだったかも知れないが、
快い感情を持っていないらしいことは感じ取られ、苦笑いを浮かべる。
別れ際には、こちらも相手につられて名乗り。その後、それぞれの道を行く――。
ご案内:「人気のない洞窟」からリヒトさんが去りました。
ご案内:「人気のない洞窟」からルビィ・ガレットさんが去りました。