2019/10/21 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にタマモさんが現れました。
■タマモ > 「………ふむ」
一つ頷くのは、一人の少女。
しかし、その表情は何とも不機嫌そうなものだ。
ここは九頭龍山脈、見渡す限り木々ばかり、そんな森林地帯。
それなりに深くはある為か、そう誰かに会うような場所ではない。
まぁ、しっかりと探ってみれば、ミレー族の隠れ里やら、ぽつんと立てられた廃墟やら、遺跡やら、色々と見付かるだろうが。
そして、たまに遭遇するのが、盗賊の類や、魔物の類、と言う感じか。
もしかしたら、何かしらの依頼を受けた冒険者や、山菜や薬草を摘みに来る者達も居るかもしれない。
「場所が場所だけに、と言った感じかのぅ?
………いっそ、妾で何か作ってしまうのも、手じゃろうか?」
ゆらゆらと、揺れるように歩みながら、呟く少女。
その姿は、時に大きく歪み、時に周囲の景色の中で薄まる。
溶け込むように消えたと思うと、位置を少しずらした場所に、気が付けば存在する。
幻影のように、陽炎のように、不思議な少女の姿と周囲には映るだろう。
その現象は、意識せず洩れる力の流動が起こすもの。
何をもって少女がこうも気分を害しているのか、それは、誰も分からない。
■タマモ > ぴたり、少女は足を止める。
少し視線を上に向け、軽く考えるような仕草。
歩けど歩けど、見えるのは木々ばかり。
上に行けば、より周囲をしっかり確かめれるが…何となく、それは負けた気がする。
実のところ、どこに向かい歩いているかさえ、今のところは分かっていなかったのだ。
足を止めたのは、このままで良いのか、考えを改めるのか、それを選ぶ為だ。
より九頭龍山脈の深くへと進めば、少しは高度が上がり、見渡せる場所に出るのかもしれない。
逆に麓へと近付けば、純粋に街道等へと出られるだろう。
一番怖いのは、九頭竜山脈に沿って横に歩いている場合だ。
いつまでも高度も変わらないわ、距離は離れるわ、良い事なしである。
………まぁ、それで何かあれば、それはそれで、良いのだが、そんな都合良い世の中ではない。
むぅ…と、唸りながら、選択に悩む。
見回す限り同じ景色、と言うのが、選択し難い状況を作り出していた。
■タマモ > 見上げたまま、しばらく、そうして悩む少女。
その答えは、どう言ったものが出たのか?
それは、少女しか知らない。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からタマモさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にタマモさんが現れました。
■タマモ > のんびりしていたら、雨が降ってきた。
出るべき答え、それは少女ではなく、自然が出していた。
「………む、むむむ…」
すでに開いている唐傘を右手に、忌々しげに見上げている。
はふん、と溜息を一つ。
唯一の救いは、高い木々に覆われているお陰で、直接に雨の影響を受けていない、と言う事か。
とは言え、完全に木々に茂る葉が、雨を防いでくれる訳ではない。
落ちて来る雨水は、その数量は少なくなるも、その分、水滴の一つ一つが大きくなっているのだ。
ぽつぽつと、唐傘を叩く音を聞きながら、唸る。
「何か屋根のちゃんとある建物か、雨風を凌げる場所か…
………いや、もういっそ、濡れても良い温泉とかないかのぅ?」
ぱちゃぱちゃと、濡れた地面の上を歩きながら、歩む。
疲れてはいないが、正直、この天候の中、歩き続ける気力が失せた。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にジーヴァさんが現れました。
■ジーヴァ > 雨音が辺りに響く中、一人の少年が森林を歩く。
大量の茸や薬草を詰めた籠を背中に背負い、目深に被ったフードと身体を覆うように羽織ったローブを濡らしながら。
「ほら穴まではもう少し…雨が降らなきゃ取れないなんて、面倒な花だ…」
革のブーツを泥に沈めて前へと進み、面倒な草木は時折炎の魔術で焼き払っていく。
そんな中、小さくとも人影が雨の中に見えれば彼は警戒するだろう。
「……子供?こんなところに?いや、あの人は…」
この国では風変わりな格好をした狐耳の少女が、彼の視界に入る。
それは彼にとって友人の一人であった。
「…タマモ、さんですか?こんなところで会うなんて…
俺です、ジーヴァです!」
フードを後ろに下ろし、狐耳の少女へと迷わず歩み寄る。
この冷たい雨の中で、友人に出会えたことが嬉しかったのだ。
■タマモ > ぴくん、少女の耳が揺れる。
地面を打つ雨音に混じり、耳に届いたのは、呟き声と足音。
まぁ、さすがに、その内容の詳細を聞き取るには、今は集中してないので及ばないが。
その足音は、人であれば、己が視界に捉えられる程の距離となる。
やる気が失せていたせいか、今回は、己から先手を打って動こうとはしない。
己を見付けた相手、その反応次第で、そこは考えよう、そうしよう、そう考えていたのだが…
普通に声を掛けられれば、あ、これ見知った相手だ、と理解する。
しかも、相手は自分から名乗ってくれると言う、ありがたい状況だ。
………うん、もしそれがなかったら、まず名前を思い出さないといけなかったとか、どうとか。
「お、おぉ…よもや、こんな場所で、こんな状況で会うとは…
久し振りじゃな、元気にしておったか?」
くるりと振り返れば、思った通りの、少年の姿。
いや、まぁ、フードで覆ったマント姿だが、しっかりと聞こえた声で分かる。
挨拶代わりに、空いた左手をひらり、と振ってみせた。
■ジーヴァ > 雨の中、素材集めをしなければならない憂鬱さはどこかに飛び去り、
見知った顔に再会できた喜びが少年を動かす。
不思議とローブの内側に縫い付けた狐印の首輪がふんわりと暖かくなったような気がして、
少年の顔を明るくしていく。
「もちろん元気でした!今日は薬草集めに来たところで…
これから行くほら穴に、ギルドが養殖してる特別な花があるんです。
雨宿りついでに、一緒にいかがですか?」
少年に尻尾はないが、もしミレー族のように尻尾や獣耳があれば
何かを期待するようにぶんぶんと振り回していたことだろう。
狐耳の少女が申し出を受け入れてくれるなら、その道のりは短いはずだ。
まさか彼女が自分の名前を忘れていたとは露にも思わず、少年は喜んでギルドの者しか知らない道を案内するだろう。
■タマモ > 雨の降り注ぐ、そんな気だるい中での歩み。
それを振り払うような、そんな少年の雰囲気に、ふむ、と一つ頷いて。
とりあえず、と歩み寄る中、少年の言葉に耳を傾ける。
「薬草集め…?…ふむふむ、こんな場所で養殖し、わざわざ取りに来るとは、大変じゃのぅ?
雨宿りの出来そうな場所か………」
なるほど、と納得した風に、浮かぶ言葉をそのまま伝える。
と、雨宿りの誘いが続けば、少女はまた考える仕草を見せて。
場所的に危険はそう無さそうだ、ならば、少年は一人だろう。
その点は、周囲に耳先を向け、確認もしてある。
ふっ、と少女の表情に、笑みが浮かぶ。
それはそれで良かろうと、なにやら、少女の中で、そう思い。
言葉の終わりに合わせ、少年の側まで寄れば、軽く身を屈めさせ、上目使いに少年を見上げる。
「まぁ、せっかくのお誘いじゃ。
実際、この雨には困っておったしな、受けてやろう」
偉そうな言葉と共に、するりと横へと移動し、身を寄せる。
後の案内は任せたと、そう言っているかのように。
ちなみに、まだ数度では、長く呼ぶ機会が無いと、思い出すのに時間が掛かる。
特に呼び慣れぬ洋名だ、この辺りは仕方無いのだが、気にしない。
■ジーヴァ > 獣たちも雨を嫌ってか動きはなく、ほら穴までの道のりを邪魔する者はいないだろう。
ギルドの者が木々に刻んだ魔術的目印によって迷うこともなく歩めるはずなのだが。
いきなり少女が身を寄せ、ほのかな温もりを伝えてきたことで少年は身体を思わずびくんと跳ねさせ、身動きが数秒止まってしまう。
「ひゃあっ!?な、なにを……そんなに近づかれたら、歩き…づらいじゃないですか…」
久しぶりの少女の香りと体温に、頬を瞳のように赤く染めながら少年はゆっくりと歩く。
手を伸ばしてさらに抱き寄せるほどの気概は少年にはなく、寄せられた半身を緊張で固まらせながら。
しかしその身体は、これまでの経験から何かを期待するように準備を整えていく。
そうして辺りの風景に、少しだけ岩山が増えてきた頃。
生半可な魔術では砕けそうにない、中型の竜ほどもある大岩が二人の目の前に現れる。
一見風雨で削られ、山から転がり落ちてきたような外見だが、これはギルドが置いた扉だ。
「え、えっと…それじゃ開けますから」
なるべく少女の顔を間近で見ないようにしながら、少年は大岩に手をかざす。
すると大岩が音もなくぬるりと動いて横に動き、人間が通れるほどの穴が開かれる。
そこを通れば、魔術師ギルドが作り上げた調合用の茸や薬草、苔の農場が広がっていることだろう。
もちろん宿代わりになる小さな部屋もあり、服を乾かすために、まず少年はそこに案内していくはずだ。
■タマモ > 雨もある、しかし、より上位である獣がここに居るのだ、獣の邪魔がないのは当然と言えようか。
魔術に疎い少女では、その目印、分かる訳もない。
ともあれ、何事もないまま、目的地にまでは行けるだろう。
身を寄せてみれば、の反応に、くすくすと少女は笑う。
「うん?…近付かねば、これに入れ無かろう?
その程度の事、我慢せい」
身を寄せながらの歩みとなれば、手にした唐傘が、少年にも掛かるだろう。
そんな相合傘状態としながら、気が気で無さそうな少年とは裏腹に、少女は気にした様子もなく、進むのであった。
少しすれば、それらしい場所、に着くか。
大岩を前にすれば、そこで足を止める様子に、これが入り口だろうか?との予想は出来る。
なかなかの大きさ、やろうと思えば、壊せない事もなかろうが…
それをしたらどうなるかも、予想が出来る、止めておこう。
「うむ、全面的に任せる」
付いて行くだけ、これ程に楽な事はない。
なにやら岩に触れたり何かすれば、その大岩は動き、入り口が開く。
もちろん、その中の事だって、己には分かる訳がない。
その先の案内も丸投げにし、案内されるままに、少女は後に続いていった。
中に入り唐傘が要らなくなれば、ぽんっ、と手元から消す。
が、身を寄せるのは止めず、であった。
■ジーヴァ > 二人がほら穴に入ると同時に、大岩が再び動いて入り口を塞ぐ。
一瞬視界が闇に閉ざされると同時に、壁に置かれた燭台に火が次々と、ひとりでに灯っていった。
「こ、この蝋燭も魔術的なもので…魔力を餌に火を放つキメラを仕込んでいるんです。
少しの魔力で長く火が灯せるから、魔力切れになることもなく…うう…」
相変わらず身を寄せ続ける少女の、服越しに伝わる柔らかな感触。
少年は少しでも意識をそちらに持っていかれないように、ほら穴に作られた設備について説明していく。
ぼんやりと魔力の火が二人を照らす中、少年はすぐに部屋を見つけて扉を開けた。
入ってみて分かるのは、まるで一軒家のようなしっかりとした部屋。
暖炉にベッド、テーブルに椅子などの家具が一通り置かれ、使い込まれているが汚れてはいない。
やっとの思いで辿り着いた少年は服を脱ごうとして、隣で密着している少女の存在に気づいた。
「あっ……その、タマモさん。傘もありませんし、服も乾かしたいので…その…
もう少し離れていただけないでしょうか…?」
恥ずかしそうに身をよじり、頬を赤く染めたまま少年はつぶやくように頼み込む。
出会った当初とは違い、懇願するように弱弱しい口調だった。