2019/09/11 のログ
■ジナイア > 幸い、足元は庇の下よりも渓谷の方へとごく緩やかに下がっている。
そうそう浸水することもなさそうで、その事にほんの少し、安堵の色を浮かべながらシャツのボタンを外していく。
赤銅色の肌が透ける程に濡れた、貼りつくシャツから袖を抜いて、上半身を黒のチューブトップだけ残して肌を晒し、漸く纏わりつくものが失せた気がして呼吸が軽くなる。
湿ったそれを畳んで絞ってみれば、また僅か、雫が零れ落ちて足元で跳ねる。
此処まで来ると何だか少し可笑しくなってきて、女は温い風に吹かれながら唇に笑みを浮かべた。
庇の向こうでは、相変わらずざあざあと白糸を引く雨が降り続く。
■ジナイア > ばさり、と絞ったシャツを広げる様に払う。
それは纏わずに片手にしたまま、庇の下からすこし身を乗り出すようにして翠の視線を辺りに走らせた。
跳ねた雫が、足元を湿らせていく。
渓谷の水は早すこし水嵩を増したようで、先よりも流れも速くなっている。時折、雨に打たれて落ちたのか、青々とした木の葉がも流れていった。
ざあざあと言う合間に、天から低く響く音も聞こえる。
再三のこと、天を見上げるが、相変わらずの黒雲で覆われたままだ。
こうした雨は、スコールのように走り去って行くものなら馴染みがあるが、どうやら暫くは続きそうだ…
「…余り留まると、鉄砲水でも来るかもしれない」
温く吹く風に、少し乾いた黒髪が散るのを手で押さえながら独り言ちる。
麓まで降りるまでにはずぶ濡れだろうが、厄介ごとに巻き込まれるよりはマシだろう。
手にしていたシャツを、灌木に引っ掛けたりしないようにと畳んだまま腰に結び付ける。
それから、本当に憂鬱そうに濡れた地面を眺め、気が進まなさそうに溜息をひとつ、零して。
またひとつ、息を吸うと 庇から飛び出して麓目指して駆け出していく。
雨音に比べれば、ささやかな足音を立てて。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からジナイアさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にルアルさんが現れました。
■ルアル > 九頭龍山脈、その中腹辺りか。
木々茂る森林の中、幾度となく、重い衝撃音が鳴り響く。
そこに居るのは、重厚な鎧を着込んだ、小柄と言える背丈の何者か。
片手に手斧、もう片手に小型の盾を携えている。
そして、その周囲には数えて二桁を過ぎる魔物が転がっていた。
魔物、よく見ればゴブリンの集団だ。
その内の数匹のゴブリンが、一斉に飛び掛かって来た。
しかし、手にした手斧が、流れるように振るわれる。
続けざまに響く数度の打撃音、一振りの軌道にすべてのゴブリンを捉え、吹き飛ばしてしまう。
更に数を減らしたゴブリン達、さすがに堪えているのか、もはや勢いは殆ど無いと言えよう。
そうなったところで、威嚇をするように、大振りに手斧を振るった。
それに合わせ、発せられるのは重く圧し掛かるような威圧感。
それに突き動かされるかのように、残ったゴブリン達は逃げ去って行った。
静かに、手斧を腰の留め具へと嵌め、周囲を確認する。
放置された、倒れたゴブリン達。
よく確かめれば、殺められた訳でなく、意識を失っているだけと分かるだろう。
■ルアル > 「これで、彼等も大人しくなるでしょう。
依頼達成、と」
小型の盾も、小手に施された留め具に嵌め、呟く。
その声は、聞き取る者がいるのであれば、そう年もゆかぬ少女のそれと分かるか。
その言葉の通りに、ここに来た理由は冒険者として、依頼を受けた為。
内容は、付近にある村に被害を与える魔物をどうにかして欲しいと言うもの。
一人で来たのか、連れが居るのか、今のところは分からない。
ただ、この者が選んだ選択肢は、殺さずに大人しくさせるものであった、と言うところか。
他には、特に何も無さそうか?
もう少し様子見を、それでも何も無ければ、後は戻って報告をするだけとなるだろう。
■ルアル > しばらく、周囲に注意を払う。
耳を澄ませ、歩き回り、確信を持つまで。
どうやら、ゴブリン以外は問題となる事は見受けられない。
そのゴブリンも、またすぐにやって来る事もないだろう。
他の場所へと移動してくれれば、もっとありがたいのだが。
後は、依頼の他の、もう一つの目的に向かえるか。
ここは九頭龍山脈、探せば、自分が求める物が見付かる可能性もある。
再び歩き出す人影は、森林の、更に奥へと消えて行った。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からルアルさんが去りました。