2019/08/09 のログ
■シュバルト > 魔導調律師の仕事も大分軌道に乗ってきた。
今夜も初見の客ではあるが客の仕事に使う魔導人形の調律とお客様自体の調律を済ませ、王都への帰路についている……岐路についている筈なのだ。
「……ココハ、ドコデスカ………。」
何度か九頭龍山脈は足を運んでいるし、山賊街道も乗合馬車で何度も通過している、んだけど徒歩は始めてであった。
運賃ケチらなきゃ良かったな?と今更思いながら、ココハドコデスカと二度目の片言の言葉をへの字の口で紡ぐと、辺りをぐるりと見渡して少しでも地理の把握を……と何か魔物の眼でも惑わせの鬼火でもない、カンテラと思われる灯りを見つけ、その輝きの弱い明かりに急がねばと、小走りで駆け出す。
「……ごめんなさい、ココ何処です?」
相手がどんな人物が確認する前に、相手が何者か確認する前に、魔物でもいい、この際山賊でもいい、山の中で遭難してしまうよりはー!と思い切って声をかける。
茂みからどーんっと勢いよく飛び出す姿が相手を脅かしてしまうかもしれないが、それも後で考えよう最悪土下座で許してもらおう!と軽い気持ちで、星を眺める誰かを所に突撃を仕掛けたのだった。
■マリナ > 野生の獣さながら飛び出てきた何かに本来ならば咄嗟に飛び退いたり、
対処しなければならないのだろうけれども、生憎と少女の反応は鈍く――
もともと運動神経がよろしくないところに加え、お疲れで眠たいという要素も相まって
くるりと振り返るとぱちぱちまばたきするのみで。
「…………、……ここは……ここは…、……九頭竜山脈です」
まるで今起きましたとばかりにたっぷりと時間を使って返ってきた答えが、これ。
少女は自分の住む集落まで帰る道は知っているけれど、甘やかされ気味&体力不足から
山の中を駆け回るようなことはしておらず、この山全体の地形に明るいかと問われれば否であった。
どこか鈍い反応を示していた少女も、突然の獣ならぬ青年の登場に少しずつ覚醒し、
「もしかして…迷子の方ですか?」
深刻な顔をして尋ねる。
頼りない少女、今まで自分より地理に詳しい人と接する機会しかなかったものだから、おっかなびっくりに。
■シュバルト > 野生の魔導調律師が茂みから飛び出してきたぞ、と、もうちょっとコミカルに親しみやすく話しかければよかったか?と思ってしまう理由は後ほど語るとして、急な行動に対して驚きの薄い相手に驚くと共に、きっと何かしらの実力者なのでは?とも疑い一つ。
でも丁寧な返答、場所はそうわかってる、自分の質問の仕方がとても悪かっただけで相手の質問は悪くない、それにちゃんと此方の状況を察して貰えたようで、まずは暑苦しい自分の白衣の裾とか袖を掌で叩き、深呼吸をしてから……返答しようか。
「はい、残念ながら迷子でして、いえ、場所が場所なら貴女に逢いにきましたとか言えるんですけど、迷子です。お仕事で近くの温泉宿でマッサージと魔導人形の調律の帰りでして……馬車代をケチってごらんのありさまです。」
深刻そうな表情を向けてくれる少女に対して、頬が緩い情けない笑みを浮べて、相手に警戒されないように自分の仕事と立場みたいなものを早口で説明してから、もう少しだけ相手のほうに寄るとする、離れすぎているのも不自然かと思っての行動で。
■マリナ > 人生経験浅い少女、一瞬本気で自分に会いに来た=知人かと思ったようで
記憶を手繰り寄せようとする難しげな表情を浮かべてしまった。
万が一知人だったとしても、山の中で茂みから飛び出てくる知人はあんまり思い浮かばない。
「た…たいへん…」
事情を聞いて、少女の反応はシンプル。
近付いてくる様子に気付き、星空観察のためにリラックスさせていた脚をスカートの中で
きちんと揃えると迷子の彼に向き直り、お互いが見えやすいようカンテラの位置も調整する。
明かりが届けば、たしかに冒険者や傭兵のような姿には見えず、
自分より年上だろうことはわかるのだけれど――二十には届かない年の頃なのだろうか。
表情がそんな印象を持たせるのか、どこか少年らしさも残したような、そんなひと。
「どこへ帰るのですか?マリナ、ここからマリナのお部屋まではわかるのですけど、それ以外はちょっと…。」
一緒に迷子になった気分でおろおろしながら、なんとも頼りないことを言う。
100パーセント目的地は少女の部屋ではないだろうから、つまりは迷子にとって少女は役立たずということで。
■シュバルト > カンテラの灯り互いを照らす位置に少女が調整すると、改めて唐突に話しかけてしまった脅かしてしまった……けど、そんなに驚いてはいなかった何処か心に芯でも通っているような少女に薄暗い灰色の瞳を向けて、まずは少女の相貌を眺めて、視線を相貌から顎先に喉に胸元にと下らせて、順に視線をおくり足先まで見つめた後に視線を少女のエメラルドをイメージさせるような透き通る緑色の瞳に戻す。
一度ココで咳払い。
少女の反応は初対面に向けるには優しい、場所が場所だけに変な疑いをかけられて警戒されるかな?と思ったけども、そうでもなく、何か自分まで迷子になって慌ててるような様子に、少し落ち着いてきたか笑みを口元に浮べなおそう。
「……王都に帰れたらいいですけど、今から王都に徒歩で帰るには難しいかなと思わなくもなくも……ココらへんで宿があるような集落にでも行ければ幸い、貴女の部屋だったら最高かなって、あっその際はもちろん無料でマッサージをば。」
頼りない、けど優しい言葉にずずっと踏み込むような言葉を冗談交じりに、返しながら人里に帰れればいいやって、答えると、座っている彼女に対して少しばかり前屈みになって視線の高さを調節する。
「っと、名前名乗った方がアレかな。私はシュバルト・イフシュント、お店を持ちたいけど、お店を持たない、王都で宿を借りてマッサージとか諸々含めた魔導調律師って仕事をやってます。」
一応、慌てて言葉の最後に自己紹介を一つ。
名前と職業と……今後の展望を。
■マリナ > おろおろする自分とは逆に落ち着きを取り戻してきたどころか、軽い冗談が出るものだから少女はついていけてない。
王都に案内するのは難しいけれども宿なら集落にあるし、
手助けできそうだと胸を撫で下ろしたものの、ぽっと顔が赤くなるのを自覚する。
「だ…だめです。男の人と同じお部屋で寝たら、マリナ絶対怒られちゃいます。」
一度赤くなった頬はすぐには白く戻らず、ぽっぽぽっぽと上気しているのを感じながら、
若干平静を装った風に自己紹介を聞いて頷いた。
こんなところでひとりでいるとはいえ、まだ無知なことの多い少女には魔導調律師がどんな職業なのかはわからなかったけれど。
「……マリナです。ここから少し歩いたところに住んでますから、お宿まで一緒に行きましょう。」
お城から出奔した王族としては姓は名乗れない。
背丈の低い自分に合わせてくれて、視線の重なった青年へとはにかむように笑いかけると、さっそくとばかりに立ち上がりながら。
「魔導調律師さんというのはマッサージをするのがお仕事なのですか?
マリナの住んでる建物にはマリナと同じくらいの子がたくさんなんですけど…
お外にはいろいろなお歳の方がいて、肩がこるって仰ってるのも聞きますし…
お金をお支払いすればそういう方にもマッサージしてくださるのですか?
あ…でもマリナ、そんなにたくさんのお金はないのですけど…。」
カンテラを持ち上げるとゆらゆらとふたりの影が揺れる。
そこに映し出される少女の貌は、知らない職業に興味を示している。
■シュバルト > 薄紅の花が咲くようなポっと赤くなる少女の表情に悪戯心がわくのは男の性というもので、何となし意地悪い言葉を選び、何を言葉にしたら楽しいかな?と考えながら、同時に彼女の言葉に箱入り娘なのかな?とか温室育ちなのかな?とか考えるのだが、少女を見る限り温室育ちって言葉が似合う可憐さ、なので、温室育ちと思うことにしよう。
「一緒に寝るのが駄目なら、一緒に朝焼けを見ながらお茶でも、と冗談さておき。ありがたい、お言葉に甘えてマリナちゃんにエスコートしていただこう、でもアレだ私戦闘力皆無なので、その辺も宜しく……は無理か。」
山賊街道の山中、思い返せばそんな危険性もあったので、是もまた冗談半分に言うとして、最悪二人が逃げれる程度の時間を稼ぐアイテムがあった筈と、考えることが多いけど、是も思考の中に一つ。
そんな中少女が立ち上がると自然と左手を差し出して、手を繋ごうと意思を示すが無理強いはしないで置く、折角の好意だしココで悪戯して放置されるのは避けたい、でもあまりに少女が魅力的なので弱みでも握れたら……美味しくいただく心算、それにじっくりと自分色に染めたく……と我慢せねば。
そんな邪な気持ちを隠すように、口元に商売用とは違う他者に見せるには少し気恥ずかしいが、人懐っこい笑みを浮べて少女を見つめ返し、折角の問いなので質問に答えていこう唇をひらく。
「いい質問。人の体内に流れる魔力の流れを正常に戻したり、その手法で魔導人形や魔力の通るアイテムを直したりするのがお仕事です。で、それと同時に普通にもマッサージして疲れを癒したり、怪我の治りを早めたりって事もやってまして……。えぇ、症状が重たい人はお金さえ頂ければ、マリナさんなら、善意のお返しに全身マッサージを是非是非って感じです。」
一応善意で善意を返すことは良くあるし、酷くなければ低価格で調律する事もあるので、症状が重たい人はと注釈をつけるのだった。
■マリナ > 少女は見るからに守るより守られて生きてきた側。
そういった面でも温室育ちには間違いなく、自分以外の人は自分より強いという固定観念があるもので、
「えっ…?戦えない男の人がいるのですか…?
わ、わかりました。マリナ、銃の訓練もしてますからだいじょうぶです。
でも間違えてシュバルトさんに当たったら困っちゃいますから、撃つ時はどこかに隠れててくださいね。」
何気に失礼な発言を残し、加えて恐ろしい言葉ものせる。
頑張ってはいるのだけれど、生まれつきの運動神経の鈍さというものは完治しない。
その被害者になられては困るので、先に注意はしておこう。
いざとなったら相手のことにまで気が回るか自信もないし。
「…………」
差し出された左手に少し考えるそぶりを見せたのは、男性と接触する場合どこまで怒られてどこから問題ないのか、悩んだ証。
下心があればこういったこともだめなのだろうけれど、そうは見えない。
けれどもとりあえずは手を繋ぐのではなく、白衣の裾をぎゅっと掴むことにしておいた。
おかげで男女ではなく兄妹のような光景が出来上がるのだろう。
「やぁ……マッサージって腕や脚をさわるんですよね?マリナ、細くないので恥ずかしいですよう。
でもでもケガの治りが早くなるのはとっても良いですね。
ちょっとうらやましいです、そういうことできるの。」
運動神経が悪いのは自覚済みだから、そういった方面のほうがまだ向いているような気がしないでもない。
言葉を交わしながら進むのは獣道より整っているけれど、馬車が通れるような状態ではない道。
近道というのか、裏道というのか。
カンテラで足元を照らしながら、白衣の裾を緩やかに引っ張ることで進む方向を伝えて。
■シュバルト > 自分で言っておきながらだが、今更マリナちゃんかマリナさん、で悩んでいる。
言葉や動作の端々に貴族のお客様に良く感じる気品見たいなものを感じるし、でも自分より年下で小柄であるからチャン付けが合う気もするのだが……さんだろうか、何ともその頼もしくも刺々しい言葉にサン付けが合う、合うのだ……。
それにしても掌は空振り、繋ぐことかなわずである。
「はい、戦え無いんです。いやね?最終手段は用意してるんですけどもね?それはあくまでも最終手段であって、マリナさん共々ピンチになったら遠慮なく使いますけどもね……ごめんね戦えなくて……。」
正直凹む。
ケドもなんだろう、彼女は男女の触れ合い?を酷く禁忌にしてる気がしないこともなく、白衣の袖を掴んでくる彼女を見下ろしながら僅かに首を傾げた。
「肩も背中も足も腕もかな?銃を扱うなら肩は特に必要だと思うけど。おっと、その辺は恥かしがらなくて大丈夫、治療行為だし、個人的には細い子よりも健康的なこの方が好きですー……ってね?」
さて、不安になってくる。
何だが進む道は怪しくも感じる荒れ果てた道。
人が通る道ではないけど、獣道でもない道、足元不安定、まあ転ぶほどのミスはしないけど、時々つっかえてそうにはなる。
そんな中、ちゃんと足元を照らしてくれる彼女の仕草も、白衣の裾を引っ張る行為も、ちょっと小動物みたいで愛らしくてスキかも知れない……。
「マリナさん、今マッサージ用のオイル持ってるんで、道すがら休憩する事になったらちょっとだけ体験して見ます?」
と、肩からかけている鞄に一度だけチラッと視線を向けて、一応お試しもできますぞ?的な事はアピールしておこう。
マッサージし甲斐のありそうな愛らしい彼女を前に何もせずというのも勿体無い気がして。
■マリナ > 「えっ?気にしないでください。マリナもあんまり戦えないので…。でも自暴自棄は困ります。」
戦えない男の人の存在に驚きはしたけれど、謝られるとは思っていなかった少女は遅れてフォローに回る。
けれども最終手段なんて言うものだから、自爆でもするのかと勘違いして表情を曇らせた。
何か出てきたら自爆する前に追い払わなければ。
とはいえ、ここは何度か通っている道。
山賊などに狙われないよう外から見えにくく、歩きにくさに反して比較的安全。
そうでなければ少女がこの辺りでひとりぼんやりというのも難しい。
「だいじょうぶです、シュバルトさん。
ほら、あの明かりのところ。マリナが住んでる場所なんです。
もうすぐですから、がんばってください。」
お試しを提案してくれる調律師の青年に、少女は振り返って微笑みかける。
指差し代わりにカンテラを向けた先で、生活の証である明かりが集まった場所が見えていた。
宿泊施設だけでなく、集落の中だけでも生きていける設備があるし、民間の軍事組合もあるからそれなりの土地。
「行きましょ!いっしょに!」
裾を持っていた手が袖に移って、ねだるように、くいくいと引っ張る。
まだ16の少女にはマッサージの気持ち良さより、迷子を無事送り届けられるという達成感のほうが強かった。
少しスピードアップして向かう少女は、集落一番オススメの宿へと辿り着くまでノンストップ。
もしかしたら翌朝にも『どうでした?』なんて感想を聞きにくるかもしれない。
その際にマッサージをお試しするかどうかは、これもまた少女のテンション次第になってしまいそうな。
なぜならその後は集落の中を観光に、なんてお節介まで焼く可能性もあるのだから――。
■シュバルト > 自暴自棄??
頭の上に「?」マークが浮かびそうなくらい呆けた表情を浮べて、数秒後に彼女が何を想像しているかまあ想像つくのである、自爆なんかじゃないよ、特殊な匂いをだす香水で相手の嗅覚とその煙で視界を防いで……でもこれ服に匂いがつくから、と言いたいけどぐっと堪えよう。
と、気がつけば周囲は見知らぬ土地の見知らぬ場所ではあるが安全な場所に到着したようで、振り返り微笑を浮べる少女にちょっとだけ見惚れながら、言葉をお礼の言葉を発しようとしたが……袖がぐいぐいと引っ張られて。
「っと、転んでしまうって。一緒に行かない理由がないって言うか、此処で引き返すねとかないからね?マリナさん慌てないで……。」
ノンストップな少女に引き摺られはしないけど、ちょっとだけ引っ張られながらお宿を紹介してもらい、それはもう翌朝は確りといえなかったお礼の言葉を言うだろう。
マッサージのお試しは、オアズケになりそうだが悪くは無い、元気な少女に引き摺られきっと観光案内までされて、ずるずると彼女のテンションに引き摺られていくのであった。
悪くない、きっとそんな1日を過ごしただろう。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からマリナさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からシュバルトさんが去りました。