2019/07/06 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にホアジャオさんが現れました。
■ホアジャオ > 山脈の裾に広がる緩やかな斜面を、緑濃く覆う鬱蒼とした森の中。
只でさえ高い梢の枝に遮られあまり光の届かない場所は今、天が黒雲に覆われているが故に、真昼にも関わらず既に薄闇が漂っている。
その黒雲から大粒の雫が落ちてきて、天を覆う葉が音を立て始めて暫く。
幹を伝って滑り落ちてきた雫で、今や地面は薄く水たまりになりつつあった。
「真的倒霉(ついてない)……」
とある木の幹に身体を預けて、雨宿りしている女がぼそりと零す。
葉を打つ水音は、零したその言葉をかき消しそうなほど。
早晩、この木の下も水浸しになって行くだろう…
ちょっと山賊を虐めてやろうと足を伸ばしたついで、温泉でも探してやろうと色気を出したのが運の尽き。
山賊をちょっと小突いたあと、取って返していれば雨雲に追いつかれることは無かったのだろうが。
(………)
自業自得と言われて納得する性質ではない。
恨みがましく空を見上げて――
それからさっさと気を切り替えて、背を幹から離すと、次の雨宿り場所を探して視線を泳がせた。
■ホアジャオ > 薄暗い森の中、遠く――おそらく山裾に近い方から、白い霧が漂ってきているのが見える。
反対に目を転じれば、僅かながらも薄明るい――だが、雫が地面を穿つ音は確実に強い。
「啐(ちぇっ)……」
足元に視線を落とせば、すぐそばの枯れ枝に覆われた地面が、薄闇でも濡れて光っているのが解る。
恐らく、踏み込めばすぶりと沈み込んでぬかるみを造る事になるんだろう。
■ホアジャオ > もう一度視線を辺りに走らせる。
(哪个正确…どっちに、しようかなァ)
考え込む、というよりはその言葉を思ってすぐ。
視線を白い霧に向けると、少し、その紅い唇を尖らせて。
「……濡れる以上に、面白いモン、見つけてから帰ってやるかンね」
濡れるのだと腹を括ってしまえば答えは一つ。
た、と軽い足音を立てて背を預けていた木の下から奔りだした。
その姿が白い闇に包まれ、遠ざかる足音が雨音に紛れるまで幾らも掛からなかったろう…
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からホアジャオさんが去りました。