2019/06/23 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にタマモさんが現れました。
タマモ > ここは九頭龍山脈、山中深く。
数人の男達が、茂みを掻き分け突き進んでいた。
その様子は、かなり慌てた様子のもので、どちらかと言えば…何かから、逃げているような。

そう距離が離れていない、その後方。
その後を、追うように揺れる茂み。
それらに関しては、茂みに隠れ、その姿がはっきり見えない。

それを更に追うような、木々の上を移動する影もあった。
とん、とん、とん、と木の枝を軽やかに跳び移っている。

「ほれほれ、もっとしっかり逃げねば、捕まり、食われるぞ?
もっとも…これは、お主達が、ミレー族にしておる事と同じ。
やり返され、気付く事もあるじゃろうが…自業自得じゃな?」

木々を移動する影が、そう先を行く男達に声を掛ける。
その声は少女のもの、声質から、それを楽しんでいるのが分かる。

と、そこで、男の一人が何かに足を取られ、転んでしまう。
先を行く、仲間であろう男に、救いを求めるように手を伸ばすが…茂みから現れた、形状不明の影の塊、それに包まれてしまった。
一瞬、その男を見る、他の男達だが…それを無視し、再び逃げようと、前へと視線を…

………しかし、その視線の中に映るのは、先の風景ではなく、黒一色の闇。
かくして、残りの男達も、その影に包まれてしまった。

タマモ > 余りの驚きに、声も上げられず、後に残るのは沈黙のみ。
男達を覆う影が、ゆらりと揺れ、消えてゆけば…そこにはもう、何も無かった。

とん、木々の上を移動していた少女が、その場に降り立つ。

「………ふふんっ、恐怖体験、終了じゃ。
もう二度と、こんな事を繰り返さん事じゃな」

誰も居なくなった、その場所で、自慢気に胸を張る少女。
手にしていた広げられた扇子を、ぱしん、と閉じた。

第三者から見れば、蠢く闇に飲み込まれ、消え去った風に見える。
しかし、実際には単に意識を奪い、適当にこの九頭龍山脈の麓辺りに捨てただけだったりするのだ。

そもそも、なぜこんな事を少女はしたのか?
別に、大した事ではない。
いつものように、偶然にここにやって来て、偶然に式の連絡でミレーの隠れ里を探す連中が居る事を聞き…以下略。

とりあえず、一休憩だ。
よいせ、と座り易そうな岩に、腰掛けた。

タマモ > 「………む?」

ぴくん、少女の耳が揺れる。
離れたとは言え、ここはまだ隠れ里の付近とも言える場所。
まぁ、違う場所ならば、だからどうした?と言えるだろう。
しかし、この場所であるならば、事情が少し異なる。
………この少女にとっては、なのだが。

「この感覚は…ちと、離れた方が良さそう、か?」

岩から腰を上げ、ぐるり、と周囲を見渡す。
その視線が、一点で、ぴたりと止まる。
それは、先程やって来た方角だ。

「にゃー」

ぽつり、少女はなぜか、猫真似をした。

『何度も何度も何度も何度も、ちぎゃあと言うとるでしょうが!』

まるで、それに反応したかのような、別の少女の怒鳴り声。
視線を向けた方向から、こう、響き渡った。
それと共に、それの気配が、簡単に感じ取れる距離にまで近付いてきたのを理解する。

「お、おぉ…意外と近い、撤収じゃっ!」

だだだっ、と少女は、逆方向に駆け出した。
まだ姿は現わさぬ、その相手。
これから始まる追いかけっこ、その詳細や結果は、知る者は居ない。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」からタマモさんが去りました。