2019/06/01 のログ
ソウレン > 冗談を言うくらいの余裕はあるのか。
もう2日くらいしていればそんな余裕もなかったかもしれないな、と笑みを深める。
少年の思案などどこ吹く風の様子。

「減らず口が叩けるのならば幸いだ。
しかし、よく命があったね。運がいいというか、持っているというか。」

ふむ。と一つ頷く。
添え木もなく杖もなく、歩くには苦労しているだろう。
そう思い、迷う事もなく少年の腕をとって自分の肩に回させる。
3日滞在しているのならば多少なり汚れているのかもしれない。それを気にした風もなく。

「隠れ場所はどこかな? 荷物もあるだろう。」

と、そのまま案内させる様子。

ブレイド > 何がおかしいのかわからないが笑みを深める彼女。
まぁ、冗談がうまくいった…と思いたいが。

「幸い食い物はまだあるんでね。
もうちょっと経ってたら、こんな口も聞けねーよ。
つか、運がいいならそもそも落ちてねーって」

苦笑しつつも、伸ばされる手に腕を捕まれ
あれよあれよと店主の方を借りる体勢に。
抵抗する暇もないとはこのことで、思わず目を丸くしてしまう。

「あー…わり、向こうのちょっと離れた洞窟…つか、服汚れるぞ?」

ソウレン > 「何、そんなものは帰って洗えば済む話だよ。」

少年の心配に、要らぬ気遣いだよ、と微笑を浮かべる。
肩を貸したまま、少年のねぐらに案内させる。
岩場にぽっかりと開いた洞穴に、ふむ、とまた一つ頷く。

「…いや、運がいい方だろう。
命はあるし、隠れ場所もある。私も通りがかった事だしね。」

落ちたことは…過ぎた事だよ、と女は笑う。

さて、洞穴の前で少年を壁にもたれさせると、荷物を眺める。
最低限、寝泊まりできるくらいの物と食料。
それがダメになっていないのも良かった事だろう。

「ではここを引き払おう。適当にまとめてしまうよ。」

そう言って、さっさと片付けを始めてしまおうと……。

ブレイド > 「あ…おう…わりぃ」

微笑む彼女に、少しバツが悪そうに。
だが、そう言ってくれるのであれば、少し甘えてしまってもいいかと
気に病む様子はなくなる。
程なくたどり着いた穴には毛布と装備一式。
保存食の残骸などが散らばっていた。
状況が状況とはいえ、散らかした痕跡をみられるのもなんとなく恥ずかしさがある。

「それもそうか。それこそ、不幸中の幸い…っと、いいよ片付けくらい自分でやるって」

別に見られて困るものがあるというわけでもないが
肩まで貸してもらって、さらに片付けまでなど…

「つか、引き払うって…連れてくつもりか?
大丈夫か?」

ソウレン > 「けが人はじっとしている事だね。」

少年が自分でやると言っても聞かず、片付け始めてしまう。
一人で店を切り盛りしている以上、そういう事はテキパキと慣れたもの。
装備一式などは毛布で包んで紐で縛ってしまい、食料品は別にまとめていく。

「あぁ、何も問題ないよ。…まぁ、私の秘密だ。あまり口外しないでもらえると助かるけどね。」

少年の心配をけろりと返す。
後半、少し茶目っ気を見せるように人差し指を「しーっ」という風に唇に当てて見せた。
ほら持ちたまえ、とまとめた荷物と食料品を少年の腕の中へ。

それからまた空を見上げる。
厚い雲海はいまだ健在のようで。

ブレイド > 「ぐぬ…じゃあ、任せる…」

流石にそう言われてしまうとぐうの音も出ない。
むしろ、彼女と自分の立場が逆なら同じことを言っていただろう。
テキパキと片付けをする彼女の姿を眺める。
そもそも、散らかしていたといっても荷物の両自体が大したものじゃない。
すぐに片付けは終わってしまうだろう。

「問題ないって…こっから王都までせわになるわけにゃ…
え?なんだ?ヒミツ?」

ここから歩いて帰るというのであれば、相当に時間が掛かるし
怪我をしている自分を運ぶのはだいぶ労力がかかるだろうが…
秘密とは?なにかするつもりなのだろうか?
彼女の仕草につられて空を見上げれば…

まだ雨雲が残っているようだ。

ソウレン > 「そうそう。男の子は素直が一番だ。」

無理に自分でやると意地を張らないだけ偉い。
あまり余裕もないのだろう。
素直に任せるだけ、物分かりは良い。

「王都まではさすがに。あのあたりは結構『目』があるしね。
言っても王都に程近い町村という所かな。馬車も出ているだろう。」

そう言いながら、空を見上げる少年を笑って見ているだろう。
そして、空から視線を下ろせば再び青い光が周囲を包み込む――――。


光の中、少年を浮遊感が襲うだろう。
光が収まる頃には、何か巨大な蠢くモノが足元に感じられるはずだ。
蒼く硬い鱗に包まれた、とてつもなく大きな。
それがゆっくりと身体をくねらせながら、霧――――雲の中を泳いでいく。

――――ぉぉぉん――――

『できれば、他言無用だよ。』

咆哮と共に、少年の頭に声が響く。
長い身体の先に、巨大な龍の頭部が一瞬少年を振り返る。

ブレイド > 「世話になっといて聞き分けのねぇガキみたいなことは言えねぇさ、流石に…
っと、ありがとな。で、馬車の待合まで歩いて…か?
雨、振りそうだけどよ…」

彼女に肩を借りれば、歩いていくこと自体はあまり苦ではないだろう。
もちろん歩みは遅くなるが…だが、それが問題。
この天候では、いつ降り出すかわかったもんじゃない…のだが…

その問題を口に出そうとした矢先、光が目をくらませる。

「うお!?」

突然の光と浮遊感。
思わず声が漏れる。いきなり何があった?
荷物を取り落とさないように抱え直しつつ、徐々に薄く目を開けていけば…

「なん、だ?これ…」

巨大な、蛇の上?いや、これは…龍?なんで龍?夢を見るには突然過ぎて混乱する自分に龍が声を掛ける。
さっきまで聴いていた女の声で。

「冗談、だろ?」

ソウレン > 『こういう事情でね。あまり王都の間近までは行きづらいという事だね。』

ゆっくりと雲海を泳ぐ龍。
鳴き声がなくとも声は少年に届くだろう。
龍の姿を観測されれば、それはそれは王都が大騒ぎになってしまうだろう。
だから、近くの町村で人の姿をとり、馬車で王都まで向かうという方針で。

不思議な事に、雲海を通っても少年は濡れないし、高空故の風も感じない。
何か、薄い衣に包まれているような。

『さて、急ぐとしようか。』

――――ぉぉぉん――――

一声咆哮を上げると、徐々に加速していく。
圧倒的な速度で雲が後ろに流れていく。
時々、雲の切れ間からは月に照らされた雲の上面…紫雲と、遮るもののない星空が覗く。

しかし、その空中散歩もほどなく。

遮るものがない高空を高速で移動すれば、速度は徒歩や馬車とは比較にならない。
降りるぞ、と一言断りを入れてから、ぐぅん、と地上に向けて加速する。
落ちるように、泳ぐように大地が近づく。地面へ突進するようなコースをとりながらも、再度蒼い光が周囲を覆い……。

光が収まる頃には、地上へとたどりついているだろう。

ブレイド > 「夢でも見てる…ってわけでもねぇよな…?」

状況は現実離れしているのに、足の痛みは本物で
それなのに風の圧も、高所の寒さも、そもそも雨に濡れることすらない。
夢だと思っても仕方ないのに、頭や視界ははっきりとしていて
夢のように霞がかってはいない。
つまり、ソウレン…あのイザカヤの店主は龍だったということだ。

「まじかよ…」

咆哮を上げる彼女の背、雲海を下に見て、並ぶ夜空は今までにみたことのない光景で
思わずため息をついてしまう。
そんな、一生に歩かないかの体験を味わうも、それも終りを迎える。
が、急下降の感覚に思わず悲鳴を上げてしまうのだが、それはそれ。

「………はぁー……ぁー…えっと……なんか、その…ありがとな、とりあえず……」

ソウレン > 「ふふ。もちろん、現実だよ。楽しんでくれたかな。」

地上に戻れば、当然傍にはいつもの姿の女店主。
くすっと微笑みを浮かべながら、再び肩を貸すようにするだろう。
悲鳴も勿論聞こえていたよ、と面白そうに言うのも忘れない。

「礼を言われたくてやった事ではないよ。
常連客には義理を果たしておかないとね。」

そう言いながら、村へと足を向ける。
この近くだよ、と言いつつ歩いて行く。

色々と少年に思う所はあるだろう。
が、ソウレンとしては一番手っ取り早い方法をとったに過ぎない。
村への短い道すがら、その事を少年へと話して。

村で一夜を過ごす事にはなるだろうが、明朝一番で王都へ戻る事ができるだろう。
王都に入る際に再び『しーっ』と人差し指を唇へと当てながら…。

ブレイド > 「……今日はかっこ悪いとこばっかだな…」

彼女の方を再び借りつつも、悲鳴もバッチリ聞かれてたとあっては
流石に顔を羞恥に染めるほかはない。
それでも、雲海に浮かぶ月夜などという、普通ではみられない光景…
まるで子供のように感動していたことをしられるよりはだいぶましか。

「偶然だけど…まぁたすかったぜ。
贔屓にさせてもらう理由が増えたな」

ならば常連の義理を果たすまでで微笑み返して。
彼女にどういう理由があったとしても、彼女に助けられたのは事実なわけで。
もちろん、彼女の仕草をみれば小さく笑ってうなずくのであった。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中 崖下の洞窟」からソウレンさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中 崖下の洞窟」からブレイドさんが去りました。