2018/12/09 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にジンライさんが現れました。
ジンライ > 冬の夕暮れ、曇り空だが風はなく、ただ冷えた空気が横たわっている。
八卦山の麓、岩棚に挟まれた曲がりくねった道は非常に見通しが悪い。襲撃に最適な時間と場所で、つい先ほど馬車が襲撃されたばかりだ。

なァんでこうなってンだろな――

普段用心棒業をしている自分が珍しく乗客側だったはず、としみじみ思っても、武装した盗賊に取り囲まれている状況は変わらない。

同乗していた用心棒たちが馬を守るのに躍起になっている間、後部から乗り込んできた新手を蹴り落とした。厄介な事に矢を射かけてくる者が居たものだから、仕方なく飛び降りて蹴散らしたところで――馬車が男を置いて発車してしまったのだ。
流石に蹴散らしながら馬の脚に追い着くこともできず、結果的に、ひとり盗賊たちのもとへ取り残されている。

ジンライ > 故意なのか事故なのか―いや、故意でも事故でも、後で元締めをたっぷり締め上げて、馬車代以上のものを巻き上げてやれるいいネタを手に入れたとも言える。

(まァ、悪ィ取引ってェわけでもねェか…)

考えながら敵の数を目線と気配でなぞる。見えるだけで5人、隠れて矢をつがえているのが1人。
男の東国の衣装が珍しく一見魔術じみて見えるのか、躊躇しているらしい5人一斉に飛びかかってくるような様子は見えない。
(―ンなら、先手必勝ってェやつだな)

ジンライ > きり、と弓弦を引く音がしたのと、男が疾るのが同時。
弓手から見て奥、囲んでいた盗賊の一人の懐へ長身を屈めるように飛込み脇差を抜きざまに一突き。

「おらよッ―」

振り返りながら、頽れる相手から奪った短剣を、思わず身を乗り出した弓手へ投げつける。見事、額――とは行かなかったが、肩に深く突き刺さって岩陰へ転がるようにして姿を消す。

野郎!と叫びながら続いて左右から斬りかかってきた2人、右へ強烈な腹蹴りを放ちながら、左へ頽れた仲間の身体を放り投げる。間を置かず左の男へ迫って、放り投げられた仲間を避け損なって倒れた手首を強烈に踏みつけ―ばき、と骨が折れる音がして、剣が取り落とされる。

ジンライ > ゆっくりと、取り落とされた剣を拾い上げて視線だけで見回す。

岩陰から、男の足元から呻く声。腹蹴りを受けた方は餌付きながら転がっている。
残った無傷の2人は、動けなかった様で切っ先が明らかに逡巡している。

(一丁あがり、ってェとこだな…)

脇差の血糊を払い、握った手の甲で器用に鼻の下をこする。そうして2人に向けた視線を少し緩めて

「なァ…俺ァ無一文なンだよ。だからよ、ここら辺で引いつくンねェか?馬車が行っちまったから、こッから自力で行かなきゃなンねェしよ」

悪ィ取引じゃねェと思うけど、と言いながら、足元に転がっている、呻く仲間の首のすぐ傍へわざと音を立てて剣を突き立てる。ヒッ、と息を飲む音が、風のない空気に響く。

ジンライ > 盗賊2人はお互いに一瞬視線を交わす。恐らくだが、最初に一突きした1人が頭分だ。
片方からわかった、と口元を覆った布越しに言うのが聞こえると、男は人好きのする笑顔でニッと笑う。

「よっしゃ、じゃ一応武器こッちに寄越せ。―全部だよ。其処の短剣もだ」

男と2人の盗賊に武器が投げ出されていく。よしよし、と頷きながら先ず突き立てていた剣を高く放って崖の高みへぐさり。
それから餌付いている男――もう回復している筈だが、無難に転がったままでいる――の男の利き手を一応踏んづけて(手指からばき、と小さな音がして小さく悲鳴が上がる)剣を拾い上げて、こっちも高みへぐさり。

ジンライ > 投げ出された武器も同じく放り終わると、脇差を鞘に納めてぱんぱん、と両手を払う。そうして視線を上げ、随分と傾いた日を確認する。やっべェ…と呟くと、無傷の2人に視線を転じて片手を上げる。

「じゃーな。寒くなってくッから風邪ひくなよ」

そう言い置くと身を翻して地を蹴り、ダイラスの方へと走り出す。
曲がりくねった道の向こうへその姿が消えれば、残されたのは呻き声と茫然と立つ盗賊2人。ふたたび視線を交し合って、のろのろと仲間を回収に掛かる…

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からジンライさんが去りました。