2018/11/25 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にマリナさんが現れました。
マリナ > 「―――――っくしゅ!」

天気の良い昼間、木々が途切れたように野原となっている一画にて聞こえる、くしゃみ。
くしゃみした当人は野原の真ん中で座り、毛糸を垂らして編み物をしている最中であった。
そろそろ冬が訪れるのを感じて以降、思い立って始めたことで、暇があれば部屋で進めていたのだが。
不器用というわけでもない――と思うのに、納得するほど上手くは出来ず、気分転換に外へ出させてもらった。
仕事を本格的に始めれば王都などの都市部まで足を運ぶことがあるものの、まだ少し集落に引きこもり気味。
もともと王城からあまり出ず、一時は自分の部屋だけで過ごしていたこともあり、引きこもり体質は否めない。
それでもふと空を見上げれば、そこは広く、知らない土地に思いを馳せたりもして。

「この辺りは雪はどのくらい降るのでしょう。雪遊びはさせてもらえるのかしら……」

風邪をひくからと、寒い日は外出を控えるよう言われていた幼少期を思い出す。
それに比べれば今は自由で、雪遊びなど好きにしたら良いのかもしれない。
だが幼い頃から培ってきた習慣は身から離れず、ついつい誰かに許可を得たくなってしまう。
窓の外で見ていた白い中庭で遊ぶ子供達。今でも憧れているらしく。

―――ぼんやりするから、編み物の手は止まる。
場所を替えてもあまり進みそうにない。

マリナ > 「……あ……、また編み目ひとつ抜かしちゃった」

視線を手元に戻し、失敗に気づいて肩を落とす。
やっぱりあまり器用ではないのかもしれない。
失敗したところまで毛糸をほどき、今度はきちんと確認しながら編み進め――
そんなことをしても、また気が抜けた頃に同じ失敗をするのだろう。
繰り返しながらも楽しんで、穏やかな時間は過ぎてゆく。

冬が来るまでに小さいものひとつでも完成出来れば、なんて欲を出す少女の望みは叶えられるのだろうか。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からマリナさんが去りました。