2018/10/09 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中の洞穴」にミュゼさんが現れました。
■ミュゼ > 今夜の少女は、微妙に運が悪かった。
ギルドからの依頼で薬草を採取し、一段落ついたのが昼過ぎ頃。
その後、日暮れまでに町に戻るべく、下山を始めたのは良いのだが――。
「……秋の初めだから、天気も変わりやすいってね」
しとしととふる雨が、少女の帰路を邪魔していた。
町までの距離はそれなりで、冷え始めた秋口に雨に濡れるのは得策ではない。
冷え切れば風邪をひいたり、下手すれば遭難して物言わぬ骸にすらなりかねない。
慌てて雨宿りの場所を探せば、近くにぽっかりと洞穴が一つ。
岩の窪みと思しきそこは、他の冒険者も使ったであろう焚火の跡があった。
「ここで野営、かなぁ……うぅ、干し肉しかないんだけど」
最低限の備えはしているが、それ以上の荷物はない。
どうしたものかと悩みつつ、洞窟の壁から湧いて出ていた清水を鍋に汲んでいた。
ご案内:「九頭龍山脈 山中の洞穴」にブレイドさんが現れました。
■ブレイド > 雨。ついていない。
依頼の途中で予想外だ。
何より予想外なのは輸送予定の山賊で荷馬車が埋まってしまったということだ。
自分が乗るスペースが無かったため、馬車は先に帰らせ、自分は徒歩で帰ることになった。
これもついていない。全くため息が出る。
今日のところは雨もある。奴らにねぐらに戻って一晩明かそうと山を再び登り始めたところで…
「ん?洞穴?」
洞穴と言うかなんというか…。このあたりにまだこんな穴があったのか。
すこし覗いてみようと近づく。
■ミュゼ > 洞窟の中は入り口よりも広く、風が吹き込まないのは嬉しい誤算。
奥の岩の割れ目から湧水が滴り落ちていて、恐らく過去の何物かが作ったであろう水場があるのも僥倖だ。
野営用にあつらえられた休憩所の様なそこは、一夜を過ごすには十二分に快適だった。
石の床は冷たくて硬いが、荷物の中にしまい込んである毛皮を敷けばある程度はどうにかなるはず。
石部屋の中心に火を焚いて、使い慣れた野営用の鍋を置く。
干し肉と乾燥させた野菜をいくつか入れて、水で煮込めば簡易スープだ。
調味料はほんの少しの塩位。胡椒などと言うのは高価で手に入りにくいのだ。
「……んぅ、パンもないし、なぁ……」
お腹がしくしくと鳴いた気がする。
とほほ、と嘆息していた所、洞窟の外に何やら気配。
獣か夜盗だったらどうするか――と、右手に槍を構えて、息を殺して様子を見ることにする。
■ブレイド > 野盗のアジトと結構近い。
奴らが作った見張り用の洞穴のようなものかもしれないなと、少し慎重に覗き込む。
人が数人休むには十分な広さをもっているようで…
そこで少し、眉をひそめる。
「ん…この匂い……」
野菜の煮える匂い…肉も混じっているかもしれないが
野菜に火が通る甘さを含んだ匂いのほうが強く感じるものだ。
誰かが、いる?
「ちっ…見落とし……いや、別の…」
舌打ち一つ。手早く両手に大型のナイフを構えゆっくりと奥へ。
火の灯りが見える…。その部屋へと、一足飛びに躍りだす
「うごくなっ!」
■ミュゼ > 声を潜めていれば、何者かが入り口に立つ。
ここは火を背にしていて向こうは外。逆光で顔も分からない。
どうするか、と逡巡していれば、ナイフのようなものの閃き。敵意があると判断。
ならば迎撃するべきと、武人の心得が瞬時の決断を下した。
火のちらつきだけが瞬く中、何者かが飛び込んでくる。
瞬間、少女もまた、右手の槍を引き戻すと同時に跳ねた。
ひゅん、と小さく旋回した槍を、そのまま誰かの陰に突き出す。
あくまで殺さぬ様に、しかし服か体の一部を縫い留めるくらいはするつもりで。
「先手必勝――!」
鋭く息を吸うと共に、飛び込む。
その槍は確かに彼の服を射抜けるだろうか――。
■ブレイド > 「ちっ!……!?」
攻撃を払おうと左手のナイフが閃こうとした矢先、手が止まる。
こちらからは、相手の姿が確認できたのだ。
見知った顔。空色の髪…
驚きに戸惑ってしまえば、槍の一閃はこちらの…
攻撃を防ごうとした左腕をかすめ、脇腹の衣服を切り裂く
「おま、えはっ!?」
目を丸くしたまま、動きを止める。
こちらには敵意はないとナイフをおとし。
■ミュゼ > 速い――そう思えるのは、相手の訓練の賜物か、はたまた自分が弛んでいたからか。
思った以上の速度で迫る影に、放たれた槍の狙いもずれる。
彼の服を僅かに逸れて、左腕にうっすらと切り傷を作り、同時に服を一閃。
鋭利な刃はそのまま奥に突き抜けて、いつも通りの制動から引き戻しが行われて。
同時に距離を取るべく大きく後ろへ。焚火の上を飛び越えてその奥に陣取ると――。
「……あ、れ?――えっと……?」
焚火の向こうに視認した相手は、見覚えのある人だった。
嘗て弱っていた時に、部屋を貸してくれた親切な彼。
故に少女は自然と動いていた次の刺突への動きを止めて。
「――あ、はは。お久しぶり、かな?その……今、思い切り突いちゃったけど、大丈夫?」
まずったなぁ、と明らかに冷や汗だらだらな顔を見せながら、視線を気まずそうに横へと逸らした。
■ブレイド > 「お、おう…つか、こんなとこで何を…」
傷はついたが大したものではない。
少しずれていれば、腕を貫かれていたか、はたまた腹をか。
ともあれ大事に至らなかっただけマシだ。
衣類は切り裂かれ、マントにも穴が空いたが。
「つか…あー…久しぶり、だな?ミュゼ」
気まずそうなのはこちらも同じ。
とりおとしたナイフを拾い上げて、鞘に収めつつ
両手を上げる。
とりあえず、害意はないというサイン。
■ミュゼ > 「んぅ、お仕事で薬草取りをした帰りなんだけど、雨に降られちゃったから」
問いには素直に答えつつ、右手の槍を布の鞘にしまい込む。
いつも背中に背負っているそれは、冒険に出る時はいつも身に着けている品だ。
使い込まれた布の中に槍を収めてしまえば、少女も同じく害意はない雰囲気を見せて。
「ん、久しぶり……その、ごめんね?多分、服、裂いちゃったと思う
後、多分外套もだよね……思い切り突き破った感じだったし」
手応えとして、薄布を切断した感覚と、それより少々分厚い何かを貫いた感覚があった。
その両方に謝意を示すと、はぁ、と気の抜けた吐息を零してから、彼の方を見て。
「お詫び、スープでいい?その位しか、今は出せないんだけど」
このままでいるのも居心地が悪いから、とりあえず夕飯のお裾分けを試みる。
決して懐柔しようと言う訳ではない。顔見知りだから分ける、それだけだ。
■ブレイド > 「オレも同じようなもんだ。
オレはもう依頼は終わってあとは帰るだけってとこなんだけどな……ん?」
首をかしげる。
前に聞いた話では、彼女は元貴族で…借金のせいでひどい目にあっていたような。
冒険者にでもなったのだろうか?
あわないうちにいろいろ環境が変わっていてもおかしくはないが…
自由になれたというのならば喜ぶべきだろうか。
「っと、お、おう。ま、帰れば替えはあるし、気にすんなって。
お詫びも…つーか、スープ…具がすくねぇな。
せっかく出し、オレの分も使うか?山賊のアジトから見つけたやつがあるからよ」
荷物をおろして、雨に濡れた穴開きマントを外す。ミレーのネコミミをパタパタさせて
パンやら厚めのベーコンやらを取り出して。
■ミュゼ > 「そう?ボクも同じ。薬草はちゃんと摘めたからさ。
……んぅ、どしたの?不思議そうな顔しちゃって……?」
彼の疑念ももっともで、確かに少女は借金のかたで色々と手酷く扱われていた。
とは言え、貴族の娘を囲っておくのはリスクが高く、下賤な征服欲を満たす以上の成果はない。
最近は金が入用らしく、機兵関連の高額面の報酬を狙いつつ、楽して一山当てようとしているらしい。
その過程で、飽きられたという理由で身包み剥がされ放り出されて、今へと至る、そんな流れだ。
槍などの装備は宿とは別の場所に預けていたから、失うのは上等な衣装一式程度。
冒険者としてはそこそこな痛手だが――自由に比べれば安いものである。
「ん、そっか。それじゃ、うん、言葉に甘えるよ。
――うぅ……だって、今日雨降るなんて思ってなかったし、備えてないからさぁ。
むぅ、いいの?その、ボク、結構食べちゃうよ?お腹減ってるし、その、食いしん坊、だし」
目の前、ベーコンやらパンやらを取り出す彼を見ると、きらきらと目を輝かせて。
こくり、と口の中に湧き出た唾液を飲み込みながら、彼の荷物を魔法の道具の様に見ていた。