2018/08/06 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」に紅月さんが現れました。
紅月 > ーーーぱしゃっ、ぱちゃっ、ちゃぷん。

或る山中の、奥の奥。
木の影の向こうから、早朝の静寂に小さな水音が響く。

「ふふっ、気持ちいい…」

辺りには湯気…その開けた場所はどうやら温泉と冷泉らしく、まさに隠れた秘湯であった。

どうやら紅の髪を緩く結った女が、のんびりと足湯を楽しんでいるらしい。

紅月 > コテン、と、温泉の縁の岩に寝転ぶ。
その表情は実に安らかなもので…万が一にも誰か通りかかって偶然見たら、行き倒れと間違えるだろう程に。

「やっぱり、山の氣が一番落ち着くなぁ…
さすがに故郷の山には負けるけど、それでも本当に質がいい…来てみた甲斐があったわぁ~……」

この紅娘、実は精霊の血脈に連なる者である。
精霊とは本来、自然の中に生ずるもの…まかり間違っても人間界に生きるものではなく、澄んだ空気や豊かな自然は不可欠である。

「あー、毒が抜けるわぁ~…」

ご案内:「九頭龍山脈 山中」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > がさっがさっと音を立て、少年は不機嫌そうな表情のまま山の中を歩く。
こんなところにいるのはもちろん行楽だとか趣味だとかではなく依頼だ。
『この時期』に消費の激しい香の原料である植物数種の採取というやつだ。

そもそも採取依頼は嫌いじゃない。
誰を傷つけることもなく、ちょっと街を抜け出し見たこともない景色を見れる機会でもある。

だが今回は少し複雑だ。
依頼内容が内容だけに。
この時期…つまるところ『神餐節』に消費の激しい香。
貞淑なものですら色に狂わせる発情の香。その原料集め。
悪事の片棒担がされているようで、あまり気分は良くない。

「ちっ…」

舌打ちしつつ、その手に持った山刀で藪を切り払いつつ歩いていた。
しばらくすればまた拓けた場所に場所に…

「…へ?」

出た。
出たが…人がいるのは予想外。

紅月 > 「……、…ふぇ…?」

がっさごっそ、静寂の中に結構な音が響き始める。
何だろうか、こんな時間にお風呂に入りたい変人が私以外にも……?

草を掻き分けて登場したのは、冒険者。
と、いうか…まさかの、知り合いである。
祭壇の生贄よろしく岩の上に四肢を投げ出してゴロゴロしていたのをバッチリ見られてしまった、しかも胸元やら裾やら色々はだけてるし…不覚、不覚である。

「……や~、おはよう御座いますー…?」

とりあえず、ユルい笑顔で声をかけてみる。
此方は男ノ形、即ち"アカツキ"の状態の時に一方的に知り合っているが…彼方にとっては初対面。
せめて挨拶くらいはマトモにしておこう…うん。

ブレイド > こんな山中に一人、しかも軽装で
岩の上に身体を投げ出す赤い髪の女性。
どうやら…行き倒れ…ではないらしい。
生きている。生きているが…意識はあまり大丈夫…ではなさそうだ。
この状況で危機感なく薄ゆるい挨拶かましてくる程度には。

「お、おう…」

こちらの返事も間抜けなものだが、反応としては正しいだろう。
着衣が乱れ放題なのもあるが、反応が明らかに…というか、普通気づいた時点で身構えるものだろう。

「……戻ったほうがいいか?」

一応確認は取っておく。
女性としても不意を打たれてまだ気が動転しているのかも知れない。

紅月 > 「うん? んー…大丈夫~。
……まぁ、おにーさんが襲ってこないならだけどー…?」

むくり、と起き上がる。
くしくしと目を擦り、コテン、と首を傾げて。
…どうやら少々寝惚け眼、そしてやはりユルい。

「…で、どしたの?こんな山奥に。
迷子?それとも探し物?
…あ、おふろ入る?」

コテリ、反対側に首を傾げて問う。

ブレイド > 「……襲わねーよ。
てか、襲われるぞ。んなとこでゴロゴロしてたらよ。
この辺、知らねーのか?山賊だっている辺りだぞ?」

むしろ自分が山賊やら何やらだったらどうしていたのやら。
大丈夫ですむような状況にはなってなかっただろうに…。
ゆるく見えて、よほど腕に自信のある達人なのだろか?
いや、達人であったとして、あの状況から襲われてひっくり返せるほどの腕を持ってるとしたらお目にかかりたいものだ。

「それはこっちのセリフだ。
オレは依頼できてるんだけどな。あー、冒険者なんで…。
探しものではあるんだけど…てか、自然に風呂を勧めるなよ。
襲う襲わねぇって話の後に…」

このクソ熱い中、藪を切り払いつつの採取作業。
相手には悪いが、機嫌がいいようには見えないかも知れない。
だが、相手の対応には更に眉間のシワを深くする。
だめだ。これ、疲れるタイプのやつだ。

紅月 > 「んー、知ってる知ってる。
来る途中で砦いっこ潰してきたから大丈夫だと思うよ~?」

相変わらずポワポワとユルい調子…が、しかし、何とも物騒なセリフをポロリと。

「いやぁ、私はほら…見てのとおり秘湯を満喫しに、ね?」

温泉浴衣、手拭い…確かに装備は湯治でもしていそうな其れではあるが。
…何とも破天荒な湯治である。

「うんうん、知ってるよ~?ミレーの冒険者さん。
…そうだなー?
『こう見えても俺、一応冒険者だからな…困ってんなら手ぇ貸すぞ?』
『俺、ボチボチ強ぇから!』
…なぁ~んつって?」

ニコニコと笑って…次いで、悪戯っ子のようにニィッと笑ってみせる。
凄まじく、そりゃあもう凄まじくゲンナリしている彼にお手伝いの申し出と…ついでに、己の正体のヒントを。
覚えててくれたら嬉しいな、なんて…淡い期待を込めて。

ブレイド > 「そりゃ頼もしい」

達人の方だった。
でたらめに強いやつというのはどこにでもいるもんで、そういうやつは大体一般的な思考から少しずれている。
やや呆れ気味に答えて肩を落とすのだった。

「そうだな。湯治に来てるようにしか見えねぇってのは確かだ。
こんなところでなけりゃぁよ」

確かに装備はその通り。だが、場所が場所だ。
まぁ、達人であればこんな装備であっても大丈夫なのかも知れないが…

「……あー、ご存知で……オレも有名になったもんだ。
名前が売れるこたーしてるつもりはねーんだが……」

何故か自分を知っているらしい。しかもミレーであることまで。
そこまで知れ渡っているとは流石に考えづらいものだが。
なにせ、自分がミレーと知っているものは、基本的には信用できるものばかりなのだから
などと、訝しんでいれば、相手に投げかけられた言葉…

「……アンタ、アカツキの……?」

知り合い?仲間?姉?妹?
聞こえた言葉は以前自分にかけられた言葉。
あの状況でのセリフまで知っている、というのがやや引っかかるが…
関係者であることは間違いなさそうだ。

紅月 > きょとーん、と。
まさか、本当に、覚えていてくれてるとは。
たっぷり数拍呆けて、ぱぁああっと目を輝かせる。

「…うん、うんっ!
そうそうアカツキの、女の時の姿だよ!」

実に、実に嬉しそうな笑顔での爆弾投下。
胡座をかいて、けれど見えないように一応股は押さえつつ…少年を見詰める垂れ気味な瞳は紫、髪色は独特な紅色、人懐っこい笑顔。
特徴は同じ、ではあるだろう、一応。

「何見せたら証拠になるかなぁ、三味線?
いやでも楽器に湿気はなぁ…?
したら鉄扇と大太刀?」

いつぞ、報酬の話になった時のように…おもむろに腕を虚空に突っ込んでゴソゴソと。
…結局鉄扇と大太刀の両方を取り出して、ブレイドに見せる。

「…あいよ、本人です」

ブレイド > こちらの言葉に相手はキョトンとしていたが
今度は相手の答えにこちらがキョトンとする番。
呆ける時間はこちらのほうが長いが。
むしろ、混乱は増すばかりなのだが。

「なんて?
いや、胡座はやめろ、やめろ…」

女のときの?
男の時と女の時があるのだろうか?
などと考えるところ、女性は危うい座り方。目をそらしつつも、彼女と彼の特徴を思い出し重ねる。
なるほど、特徴は噛み合う。性別以外は。
訝しむ間もなくあれこれと動くものだから、混乱は増す一方。
なんかよくわからない場所に手を突っ込むのも一緒。
そして獲物やら何やらも。まぁ、本人なのだろう。

「おう、わかった。わかったから…とりあえず落ち着かせてくれ」

次から次と投下された爆弾で頭の中は滅茶苦茶であるが
なんとか理解にたどり着いた。
あくまで、彼女がアカツキであるという理解ではあるが。
それ以上理解しろと言われれば、一息だってつきたくもなる。

紅月 > 何だか切実そうな声で姿勢を注意されてしまった。

「ぇえ~?胡座らくなのにぃ……
…いやこれ岩の上で正座はキツイんだけど、足湯してていい?
ってか、するねっ!」

仕方ないから別の…座り方は物理的に痛そうだったので、足湯再開。
無防備全開でブレイドに背を向け、温泉に足を浸す。

「…訊きたい事、あったら訊いていいよ?
言える範囲で教えてあげる」

ぱちゃぱちゃとお湯を軽く蹴りあげ、鼻唄混じりに水面を鳴らして遊びながら…背中越しにそう話し掛ける。
混乱している彼には、情報を与えるより質問させた方が色々飲み込めるだろうと。

ブレイド > 言葉遣いは違うものの、性格自体にあまり変わりはなさそうだ。
強さからの余裕か。こちらを男としてみていないのか。
そもそもそれすらどうでもいいのか…足湯を再開する彼女に頷きつつも荷物を一旦下ろす。

「楽なのはいいけど目のやり場に困るっての。
しかも、男としてあったアンタが女で…そんなかっこしてたら
なんか、こう、どうすりゃいいのかわかんなくなる」

わかってはもらえないだろう、おそらくは。
自分でもよくわからないこう…モヤモヤとした感覚。
言い表せないような複雑な気持ちというべきか。

「ききたいこと…っても…
あー…三味線の時、なんで男の姿で女のかっこしてやったんだ?」

どっちにもなれるならそれこそ女の姿でやればよかったものを…
楽しそうにはしてたから、気にはしていなかったんだろうが、少しばかり気になる。
最初の質問としてはあまりにズレているかもしれない。

紅月 > 「あっはは、確かに落差は激しいやなぁ!!
もう一人のダチにも同じ反応されたわ!
…あっちと同じくらい鍛えたいんだけどさ、こっちの姿だと必死に鍛えても筋肉ついてくれないんだぁ……」

ケラケラ愉快げに笑っていたかと思えば…楽しげな背中が、哀愁漂う背中に。
とりあえず…この珍現象を目にしたのはブレイド一人ではないようだ。

「…んぁ?
……、…あー、えっとだな。
初回は純粋に『男の花魁が見たい』っていう依頼主の意向だったんだけどさ…?」

ブレイドの質問に思わず振り返り、また湯に顔を戻し…微妙に答えにくそうな間をあけつつも口を開く。

「仮に、女の姿で花魁したとする…で、お貴族様達の前で演奏するとしようか。
……まぁ、良くて御手付き、悪けりゃ監禁されるよね、っていう」

とどのつまりは、全力の"自己防衛"である。
過去に色々あったが故に、基本的に貴族という生き物を信用していないのだった。

ブレイド > 「落差っつーか…いや、なんだろな…
どうしていいかわかんなくなんだろ。
女として接すりゃいいのか男として接すりゃいいのか…
アンタはどっちも自分だからカンケーねーのかもしんねーけど、オレたちみてーなのはそうもいかねーんだよ」

どっちであれ友人として接するならばあまり関係はない話なのかもしれない。
だが、同じ友情であっても同性と異性では距離に差が出るのもまた事実。
例えばこの温泉が普通の温泉だったとして、アカツキであれば一緒に入って背中を流し合うこともできるが
『こちら』の姿ではそれはできない。

「そっか…まぁ、そっか。
その判断はわりと正しいかもな。つか、男のままでも捕まんなかったのはわりと運がいいと思うぜ?」

男の花魁…女装した状態ですら、ちょっとした艶やかさがあったくらいなのだ。
趣味が倒錯した貴族が相手なら、女であっても男であっても関係なかっただろうに。
それでも、女の姿であるよりかは可能性は低かっただろう。

「あと、次の質問…つーか…えーと、結局どっちとして接したらいい?」

紅月 > 「ふふっ、そりゃそうだ!
私としては演じ分けてるだけだもんよ…ただ、多少肉体に引っ張られて誤差が出たりはあるね。
父上の熱い希望で娘として育てられはしたけど…どちらとしても生きられるよう、上手く使い分けてる」

いっそ半陰陽ならまた違ったのだろうが…己の場合はしっかりと"どちらか"である。
そりゃあ健全な男子なら困ることも有ろう…視界的に。
触り心地も違うし。

「それな…一度、悪徳貴族と魔薬密売人の一斉摘発に……ギルド経由で『敵ボスへの餌兼スパイ兼客寄せパンダ』として使われた事があるんだよ。
それ以来、おっかない人は警戒して寄ってこないんだよね」

悪人こそ警戒心の強いもの…余計なリスクは避けたいのだろう。
ただのゴロツキなら、それこそ腕っぷしで伸すし。
…いやはや、平和ってスバラシイ。

「…へぁ?
あ、あー……うむ、確かに。
…ブレイドはどっちがいい?男と女。
選んでくれていいよ、今までもそうしてきたし…どちらでもあると知っても普通に寝たいって求めてくる奴もいるし、好きずきだろうから。
…なんなら、どっちとも接してみてから決めてくれてもいいしさ」

再び、思わず振り返る。
…けれど今度は足を揃えて横座りし、真っ直ぐにブレイドを見て話す。
「好きにすればいいよ」と、首を傾げてみせて。

ブレイド > 「器用なもんだな。
別に構わねーけど…その姿で男ーって感じで接してもらっても困るしな。
『娘』であるアンタが、もとからのアンタなら…むしろオレが考えを改めるべきなんだろうが」

現に先程目のやり場に困ったところだ。
このまま男のように暑いからともろ肌を開けようものなら、今度はこちらが背を向けることになるだろう。
まぁ、うまく使い分けているというくらいだから…
男女どちらの心の機微も理解していることだろうが。

「成功してるならいいようなもんだけどもよ、ひでー扱いだな。
ま、安全だってならいいんだけどさ」

彼女の言葉に眉をしかめる。依頼を行ったのはアカツキの姿でなのだろうが…
ギルドもひどい仕事を回すものだ。
冒険者は便利な道具…という認識は間違っていないが、道具は道具でも感情のある道具だ。
それをないがしろにするような仕事にはあまりいい顔はできない。
本人は気にしていないようではあるが。

「は?選ぶって…オレが?」

振ったつもりの選択権をこちらに回され
少し素っ頓狂な声が出てしまう。

「バカやろー…そういう時、そういう例をだしてくるんじゃねーよ。
『女』って言ったら、オレがアンタを抱きたいって思ってるって思われてもしかたねーじゃねーか…」

カシカシと頭をかきつつ困ったような表情。
まっすぐみられると、少しばかり調子が狂ったような
そんな顔で見つめ返して

「さっきアンタが言ったように『娘』であるアンタが本来のそれってーなら、女でいい。
別にオレの前で演じる必要はねぇからさ。
どっちでも同じってなら、それこそアンタの好きなように…その日の気分でいい
男の姿だったら男として、女の姿だったら女として扱う。
でもなんだ…男のときでも肌を見せ合うのは流石に勘弁してくれよ?
人が違うってわけでもねーんだろ?」

最後の方は少し冗談めかして。
まぁ、少しクールダウンできただろう。
判断としては冷静な答えを出せたと思う。

紅月 > 「んやぁ、あん時は本当に切羽詰まってたみたいよー?
何気なくギルド行ったらギルマス直々に来て、会議室行ったらゴリッゴリの強者です~ってな冒険者がゴロゴロ居るんだもん。
依頼そのものよか、会議室のが怖かったわ。
それに私、治癒術師だし…結構死ににくい体だから、へーきへーき」

ギルドマスターが変人なのは間違いないが、自分自身それなりに自信が…というか、多少切り刻まれても死なない自信がある。
手駒とするにはもってこい、というより…他に出来る人材が居なかったと言うのが正しいか。
その結果、この国がヤク中にならずに済んだのだ…ちょっと痛かったくらい、安い安い。

「中身はひとつ、性別がふたつ…ってか、私が純粋な精霊族だったら性別選んで固定出来たんだよ。
…けど、私……鬼神と精霊の混ぜ物だから、色々歪んでる成り損いでさ。
まぁ、その辺知った上で抱けるって言うなら…そりゃあ考えないでもないさね。
この国だとそういう"オトモダチ"が普通みたいだし?」

この際だから言ってしまおうと、サラッと流すように異種族です発言。
正直ずっと引っ掛かってはいたのだ、己だけ種族を明かさないのはフェアじゃあないだろうと。
胸のつっかえが取れて、内心凄く清々しい気分である。

「……そうさな、どれでもいいって言ってくれるなら…気紛れが一番気が楽だ。
どっちも"私"だもん。
街では暴漢対策に男で居ることも多いけど、海とか山とか…普段は女でいる事が多いかな?」

事前に話しておいた方が心の準備も出来るだろう。
ザックリとした大体の男女内訳を話して。

ブレイド > 「死ににくいと痛くねーは別だ。死ににくいからどう使ってもいい理由なんてねーよ。
そりゃ事情はあったかもしんねーけどさ」

へーきだと本人が言うのなら自分がどうこう言うのはお門違いなんだろう。
裏でどんな事があって、どんな危機が迫っていたかはしらない。
そして、彼女のことも殆ど知っているわけではないが…知り合いをそのように扱われて面白いはずもない。

「へー、いろいろあんだな。
成り損ないは余計だけどな。成って在るからここにいて、話せるんだろ?
ま、そりゃいいや。
だけど、間違いはきっちり正させてもらうぜ?
抱けるだけないとかじゃなくて、そういう『オトモダチ』が普通だとおもってんなら
オレは普通じゃねーし、普通じゃなくていい。全部それだと思われても困るってもんだ」

情交を交わすのが当然のように言われれば少しばかり不機嫌そうに。
この国ではそういうところもあるだろう。自分だって、友情を感じた女性と関係を持ったことだってある。
だけど、友達としての好意がそこに直結するわけではない。
それこそ腐敗し爛れたこの国の『文化』のようなものだろう。
そして、自分はそんな文化に染まりたくはない。

「じゃあそれで。どっちもアンタだ。
で、オマケにもう一つ。
アカツキは男の名前だろ?女のアンタはなんて呼べばいい?」

彼女がそう思うのならばそれがいいだろう。
だからこそ、最後に確認するように質問を付け加えて。

紅月 > 一連の、彼の答えを聞いて思うところと言えば。

「……、…ブレイドって、マグメール人じゃないみたい。
若いのに、すぅーっごくマトモだわ…種族の事も気にしないしさ、逆にビックリしちゃった」

心底驚いたという表情を隠しもせず、ポカーンと。
いっそ脱力すらして。

「…普通じゃない仲間がいてくれて、良かった。
私、異界から来たマレビトってヤツだからさ…この国で暮らすなら『郷に入っては郷に従え』なのかなって思ってはいたんだけど、差別とか奴隷とか、なんかイマイチ馴染めなくて」

ふわり、張りつめた気がすべて緩んだような穏やかな笑みを浮かべ…嬉しそうにブレイドを見詰める。

「…私は、コウゲツ。
異界の東国にては紅の月と書きまする。
男の名は、同じ文字の読み方を変えたもの…コウともコウゲツとも、御随意に。
……これからも宜しくね?ブレイド」

穏やかに笑んだまま、スッと正座に姿勢を正し…きちんと、名乗る。
そうして緩やかに右手を差し出そう…握手を求めて。

ブレイド > 「オレは元々ミレーの里育ちだからな。
それに種族のことなんてむしろオレのほうが気にするところだろ?ここじゃ、さ。
だからって、縮こまって、怯えて、顔色伺ってくらすなんてのは嫌なんだよ。
そのために王都に出てきたんだ」

ふんすと鼻息も荒く胸を張る。
ミレーであっても卑屈になりきれず、むしろ名を挙げて見返す心算。
マグメール人の中でも変人の部類であることは自覚している。

「オレはむしろそうされる側だからな。馴染んでもらわないでいい。
この国の『普通』に染まったやつなら、そもそもミレーってバレた時点で…。
そんなオレが、この国の『普通』に飲まれて、アンタを蔑ろにしたり、女の姿に意馬心猿なんざ
かっこわるすぎるだろ?」

ここまできて、ようやく笑顔が漏れる。
混乱も緊張も、わだかまりのようなものも解けて消えたような表情で。

「おう、よろしくな。
アカツキでもコウゲツでも…それこそ『仲良く』してくれよ?」

名乗られれば頷き、差し出された右手をとる。
あらためて、隠し事もなく結んだ晴れやかな友情の証にと。

紅月 > 「…うん、やっぱり色々明かして正解だった。
ブレイドのような真の戦士を、紅の一族は尊びまする!」

胸を張るブレイドに嬉々として拍手をおくる。
難に臨みても退かぬ者は、皆、立派な戦士である。

「あいな、是非に…この国の其れではなく、揺らぐ事無き"紅にとって"の友としてっ!」

腹を割って話せる真の友が増えた事の、なんと心強い事か。
嬉しくて仕方がないといった表情で、両手でブレイドの手を包む。

包んで、不意に顔を伏せて小さく震える。
バッと顔を上げた紅月の顔は真剣そのもので。

「……と、いうか…!
ホントにもう、どんな鬱拗らせたらこんなに愛らしい種族を虐げる発想に至るのかっ!!
わっけわかんない、こんなにモフモフなのに!モフモフなのに~っ!!」

ブレイドの手を軽くバランスを崩す程度の力で急に引けば、ガバァッと豪快にブレイドに抱き締めようと。
…この突拍子の無さがまさにアカツキらしいというか、何というか。

ブレイド > 「はは、買いかぶり過ぎだって。
現実が認められねーだけのただのミレーのガキだよ。
アンタほど強くもねーし」

喜んでもらえるのは素直に嬉しいが
少しばかり恥ずかしくもあり
照れた様子で頬を掻く。
両手で差し出した右手を包まれたまま笑って見せて。

「へへ、そりゃよかっ…た!?」

友としての態度を見せるその前に…なんか抱きしめられた。
再び混乱しつつも、のがれる事もできず『!』と『?』を表情に出したままに
されるがままの状況。もふもふ?もふもふとは?
とかおもいつつ、バランスを崩した際に落ちたフードに隠されていた猫の耳がパタパタと動く。

紅月 > 「物理的な強さなんてぇのは、適した部分を適した鍛え方で鍛練し…後は適した技を磨けば勝手に備わってきまする。
…心は、そうはいかない。
真っ直ぐな心で居続ける事は、実に難しゅう御座いまする」

お気に入りには甘い紅月ではあれど、武人としての心得だけは互いの為に甘く出来ない。
ユルい空気はどこへやら、しっかりと言って。

けれど、そんな真面目な空気も紅月自身の気まぐれによって霧散する。

「……ぁあん、ぴこぴこ艶々のお耳ぃ…!」

動揺を表すかのようにパタパタ動く猫耳にうっとりと。
片腕でブレイドを抱き締めたまま、そっと優しく包むように触れ…耳の縁を親指でなぞって。

ブレイド > 「カタイのかユルいのか…どっちかにしてくれって!?
ちょ、なんかっ!撫で方っ!?」

紅月の言いたいことはわかった。
わかったが、抱かれて撫でられうろたえる自分は
心も体も紅月に圧倒されており、情けないことこの上ない。

「アンタも大概よくわかんねーな…うぐー…」

振りほどくわけにもいかず、されるがまま。
というかそんな薄着でそんなに密着されては…割と大変なことになりそうである。
さっき自分で言った手前、雄としての本能はなんとか押さえつける必要がある。

紅月 > 「えへへ~、じゃあユルい方ー!
いいなぁいいなぁ、欲しいなぁ…もっふもふ。
あー、でも…自分に付いてたら楽しくないし、やっぱりブレイドのカッコ可愛いお耳がいいや~」

はぎゅ~っと、なでなで。
ひょっとしたら温泉よりも癒しタイムである。
はふぅ、とため息を吐きつつ…しまいにゃ猫耳に頬擦りまでし始める始末。

…胸がブレイドの顔の前に来てる?
知ったこっちゃありません、男の姿じゃ無理なんだから今モフモフを堪能せねば!

「紅ほど分かりやすいのも少ない気がするけどなぁ…やりたいからやる、だもの」

クスクス、と、笑って。

ブレイド > 「ばかっ!ばかかっ!?お前っ…
あーもー…くそ……ほんと、ばかやろー…
かっこつけたのが台無しだ…」

耳に頬ずりされれば胸に埋まるのもまた必然。
そしてこちらは年頃の男子。
いろいろと仕方のないところはある。あるのだが、あまりにも情けない。
情けなくもあるが仕方ない。いろいろ反応してしまうのは。

「そうかよ…」

やりたいからやるならば、おそらく、やりたくなければやらない。
つまりは、満足するまではこのままだということ。
クスクスという笑い声が耳をくすぐれば、少しだけゾクリと腕の中で震えたり。

紅月 > 「ミレーさん達を愛でられるならバカでいいも~ん…いやぁ、ブレイド毛艶いいわぁ……
ん、男の子はカッコつけてナンボだけど、紅にまでキリッとしなくていいじゃな~い」

目の前にあるから気になる。
…互いに思うことは同じであるのに、こうも意味合いが変わるとは愉快なものだ。
無論、何ぞ元気になっていようがお構いなしに猫耳を触ったり揉んだり髪を弄ったり。
じっくりキッチリ遊び尽くして。

「あー、満足…暫く分のモフモフぱわー補給できたわ。
疲れも飛んでった気がする…否、飛んでった。
…あ、お礼に何かお願い聞いたげよっか?」

つやつやキラキラ…そりゃあもうイイ笑顔でブレイドの肩をポムッと叩く。
そしてまた、ユルい笑みを浮かべて首を傾げて。

ブレイド > 「そういうことじゃなくて…少しはだなぁ…」

この国の『普通』に染まるを良しとしないと言った矢先にこうなってしまうことがよろしくないわけで
キリッとかっこつけたいわけでもないのだ。
元気にさせられた上で、耳をいじられもふられいいようにされて
顔も真っ赤に、終わった頃にはもうクラクラと足元もおぼつかない。

「…………とりあえず…放してくれ…」

ご案内:「九頭龍山脈 山中」から紅月さんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山中」からブレイドさんが去りました。