2018/06/26 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にアークデーモンさんが現れました。
アークデーモン > その小さな泉は小さく光を放って夜に浮いている。
傍らに、背の高い白皙の青年が佇んでいる。
やや興味深そうに泉を眺め、薄いレースのような光が周囲を照らす。

「これは珍しい」

錆びた、若くとも年寄りともつかぬ声が呟いた。
病気じみた顔色の悪さは気にせぬように光に顔を向け飽きぬように眺める。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に紅月さんが現れました。
紅月 > ーーーざ、ざっ、しゃら…

その日、1日ゆっくり散策した帰り道の事だった。
酒場にも顔を出して、本当に随分とゆっくりしてしまった…王都に戻るのは朝になるか、野宿でもしようか、そんなところ。

…ふと、思い出した。
この辺りに『魔力を伴う水が湧く小さな泉』があるらしい、と。

これは是非真相を確かめねば…好奇心が疼く。

そうして山を分け入って、ひたすら気の向くまま…夜空の星を頼りに大方の方角に見当をつけ、真っ直ぐに噂の辺りへと進んでいく。
そこに先客がいるなど、欠片ほども想像していなかった。

「……、…ん、何だろ、何か光ってる…?」

ようやっと見付けたそれはとても神秘的で…すっかり、見惚れてしまっていた。

「凄い…綺麗……」

アークデーモン > その音と気配は隠すつもりもなさそうな無防備さが滲んでいた。

そちらに顔も向けず、泉を眺め続ける。
泉の水面に何が見えているのか、興味深そうな様子が衰える様子は無い。

「見惚れ過ぎるのは良く無い」

相手が気づいているのかすら無頓着そうに、男の声が少しばかり偉そうに注意を促した。
だが、自分は全く視線を逸らすつもりはなさそうに。
白い、指先がローブの下から覗いて、泉を指した。

「それともこれを拾いに来たのかね?」

呟くように問うて、漸く視線だけを僅かに来訪者へ向けた。

紅月 > 「…っ!
わ、っ…ビックリしたぁ……」

不思議な音の声が響く…若いとも、オジサマとも、判断しかねるような。
ビクゥ!!っと、飛び上がりそうな程に驚き、ようやっと男に気付く。
目を向ければ…青年、だろうか。
貴族然としたローブとマント…普段はあまり外出してなさそうな白い、整った横顔。

「あはは、今晩は。
…え、コレ拾えるの?」

相手の注意云々よりも先に興味が前に出る。
未知に魅入られ、つい夢中になってしまうのは…それこそ幼い頃よりの悪癖で。
タタッと軽い足取りで男の隣まで来ると、やはりしげしげと泉を眺めて。

「私は、単に『魔力の伴う水が湧く』とやらの噂を聞いて、見たくなって…言ってしまえばお散歩かなぁ?
お兄さんも、見物?」

アークデーモン > 気づいていなかったようだ。
此方の掛けた声には存外のリアクションが見れた。この夜を歩く割には。
縦に割れた瞳孔が珍しげに来訪者を眺めた。

「拾いに来たので無いなら、コレを拾うべき者に譲ってやるといい」

質問にはやはりやや偉そうな口調で応じる。
隣に近寄ってきた姿を泉を見るのと同じ視線で珍しげに眺めながら。
噂を、という言葉に僅かに首を傾けて小さく頷き、そして相手を見て、首を振る。

「もう、人に知れているなら遠くも無いだろう。
 そのうち、誰ぞ拾いに来る。見るなら今のうちだ」

と、泉と傍らの女を交互に眺める。どちらにも変わらぬ量の興味の色。

「私は、声が聞こえたので訪ねて来た。お前にも聞こえないかね?」

再び、泉を指差し。
その声が届くなら、人々が「願う」数多の声が入り交ざってざわざわと耳に聞こえる。
届かぬならば、夜の静寂が耳を覆うだろう。

紅月 > ふむ、この泉には『拾うべき者』がいるらしい。
きょとん、彼の言葉に不思議そうに首を傾げる。

貴族然とした口調は、親しい人間がまさに貴族だからか慣れてしまっていて…よくも悪くも物怖じしない。
…どころか、女の側も男を興味深げに眺めている。
単に博識なのか、それとも魔法使いの類いなんだろうか…こんな夜更けに物好きだなぁと、自分の事は棚に上げて。

「声?声……、…あっ、本当だ、何か…
……嗚呼、うん…凄いねぇ、想いの欠片がこんなに沢山。
過去のヒトか、それとも今のヒトかまでは判断できないけど…うん、なんかイイなぁ、こういうの」

泉を指差されれば、そちらに耳を澄ませる…すると、小さくざわめく音。
試しに、自身の能力を制限する耳飾りを外してみれば…若干賑やかなくらいにざわめいて。
ぱちくりと目を瞬かせ、ほぅ、と息を吐く。

金に滴型のガーネットがついた耳飾りを指先で弄びつつ、穏やかな笑みを浮かべて泉を眺めた後…そのまま再び男を見て。

「…お兄さんは、いいの?
大方『願いを叶える』とか、そんな感じの自然現象なんでしょう?」

アークデーモン > この気配の持ち主ならその声も聞こえるだろう。
興味深げな視線を遠慮なく相手に注ぎ、角に目を留めたところで女の言葉に視線を戻した。

「…成る程、そう聞こえるか」

女の感想にやはり興味深げに頷いて泉を一瞥し僅かに思案顔を見せ。
耳飾りを外した姿に、僅かに瞳孔を太くし、目を細め、納得したように頷いた。
そして、問われるのには、僅かに動きを止め、まばたきをして不思議そうに見返した。

「…?」

そして、思い至ったように頷いて口を開いた。

「私は願いを叶える立場の方だからな。
 …願いを叶える。確かにそうだ。自然現象でもある。
 古来よりの泉に、新月の夜と満月の夜に流れ星が泉に落ちるとその”流れ星”は、
 願った人々の思いを宿して、地にある星になる」

三度、泉を指差し。

「泉に魔力を与えているのはその星だ。
 星は、宿った力に急かされて、願望を成就したい者を呼び寄せる。
 拾った者は、莫大な力を得ることになるだろう。
 聞いたことはないか?流れ星を捕まえ、契約して魔力を得る魔法使いを」

言葉を切って反応を伺うように相手を見る。

「代わりに、心臓を食わせることになるらしいが。
 そうして、人間の手によって我らの同胞がまた一つ、この世に生まれる。
 その際に立ち会うのは流石に珍しいことで、興味深い」

何処か満足気に一気に言葉を吐いた。
僅かに、ほんの僅かに早口なのは興奮しているのかもしれないが表情は変わらない。

紅月 > 「……、…成程、そっか。
ふふっ、やっぱり私には…この子は貰えないなぁ。
いやまぁ心臓無くなったところで弱点が一つ減るだけなんだけど、凄く痛そうだし…喰う事はあっても、喰われるのは、ちょっと」

すっかり語り部となった彼の声にじっくり耳を傾けようと、再び耳飾りを着けて…子供のように目を輝かせて聞き入る。
しかし少々残念そうな表情をしては、やはり泉を諦めるのだ。
一応、まだ心臓とは一緒に旅をしたい。
弱点が煩わしくなったらお世話になろう。
泉を眺めつつ苦笑しながら、そんなことを考える。

「命の産まれる瞬間…か。
いいなぁ、そりゃあもう確かに…ゾクゾクするくらい、興味深い」

胸の下で己が身体を抱いて、うっとりと息を吐く。
魔族同士の交配ではない、自然発生の魔族の誕生…否、創造と言っても過言ではない瞬間。
精霊族のそれは見たことがあるが、魔族のそれは見たことがない。

…そこで、はた、と気付く。
叶える立場、とか、我らが同胞とか、言わなかったか。

…もう一度、男を、じっくりと、視る。

「あー、成程…魔族の方でしたか。
道理で博識な訳だ」

アークデーモン > 一方的な物言いに近い説明だが、やはり理解したようだ。
その眼と耳があれば、判るだろう。

「心臓が無くなっても平気なら気をつけておけ。心臓と一緒に別のものも食われるそうだ」

白い顔にひっそりと嬉しげな笑みを浮かべて。

「心の一部とか」

黙っておけば良い事を口にしたのも話を理解できる聞き手、だったからか。
自身を抱きしめるように呟く言葉へ応じるように続けたのも。

「今は、まだ、ただの星。
 概念か無機物か難しいところだが、それを”急かす”人間の欲望の凄まじいことよ。」

そう、言いながら僅かに満足気な様子が覗く。
女が此方を見て、気づいたように言葉を漏らし、じっくり視線を向けるのに漸く我に返ったように。
そちらへ視線を返して。

「魔族であることは確か。だが、果たして何処の誰か自分でもわからぬ。が、まあ良くあること」

傲岸不遜に自分の前後不覚を言い放つと彼女をもう一度、興味深げに眺め。
片手を振ると、空気が爆ぜる音で夜の静寂を焦がして炎の鞭が現れる。

「お前は色々な意味で美味そうであったが、戯れるには色々と骨も折りそうだ」

炎の鞭はゆらゆらと魔族の全身を縁取るように覆うと、焚き火に薪をくべるような小気味良い音がして。
ぱちぱちと空気の爆ぜる音がする割には一切の匂いはもたらさずに男の姿を燃やしてゆく。
炎に彩られて顔だけが宙に浮かんで。

「次に機会があれば是非、お前を食させて貰おうか」

冗句にしては趣味の悪い言葉を残すと炎は最後にもう一度爆ぜて消え失せた。
夜の静寂が瞬時に戻って辺りを覆う。小さな泉が光を静かに撒き散らす風景に戻った。

紅月 > 「へ、別…?
……、…あー、それは、ちょっとなぁ」

心臓も心も『ハート』…成程、それはそれは。
嫌な罠を仕掛けてくれたものだ。

「そう、ねぇ…私としては『ただの星』のまま拾えたら欲しかったんだけどな。
人間の欲望は、果てが無いから…だからこそ可能性の獣足り得るんだろうけど。
…興味は、尽きない」

愉しげに語る、男と女…それだけ見れば和やかですらあるのだろうが、その内容は禍々しい事この上ない。
女にしては珍しく…男の『闇』に、感化されているようで。

男に元の肉体の記憶がないとわかれば、おそらく彼は景色を映し出すための影なのだろうと…やはり、理解して。
こくり、と、頷いてみせる。

「ふふっ…簡単には、喰われてあげない」

相手が炎を扱うとわかれば、同じ炎使いとして少々親近感も湧く。

「…またね、名も無きアークデーモンさん」

ニィ、と、その服装には似つかわしくない好戦的な笑みを浮かべて見送る。
面白い遊び相手が出来たかもしれない。
また、何処かで会ったならその時は手合わせでも頼んでみようか。

「さぁて、私もボチボチ帰るかねー…たまに、見にこよっと」

女は泉に背を向ける…すっかり、泉よりも謎めいた男に興味が移ってしまったようだった。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からアークデーモンさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」から紅月さんが去りました。