2017/12/25 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にリュシーさんが現れました。
■リュシー > (秘湯と名高い温泉宿へ向かう街道の道端に、ぽつりと転がる片方だけの靴。
傍には一台の馬車が止められており、金を掴まされた小太りの御者が一人。
そろそろ出発しなければ、宿につく前に陽が落ちる、と、何度目かの溜め息を吐いていた。
がさがさ、がさがさ。
街道を挟んで左右に広がる、丈高い草に覆われた荒れ野原のそこここに、
転がり落ちた―――否、みずから転げ出た「積み荷」を探す男たちの気配。
もうひとつの靴までも脱ぎ転がし、更に数歩、這うように進んで縺れこんだ叢の中に、
探しもの、かつ、積み荷であった「少女」の姿はあった。
両腕で膝を抱えこんで座り、じっと息をひそめている。
体調不良を訴えて、湯治を主張したまでは良かったけれど。
逃亡計画はずさんに過ぎて、見つかるのも時間の問題かもしれない。
けれどもしかすると、いちばん恐ろしいことは―――
寒空の下、誰にも見つからずに放置されてしまうこと、のほうだろうか。
陽が落ちたなら、こっそり街道へ戻ろうかとは考えているけれども、
それも、捜索隊が諦めてくれたら、という条件付きである。)
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にマヌエラさんが現れました。
■マヌエラ > 隠れ潜むリュシー。その背後から、手袋に包まれた少女の両手がぬっと突き出た。
リュシーの頭部を抱き締めるようにして腕を回しながら、掌はその口元を押さえ、声を出せないようにしようと。
「しーっ。静かに。キミ、隠れてるんでしょ?今、結界を張るから」
同時に耳元で囁かれる少女の声。物音ひとつしなかった。いつどこから現れたのかは定かではない。しかしその息遣いと、包み込むような身体の体温は本物だった。
■リュシー > (ひとの気配だとか、ひとでないものの気配だとかには、相変わらず疎い。
だから背後に迫る誰かの気配にも気づけなかったし、伸びてきた腕は完全な不意打ちだった。
びくりと身を震わせ、大きく目を見開いた時には、小さな頭は彼女の腕に抱きこまれ、
口許はしっかりと白い掌で覆われていた。)
っ、――――ん、ぅ………!?
(確かに隠れているし、見つかりたくはない。
けれどだからといって、背後から抱きこむ腕の主を、手放しで信じることもできなかった。
咄嗟に両手で彼女の腕を掴み、引き剥がそうと小娘そのものの力で抗いながら、
じたじたとぎこちなく足をばたつかせる。
物音を立てないように、という意識があるために、思い切った動きはできなかったけれど)
■マヌエラ > 「大丈夫」
囁く声は、かすかに幼く、明るさを備えた少女のもの。
その唇が更に動いた。
その時響いた小さな音は、決して耳障りでもなければ何か不快な語彙を用いているわけでもない、無意味な音の羅列。
だが、それは聞かないほうがいいものだと生理的に理解できるような、人間の声帯からは出るはずもないもので――
しかし、その一瞬が終わると少女は手を離して、にこ、と笑った。
「もう大丈夫!向こうからこっちは認識できないよ、お嬢さん」
友好的で明け透けな笑顔を向けた。