2017/04/15 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にシノさんが現れました。
シノ > 九頭龍山脈のそれなりに深い山中、数台の馬車が走っていた。
荷台となるべき場所が鉄格子のようになっており、何かを捕らえ連れて行く為のものだと分かるだろう。
内の数台は空になっており、先頭の1台には少女達が閉じ込められていた。
人間ではない、ミレー族だと一目で分かる。
要するにミレー族達の集落を襲い、奴隷として捕らえた者達を運んでいるのだ。

「あらあら、話しに聞いていた通りですわね~?
それでは…お願い致しますの~」
『………分かっていた結果ではあるが、まったく…面倒事を…』

その馬車の走る上空、2つの影が近付いていた。
最初の呟きはぶら下げられた小柄な少女、後にぼやきを洩らしたのは、その少女をぶら下げながら空を舞う鴉天狗。
この少女の邸宅に主が居た為、この見付けた団体の報告をしに行ったのが少し前。
ならば、せっかくなので横取りしてしまいましょうと、この少女が意見したのだ。
どうせ先の未来が知れているなら、その方が良いだろうと。
主の回答は「好きにすれば良い」…という訳で、少女を連れて戻って来た。

シノ > 『では、行くぞ』

その言葉と同時に、少女をぶら下げられていた手がぱっと放される。
ちなみに、まだそれなりの高さだ、普通の人間ならば無事では済まないだろう。
少女は捲くれ上がりそうになるドレスの裾を抑えながら、そのまま落下して…ふわりと走る馬車の前に降り立った。
後に続き、鴉天狗の姿から人としての姿となった男も背後から現れる。

行く道を塞ぐように現れた2人組みに、馬車は止まる。
ぞろぞろと現れるのは、そこいらのゴロツキ…という訳でもないが、それなりの装備を整えた冒険者風の者達だった。
少女は気にした風も無く、抑えていた裾を摘み一礼する。

「お初にお目にかかります、私、シノと申しますわ~。
まことに申し上げ難い事ではありますが…」

言葉を掛けながら、上げる顔には楽しそうな笑顔。
とても申し上げ難い、とかでは無さそうではある感じだ。

「そこの…ミレー族の子達?私達が頂きますわね~?」

言葉を終え、ころころと口元に手を添えて笑う。
当然、相手からは怒声や吐き捨てるような暴言が並べ立てられる。
そんな相手の言葉にさえ、少女は意に介してないようだ。
それが決められた事と、そう言わんばかりに。

シノ > 『………所詮人間如き、我は必要ないな?』
「あらあら、か弱い女の子を1人置いていくなんて酷い方ですわね~?」
『馬車は邸宅に送っておく、連中は頼むぞ?』

後ろの男の言葉に、困ったような表情を浮かべるも、そんな様子は無視して姿を消す。
気が付けば、男の姿はミレー族達を積んだ馬車の荷台にあった。
相手の言葉を完全に聞き流す2人、怒り心頭に発したか、男達は武器を手に構え始める。

「先頭なので面倒が無くて助かりますわ~。
それでは、お願い致しますの~」

男は綱を手繰り、馬車を走らせ始める。
一部の者達が止めようと動こうとするが…なぜか、その足が地面から離れなくなっていた。
馬車は動けない、動かない者達の横を抜けて王都へと続く道を走り去ってしまう。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」にセイン=ディバンさんが現れました。
シノ > 「さて…」

走り去っていく馬車を見送った後、くるりと男達へと向き直る少女。
その表情は、相変わらず笑顔のままだ。
ただ、視線はゆっくりと男達を見定めるように流れていく。
僅かな間で、一部だった足を動かせなくなる現象が、男達全員に起こっている。
何をされたのか、何が起こっているのか、理解出来ない。
武器を構えはしているも、こうなっては少女が向かってこなければ攻撃も出来ない状態だ。

「う~ん………私と致しましては、今日はハズレ日ですわね~。
こういう日もありますのだと、諦めが肝心ですわ~」

ふぅ…残念そうな溜息と共に、呟く。
それならばと、少女は次の行動を起こす。
ゆっくりと男達へと近付き始めた。

セイン=ディバン > 普段であれば、静か極まりない山の中。
本日今宵、たまたまトラブルがあっただけのこと。
そんな変り種の一日。トラブルの渦中に飛び込もうとする男一人有り。

「さぁ、って。行こうかねぇ……!!」

自身を身体強化魔術で強化し、木を蹴り、飛ぶ、飛ぶ。
男が目指すは、人伝に聞いた、ミレー族奴隷商の交易ルート。
今宵そこを通る馬車を襲い、ミレー族を助ける腹づもり。
だったのだが……?

「っとぉぉぉ!! そこまでだクソタレ外道共ぉ!!
 大人しく奴隷を解放するならよし!! そうでないなら痛い目を……って、アレ?」

男が目標を発見し、そこに着陸し決め台詞を口にするが。どうにもおかしな様子。
よくよく見れば、奴隷商らしき男共はなにやら慌て、そこに一人少女が居て、余裕の表情。
……どうやらこの男。一世一代の大間抜けを晒したやもしれない。

シノ > やる事は一つ、己の持つ記憶操作で今日の奴隷狩りは不作だったとの記憶を植え付けるだけ。
それを行おうと、瞳に力を発する輝きが起こる、その瞬間。

予想外の事が起こった、突然の乱入者に、かくん?と首傾げてそちらを見遣る。

「私達の他にも情報の早い方がいらっしゃったみたいですわね~?
申し訳ありませんが、あなた様の目的の子達、私が奪ってしまいましたわ~。
それとも、私達がその腐れ外道とかになるのかしら~?」

あのミレー族達を解放する、との発言は同じ連れ去った自分達にも一応は該当するか。
見方次第では、元の場所へと返そうとせずに王都へと送った時点で同種のようなものなのだから。

ともあれ、少女の視線は新たに現れた相手へと向けられている。
男達と同じように、なにやら品定めをするかのような。

セイン=ディバン > 間抜けを晒したとはいえ、男も歴戦の冒険者だ。少ない状況情報から、男は現在の状況を把握しようと努める。

「……えっと。キミはこの奴隷輸送のヤツ等の仲間ではない、って感じだな?
 なら質問。キミの所属は? ミレー族の子たちをどうするつもりだ?
 ついでに、オレと敵対する意思はある?」

まずは目の前の少女への質問をしつつ……男は、散弾銃を取り出し、それをゆらり、と男たちへと向けた。
そのまま、無造作に引き金を引く。大きな破裂音。銃声。身動きの取れない奴隷輸送部隊の男が、二人ほど屍になった。
物のついで。男は邪魔者を消し去ることを、少女の正体を掴むのと同時に行おうというつもりらしい。

シノ > 状況の流れを無視するように、少女はぽんっと手を叩く。
その笑みは、よりその深みを増し…すぅっと瞳が細められた。
男達や、現れた相手にも分からないだろうが、当たりが現れた、との判断である。
そこらの並みの男達よりも、精力が強く美味しそうだ、と言う。

「奴隷輸送ですの…?う~ん、それは知りませんでしたわ~。
戻る場所も失わさせられた丁度良い子達が運ばれていたから、頂こうと思っただけですもの~?」

本人達を目の前に、さらりと言い放つ。
自らの言葉に、またおかしそうにころころと笑う。

「答えれる事だけを答えるならば、あの子達は私の元で生活して貰おうと思っているだけですわね~?
行く先が無いのですもの、その方が良いのではないかしら~?」

所属に関しては、正直どう答えたものか分からないので流した。
なので、まずは次に気にしているミレー族達の事についてを答える。
実際にあのまま連れて行かれても、助けたとしても、その先をどうするのかという不安はあるものだ。
まぁ…自分の住まう邸宅の維持にも一役買って貰おうという考えもあったりするが。

「で、敵対するかどうかは、あなた様次第ですわ~?
こんな場所を見られてしまったのですもの、あなた様も忘れて…ひゃあっ!?」

指を立てながら、続いての問いの回答を。
…と、その途中でいきなりの発砲に、素っ頓狂な声が上がる。
いきなりの大きな音だ、聴覚の良い自分には少々堪らない。

「それを撃つならば撃つと、一言欲しかったですわ~…?」

手で耳を抑えるようにしながら、文句と共にじとりと睨み付けた。
男達がどうなろうと知った事ではないのだが。

セイン=ディバン > 見ようによっては……、いや。見ようなど関係ない。
いまや山中の薄暗い道は、一触即発の最前線となっていた。
奴隷輸送部隊、謎の少女、そして男。その内誰か一人が変な動きをしても、状況は一変する。

「って、おいおい。知らないでこのヤロウ共に喧嘩売ってたのか?
 だとすりゃ相当肝が据わってるな、嬢ちゃん」

間の抜けた、手を叩く様子。そして次の言葉に男はやれやれと肩を竦める。少女の目が細くなるのには気付かず、相手の笑い声を聞けば、どこまでが本音の本気なのか、と見定めるように男は少女を見据える。

「ふむ。正直なこった……。
 その生活ってのは、ミレー族を虐待するとか、そういう意図はあるのか?」

答えられる事だけを。そう正直に言ってくれた相手に好感を持ちつつ、質問を重ねる。
男としては、ミレー族の奴隷を助けるつもりで現れたのだから。
ここで少女の返答如何によっては、敵対もやむなし、である。

「ちなみに、オレは無意味に敵対するつもりはない。
 キミがミレー族の子たちに危害を加えないというなら……」

発砲した後、ニヤリ、と笑う男。しかし、相手の驚く様子には目を丸くし、頭を下げる。

「あぁ、そりゃスマネェ。いきなりでびっくりしたか?
 とりあえず、キミにミレー族の子たちを虐げるつもりがないなら……。
 このクズ共を始末するのを手伝ってもらえないか? 話はまたその後で。あ、ガンガン撃つから耳ィ気をつけな?」

睨まれれば、ケタタ、と笑いながらも謝罪はする男。そのまま、男たちを駆逐する協力を要請しつつ……散弾銃は唸る、唸る。
火薬により押し出され、破壊力を持って射出されたる弾丸が、男たちを始末していく。

シノ > 本当ならば、さっさと男達の記憶を操作して戻れば終わりだったはず。
面倒事は、去っていった鴉天狗と同じく起こらないに限るという考えだ…ちなみに、主も同じ、皆似たもの同士だ。
どうしたものか…必要も無かったはずの思考に頭を悩ませる。

「喧嘩なんて野蛮な事、そもそもするつもりはありませんわよ~?
私がする事は…まぁ、それ以外という事で一つ、お願いしますわね~」

捕らえ、精を奪う。争う事も無いままに決着は付くのだから。
とは言え、さすがにそこまでは素直に教えたりはせず、誤魔化した。

「あらあら、虐待なんてしてしまったら働いて貰えくなってしまいますわね~?
あの子達には色々として貰わないといけませんのに、そんな馬鹿げた真似をする訳が御座いませんわ~」

乱入してきた時の発言を考えれば、ミレー族達を助けに来た事は誰にだって分かる。
そういった相手に対してどう言えば敵対となるのか…面白そうとは思っても、そこまでやる程に性格は悪くはない。
それ以前に、主に悪い相手だと分かり切った時以外は下手な行動はしないように言われているのもある。
軽く考えた後、これも正直に答えておいた。

「すいませんが、私は捕らえたりするのを専門にしていますので、そういった事は少々苦手ですの~。
始末しますなら、ご自由に…あ、待って、待って下さいませ~」

この相手とは敵対しないよう、正直に答えてある。
記憶を操るにも力を使うのだし、その相手を始末してくれるなら、自分としてはありがたい。
最終的に、操る必要がある相手が1人になるのだから…

再び撃つのだと言う相手に、慌てたように音に対しての意識を強める。
何の警戒もしてない時は辛いが、こうして意識を向ければ大きな音もどうって事はない。
事が終わるまで、のんびりと少女は眺めているだけだろう。

セイン=ディバン > どうにも、戦場にいるにはほんわかしすぎている少女の様子に、男は困惑の色を強める。
どう扱ったらいいのか……という以前に、どう接していいのか計りかねているという様子だ。

「ははは、キミがそのつもりでも、男共はそう思ってなかったんじゃねぇかなぁ。
 まぁ、何だ? よく分からんが、キミが好戦的でないことは分かった」

野蛮なことはしないが、なにやらそれ以外のことはするらしい。
どういう意味だかは理解しかねるが、少女に明確な敵意や戦闘能力らしきものがないことを判断した男は、とりあえずはおっけーおっけーと言いつつ。

「……う~ん。なるほどねぇ。
 信じるぜ? その言葉。キミの正体こそ分からないけどさ」

相も変わらず、ぽえぽえした言葉遣いのままの少女のその言葉。
ウソか本当か探ろうにも、おそらく会話は平行線になるだろうな、と思い男は追及を諦めた。
すくなくとも、ウソっぽくは無いという感じを受けたのも理由の一つだ。

「あ、そうなんだ……。じゃあまぁ、しゃーないなぁ。
 なんでかしらんが、男共動けなくなってるし?
 これ、キミの仕業? まぁどうでもいいか……。
 始末するのが楽になるだけだしぃぃぃ?」

少女の宣告に、拍子抜け、という様子に男は言うが、すぐさま切り替え、散弾銃の他に、リボルバーを取り出し、乱射乱射。
少女が音に対し警戒を強めたのを見て、ニンマリと笑った男は、一方的に蹂躙を行い……。

「あい。しゅ~りょ~……。
 改めて。オレ、セイン=ディバン。キミの名前は? 可愛い子ちゃん?」

極めて退屈そうに言うと、男は再度少女に向き直り、そう尋ねた。
返り血の一つも受けていない男は、既に戦闘意欲もなくしている。
あるのは、少女への興味と、湧き上がる性欲のみだ。

シノ > 「ちゃんとあの方達を確認するまでは同行者がいましたし、ご安心下さいませ~。
もちろんですわ、主様が望まぬ事はしないに限りますもの~」

直接的な戦いは苦手なだけで、出来ない訳ではない。
それでも、やり易いやり方が一番なのだから、それを考えれば好戦的に相手を向き合うのはなるべく避ける。
もっとも、今回の場合は鴉天狗が同行していたからそう接していたが。
とりあえず、友好的…ともまだ言えないが、理解はしてくれたらしい。
それが分かれば良し、である。

「信じて頂けるのは助かりますが、簡単に信じてしまうのも考えものですわね~?
まぁ…世の中には、直感みたいなものでそういうものを感じられる方も居られるみたいですし?そうであるなら助かりますわ~」

あっち向いたり、こっち向いたりして、色々と考えているような素振り。
冗談交じりのように言葉を紡いでは、またころころと笑って。
正直、本当に相手をそういった相手だと思っているのかは、疑問な風である。

「それに関しては、企業秘密ですわね~」

そもそも企業ではないし、秘密といっても今こうしているのは少女のみなのだから、こうなっているのは他の誰のせいでもなさそうで。
お互いの言葉のやり取りの中、何かに付けて少女は笑う。
何がそんなに面白いのか、おかしいのか、分からない時でも。
そうして、終わりを向かえ辺りには男達の屍だけとなる。
お疲れ様でした、と言った感じに、軽く一礼。
…と、ふと相手からの名乗りを聞けば、あら?と軽く驚く仕草。

「そうでしたか、あなた様がセイン様でしたのね~。
え~っと…はい、お話はそれなりにお伺いしておりますわ~?
私、タマモ様の式神をしております、シノと申しますの~」

話は主からも聞いていたし、王都の中でも情報は手に入っていた。
さすがに後者で話を進めては厄介なので、前者で話を進める事にする。
改めて、今度は深々と頭を下げた。

「そうなると、少々考えてしまいますわね~。
セイン様?その記憶、操らせて頂いて、私の記憶をちょっと忘れるようにさせて頂きたいですわ~。
だって…あなた様の精、美味しそうですもの…」

上げる顔、その表情は、そんな言葉とは裏腹に崩れぬ笑み。
さらりと、これからしようとする事と、その理由を教え…
同時に、気が付けば、まるで足の裏と地面がくっ付いてしまったかのように動かなくなる。
正体はといえば、気付かぬように張り巡らせた無色無感触の蜘蛛の糸。
意識一つでどんな力でも離れぬ、粘着と弾力を持つものとなるのだ。

「………あ、でも、どうしても駄目とおっしゃるならば、仕方ないので諦めますわよ~?
本当に、本当にそれは残念な事なのですけれど~」

ここまでしておきながら、そう付け足した。
主の知り合いだ、無理強いは好ましくない。…後、こうされた反応を見たいという、単なる悪戯心である。

セイン=ディバン > 「……同行者? 仲間ってことか……?
 んで、主様、か……。謎が謎呼ぶ、だな。キミ何者だよ」

相手の口にした、同行者。そして主様という言葉に、男は目を細める。
組織なのか。それとも、少数のチームなのか?
色々と考えはするが、結論など出ず、男は思索を打ち切る。
問題は、この少女へのこの場での対応だ。

「ハッ。信じる、とは言ったが、頭からキミを信用している訳でもないさ。
 とはいえ? ここでキミを疑っても意味はねぇだろ。
 ならまぁ、まずは探らせてもらわねぇとさ」

ハッキリと言う少女相手に、男も手札を晒して対応する。
もともと腹の探りあいは苦手でもないが、それも長時間となれば男的には我慢が効かなくなる。
ならば真正面から対応したほうがむしろ心地よいという考えだ。

「あら、そ。じゃあ追求はしないでおくよ」

サラッ、と受け流された質問は、そのまま捨て置く。
どんな人間でも、自分の持つ特殊能力を簡単に暴露はしない。
そうして笑い続ける少女に、少しばかりの恐怖と気味の悪さを覚えながらも。
男の仕事はつつがなく終了した。
そのまま一礼されれば、男も頭を下げる。間の抜けた光景だ。

「お話? 伺う? そりゃどういうこった……。
 って、マジかよ!! タマモ様の……な、何?」

相手の言葉に怪訝そうにしていたが、知己の名を聞けば男は驚いたように叫ぶ。
だが、式神という単語にはあまり馴染みがないのか、聞き返してしまう。

自身が尊敬している存在であるところの大妖の名に、思わず恐縮してしまう。
なにせ、妻の知り合いでもある女性だ。その関係者ともなれば、失礼や粗相はできないのだが……。

「え、考えるって何を?
 って、何? ナンデスカー!? これ、そっか、男共、こうやって拘束してたのかー。
 って何するつもり~!? いきなり何ー!?」

相手の言葉に、きょとんとしていた一瞬。そこが運命の分かれ目。
見事に拘束に引っかかった男は、身を捩るが当然意味など無い。
必死に頭を回転させ、男がたどり着いた結論は……。

「……て、提案!!
 いやらしく貪られるのは構わないんですけど記憶は残して!?
 キミみたいな美人さんとのセックスを忘れるとか勿体無い!!」

……阿呆みたいな結論。とりあえず貪られちゃってもいいやー、であった。

シノ > 別に直球でそれを教えてしまっても良かった。
しかし、どうも主の影響か、こうした言葉遊びのようなやり取りを気に入っている。
遠回しに己の身の内を晒しもしてみれば、再び話を濁らせ、相手の反応を楽しむ。
こうした行為は、今のようなのらりくらりとした流れでも付き合ってくれる相手だからこそ、出来るものである。

そんな事を続けている中、相手の正体を知った。
今度こそはっきりと言ってみれば、面白いように反応を強める。
どうやら、自分が何なのかの部分が分かってなかったのだろう、言葉の途切れた部分から予想をし、軽く考える仕草。

「式神ですわ~?し・き・が・み。
分かり易く言えば、従者みたいなものですわね~?
ですので、そんな畏まらなくてもよろしいですわ~」

本当に楽しい反応を何度も見せてくれる相手に、笑いは込み上げるばかり。
途端に恐縮をするような雰囲気に、気にしないように、と伝えておいて。
そして…今度は糸の拘束での反応に、飽きる事無く笑ってしまう。

「だって、記憶を残してしまったら私の正体や能力がどう広まるか分かったものではありませんわ~?
それに、残念ながら私は主様とは違って行為をして精力は得られませんの~。
代わりに、こちらで頂かせて貰いますけれど~」

相手の提案を聞くも、どうしたものかと一寸考えてしまう。
ゆっくりと、今度は戸惑う相手へと近付いていく。
どこで頂くかという言葉の時に、ぴたりと自らの唇に指を当てながら。

「まぁ…セイン様自身も色々とありますし、下手な事を触れ回らないならば残して差し上げますわ~?
どう致しましょうか~?」

ひたり、とすぐ目の前にまで寄り、見上げるようにして見詰める。
相手の手の届く距離だが、もし変な動きを見せるならば…すでに周りに張った糸が、一瞬で相手を絡め取り完全に動きを封じるだろう。

セイン=ディバン > なんとも、はぐらかされているのか、何なのか。
どこかリズムというか、テンポというか。それが普段とだいぶ違う会話を重ねていく。
別段不快でもないが、さりとて増えていくばかりの疑問に、多少男も疲れを感じていた。

しかし、いざ少女の口から正体を明かしてもらえば、どこか納得できる部分もあり。
そういえば、少女の主たるお狐様も、会話に妙があるというかなんというかだったな、と思いつつ。

「……ん~? つまり、サーヴァント?
 使い魔とか、そういうあれなのか?
 ……いや、畏まるよ。畏まらいでか」

ケタケタ笑う少女に、重ねて確認の意味で聞き返す。
元来、育ちのせいか無知な男だ。逆に、物を教わるためであればどんな相手にでも敬意を払い、質問する。
しかし……拘束されたままの授業など初めてだが。

「うむ。道理だな。手札をフルに晒す間抜けは居ない、と。
 あ、そうなんだ……。縛りというか、制限なのか?
 ……あ~、なるほどね……」

僅かな間の後、改めて宣言する少女に納得した様子を返す男。
そのまま、少女が唇を指し示すのを見て、少し眉を顰める。
まさか、肉を喰らわれるのではないか? という不安。
しかし、次の瞬間、男はまた愚かな言葉を吐く。

「おっけおっけ。当然、ナイショにしておくよ。
 そりゃ、大事な知人の部下の秘密だもん。ところでさ……。
 精を取り込むことはできなくても、それとは別にセックスはできるの?」

実に軽い調子で相手の言葉に同意し、首を縦にカクカクと振る男。
言葉とは裏腹に、本心は義理堅く、反旗を翻したりなどするつもりは無いらしい。
……ただし、最後の言葉は大間抜けのソレだったが。
近づく少女相手には、身動きすらせず。完全に相手に主導権を委ねている状態だ。いつの間にか、銃も地面へと投げ捨てている。

シノ > 何度も繰り返し、その弾みを大きくさせていく会話。
雰囲気から少々疲れを感じてきたかと思えば、遊びはこれくらいにと考えて。
確認の言葉を聞き、こくりと頷いてみせる。
相手にとって式神が何たるかは分からなかったようだが、こちらには相手の言葉の意味は理解出来ていた。

「大体はそんな感じで合ってますわね~?
まぁ、その辺りはご自由にお任せ致しますわ~」

言葉の意味はともかく、こちらに対する態度等は相手次第。
そうしたいなら、そうさせれば良いと考えて。
むしろ、そうした対応をされるのは初めてなので、良い体験なのかもしれない。

「いいえ~、そんな能力を持っていないだけですわ~?
私にとっては美味しい食事のひとつと、そう思って頂ければ良いだけですわね~?」

純粋にただの食事で、そこから力も一応は得られるだけ。
食事を下から得ようとも、空腹は満たせられない、という事だ。
まぁ…確かに、今の仕草では少々勘違いがあるかもしれない。

「それならば、よろしいですの~…?」

こちらの意見の同意に、もう一度頷く。
が、続く言葉に、きょとんとした表情を浮かべた。
…再び込み上げてくる笑いに、抑える事もせずころころと笑う。

「人間で無いと知ったのに、そんな問いを致しますとは…本当に面白い方ですわね~?
こんな体をしていますもの、もちろん出来ますわよ~?
私は少々元の体の作りが違いますから、皆様のように楽しませる反応は難しいですけれど~」

生物的には昆虫だ、神経の作りがそもそも違う。
まったく感じない訳でもないが、生物程に感じる訳でもない。
細かくは説明しないが、それだけは教えておく。
ここまで進めて、相手は強い抵抗を見せない。
それを理解すれば、相手への拘束を解いておいた。

セイン=ディバン > 元々この男も、一度ノってしまえば会話を途切れさせることのないタイプの男だ。
とはいえ、自身の知らぬ単語やら、リズムの掴みにくい相手との会話ということもあり、男の疲労も目立つようで。
しかし、そこは少女が気を使ってくれたのか、スパッ、とした言葉が多くなっていく。
正直ありがたいと思いつつ、男もふむふむとうなずきを繰り返し。

「なるほどねぇ……。
 まぁ、なんだ。敵意の無い相手に無礼を働くほどオレもアホじゃないんだってことで」

相手の正体に納得しつつ、そう言う男。実は半分ほどはウソである。
相手によっては、初対面だろうと敵意が無かろうと失礼な対応をするが。
少女があまりにも可愛らしく、柔らかな雰囲気のため、男的には穏やかな対応を心がけているだけだ。

「はぁ……。なんか、う~ん。難しいんだなぁ。
 人間以外の存在ってのは存在ルールが複雑すぎるよな……」

逆に言うと、人間の存在ルールが単純すぎるのだが。
人外には、摂理とも言うべきルールのようなものがある。それはある種当然であった。
たとえば、猫の獣人なら肉食で俊敏。鳥の獣人なら夜目が利かず空を飛ぶ。そのような仕組みだ。

「うん。だってキミ、悪いヤツじゃねぇじゃん?」

極めて軽い声での、とんでもなく単純な理由付け。
無論、目の前の少女の全てを把握している訳でもないのだが。
なぜか。男はそう感じていた。直感だが、確信に近い感覚だ。

「美人に人間もそうでないも関係ないっしょ。
 あぁ、なるほどね……じゃあまぁ、そういうことなら。
 そのお楽しみは次回にしておこうかな」

相手の説明に納得しつつ、男は自身の欲望をするり、と引っ込めた。
何よりもまず初対面だし、相手の要望は男の精力そのもののようだ。
ならば、ここは交友を深めるためにも。そしてそういった行為は後のお楽しみにするためにも。
男は少女との性交を今回は捨て置くことにした。
そして、拘束を解かれれば、男は頭を掻き。

「で、オレはどうしたらいいの? てか、何をすればいいんだろ。
 精、ってことなら、とりあえずチンコ出して勃起させればいいの?」

あけっぴろげに尋ねる男。要約すれば、『キミのしたい様にするといいけど、どうお手伝いしたらいいかな?』という事なのだが。
幾分下品な物言いであった。

シノ > この世界をまず色々と調べた自分、この世界しか知らぬ相手、知識の有無の差は仕方が無い。
…生きてきた年月の違いもあるのだが。
言葉の遊びを緩めれば、会話は思いの他に流れていく。
知りたい事、教える事、単純なのは悪くはないが…こうしていると、やはり遊びが少々恋しくなる。
それに関しては、今回は我慢しておこう。

「そんなに複雑なものではありませんわよ~?
案外、分かってしまえば簡単なものですわ~」

人間とて、その他の存在とて、存在するには何かしらが必要となる。
違うのは、それが持つ能力等といったもの。
それをすべて知ろうと考えるならば、確かに難しいかもしれないが。

「主様が主様ですもの、そのせいですわ~。
同じ存在であっても、悪い方は悪いですもの…その点は人間も同じですわね~?」

余りにも簡単で単純な理由付け、少女の笑いは止まらない。
この世界にも、こんなに面白い相手がいるとは…思ってなかっただけに、今回は大当たりだと思えてしまう。
性格的にも…多分、精力的にも。

「私達妖怪は、本来の姿は人とは掛け離れたものが多いですわ~。
でも、周りに溶け込むならば相手の好みそうな姿へと変化する、だから…う~ん…これは止めておきましょうか~?
お楽しみ頂けるかは分かりませんが、そうしておいてくださいませ~」

美人云々の言葉に、少々困ったような表情を浮かべる。
外見に関しての説明をしようとするも、続けると長く難しくなりそうなので、途中で止めた。
己の欲求を思ったより簡単に引っ込めた相手に、次がある事を思わせる言葉を残して。

「とりあえず…せっかくですし、ゆっくりと出来る場所で致したいと思いますわ~?
あの子達の無事の確認もしたいですし、そのついでに頂きたいですわね~。
セイン様は馬車を扱えますの?出来るならば、あのひとつを拝借して走って頂ければ、私の邸宅までご案内致しますの~」

そして、その場で始めようとする相手に、ちらりと男達が乗ってきた馬車へと視線を向けて、今度はこちらが提案をする。
出来ないのならば仕方ないし、この付近で場所を見付けて行うだろう。
出来るのならば、それに乗って走らせて貰い…邸宅で行おうと考えていた。

セイン=ディバン > 目の前の少女が、人間ではない。となれば、おそらく年齢も自分よりよほど年上なのだろう。
そう考えた男は、改めて気持ちの上で相手に向かい向き合う。
存在としての格上の者への対応。そして、いろいろなことを学ばせてもらえるかもしれないという期待もあってのことだ。

「そうかねぇ。いや、そうなのか?
 うん。オレが人間だから色々考えすぎてるのかな」

相手の言葉に、最初は疑問を浮かべていたが、男はすぐに思考を切り替える。
立場が変われば、また主観や思考も変わるのだろうということに思い至ったのだ。

「あはははは。確かになぁ。タマモ様も善の存在とはいえないが、あのお方は邪気が無い。少なくともオレは見たことが無いな。
 ……うん。それはそうだ。そこはどんな種族でもそうだな」

相手の言葉に、大きく笑う男。あの小柄な狐の君は、少なくともこの男の前では邪悪な振る舞いをしていない。
無論、そういった側面もあるのかもしれないが、それは他の生物も同じことだろう、と笑う。

「なるほど。擬態、ではないが。無闇に衝突をしないためか?
 ……え、なにさソレ。気になるじゃん!!」

確かに。未だに人間と異種族の溝は深いこの世界だ。
周囲に溶け込むというのは大切なことなのだろうな、と納得するが。
次いで少女が言葉を切ったのが気になり、男は追求をする。何か隠し事だろうか?

「ふむ。そうだね。こんな外じゃあムードもへったくれもないし。
 あぁ、ミレー族の子たちだな? その無事は俺も確認したい。
 馬車ならまぁ、人並みには。では、畏まりました、シノ様。貴女様の仰せのままに……」

少女の提案に乗り、男は馬車を一つ頂戴する。もとより男たちは全滅だ。
ここで馬たちを死なせるよりはいいよな、と言い訳しつつ。少女へと恭しく一礼をした。
目的地は少女の邸宅とやら。男は内心期待に胸を膨らませる。
いったいどんな場所なのか。何が起こるのやら、と……。

シノ > 遊びが無くなれば、こうして話を難しく考え出すのも人間だ。
遊びが過ぎるのも考えものだが、無さ過ぎるのも考えものかもしれない。
まぁ…実際に自分達が難しく考えないところがあるかもしれないが、その辺りは考えてみても始まらないだろう。
結局は、お互い違う存在なのだから。
相手が思う通りに学ばせる事もあるかもしれない、その逆も然りである。

「何事も、程々が一番ですわ~?」

色々と考える事もあるが、結局のところ行き着くのはこれであった。

「主様は人間と長く生きていたらしいですもの、そのせいかもしれませんわね~。
邪気が無いかもしれませんが、考え無しなところがあるのも玉に瑕ですわ~」

それとなく持ち上げている風を見せ、落とす。
この言葉で、関係が結構緩めなのが分かるかもしれない。
もし本人が目の前に居ようとも、この言葉は変えないだろう。

「自分から大きく掛け離れた姿は、どちらかと言えば悪く取る方が多いものですわ~?
それを考えれば、姿を似せるのが面倒も少なくて済むものですの~。
………説明に日が沈むまで掛かるかもしれませんが、聞きたいですの…?」

相手の考えも一つあるが、それ以外にも理由は色々とある。
やはり存在の違いというのは大きいもので。
と、後に続く追求に、にっこりと笑顔を向けて言ってみた。
よりゆっくりと、本当に良いの?と言わんばかりに、しかもかなり大袈裟にした内容で。

「それでは、よろしくお願い致しますわね~」

色々と思う事はあるだろう、それはそうと…どうやら馬車は扱えるようである。
それが分かれば、応えるようにこちらも一礼。
綱を手繰る隣へと座り込めば、軽く身を寄せて…そのまま案内をして、邸宅へと向かわせていくのであった。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」からシノさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山中」からセイン=ディバンさんが去りました。