2017/03/29 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にファトムさんが現れました。
ファトム > 木々の隙間を見上げれば、そこから見えるのは黒いカーテンのような夜空。
街の明かりがないこの場所だと、星々が非常によく見える。
ぽっかりと空いた、穴のような森の広場。
月明かりしか届き層のない場所で、少女は今日もたき火を燃やしていた。

ここのところ、温かい日が続いている。
森にもだんだんと、春の空気が入りこんで毎日眠気と格闘する日々。
だが、そんな平和な日々が少女にとってはとても安らかな時間を与えてくれる。

奴隷として、毎日痛めつけられて辱められて、啼いて過ごした日々。
母親のそばで眠ることも許されず、何時しか心まで閉ざしそうになっていた地獄のような日々。
それに比べたら、一人ぼっちというこの状況でも今のほうがずっといい。
少女は、そう思いながらほぅと一つ、息を吐いた。

足をかがめて、たき火を見つめる日々はこれでもう1年近くになる。
ミレー族の里にほど近いこの山奥に逃げ込んでから、もう一年という月日が流れようとしていた。

「…………お母さん…。」

母を思わない日はなかった。
あの日、悪魔の根城とでもいうべきマグ・メールから逃げていく貴族のスキをついて、お母さんと逃げた日。
少女を逃がすために、命を投げ捨てたお母さんの顔を、少女はいつもたき火の向こうに見ていた。

涙は、すでに枯れてしまっていた。

ファトム > 何時しか、空を見上げるのが当たり前になっていた。
空を見上げると、どこかでお母さんがこっちを見ているような気がしていた。
死んだ人はどこにもいない、もう会うこともない。
そんなことは、少女もわかりきっていることだ。

だけど、その死体を見たわけじゃない。
どこかで、お母さんが生きていて少女を案じてくれているなら、これからも独りぼっちでも生きていける。

ただの妄想、そして願望。
そう、人によっては鼻で笑われてしまいそうな、淡い少女の願い。
だけど、その願いにすがっていかないと、心が壊れてしまいそうだ。
今まで辛いことに立ち向かっていた少女だからこそ、もうその心は限界に近い。
何かにすがっておかないと、あっけなく瓦解してしまう薄い堤防のようなもの。

「……あ………。」

空で、一筋の光が流れた。
流れ星、願いをかなえてくれる省庁のような、あっさりと消えてしまった淡い星の光。
願いを言う間もなく消えてしまったそれだけど。
少女は心の安価で、自分の願いを星に伝えた…。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からファトムさんが去りました。