2016/10/02 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にタマモさんが現れました。
タマモ > 九頭龍山脈、街道や側にある集落から近くも無く遠くも無い、そんな場所。
1人のミレー族の少女が麓の方角へと向かい駆けていた。
服装と、手にした銃の形をした獲物からどういった存在かは分かるだろう。
と、何かの気配に反応し、その銃口が背後へと向けられる。
浮かび上がる魔法陣、そこから幾つもの石弾が闇に覆われた木々の中へと消えていく。

と、まるでそれを狙ったかのように、別の方角から少女へと向けて何かが放たれる。
間一髪で避ける少女、避ける前に居た場所で、ぱんっ、と空気が爆ぜる。
放たれた先から現われたのは、少女と同じような格好をした、同じミレー族の少女だった。
…ただ、焦りの表情を見せる相手とは対象に、くすくすと楽しそうに笑っている。

「もっと、頑張って逃げないと駄目じゃない。
今の貴女はただの獲物、狩られる立場、追い付かれたら…終わりなのよ?」

ゆらりと追っ手である少女の姿が揺れ、また別のミレー族の少女へと変わった。
その変化を今初めて見た訳ではないのだろう、追われる少女はそれを見て驚きはしない。
その唇からは「一体何人の仲間を…!」そんな言葉が紡がれる。
言葉に対し、姿を変えた少女はまた楽しげに笑う。

「そんな事を言う暇があったら、逃げなきゃ駄目。
貴女は要らないもの…貴女が持つ、地の力を持った子はもう食べたから。
残念ね?持ってない属性持ちの子だったら…美味しく食べてあげたのに」

手にした、同じ武器を睨み付ける少女へと突きつける。
浮かび上がる魔法陣、そこから感じるのは先程の風ではなく…炎の魔力。
早く逃げないと打つよ?と言わんばかりに、放つ事をせずに溜めている。

タマモ > 逃げ惑う少女を追い詰める、猫が獲物である鼠を嬲るように、少しずつ力を奪っていって。
逃げようとしているのは、先にある集落だと分かっている。
まぁ、下手に逃げ切られて報告されて、手持ちにない属性の子を喰らい難くなるのは少々面倒。
だから…本当に逃がすつもりはまったくない。

少しずつ立ち位置をずらし、逃げようとする方角を集落ではなく離れていく方角になるように誘導を試す。
少女が立ち上がり体勢を立て直したのを見れば、集落の方向へと当てないように、だがぎりぎり当たるかのように炎を放つ。
もちろん、逃げ切るつもりの少女は避ける、思った通りの向きへと。

「そうそう、そうやってもっと色々と試させてよ。
使いたい力はまだまだあるんだから…さ?」

複数の炎の弾を放ち、更に少女を離れるように誘導する。
少女は相当焦っているだろう、逃げたい方角に逃げれないのだから。
またじわじわと距離を詰める、そろそろ…岩場に囲まれた逃げ道のない行き止まりに着くだろう。
その間に再び追う側の少女は、別の少女の姿へと変わっていた。

タマモ > 「まったく…貴女じゃなくて、あの子が来てくれれば良かったのに…
水の魔力を使う、あの子…そうすれば、まずは4つが揃うのにね?」

やれやれと困ったように肩を竦め、追い詰めた少女へとまた銃口を向ける。
とどめは、貴女と同じものでしてあげる、そう言葉を紡ぐ。
浮かぶ魔法陣、散弾銃のように細かくも複数の石弾が放たれた。
逃げ道も無い、避けるスペースも少ない、何とか避けようとはする少女だが…避け切れない。
何発もの石弾をその身に浴びて、どさりと倒れ伏す。
…威力よりも当てる事を重視したものだ、致命傷にはならない。
だが、疲れも相まってか少女は倒れたまま動けずにいた。

「………さて、終わりくらいは正体を見せてやらねばのぅ?」

不意に普段聞く標準のものから、口調が一変する。
また揺れる少女の姿…それは、今までの同族の少女達とは似て非なる存在へと変わっていた。
見た事の無い変わった衣裳、狐のものであろう耳と複数の尾。
手で自分の持っていた銃を弄び、どこかへと消す。

タマモ > 「ふふ…まだ、お主等に違った知識もあれば役立つじゃろうが…
喰ろうたお仲間とやらも、似たような記憶した持ち合わせておらんかった。
もっと見聞を広めるべきじゃったな?そうすれば、喰らう意味もあったじゃろう」

ミレー族の今の立場や、少女達の成り行きから考えればそれは無理な話だ。
それを知っている上で、目の前の少女へと言葉をかける。
ゆっくりと少女へと歩み寄り、そうしながらその手元の指先、その爪先が鋭く伸びた。
観念したか、少女はもう抵抗らしい動きもない…まぁ、ほとんど動けなくしたのは自分だが。

「ドラゴンフィートか…なかなかに便利な場所を作ってくれたものじゃ。
お主等に場所と力を与える人間共には感謝せねばな?
そして…お主等は人間共を恨み逝くが良い、その力のせいで喰われ、弄ばれたのじゃからのぅ」

右手が揺れる、次の瞬間、その先が音も無く少女の心臓を一突きしていた。
貫いたまま、ゆっくりと…その鼓動が止まっていくのを感じ取る。
命の炎が消えるまでの間に、少女は何を感じ、何を思っていたかなんて興味はない。
ただ、その身から湧き上がる絶望や苦痛、そして…怨念、黒き感情を受け取り、満足気な笑みを浮かべた。

タマモ > 別にこのミレー族を弄んでやっても良い、とも思ってはいた。
ただ、何と無くこの相手ではないと考え直してしなかった。
せっかく目覚めたのだから、遊んでやれば良かったと思うが…こうしてしまっては仕方ない。
爪先を引き抜き、紅に濡れた先をちろりと舐める。
少女が手にしたままの獲物は、他の者達と同じように頂いておく。
…まぁ、あれだ、価値の分からないものには興味があるだけ。

「おっと…さすがに、このままは目立ち過ぎるか。
始末すべきものは、ちゃんと始末しておかねばな?」

手を伸ばし、死骸となった少女を掴む。
この形のまま残しておいたら、見付かった時に色々とありそうだ。
だから…こうするのだ。
掴んでいた少女の身体が、ぱぁんっ、と割った風船のように爆ぜて飛び散る。
辺り一面に広がる紅と、細かな肉片やら骨片やらとなった。
これで、後始末はそこらの動物がしてくれる。
時間が経ては雨風に曝されて染まった紅も元に戻るだろう。
身を染めた色に目を細めながら、くるりと踵を返した。

タマモ > ここは九頭龍山脈の山中、そう都合良く誰かに会う事も無いだろう。
…いや、たまにその都合良くか悪くか、現われる者も居るが。
そう考えれば、そう期待はせずに山中を散歩でもして今回は終わらせるか…と思う。
紅に染まった少女は、気が付けばその身の紅は消え、何事も無かったかのように歩いていくだろう。

ご案内:「九頭龍山脈 山中」からタマモさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に砕華さんが現れました。
砕華 > (夜の帳は既に落ちかけて、真っ赤な夕日が、空を紅に染め上げていた。
近くの藪の中で、鈴虫がリンリンと、心地よい音色を奏で、秋という季節を感じさせる。

実りの季節と銘打つこの時期は、足元を見れば、其処此処に茸が生えて、人間にも動物にも、恵みをもたらしてくれる。
木々の葉も紅葉が始まり、季節の移り変わりを愉しむというのも、悪くないのかもしれない。)

(歩くたびに、カサリと一足先に、茶色く染まった枯葉が砕け、乾いた音を立てる。
小気味よい音に耳を傾け、砕華は木の幹に手を当て、屈みこんで、生えている薬草をじっくりと観察していた。
形、香り、色を確かめ、目的のものだと確信すれば、それを右手で摘み取り、背中に背負った籠の中にそっと落とす。
既に半分以上、籠の中身は葉っぱと茸で埋め尽くされている。
その籠を軽く、上下に揺さぶり、中身を整えながら、「ふぅ……」と、額の汗をキモノの袖で拭いながら、砕華は腰を伸ばした。
年寄り臭い仕草ではあるが、右手のこぶしで軽く肩甲骨の下を叩き、堅くなった筋肉を解す。)

「ツツミ草、カジダ草、ヤマヤマ茸……。こんなにも群生しているなんて、此れは収穫だね。」

(にこやかに、砕華は口元を弧の字に描くと、満足そうに肩越しから、籠の中身を確認した。
この大きく大陸を横断している山脈、「九頭竜山脈」の中腹では、数多の薬草が生えている。
此処でなら、「紅一朝」で処方している薬の材料になるものがあるかもしれないと、親切なお客様から聞いた。
勿論、祖国から持ってきた薬草は、それなりにストックしてある。
しかし、それが無くなった際に再び発注すると、どうしても届くまで時間がかかってしまう。
薬草を自家栽培できればいいが、砕華のいまの財力では、そんなことは夢のまた夢。
故にどこかで、材料に使える薬草が生えていないものかと考えていただけに、その客の話は正に渡りに船であった)

砕華 > (籠の中は、ほとんど植物ばかりで、さほど重さなどを感じることはなかった。
先ほど名前を挙げた、風邪薬や胃腸薬に処方する、ギザギザの葉が特徴のツツミ草。
マグ・メールの露天で、一番売れ行きが好調だった、増強剤の材料になるカジダ草。
広いカサが特徴で、乾燥させれば精神を落ち着ける効能を持ち、睡眠薬の材料にもなるヤマヤマ茸。
そのほかにも、籠の中には多種多様の、薬草が詰め込まれているが、主な種類はこの三種類だけだった。
砕華の目的も、主にこの三種類。他は、下宿先で軽く料理に使おうと思っている、茸や山菜。
目利きを使えば、砕華ならばどれがよく育っていて美味なのか、一目でわかった。

祖国にいたときから、この九頭竜山脈は重要視されていた。
山菜が取れるから、とか、薬草が手に入りやすいから、と言う理由ではなく、このあたりでとても重要なものが取れる、だとか。
老師から聴いた話だし、将軍様が仰られていた話なので、いまの砕華には無用の話といえば、その通りだ。
一回の薬師が、将軍様の思考など、わかるはずもない。

とはいえ、少々時間をかけすぎていた。
山に登ったのが、朝の少し遅い時間。今は空が紅に染まっている時間。
夢中になりすぎてしまい、ついつい時間を忘れて、下山する時間を大幅に過ぎてしまっていた。
夕方ごろには、下山して帰りの馬車に揺られているはずだったのに、だ。)

「それにしても…、困ったね。下山できるかな…?」

(このまま、山の中で一晩過ごすというののは、少々リスクが伴った。
何しろ今回、砕華は何一つ、野宿するための道具を持ち合わせていなかった。
日よけの傘、薬草ときのこを詰め込んだ箱、そして護身用にと、いつも持ち合わせている長刀。
それ以外に、手持ちのものは何一つ無く、一晩過ごすにしても、朝晩冷える秋の空では、翌日に響く可能性すらある。
開いているのかいないのか、分からないような細目は変わらず、その眉だけが困ったように、ハの字を描いていた。)

砕華 > (いまはまだ夕暮れ時、林の中とはいえ、それなりに日差しは差し込んでいる。
向こうも見渡せないほど、鬱蒼と茂っている森ではない。さして危機感を感じているわけではない。
だが、このまま夜の帳が落ちてしまえば、野犬が犇く森の中で、独り過ごさなければならない。
兵や武士なら、何ぞこんな森など、と笑い飛ばせるだろうが、砕華はただの薬師。
背中に背負っている長刀は、野犬にはさして効果がないことくらい、百も承知だった。
せめて、街道に出られるほどの道が見つかればと、砕華は森の中を彷徨い始めた。)

「しかし、いいものが沢山手に入ったね。
此れで当面の、薬の調合には不自由しなさそう。後は、早く自分の店をもてれば。」

(砕華は、下宿の中で、よく図面を描いていた。
お世辞にも上手いとは言えない、下手くそな図面だが、そこに詰め込んだのは、将来の自分の店。
シェンヤン風の建物ではなく、マグ・メールのどっしりとした、煉瓦造りのもの。
陳列されている薬は、全て自分が手作りした一品もの。数はそんなに作れないから、小さな陳列棚でいい。
入り口から見えるところに、カウンターを置いてお客様の顔がよく見えるようにしたい。
信頼を勝ち取るには、まず相手の目を見て、誠意を持って対応しろ。老師の有難い道しるべの言葉。
その奥に、敬愛する皇帝様の肖像画を、どうにかして手に入れて飾ろう。小さいものでもいい。
絵でも、滲み出る絶対強者の貫禄は、砕華に強い眼差しを送ってくれるだろう。

淡い、少女のような妄想。
毎夜毎夜、それを描いては顔をニヤケさせて、夜遅くまで眠れない日々が続いている。
マグ・メールとシェンヤンの時間差も相まって、砕華の朝は、普段よりも随分遅くなっていた。)

「裏には、薬草の畑を作るのもいいね。」

(籠を背負いなおし、落ちた枯葉を踏みしめ、乾いた音を鳴らせる。
小気味よく、森の中に静かに響く枯れ草の音が、暗くなり始めた森の中に、少し寂しげに響いた)

砕華 > (歩くたびに、どこかから野犬の遠吠えが響き始める。
夕暮れが、だんだんと赤黒い色を携え始め、漆黒に染まっていく。
明るさを保っていた森の中も、先が見通せないほどに、闇が降り始めていた。

どこかで、野宿をする準備を始めるか、それとも無理にでも山を下りるべきか。
その判断を迫られ始めた砕華。いつもはマイペースなその動きも、だんだんと足が速くなり始めた。
不安が胸を支配し始める、出来ればこのまま山を降りたい。
だが、もう暗くなり始めた森の中では、下手に動くのは、逆に危うさを孕む。
しかし、どんな猛獣がいるのか、分からないこの状況下での野宿は、もっと避けたい。
出来れば人、もしくは獣族がいる場所まで、完全に暗くなってしまう前に、たどり着きたかった。)

「…今度からは、気をつけたほうがいいね。
此れだから老師に、お前はいつまでも子供だと言われ続けるのかな…。」

(後悔先に立たず、とはこのことである。今日も、少しだけの失敗をしてしまった。
祖国で、老師を手伝っている際も、いつも物を落としたり、調合を少しだけ間違えたりと、いろいろとドジを踏んでしまった。
それが出たのが、今日の下山のタイミングを逃したことだろう。
肩を落とし、刻一刻と暗闇が押し迫る中、砕華は森の中を彷徨った。

その日、マグ・メールに砕華が帰ることはなかった、と言う。)

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」から砕華さんが去りました。