2016/09/26 のログ
■リーユエ > 身を護る物が無い為らば、防戦と為って何が見えるだろう?
諦め掛けた思いの片隅に浮かぶ彼女の姿、まだ完全に終わってもいないのに諦めてしまうなんて…矢張り出来ない。
必死に思い出すのは付近の地形、何度も何度も歩き回って覚えた其れを頭に浮かべ、何とか為らないかと思案を巡らす。
一つ二つと別の角度から更なる飛来物の気配を気取れば、必死に身を捩り避け様とする。
殆ど使い果たした力に依る疲労感か、避け切れずに衣裳を掠めて右腕と左脚の肌を裂いた。
「痛っ…!」
避けた肌から僅かに散る紅が、ジワリと裂けた肌と衣裳を染める。
遂に攻撃を防ぎ切れずに傷付いた少女だが、其の表情はまだ諦めの色へと染まり切ってはいなかった。
そうしている中、ザワリと辺りの気配に大きな揺らぎが起こる。
追い詰めていた一人が、不意打ちの弾丸に依って打ち倒されたのだ。
気付け役だろう、中の一人が倒れた者へと近付いて何やら行う…そして、何かを伝える様に周りへと指示をした。
相手からすれば死を迎える事も無い安全な策と教えられたから乗っていたのだ、其れが一気に崩されれば…後は脆い。
何人かは打ち倒され地面に伏せるが、気が付けば全ての気配が辺りから消え去っていた。
耳に届く聞き慣れた魔法の弾丸の音、集落の誰かに助けられたのだと少女は思った。
まさか其れが求めていた彼女だとはまだ気付く余裕も無く、助かったのだと理解をすれば、フッと体の力は失われて地面へと倒れてしまう。
■リーゼロッテ > 防御しようとも、体に触れてしまえば身体と共にある魂を侵食する危険な炎は、愛する人を襲う悪党を撃ち抜いていく。
何人かからは手応えを感じたが、気づけば他の敵の姿はなくなっていた。
「ユエちゃんっ!」
ライフルスリングを肩に掛け、枝の上から飛び降りる。
タンッ、タンッと膝のクッションで勢いを殺しつつ枝から枝へと飛び降り、地面に降りていくも勢いはかなりあった。
地面に着地すると同時に一回転して勢いを逃し、そのまま立ち上がると俊敏な動きで彼女の元へと近づいていく。
「ユエちゃん、しっかりしてっ! ユエちゃんっ!」
地面に倒れてしまった彼女へと近づくと、呼びかけつつ傷の具合を確かめていく。
裂傷があるものの、致命傷のようには見えない。
ただ、ボロボロの格好はそれだけ長く戦っていたという証拠でもあり、疲労か、それとも内部からやられてしまったのかと心配になって不安な顔で少しばかりオロオロしてしまう。
けれど、徐々に冷静さが戻ってくれば、拳銃を抜いて緑色の魔法陣を描いていく。
「今直すからねっ!」
空に向け、トリガーを引き絞ると蓮の花吹雪が舞い散る。
魔力で作られた花弁をかき集め、彼女の全身へとかぶせるように散らす。
触れれば、触れた部分の傷を癒やし、体力を回復していく。
一つ一つは小さくても、それを纏めていくなら、かなりの回復が見込めるはずと花弁で埋め尽くしながら心配そうに様子を見やる。
■リーユエ > ほぼ全ての力を出し切った疲労感は大きい、其の感覚は自分の身体で在るだけによく分かる。
立ち上がる事は出来ないが、何とか意識だけでも確りとさせなければとゆっくりと呼吸を整えていく。
助けてくれた誰かが居るのだ、ちゃんと御礼はしなければ…そう律儀に考えれたのは少しばかりの余裕が出来たからだ。
「…?」
近付いて来る足音に、耳に届くのは聞き覚えのある声。
そんな訳が無いと考える、彼女が居ると聞いた場所はもう少し先の筈だと思っていたから。
まだ確りとしていない意識だから、きっと彼女の声に聞こえてしまっている…
なのに、何時まで経っても彼女のもので在る声が聞こえ続けていた。
こんなにも彼女の事を想っているんだと、そんな考えが妙に嬉しくて…相手を確かめる様に薄く瞼を開く。
薄暗い木々に囲まれた場所、身体は動かせないから視線を下げて助けてくれた相手を見る。
「リ…ゼ、さん…?」
薄暗い中に見えた花弁を自分へと被せていく彼女の姿、夢でも幻でも無かった。
薄く開く唇から何とか彼女の名前を紡ぎ出す。
もっとちゃんと声を掛けたいけれども、まだそうするまでの力は戻ってきていない。
其れでも、少しずつ…確かに自分に戻っていく力を感じていた。
■リーゼロッテ > 集落を去る時と違い、あの茶色の制服は纏っていない。
帽子とは異なり、後頭部のあたりに薄茶に白いレースが飾られたリボンがあったり。
深緑色主体のチェック柄のジャンパースカートにはロゼットを象ったアンティーク調の飾りが施されている。
白いブラウスは相変わらずで、胸元には月と太陽を象ったペンダントがきらりと輝く。
白とグレーのチェス柄のニーハイソックスは、前よりも色味が増え、ブーツも焦げ茶色におとなしいものに変わった。
けれど銃や顔立ち、髪型は何一つ変わらない。
呼びかける声に安堵の表情を浮かべると、もう一度拳銃を空に向けた。
「そうだよっ、ユエちゃんしっかりして…!」
もう一度回復魔法を放つものの、昔に比べると何故か回復効率が悪かった。
壊すことが得意な鴉達の魔力は、治癒にはあまり向かないという相性の悪さが効率を阻害してしまう。
ふわりとかぶせる花弁も、振り始めの雪のように触れては消えてしまうだろう。
どうしようと思いながら、思うのは好きな人を癒やしたいということばかり。
すると、代わりに手の甲の紋様が消え、胸元に昔からの隼との約束が浮かび上がり、前と同じように体力を回復し、衰弱しきっていなければ、それなりに身体の自由を取り戻せるほどの回復を与えられるはず。
「ユエちゃん…ユエちゃん…っ」
涙目になった顔には、不安がいっぱいになり、今にも滴が頬を伝い落ちそうなほど。
大丈夫だろうかと、これだけの治癒をしながらも心配になるほど、彼女の存在がとても大切だった。
■リーユエ > 力の戻りが悪いのは全ての力の底が尽いてしまっていたから。
事が終わった後での回復へと使う筈だった力も無く、相性の良い自分以外の力に回復を頼るしか無いからでもあった。
まだ確りと見えはしないけれど、覚えの在る彼女の服装から少しばかり変わってしまっているか。
でも其の姿は変わらない、覚えの在る銃も、声も…そんな事をぼんやりと考えていた。
大丈夫、そんなに心配そうな顔はしないで…そう伝えるかの様に、何時も彼女へと向けていた笑顔を作ってみせる。
相性の問題が在ろうとも、効率が宜しくは無いだけで回復をしない訳では無い。
少しずつでも確実な回復を感じているのだが、其の力が急に増してきたのを感じた。
感覚的にはまだ動かせるとは思ってなかったのだけども、試しに力を入れてみる。
不安にしている彼女の前で、ゆっくりとした動きで腕が上がった。
其の手は緩やかな動きの侭に彼女の頬に力無く触れ、優しく撫でて…
「…大、丈夫…大丈夫…です。だから…そんなに、不安な顔をしないで下さい…ね…?」
震える唇から彼女へと伝える小さな声。
言葉で、触れる温もりで、今度こそちゃんと安心をさせようと。
■リーゼロッテ > 自分の中で力が切り替わったのに気づくことはなく、ただ愛する人を癒やすことだけに力と意識を注ぎ続ける。
回復が確りと効力を強めたのを感じれば、少しだけ安堵したものの、やはりまだぐったりとした彼女に不安は拭えない。
どうしようとばかり思っていると、彼女の手がゆっくりと上っていき、自分の頬へと重なる。
それだけで心臓は高鳴り、弱っている彼女の撫でる動きでポロポロと涙がこぼれてしまう。
「うん…っ…だって…。でも、リーゼも同じぐらい、心配かけちゃったことあるから、こんな気持なのかなって思うと…悪いことしちゃったって…」
ずたずたにされてしまい、行方知れずになったり、それから彼処を去ってしまったり。
心配かけた気持ちがこんなに辛いものになるなんて、改めて理解すると涙が止まらない。
不安にさせないように笑おうとしてもぎこちなくて、掌に掌を添えて応えると、片腕でその体を抱き寄せていく。
「落ち着いたら……リーゼのいるところ、案内するね?」
ぎゅっと包み込みながら、今は暫し体力が癒えるのを待つ。
彼女が立ち上がれるだけになれば、肩を貸して現在の住居へと彼女を誘うだろう。
帰ってきてからまた、色々と話せなかった事もあったしと、二人の姿は山中の闇へと消えていくのだった。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からリーユエさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からリーゼロッテさんが去りました。