2016/09/11 のログ
吸血鬼アリス > ....ごめんなさい。

(魔王の娘として今までも人に蔑まれることは何度かあったが、ここまで敵視を向けられることはなかったためどうしたらいいのか全く分からなかった。アリスにとっての世界は狭いことに城の中だけのようなもの。外出を始めたのだってつい最近の話で、生まれてから数年、城の中だけで暮らしていれば本当の世界の常識など理解すらできないであろう。目の前の女性が、なぜ自分をここまで警戒するのか、それすら理解することはできなかった)

あ、悪事なんて...働かないです...

(レイカから向けられる殺気に怯みつつも答える。アリスには悪事を働けるような知恵も力もない。先ほどだって、逃げるために込めた魔力があふれ今の現状を作ってしまっているのだ。今のアリスは、大きすぎる自分の魔力を操るのに精いっぱいという状況だった。しかし、それを理由に暴走してしまえば元も子もない。今は平常心のまま、自分の力を押さえ、冷静にレイカと話し合うしかなかった)

...お母さんたちのことですか...?
えっと...片方のお母さんがネス、ネス・アプル・ポイズニー...、もう片方のお母さんがカレリア...ですけど...

(両親は二人とも女性だ。ただでさえややこしい話なのだが、今はこう答えるしかない。魔王であり、吸血鬼であるネスとその妻にして元人間のカレリア。その二人の名前が知れているかはわからないが、ここでこの人たちに話し、両親へ攻撃されるのはすごく嫌だなと思う。ここまで慎重なレイカが魔王である親に攻撃などするはずもないだろうが、まだまだ幼いアリスにはそこまで考える余裕などはなかった)

レイカ > …敵意のない彼女には申し訳ないけれども、私はどうしても打ち解けることはできなかった。
私にとって、魔族は敵である。私だけでなく、人類の。
彼女の一言で、もしもそのアプル・ポイズニー家が大軍を率いてドラゴンフィートに攻めてきたら。
そう思うと、私は背筋が凍る思いだった。

「そうしてくれると、私としても助かります…。」

悪事を働かないという、その言葉をいまは信じるしかないだろう。
イや、完全に信じるわけにはいかないけれども…彼女の力を完全に敵に回すと思うと、正直怖い。
平常心を保ってくれている間に、できる限り情報を聞き出そう。

「両親が…ネスと、カレリア……。」

ここに、もし先ほど逃がした団員が残ってくれていたら、確認のために連絡に寄越すつもりだった。
しかし、あいにく私がさっき全員逃がしてしまったため、いまここにいるのは私一人。
ただ、もしかしたら彼女らが援軍を率いて、ここに戻ってくるかもしれない。
タイムリミットは、おそらくその時間までだろう。

勿論、彼女らの親を怒らせるなんて事はしたくなかった。
彼女には絶対に、無事に帰ってもらわないと…複雑だけど、困るのだ。

「次の質問です、そのアプル・ポイズニーの家に、人間の世界へ攻め入ろうとする人はいますか?」

二つ目の質問。
彼女らの両親が、人間の世界へ攻め入る計画をしていて、その一環でアリスに偵察をさせている可能性。
この可能性がゼロではないと言い切れない限り、私は安心できない。

吸血鬼アリス > (アリスに読心術はないが、おおよそ彼女が考えていることの見当はついていた。もしかしたら、母親、ネスも昔から人にこんな態度で扱われていたのかもしれない。魔族は人類の敵、なんて常識は人間の固定概念でしかなく、人間は魔族の敵という固定概念も魔族のものでしかない。そして、そのどちらも持たないのが自分たちの一族。それしか知らなかったアリスにとってはとてつもなく大きなショックだろうが、これが現実だということを、レイカの態度が知らしめていた。この様子だとどれだけ自分が弁解してもレイカは自分のこと信じてはくれないだろうし、家族のこともきっと悪い魔族だと勘違いしたままだろう...)

あの...、貴方のお名前...聞いてもいいですか...?

(素直に教えてくれるだろうか、と考えつつも気になったことは訪ねてしまういつもの癖でレイカへ名を訪ねた。このままギクシャクした重苦しい空気のまま、この場で彼女の質問に答え続けるのはすごく気が苦しかったのだ。名前を知れば少しは打ち解けることもできるかもしれない、なんて少し夢を見すぎなのかもしれないが、少なからずアリスは本気でそう思っていた。彼女たちにどんな情報を渡してもきっと、家族には何の影響もないだろうし、ならばこちらも少しくらいレイカの情報を訪ねたって罰は当たらないはずだ)

私たちの一族は吸血鬼です...
私と、私の妹は人間である母「カレリア」と魔王であり、吸血鬼でもある母「ネス」から生まれたハーフヴァンパイアです...
アプル・ポイズニー家は昔から人間と深い親交があり、人間を襲うなんて野蛮なこと、しないんです....

(ここまで話したなら、自分の知っていること全てを話し、彼女にちゃんと信じてもらおう。嘘偽りない、一族の秘密をこうも簡単に話してしまう。それくらい、今の一族はとても穏やかな状況にあるということなのだが)

今も話した通りです...
お母さんたちはよく、王都の方へ買い物に行ったり、情報収集なんかに出かけてますけど...、人間に危害を加えたりするような人たちじゃないです...

(全く的外れなレイカの推測。まるで両親を侮辱されたような気分になったのか、少しムスッと頬を赤めながら強気に答える。確かに、魔族や魔王という肩書からしてこういう風に思われてしまうのは仕方のないことなのかもしれないが、親を悪く言われるのは正直すごく嫌だった)

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」から吸血鬼アリスさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」に吸血鬼アリスさんが現れました。
レイカ > 固定概念でしかなくても、なにか深い事情でもない限り覆ることはないと、私は思う。
――ただ、以前人間でありながら、魔王を妻として迎え入れようとした男がいた。
そのとき、私はそんなことはありえないと突っぱねたし、今でもそう思っている。
魔族にいいも悪いもない、彼らは皆…人類の敵なのだから。

「……今はそんなことを聞いているわけではありません。」

名前を聴かれても、私は彼女に教えることはなかった。
確かに随分空気が重いかもしれないけれども…私は仕方がないと、そう思っていた。
打ち解けたいと願う彼女の思いをよそに、私は書類にアリスから聴いた話を書き込んでいく。

両親の名前はネスとカレリア、吸血鬼の一派で、特にネスというのは魔王を名乗るほどの力の持ち主。
おそらく、カレリアという人間を魅了し…捕らえて妻にしたのだろうと”勘違い”して。
コツコツと、その情報を纏めて書類にしていく。

元々人間との交流があった、というのはおそらく貴族たちだろう。
彼らは魔族との癒着が時折指摘されていた。
それらと交流し、そして情報を集めている…ともなると、やはり人間界に攻め込む機会をうかがっている、だという事だろうか。

「………人間に危害を加えるつもりはナイならば、それはとても嬉しいですね…。
此方としても、無駄な警戒をしなくてすみますし。」

少し膨れている彼女のほお、本当に子供っぽく…思わず可愛い、と思ってしまう。
ほんの一瞬だけ、場の空気が和んだけれども、すぐに私は眼を吊り上げて彼女を見る。

「………貴女が危害を加えるつもりはないのは重々承知しました。」

人間界で買い物をするという情報も、有意義なものだった。
もしかしたら、ドラゴンフィートで彼女の両親が買い物をしている裏が取れるかもしれない。
そうすれば…私の疑念も少しは和らぐだろう。

「次の質問です、貴女の両親の人間のほう…カレリアの容姿は?
髪の長さ、身長…そのあたりを少し細かくお願いできますか?」

組織で、もしそんな人物が目撃されて本当に温和に買い物をしているだけならば…、少しはありえなくはないのかもしれない。
少しだけ…また、空気が軽くなった気がした。

吸血鬼アリス > そ、そうですよね...
ごめんなさい......

(素直に答えてもらえるわけはない。やはり、彼女の名前を知ることは出来そうにない。彼女が勘違いしたまま自分が打ち明けた情報をすべて記している最中、アリスは何やらよからぬ"魔力"を静かに感じていた。この魔力はおそらく人間のものではないだろう。本当に微々たる魔力で、どんなに魔力感知に優れたものだとしても気づくことはまずないであろう微かなものだ。しかし、弱々しいものではなくドス黒く、禍々しい、魔王がよく使う魔力に類似している。ここまでの魔力操作を行えるということは、少なからず中級の魔族なんかではないはず。現に、目の前の女性、レイカはこの魔力に気づいていない。だとすると少しまずいことになるかもしれない)

し、信じてもらえたみたいでよかったです....
そ、それより...、ば、場所を変えませんか......?

(徐々に声は震え始める。場合によっては、最悪の事態だって考えられるのだ。どう見ても不自然なアリスの様子。レイカや先程のミレー族に見せた恐怖とはまた違う、本当の恐怖を顔に表している)

あ、あの...その質問の前に.......っ...!

(レイカからの質問。それを答える前に場所を移動しようと提案したが、アリスが先程から感じていた魔力は一気に距離を詰め、そして轟音と共にアリスとレイカへ浴びせられる爆風と熱風。辺りは一瞬にして風化し、地形が変わるほどの風が木や岩を砕き吹き荒れる。咄嗟の判断でアリスはレイカと自分の周りに防御魔法の結界を何重にも張り巡らせ、何者かの奇襲を防いだ)

....だ、大丈夫ですか...?

(本当に間一髪だ。もう少し呪文を唱えるのが遅ければ二人共無事ではなかった。特にレイカは不死身ではない。今の風を受ければ確実に命を落としていたはずだ。とりあえずレイカの無事を確認するとホッと息をつく)

レイカ > 別に謝る必要はないのだが…、まあそのあたりは別に構わないだろう。
しかし、次の質問に答えないのは――少し引っかかる。

「………場所はこの場所のままでいいでしょう…。
下手に場所を移して、あなたに逃げられたらそれこそ困るんですよ…。
ほら、いいから早く質問に――え?」

アリスの声が震えて、明らかに恐怖を抱いている。
おかしい、さっきまで確かに震えてはいたけれども…それでも怯えている様子はだんだんと薄れてきているはずだった。
打ち解けているわけではないけれども…それでも、少しはこの空気に慣れていると、そう思っていた。
しかし、その恐れの原因を、私は身をもって知ることになる――――。

「質問の前に……なんd」

私の言葉は、途中で途切れてしまった。
突如、世界が一気に真っ白な光に包み込まれた。
何が起こったのかと、理解するよりも早く――私は熱風と轟音を感じた。
――わかる、精霊が悲鳴を上げて、この場から逃げ出した。
――わかる、何かが飛来して――――。

「……………………。」

私は、しばらく思考停止に陥っていた。
何が起こったのかという事すら理解できない。
片腕が――やけどで傷ついている。しかし、痛みすらも感じない。
ただ……一瞬にしてこの場の世界が…消え失せた…?

「……あ、嗚呼……ああああアアアアぁぁぁああぁぁあああ!!!!!」

それを理解した瞬間――私はただ、恐怖のあまり悲鳴を上げていた。
いままで出したこともないような、大声で。

吸血鬼アリス > (これでも見習いの魔王だ。この手の特大魔法は両親との特訓の時に何度も受けている。しかし、その特訓というのもやはりさっきが込められた魔法をバンバンうち放つようなものではない。ここまで混じり気のない殺気が込められた魔法を受けたのは生まれて初めてかもしれない。自分の防御魔法で何とか耐えきれたのは良かったが、ひどく摩耗しており、レイカを見れば火傷も見える。やはり、防ぎきれてはいなかったようだがこれで済んで良かった)

.......っ、

(どうやら自分にも少しのダメージは入っているらしい。右肩には赤く染まった傷跡。これくらいの傷なら数分あれば治癒するだろうが、その数分なんて待ってはられない。アリスは治癒魔法の呪文を唱え、まず先にレイカの片腕を治癒する。カレリアから教わった高等な治癒魔法だ。扱うのに半年はかかった魔法も今こうやって役に立てているのだから幸いか。しかし、レイカの精神状態は無事ではなさそうだ。発狂し出すレイカを目にアリスも思考が揺らぐ)

だ、大丈夫です、私がいます、だから...落ち着いてください...!

(未だ敵の正体は土埃に隠れわからない。しかし、あれほどの魔法を瞬時に扱える存在がいるとすれば魔王に匹敵するレベルだ。レイカをなんとか落ち着かせるために細い腕でレイカを抱きしめ、周囲に気休めの防御結界を無数に張り巡らせる。そして、敵の認識もできないままその見えない何かは再び魔力を込めた魔弾を何発も二人のいる結界へ撃ち放つ)

大丈夫、大丈夫だから、大丈夫です....、とにかく落ち着いてください...

(何度も何度も優しくレイカの耳元へ吐きかける言葉。この結界魔法もそこまで長くは持たないだろう。ならば、やはり自分がこの目の前の敵をどうにかするしかない。アリスは持ってきていたカバンから水の入った瓶を取り出し蓋を開ける)

レイカ > 片腕から、痛みが引いていく…のだが、今の私にそんなものは感知できなかった。
それはそうだ、さっきまでここは街道だったはずだ。
だけど、今見えているh従兄はただの焦土…たった一瞬で、消し炭になった世界が広がっている。
何故私が生きているのかなど、理解できるはずもなく…そんな強大な力に、私は酷く恐れを抱いた。

「いや、いやぁーーーーー!!!!!死ぬ、死ぬ…死ぬ死ぬ死ぬ………!!!
助けて、誰か、クライブ……!!!」

私は、知らず知らずのうちにあの人の名前を叫んでいた。
怖い、怖い、怖い……!
戦うと、決めた覚悟が一瞬にしてへし折れてしまい、なすすべなく私は泣き叫ぶしかできない。
落ち着いてくださいと、誰かが抱きしめている…。

「あ、アア……っ!!!」

結界が、魔弾を防ぐ。
その光景を見ている私は、次こそ此れが貫通するのではないかと思い、気が気ではない。
そんな状態で、落ち着いてくださいとは一体誰が言うのだろうか。
こんな魔力を、私一人でどうできるというのだろうか……。

「やめ、やめてぇぇぇぇぇ!!!!」

力の限り、私は泣き叫んでいた。

吸血鬼アリス > ....大丈夫です。
貴方を死なせたりしません。
少なくとも私は、この場で一人逃げるなんてことできませんから.....

(この状態を目にすれば、人は誰だって取り乱すだろう。誰だって普通の精神でいられるわけがない。カレリアほど神経がずぶとければ話は別だが、魔王であるネスと結婚し、夫婦になれるだけの精神を持つものはカレリアくらいだ。そして、自分はそのカレリアの血もちゃんと受け継いでいる。今この場で自分に出来ることは、ここで怯え叫ぶか弱き女性を守ること。ネスならそうしたはずだから)

この中は絶対安心です...
だから、絶対に外に出ないでください...

(先程の結界魔法とは比べ物にならないくらい、魔王である自分の持つ水の属性を含んだ強度な結界をレイカの周りに張り、自分はその結界から外へと出る。結界の外は魔弾の雨が確実に自分たちを殺すかのように降り注ぎ、それを交わしながら翼を羽ばたかせ瓶の中の水を空中へばらまく)

...あなたが誰だかはわかりませんけど、これ以上同じ魔王として名を汚すのはやめてください...!

(空中へばらまかれた水は一つの長い刀のようなものへ形状を変え、それはアリスの手の内へ。それを握ったアリスは水で出来た刀を振り下ろし土埃を振り払う)

レイカ > 「あ、ああぁ………うぁ……。」

少しずつだけど、周りの状況を頭が理解できるようになって来た。
とりあえず、わかっているのはなにかの襲撃を受けたこと。
そして、その襲撃者はあまりに強大な力を持っていて――簡単に人を殺してしまえること。
人間なんて虫けら同然に…。

「……うっ、くっ………!」

まだ、恐怖が残る体が上手く動かない。
まるで金縛りにあったかのように、手足が重く体に取り付いている。
無理に動くことも出来ないけれども…見ていて分かる。
あの子は…アリスは、自分を護ろうとしていることが。
周りに張られた水色の結界は、雨のように降り注ぐ魔弾をしっかりと防いでくれている…。
此れがなければ、私は確実に一瞬で…想像したくはないけれど、この世から消えてしまうだろう。

アレだけ疑っていた自分が…少し情けなくなった。
あの子は、本当に嘘をついていなかった……。
魔族でも…本当に……分かり合えるのかな、と少しだけ私の心に、そんな思いが芽生え始めた。

その、土埃の合間から一瞬だけ――アリスによく似た紫色の髪をした少女が、遠くへと逃げていった。
そんな、気がした……。

吸血鬼アリス > はぁ...はぁ...
どうやら、言ってくれたみたいですね...

(吹き荒れる土埃の中、何かが逃げるように消えていくのを認識すれば地面へ着地し、結界を解くことなくレイカの元へ駆け寄る。どうやら、怪我はないらしい。本当に良かったと心から安堵の息をつき、流石に魔力を使いすぎたのかペタリと地面へ跪いてしまう)

大丈夫ですか....?
もう、敵はいなくなったみたいです....、
でも、無事で本当に良かった...

(自分たちを襲ってきた者の正体はまったく分からなかったが、今は目の前のレイカを守り抜けたことが一番だ。アリスは、安心したついでに力が抜けてしまったのかドサッと音を立ててレイカに凭れるように倒れてしまう)

す、すいません...、
防御結界に魔力を使いすぎてしまって....

(立っていられなくなるほど魔力をつかわされたのは初めてだったが、何よりこれで一段落ついた。あのまま謎の敵が逃げなかったら今頃どうなっていただろうか...)

レイカ > 「………。」

何かが逃げていく気配は、つかめた。
私はただ、その場に座り込んで息を荒くしているだけの、怯えている子羊のようだった。
圧倒的な力、それをまざまざと見せ付けられてしまってはこうもなるというものだけど…。
正直思う、弟に見られなくてよかった…と。

「え、ええ………。だ、大丈夫…です。」

正体不明だけれども、明らかに自分たちを狙って攻撃をしてきた。
なんだろう、魔王を名乗るほどのアリスを攻撃してくるのだから…確実に、彼女を狙っていた?
…いや、今は考えるのはよそう。これ以上考えても、強大な力を理解できるはずもない。

「あ……あの。あ、ありが…とう……。」

魔族に礼を言う日が来るなんて、思っても見なかった。
私に向かって、倒れこむ少女を受け止め…少し休ませたほうがいいだろう。
そろそろ、拠点に戻っていた仲間が援軍を率いて戻ってくるはず…。
しかし…わかったことが一つ。彼女は、本当に人間に危害を加えるつもりはない。
そればかりか…理解し、親密になろうとしている節すらうかがえる。
私は……とてつもない勘違いをしていたと思い知らされてしまった。

「………レイカ。そう…呼んでください。」

私は、自分の名前を名乗った。
彼女には恩を受けたのだから…礼を失するわけには行かない。

吸血鬼アリス > 腕の傷も、しっかり治癒してるので心配なく...

(ヘトヘトな顔を浮かべるも、レイカが無事だという事実に先程の怯えた表情はなく、満面の笑みを浮かべながら口にする。今こうやって目の前の女性を守れて、嫌な気持ちがしないのはきっと両親の教えは正しかったのだろう。これだけ魔力を使い果たしたというのに、全く不愉快な気持ちにはならなかった)

...、お礼なんて...いいですよ...
私はただ、私がしたかったから、なんです...

(他人からお礼を言われるのは初めてだったため少し照れくさかったが、本心をありのままに話す。どうやらしばらくは満足に魔法を使うことも出来ないだろ。ここまで披露した自分の姿を見ればきっとネスやカレリアも怒るだろうし心配するだろう。しかし、今日はそれもいいかなと思っていた)

っ....、れ、レイカさん...
名前、教えてくれて...ありがとうございます...

(ニッコリと年齢相応な笑顔を浮かべ、そして少し気まずそうに口にする。"あの...、少しでいいので血を分けてくれませんか...?このままだと、一人で城まで帰るのは難しそうなので..."ハーフとは言っても吸血鬼は吸血鬼だ。魔力=血液といっても過言ではないアリスにとって、この状態で城に帰る為には血液を体内へ入れるしかないのだ)

レイカ > 「腕の……?」

ああ、そういえばなんだか右腕が涼しいような…。
まったく気づいていなかったし、傷の跡もなく直っているので気にもしていなかったが…。
どうやら傷を彼女が治してくれたらしい…。
言わなければ気づかないだろうに…律儀な子なのかもしれない。

「……っ…。…貴女がしたかったとしても、お礼を言わなければならないんです…。
あと…以前私は、魔族だからわかりあうことなんて無理だと…そう思っていました。
だけど……魔族も、多種多様なんですね……。」

だとしたら、分かり合うことも出来なくはないのかもしれない…。
あの時、甘ちゃんだと罵った彼に、謝罪したくもなったけど…私はやはり、魔族は敵だ、と思う。
私が気を許したのは、アリスであって魔族ではない。そこは、はっきりさせておこう…。

「……名、名前を教えてもらっておいて、此方が名乗らないのは失礼だと思ったまでです…。」

だから、彼女のことは…もう疑わないし、信じてもいいだろう。
そして、その両親とも…話し次第では分かり合えるのかもしれない、と少し思った。
人間だというカレリアも…実は。

だけど、私は彼女から続いた言葉に、やっぱり魔族なんだな…と思ってしまう。
…ええい、仕方がない…。恩があるのだから…。

「……少し………だけですからね…。
あ、あと!血を吸われたら快楽におぼれるなんてこともないですよね!?」

以前、私は吸血鬼に不意を疲れて、吸血されたことがある。
そのときに大いに乱れてしまって…そのときの恥辱は今でも忘れられないのだ。

吸血鬼アリス > ....私は、私の住むお城には、お母さんに仕える執事さんやメイドさん達が沢山いて...、でも皆魔族ばかりじゃなく、お母さんに助けられた人間の人達もいるんです...
レイカさんのように、魔族は人間の敵という考えは、普通なのかもしれないですけど、それでも私は...ちゃんと話せば分かり合えると思ってます

(普段あまり話さないアリスが自分の思っていることを自分の意思で話している。それはとても珍しいことで、アリスの成長も少し見られるものだった)

.....きっと、私たちの一族が特別変わっているだけなのかもです...
さっきみたいに、突然襲って平気で人を殺すような魔族もいますから...

(ただ、レイカに魔族と分かり合えるかもしれないという思いが芽生えたことには正直嬉しかった。だからこそ、魔族や魔王を簡単に信じて欲しくないとも思ったのだ)

レイカさん....

(なんだかすごく、目の前の女性の印象が大きく変わったような気がした。最初は冷たくて怖い人だと思っていたが、全然そんなことは無かったのだろう。自分が助けた、なんて奢るつもりはないが、こんな綺麗な女性を守れたことはアリスにとってとても自慢になることだった)

あ、ありがとうございます...
え、えっと...それはないので安心してください...

(ネスはたまに自分の牙に婬の魔力を宿して人に噛み付くことがあるらしいが自分にはそんな魔法もなければそんな毒薬も牙に付いていない。ゆっくりと顔を上げ、レイカの首元へと...)

少しだけくすぐったいかも知れませんが...すぐ終わります....

(口を開け、牙を白い肌へ突き立てる。もちろん、痛みを感じることのないよう麻痺魔法を施してあり、感じるのは少しばかりのくすぐったさだけ。レイカの鮮血が口内へ流れ込み、それは魔力となってアリスの体内へと...。その際、自身の魔力を少しだけレイカの体内へ流し込んだ)

っん、ふぁ...
ありがとうございます...
....少しだけ私の魔力をレイカさんの体内へ流し込みました...
これは、魔力感知と魔力疎通の効果があって、さっきみたいに小さな魔力でも感じられるようになります...
あと、レイカさんにもし何かあったら私がすぐに解るようにもなってます...

(先程の正体不明の敵のこともあってかなり心配しているのか、自分の魔力の中でもかなり上等なものを彼女へ託す)

レイカ > 「………そうですか。」

驚かないわけはなかった。
魔族が人間を助けるなんていう話は聞いたこともない。
けれど…アリスがいうのだから、それはきっと真実なのだろう。
ありえないと思っていた話だけれども…こうまざまざと、その成功例を見せられてしまうと…。
ふっと、少し私は笑みを浮かべると、首筋を彼女に差し出した。

「あ、あまり痛くはしないで……んっ…。」

以前、吸血鬼に血を吸われたとき、私の血は蜂蜜のように甘いという感想をもらった。
おそらく私の種族…エルフだという事が関係しているのだろう。
少しだけ私の血を吸った彼女も、そんな味を味わうのだろうか。
それは…魔族にとって癖になる味、と言う話だけど。

「……も、もうおしまいですからね…。
って…そんな魔力を、私に……?」

魔力探知の力は、正直ありがたいものだった。
さっきのように、感知できない相手が現れたとしても、先に対処が出来るようになる。
いままで感じなかったそれ…恥ずかしながら、私には魔力というものが一切備わっていなかった。
けれども、からだの内側から溢れるような、かすかに暖かい力を…アリスからもらった…。

「……ふふっ、優しいんですね、アリスは……。」

アリスのような魔族ばかりならば、争いも起きないだろうに…。
私は、少しだけそう思うと……彼女の手をつかんだ。

「…ですが、今日一日は貴女を捕らえます。
明日の朝……お城に帰るといいでしょう。」

今日一日は、ゆっくりと休むといい。
拠点のほうには、私から上手く説明しておこう。
彼女は、先の山賊騒ぎのときに別の場所で襲われたミレー族の少女だとでも。

吸血鬼アリス > 私は小さな世界しか知らないので...、きっとレイカさんの知っていること、思っていることが正しいんだと思います...
だから、私の話は頭の片隅に小さく置いておく程度で構いません...

(ただ自分のことを信じてくれたレイカへ、ありったけの笑顔で答える。自分以外の魔族を信じろとは言わない。自分以外の魔族へ親しくしろとも言わない。ただ、自分のような変わり者もこの世界にはいるのだろう。それだけを伝えたかったのだ)

っん、はぁ...ん...

(アリスはまだ血液の味をよくわかってはいなかった。ただ、吸血鬼が生きていくためにはヒトの血を吸うしかない。不死身とはいえ、血液を吸うことを拒み続けた結果どうなったのか、それを昔それを昔ネスから昔話のように聞かされたことがあった。エルフという種族に関しても、アリスはあまりわかっていない様子だ)

いえ、せっかく出来た"お友達"...なんです、

(意識はしてなかったが、口にしたその"友達"という言葉。彼女はただ、真剣に口にしている。もちろん、まだ友達という関係には至っていないだろうが...)

もし、レイカさんが危険を感じたら、私の魔力を使って私のことを呼んでください...
そしたら、すぐに行きます...

(微かにレイカの中を駆け巡る小さな水色の魔力は、レイカの心を癒すような効果もあるのだろうか。それはたしかに、レイカの体内を熱く駆け回っていた)

...わ、わかってます。
もう怯えたりしません...

(生まれて初めて一度も城に帰らずまさかの朝帰り決定。今日1日だけで、いろいろなことがありすぎて疲れてしまったのか、大きなため息がこぼれる)

レイカ > 「…世の中には、正しいものなんて一つもないんだと…私はそう思います。」

私の常識、魔族が皆敵であると言う常識は間違っていた…。
そもそも、人間の中にもバフートの奴隷商人のような者たちがいる。
彼らこそ、真の魔族だと…私はそんな思いを抱いた。
そして、思い知ったのだ。”魔族と人間の境界はあいまいなんだ”と。
魔族だから、ではなく…”そのものがどういう者なのか”で判断すべきなんだ、と。

首筋を軽く抑えるのは、出血があるから。
以前もそうだったけれども、この血はしばらくは止まらない…。
だからこそ、彼女の力には頼らずにしばらくはこうして抑えておくのだ。

「…そうですね、お友達……ですからね。」

初めて出来た、魔族のお友達…。
とても、とても珍しい、魔族のお友達であった。

「……ええ、そのときはまた……助けてくださいね。」

彼女の力は水の力。
わかる――心地いい水の感触を全身に感じる。
そして、より聞こえるようになった水の精霊の声…。
此れならばもしかしたら、水の精霊の力を借りた攻撃も、できるようになるのかもしれない…。

「ああ、捕らえるというのは建前上のことです…。
私の家で…ゆっくりと疲れを癒してください。」

ため息を着く彼女の手をとり、拠点へと歩き出す。
途中、援軍を率いてやってきた組織の人間たちと遭遇したけど、アリスのことは上手く説明した。
彼女はミレー族と偽り…私の友達だと、紹介して。
明日の朝――私は彼女に黒いローブを貸し与えた。
朝日で彼女の肌が焼けないように、と。
そして……彼女の後姿を見送り…私はようやく、大きく大きく息を吐いた。

「………ハァァ…。世界は、ほんとにわからないことだらけです……。」

そんな独り言を呟いて。

吸血鬼アリス > そう、なのかもしれないです...

(正しいことなどこの世界にはない。レイカのその言葉に納得してしまう自分がいた。確かに、魔族の者でさえ奴隷のように扱う人間がいるということもカレリアから聞いたことがあるし、ネスのような魔王でさえ太刀打ちできないほどの闇を持つ人間もいるのだ)

.....、だから、私が守ります!

(自分にとって初めて出来た友人。彼女はきっとアリスにとって生涯大切な友達になることだろう。だからこそ、自分の魔王としての力は誰かを守るために使いたいのだ。家族だけではなく、こうしてわかりあえた人間達のためにも)

ありがとうございます...
きっと一晩寝ればまたすぐに元気になります...

(いつもなら無理してでも城に帰るのだが、今日くらいいいだろう。せっかくできた友人と今夜は長く話すことになりそうだ。どんな話をしたのかはいずれ...
そして、翌日。彼女から借りた黒いフード付きのローブ。それを羽織り再会の約束を交わせば魔族の国へと向かって歩き出す。帰ったら両親の説教が待っているだろうが、それは仕方の無いこと。
一人の魔王を見送るエルフの姿。その光景だけがその場に残された)

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」から吸血鬼アリスさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からレイカさんが去りました。