2016/06/27 のログ
ご案内:「九頭龍山脈/湯処 九龍」にエーヴさんが現れました。
■エーヴ > さる事情からとある薬品を大量に飲むはめになったエーヴは、酷い頭痛と腹痛に襲われる羽目になり医者に駆け込んだ。無論、盗賊が行くような医者である。顔が割れても問題ない闇医者であることは言うまでもなく。
薬品の解毒剤を無理に飲ませることも出来ぬとしばらく温泉にでも浸かって安静にしておけと言われたのだ。柄にもなく休む嵌めになった娘が向かったのは、風の便りに知った宿であった。
腹を押さえてちょっと休憩をといったのが悪かったのかもしれない。何を勘違いしたのか二人部屋に通される。おまけに温泉付だ。たまたまとある組織からぶんどってきた大金があったので、取りあえず考えなしに突っ込んだのも悪かったのだ。金目当てではなく盗みが目当ての盗賊は金の価値がいまいちわかっていなかった。
「相方さんがきたら通しますね」なる言葉を聞き逃したのも運が悪かった。
「はー……」
広い浴室。曰く東の国の様式を真似たというそれの野外の浴室に一人浸かる赤髪一匹。
■エーヴ > 近くの浴室から男達が入浴する音が聞こえてきた。やれ団長がどうの、やれ故郷の女がどうの、酒がどうの、膝がどうの、仲よさそうに話している。
湯の中で足を伸ばす。心地よい。傷一つ無い素肌に染み渡る柔らかい湯の感覚に目を細め、両足をばたつかせた。
「気持ちいいなー………たまにはお酒とか……」
故郷では年齢に問わず酒を飲む習慣があった。酒を注文すれば持ってきてくれる程度の金は渡してある。
が、首を振ると湯の中で伸びをした。
「飲むとろくなことなんないんだもんやめとこ」
そうなのだ。飲むと人が変わったように絡みまくるのだ。飲むべきではないなと首を振り、湯船という温かいベッドの中でうつらうつらとする。
■エーヴ > はっとして目を覚ます。
暫しうたた寝していたようだった。湯にあたり過ぎて気を失うということもあるそうだ。解けかけていた髪の毛を手早く纏めなおすと、ふとそれに気が付いた。
「穴?」
仕切りとなる塀に小さい穴が空いているのだ。誰かが工具か何かで開けたかのように不自然な位置についている。
好奇心を押さえきれず穴の中を覗き見てみた。穴を覗くにあたってはタオル一枚巻かずに身を屈めている。誰かがいるならまだしも、誰も同じ浴場にいないならばかまわないという考えであった。
穴の向こう側は――残念ながら、空っぽの浴室だけがあった。
しばらく見ていれば何か見えるかもしれないと覗き見に精を出す。
■エーヴ > 見えてきたものと言えば湯船の壁に落ち葉程度のもの。面白いものが映りこんでくることは無かった。
ついていないと思ったが、へたな騒動に巻き込まれなくて済んだと考えれば儲けものだと思えばいい。
エーヴは穴を覗き込むことをやめると暫し涼んだ。
そうして体調はすっかり元通りになったという。
ご案内:「九頭龍山脈/湯処 九龍」からエーヴさんが去りました。