2015/12/13 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」にタマモさんが現れました。
タマモ > やっと手に入れた獲物の使用感を試したい。
…そう思ったのだけど、さすがに王都の中で人を襲う訳にはいかない。
そんな訳で、色々と酒場なりで噂を聞けばこの付近にこれば危険なのだという話。
ではさっそくとやってきたのだが…

「………本当にここは危険なのかのぅ?」

ぽつりと呟く。
この…なんとか山脈?とやらに来て結構歩いている。
なのに見える景色は木々の茂る山道、出会う相手といえばこの山に住む動物達だ。
なんとも平和な場所ではないか。
はふん、まぁ、でもこれはこれで悪くはないのだが…そう考えながら、適当な岩を見付けてよいしょと腰を下ろした。

タマモ > さすがに、危険も無い動物を襲ったところで使用感を試せるものでもない。
せめて…人間、それも都合よく山賊なんて現れたら喜ばしい事だ。
右手に持つ新しい扇子を閉じたまま、ぷらぷらと揺らす。
左手は唐傘をさしながら肩にかけ、くるくると回す。

…もうあれだ、この山道を通りたかったら自分を倒せとか、そんな行為に走ってみるか?
そんな物騒な考えまで浮かび始める始末だ。

ちらりと視線を少し横に、右手の扇子をさっと広げると、流れるような動きで投げ付ける。
扇子はくるくると回りながら、離れた樹木の横をすっと通り抜け…少女の手元に戻った。
ぱしんっ、と開いていた扇子を閉じる。
それを合図に、ぐらりと樹木が揺れ…大きな音を立てて倒れた。
扇子が通り抜けていったように見えるその高さから、綺麗に切れているのが見て取れるかもしれない。

「ふむ…止まっている的は、こんなものなんじゃがのぅ…?」

もう興味はないと倒れた樹木から視線を外す。
さて、もう少し探すか…そう考えながら、岩から腰を上げた。

タマモ > それからまたしばらくは山中を歩く羽目になる。

幸か不幸か、求めていた相手との遭遇はしばらくは無かった。
しかし、さすがに山中を何か探し回るような行動をしていれば、いずれはその姿が目に留まるだろう。

ぴたりと少女が足を止めた。
すんっと鼻を鳴らす…この匂い、覚えのある動物の匂いではない。
となると…

と、考えを巡らせている余裕も与えられない。
今度はぴくんっと耳が揺れ、顔を動かさぬまま視線がすっと横に向けられる。
きりきりと引き搾る音が幾つか耳に入っていた。
そして…ひゅんっ、と風を切る音。それは誰でもない、自分に向かっているのだろう、音が大きくなる。

少女へと向かって放たれる風切る音、いうまでも無い、矢がこちらに射られたのだろう。
少女は慌てる様子もなく、すっと開いたままの唐傘をそちらへと向けた。
がつっ、硬い物同士が当たる音と共に、ぱさりと地面に3本の矢が落ちる。
再び唐傘を肩へと戻せば、そうかからずして…木々の間から3・4人の男達が現れた。
さっきの弓矢も考えれば、もう3人くらい向こうに居るのだろう。

「あぁ、やっと…やっと妾の求める相手に出会えたぞ?
よく来たな、山賊共よ…済まぬが、ちと妾に倒されておくれ?」

浮かべた笑みを山賊と思われる男達へと向け…言葉を紡ぎながら、一歩前に歩みだした。

タマモ > 山賊共が自分に何かを叫び散らしている。
だが、そんな言葉に少女はまったく耳を傾ける気は無い。

駆け寄る訳でもない、ゆっくりとした足取りで近付いていく。
…まだ何か叫んでおるのか…まったく、よく喋るのぅ…?
顔を上げ、改めて連中を見る。その瞳が鈍い輝きを放った。

剣だ斧だ、手にした獲物を振り上げ襲い掛かってくる山賊。
ゆらり…流れるような動きでその刃先をすり抜けるように避ける。
紙一重の動きで攻撃を避ければ、そこはもう相手の懐の中。
広げた扇子をとんっ、と腹部に当て…顔を上げてその男の顔を見遣る。
相手がどんな表情を浮かべ、これを受けるのか…それを眺めるように。
そのまますっと横へと移動するような足運びをする。
次の瞬間、その男の腹が横に裂けた。
信じられないというような表情を浮かべ、その裂けた己の腹を見ながら…ぐらりと体が揺れ、倒れる。
そのままぴくりとも動かなくなってしまう。
そこまでの様子をずっと視線を外さずに見続ける少女。

そうしている間にも、他の者達は少女への攻撃を与えようと動く。
しかし、その攻撃は少女に触れる事もなく避けられていった。

タマモ > 「そうか、やはり裂くだけならば…この程度で良さそうじゃのぅ?」

独り言のように少女は呟き、攻撃を避けた事で同じように懐へと入っている次の男に顔を向けた。
今し方倒れた男を見ていたのだろう、その表情は恐怖に歪んでいる。

そう…それで良い。
愛でる者達の色情も良いが、こうしたもう後の無い絶望感も、悪くは無い。

今度は少し力を込めてみようか?
揺れる扇子はその男の両足の腿の辺りをすり抜けていった。
二人目の男の横を素通りし、三人目へと向かう。
ちらりと持つ獲物を見る、どうやら斧だ…頭をかち割ろうとしているのか上から大振りで振り下ろしてきている。
そんな大振りで当たらぬのは分かっているだろうに…小さく溜息、するりと体を僅かに横に動かし、その斧も避ける。
後ろで何か大きな物が倒れる音と、叫び声、そして目の前の男の歪む表情。
その男には見えるだろう、目の前の仲間が倒れる様を。
地面に両足を残して、体が地面に落ちるところを。

タマモ > 「ふむ…良いのぅ…お主等のような連中であるからこそ、こういった事を試せる…礼を言うておくぞ?」

そして、お別れじゃ。
ぽつりと呟き、斧を振り下ろし前屈みになっている首元に、扇子を当てた。
…すっと扇子が振り上げられ、降ろされる。
その男の横も抜けていき、先に進もうとするが…木々の間を縫う様に逃げる男の後姿。
なるほど、1人だけ突っ込んで来ずに…そして、弓を射た連中も一緒で逃げか。
後ろでがくりと膝を付き、ばたりと倒れる三人目の男、その首は皮一枚繋がって絶命していた。

噎せ返るような血の匂い…そんな中、少女はどこかうっとりとした表情を浮かべている。

「ふふ…一蓮托生じゃろう?お主等だけ生き残るなどと…」

ぱちんっ、と扇子を閉じ、その先を逃げた方向へと差し出す。
ゆらりと先が揺れ、宙に印を描く…それは紅色に輝き、爆ぜる。
そして、少女は終わったとばかりにくるりと振り返った。

ここからは見えない場所、遠く離れたところで4体の焼死体が後々見付かるだろう。

タマモ > ちらりと倒れた男達を一瞥し、もう興味は無いと視線を王都へと向ける。
扇子にも、己にも、散った血液は付着していない。
地面に広がる血溜まりを避けるようにして、離れる。

「うむ、ほぼ力も戻った。これでもう完璧じゃのぅ?
まったく、この数日もうどうなるものかと不安だったものじゃが…これで一安心じゃ」

閉じた扇子を裾へとしまい込み、さした唐傘をそのままに、その場を後する。
あの連中はあのまま放置しておいても、どうせ動物か何かが後始末くらいしてくれるだろう。

そして、いまだに遠い地からの気配に動きは見られない。
ならば…

「一先ずは王都に戻って………観光じゃな」

タマモ > 少女の思考の切り替えは早い。
それは良い意味でも悪い意味でもあるが…
そうと決まれば、さっそく色々と巡る計画を立てねばならぬと考える。
惨状を後に王都へと向かいながら、懐から財布を取り出し、中を確認する。
色々と巡って、色々と買い漁って…色々と…ん…?
財布の中身を確認し、はて?と首を傾げた。
ふるふるっと振ってみる、妙に音が軽い。
…要するにお金があんまりない。

「ば、馬鹿なっ!?妾はそんなに無駄遣いなんぞしてお…ら…ぬ………?」
ティルヒアに居た頃は、結構工面されて良い生活を送れていた。
今は離脱して王都側に付いている、立場は客人として。
収入?そんなものが今どこから入っているんですか?そんな感じだ。
そんな状態で扇子と唐傘を購入したのだ、そんなに残ってる訳がない。

「ど…どうする…どうするのじゃ…!?」

立ち止まり、頭を抱える。
何か…何か無いのか!?心の中で叫びながら、袖の中や懐を探り出す。

タマモ > 「む…?」

探っているところで、ころんっと鉱石が幾つか転がり落ちた。
なんとかという山の採掘場で拾った物だ。
…確か、アスタルテは大層な鉱石だと言っておったような…
ならば、これを売れば収入になるか!?
そう思えば、わさわさと転がった鉱石を拾い、懐に戻す。
もう頭の中はこれを売って資金にし、観光をするとかどうとか計画が組みあがった。
懐に収めた鉱石を大事そうに、ぱたぱたと駆けて行くのであった。

だが少女は気付いていない。
売るのはいいがどこで売るのかと。
そして…この鉱石の価値を。
ちゃんとした場所でちゃんと売れば、思った以上の収入になるだろう。
果たして、それを少女が出来るのかどうか…

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道」からタマモさんが去りました。