2015/10/21 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にソードさんが現れました。
■ソード > (たき火。ぱちぱちと炎が爆ぜる。
揺れる橙色を見つめながら、男はそこにいた。
湯気をくゆらせる天然の温泉がわき出すその場所は、しかし人の手の入らぬ場所。故に温泉の利用者は、殆ど獣ばかりだ。
時折、ヒトだの魔族だのが来る事もあるのだろうが、少なくとも施設化された場所ではなく、完全に自然のままの姿をさらしている。
そんな温泉かた少しだけ離れた場所にて、男は火を焚いていた。
野営である。
火の傍らには、魚でも焼いて食べたような痕跡も残っている。
見上げれば、星空が見えた。)
やっぱ噂なんざアテにはならんな。
(ため息を一つ。
冒険者たる男がこんな処にいる理由はもちろん仕事……では、今回はない。
今回は、この近くにあるという遺跡に潜っていたのだ。
最近見つかったばかりのその遺跡には、何でも優秀な魔剣が眠っているという伝説があったのである。
まぁ結局見つかったのは、錆びかけた宝石だらけに剣一振りのみ。
明らかに、悪趣味な金持ち用のインテリア用品であり、武器としての使用に耐えうる代物ではなかった。
ひとまずは持って帰って来たそれは、今夜の枕にでもなる予定である。)
■ソード > (タナール砦に比較的近い座標にあるここは、つまり魔族領にも程近いという場所でもある。
それと必ずしも関係あるのかどうかは分からないが、遺跡の中は魔物の数も多く、質も高かった。
女を貶めるような類のものも少なくなかった事を考えれば、案外あの噂は「釣り」だったのかも知れない。
まぁ、結局やって来たのはゴツい野郎であり、その上暴風のように中を荒らしまわって好き勝手言いながら去って行ったのだから、仮にそうであったとすれば、仕掛けた側はガッカリこの上ないだろうが。
視線を、無造作に転がした戦利品の剣へと向ける。
やはり、どうあっても武器として使えそうではない。鞘から抜き放っても、剣身は完全にボロボロであった。
あるいは、何らかの条件を満たせば覚醒する面倒くさい魔道具の可能性も否定できないが、少なくとも男の知識や感覚の範囲内ではそのような様子はない。)
―――もういっそ、適当な魔族が持ってるやつをぶん奪るってのもテかねぇ。
(ほとんど賊のような事を嘯きながら、視線を星空へと。
思いをはせるのは、最近手を合わせた魔族達が使っていた武装。
魔法で生み出したり何なりという代物が多く、とても奪えそうにもない。
男はため息をついて、星空から視線をたき火へと。
退屈だねぇ、とは思わず口をついた独白。)
■ソード > (まぁ実際問題として、男は別にそこまで優秀な武器を求めている訳ではない。
こないだ購入した鋼のブロードソードで、別段事は足りる。
最近は強敵との接敵が多く非常に愉しいのだが、どうしても戦闘中に武器が耐えられなくなる事が多い。
それは相手の技であったり、戦闘の速度であったりと様々な条件による。
故に、以前知人から言われた「良い武器を持ってみては」というニュアンスの言葉を思い出して、何となく探しているに過ぎないのだ。
こうしてわざわざ遺跡などへ乗り込んで行ったのも、実は剣そのもの以上に何かしらの愉しいイベントを期待していた側面が大きい。
結果、剣もイベントもなかった訳なのだが。)
あー……せっかくこの辺まで来てんだし、砦の様子でも見てくっかねぇ。
……ああいや、どうせなら魔族の国まで足伸ばすか。
(遠足気分かと、そんな風情で吐かれた言葉は、概ねロクでもない。
星空を見上げながらのその嘯きは、割合本気の色が強かった。
今から走って行けば、さほど時間もかかるまい、と。
その程度には、男は退屈していた。
傍らの温泉へと視線を移す。
どんな薬効があるものやら知らないが、少なくとも魔力は非常に高濃度に含有されているように思える泉質。
実は先ほど入ったのだが、もう一回入るかねぇ、などと目を細めた。)
■ソード > ……あー、ダメだ。ツマんね。
(いつもなら、そのまま不貞寝してしまう事が多いのだが。
今夜はどうにも我慢がならなかったらしい。傍らの「戦利品」をひっつかんで立ち上がる。
ひとまず、街に戻って女を抱くなり、砦の様子を見に行くなり、こんまま走って魔族の国まで突っ込んで行くなり、どれかでいこうと方針をざっくりと決める。
とにかく、ここでのんびりと座しているのは、もはや耐えられない。
星空へ視線を巡らせる。
ふとその時、流れ星が一つ流れた。
流れた方向は、北方。魔族の国のある方向だ。
男はまるで、牙を剥くように笑う。
実際は、常と何らかわらない笑みなのだけど。)
―――決まりだな。
(剣呑な言葉を漏らす。
ここでたき火の炎に、適当に脚で土をかけて、弱まった火を蹴っ飛ばすようにして薪を散らす。
火が消えれば、周囲に闇が落ちた。
男はそのまま、ぐっ、と脚に力を込めて一気に跳躍する。
太い木の枝へと着地した時には、もう既にそこにはいない。
男は連続した跳躍に加速を載せて、獣のように、嵐のように、その場を去って行った。)
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からソードさんが去りました。