2021/05/01 のログ
■八蛟 > オーガ店主が、奥からゴトリと音を立てて戻ってくる音が聞こえてくる
八蛟は、煙管の一服 ほんの三口程度のそれを二度繰り返すだけで済んだ
胡桃のように二つに綺麗に割れた大振りの種殻へカチンッと落ちる灰
灰入れを閉じ、管の残る煙とカスをプッと一吹き
与える時間は短い癖に、与える手間はその倍ときている煙管を戻し、再びスカートの縁目に差し込んだのなら現物を拝む
『ほらよ。』
肩に担いで現れたオヤジの代物は、厚い油紙で覆われた長物
重く鈍い音が響いたなら、太い筋肉質な手は軽々と片手で掴み、包みを捲る
バリバリとした、まるで湿気た鉄板のようなそれをはがせば現れたのは八角の鉄棍棒
八角鋲が縦に八面に刻まれ、握りの先は円環 何かの大型の髭で手に絡めるようにされたぶっといもの
所謂 “金砕棒” が表れた。
「おう やっぱ鬼はこれだよな。」
尖ったスパイクでもなく、丸い鋲でもない 平面八角のナットのような鋲が撃ち込まれた鋼の塊
中に木材を使用していない純鋼の鍛鉄製に八蛟は気分良く持ち上げる。
「長さも丁度だねぇ。 銘はあんのかい。」
少し前へ出て、広い空間故にブンッと振るってみる。
150㎝といったところか。
斬れない刺せない貫けないを解決させた古今の武器。
肩に担ぎ、オヤジに聞けば短く頬杖をついて答える。
『八壊』
ハッカイと答えたそれは、酒の名前 呪われた武具 有名なおとぎ話の大陸のオーク
いろいろな意味を持ち、八の字を刻んでいる八蛟には好い代物だった
「折れたりしないだろうね。」
ゴンゴンと太い先を拳でノックしながらも、オヤジも洋鬼
試し振りはしていると述べ、満足させた。
「これなら武器でやり合うときも、アタシを満足させるさ。」
拳で全力で語り合う 開放にも似たそれ もちろん未だ素手で殴り合うのが一番単純で明快で信頼している
だが鬼はどういう事情か武器を握ってみたくなったらしい。
「ほら、釣りはとっときなよ。」
懐から惜しみなく、革袋に包まれた砂金を熔かし、粒にしたものを詰めたそれを放り渡す
鬼はうそをつく必要が無く、一粒一粒が、小石に塗り付けた金などということもない。
■八蛟 > その獲物を、どう持ち歩くかという話になると八蛟も顎を撫でて考えてしまう
背中に背負うような柄でもなく、肩に担ぎっぱなしでも好いのだ
結局のところ、八蛟は今の身形を変える必要もなく、そのまま持ち歩くことにしたらしい。
金も支払いを済ませ、土産の酒でぐい飲みに注いだ二つ
互いに打ち鳴らしグイと一息で開けたのなら、店を出ようとする八蛟を止めるオヤジ
「あん?」
肩に担いだまま出ていこうとしたところで、チラシを一枚見せてくる。
アケローンでは足を延ばすにはじれったかろうと、ハイブラゼール内で行われている似たような舞台へ誘うオヤジ
武器を握ったら誰しも、試し斬りというものをしたくなるものだろうと
「粋な計らいに感謝するよ、オヤジ。」
太く逞しい犬歯を歯列を見せる笑みで、楽し気な笑みを浮かべてチラシを覗く。
武器屋通りと提携できているのだろう
下準備から冒険の手助けまで ハイブラの店で揃わないものは格や珍品だけだ。
店を出ていく八蛟を見ながら、頬杖をついたままのオヤジは土産酒を片手に次を注げば、グッとあおり。
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 武器屋通り」から八蛟さんが去りました。