2021/02/01 のログ
■ホアジャオ > とっぷりと日が暮れると、歓楽街ハイブラゼールは輝きを増す。
どの建物も華美にライトアップされて通りは寒さなどものともしないように人で溢れていて、黒い空に浮かんで寒々と白い光を零す月と対照的な様相だ。
そんな歓楽街によくあるカジノの一軒も、今宵も今宵とて賑わって居る。
ざわざわがやがやと縦横無尽に客やウェイターやらが行き交い、時折音曲が何処からか流れてきて、ひとびとの顔はそろって上気して浮かれている様に見える。
その広い部屋に幾つもある、酒を提供する円形のカウンターに、すこし変わった衣装の女がひとり。
見る人が見れば、その衣装がシェンヤンの上流階級のものが纏う漢服だというのが解るだろう。絹地の幾重かに重ねた長衣も帯も絹製で、暗い赤色を主にしているが独特の光沢を放っている。
纏う女はさぞ気品のある…という所だが
「――――… もう一杯」
細い目の端をほんのり染めて、カウンターに頬杖ついてぶすっとした顔をしている様は如何せん、ガラの悪さが滲み出てしまっていて、お里が知れるというやつである。
女からグラスを押し出されたほうのバーテンも、半分おっかなびっくりで次を用意する。
たまにこういう格好でもしてみたら、人さらいとかが間違えて手を出して来たり(そしてそいつを思いっきりぶちのめすことができたり)しないかなあと思ってうろついてみたものの
さっきから声を掛けて来るのは、女のひと睨みで退散する程度の優男ばっかり。
(…何か揉め事とか無いかな…)
物騒な事を考えながら、頬杖ついて行き交う人々を眺める。
■ホアジャオ > これだけひとが居て、これだけお酒とお金と男と女のかおりとが充満している場所だ。
何も無いわけがない。
「―――…ごちそう様」
意外と律儀にバーテンに礼をいうと、女はするりと椅子から滑り降りる。長い裾を踏みそうになるのはご愛敬だと思って欲しい。
しゃなりしゃなりとはいかないが意外と器用に長衣の裾をさばきつつ
妙な気―――喧嘩を売りたい――を振りまく女は、カジノの中巡回よろしく、漂っていく…
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2【イベント開催中】カジノ」からホアジャオさんが去りました。