2020/07/13 のログ
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2【イベント開催中】」にフィリさんが現れました。
フィリ > 盛況の続くオークションに、久しぶりにやって来た。
以前は小さな小物一つを買っただけだが。今回の目的は、もう少し大きくなる。

それは、今現在逗留する実家に、宣伝ビラが届いた事から始まった。
何でも本日は。一斉に多数の古書店達が集い、様々な蔵書が売りに出される、古本市が目玉なのだという。
貴書や珍品の類は、当然高値が付いて手も出せないのだろうが…本の虫である少女にとっては。
好事家には何と言う事のない物であろうと、きっと、初めて見る物となってくれる筈。
残念ながらろくに買えない結果になるとしても。古書の匂いに包まれ、数多の書架の間を巡るだけでも。きっと楽しい。

「――――です、ので…期待してしまぅ、と、思われ…ます。良き出逢ぃ…に。」

意気込みを示すかの如く。小さく拳を握ってから、いざ会場内へ。
遠い異国の不文律に従って、カレーライスで腹拵えも済ませてある。
今日はじっくり一日中。本に埋もれて過ごすのだ。

フィリ > 一歩足を踏み入れれば。途端に、古めかしい…書物特有の匂いに包まれた。
人によっては黴臭さ寸前に感じるかもしれないそれも。少女にとっては、間接的に触れる時間の香り。
心地良さ気に、一度瞼を閉じて深呼吸をすれば。いざ、書架の間を旅し始める事となる。

勿論、それ毎会場へと運び込まなければならないのだから、書架その物はあくまで仮設。
本格的な図書館めいた、天井迄届くかのように巨大な本棚等ではなく。
歴史のある古書を収めるには、風情に欠けているとしか言い様のない、近代的なラックばかりが並んでいる。

しかし、寧ろ背の低い少女にとっては。この方が有難い。
お陰で棚の一つ一つを、上から下まで、とっくりと眺める事が出来るのだ。

今、背表紙を追う棚には。図録の類が並んでいる様子。
動物、植物、鳥に魚に昆虫に。王国一帯の遺物や風物。様々な異国の工芸品や伝統装束。
古代に滅んだ、竜のような生き物の化石から。手が届く筈の無い、星々を取り扱った物まで。
時折、一冊引っ張り出しては頁を捲る。
文字と図画とを頭の中で受け止めれば。何処にでも行ける。何にでも出会える。
だから、読書はやめられない。

フィリ > 「――…………っ、ぁ…」

ふと。声を上げたのは。
遠く会場の外から、街に響く鐘の音が――夕刻を過ぎて夜半へと差し掛かる、そんな時報が届いたから。
別に、門限が定められている訳ではないものの。あまり遅くなりすぎて、家人やその他の人々を心配させたくない。
唯でさえこの街の、それも不夜城とされる繁華街は。年若い少女達にとって、安全とは言い切れない場所。
其処へ赴いた娘に何かが有ったかもしれないなどと。考えたい親兄弟は居ないだろう。
名残惜しいが仕方ない。こくんと誰にともなく頷けば。
目星を付けた幾冊か、小脇に抱えて会計へと向かう。

こうやって。王都だけでなく、こちらの街でも。少女に用意された私室には、着実に蔵書が増えていく事となるだろう。
幾許か竜の血を引いた少女にとっての。拠点作り、宝物集めは。まだまだ始まったばかりである。

ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2【イベント開催中】」からフィリさんが去りました。