2018/06/19 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2」にフラヴィアさんが現れました。
フラヴィア > 「ったく、息が詰まるとこだった。はー……冷たくて気持ち良い」

 かつん、とヒールの音を鳴らし大きく伸びをしたのは、ドレス姿の小柄な少女。
 頬を、長い髪をくすぐる夜風に目を細める。
 『それにしても』と振り返ってみれば、夜も半ばにして未だ街の灯は爛々と輝き、行き交う人々も多く格好も様々だ。

「……つっても、流石にこの格好は目立つな」

 パーティを抜け出してきた故のドレス姿。スカートの端を指先で摘み、小首を傾げた。
 薄い生地、長いスカート、高いヒール。令嬢として幾度着ても、彼としては気恥ずかしく窮屈な代物なのだった。

「ま、慣れないわけじゃあないが……やっぱ動きにくいわ。はー」

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”2」にヴィンセント・ミラーさんが現れました。
ヴィンセント・ミラー > ダイラスでの仕事を終え、宿へと向かう途中。

ドレス姿の少女が一人で出歩いている所を目撃する。
この辺は遅い時間となれば危ないことを知っている男はどこぞのご令嬢と思しき娘さんに声をかけた。

「こんな時間に一人かい、お嬢さん。
連れやお供は居ないのか?
ここはお嬢さんみたいな可愛らしい子が一人でうろつくような所じゃないぞ。」

夜風が強く少女の独り言は男の耳には届かなかった。
なので、男の印象は桃色の髪をした綺麗な娘さんと言った所。

声をかけた男は青いスーツで短めの髪。
顔は歳相応…つまりオッサンであった。

フラヴィア > 「さぁてと。せっかく抜け出したんだし、どっかで遊んでから宿に――」

 ぐるりと周囲を見回せば、そこは灯りの消えぬ夜の街。
 口元に手を当て、悪戯っぽく笑いながら足を踏み出そうとした、瞬間。

 耳に届いた男の声に振り返れば、スーツ姿の男。
 周囲を横目で見ても『お嬢さん』と呼ばれるような人間はおらず。少女のように小首を傾げてみせた。

「え、えと……私、ですよね?
 いえその、一人ですけど、べ、別に迷子になったりとかそういうのではありませんのよ」

ヴィンセント・ミラー > ああ、そういうことか…。

紫色の瞳の少女が口にする言葉を今度ばかりは聴いてしまった。

どうやらこの少女は親の目を抜け出しては夜遊びを覚えてしまった不良少女のようだ。
自分がお嬢さんと呼ばれることが不思議なのか、首を傾けていた。

「君の事だよ、お嬢さん。
迷子とかじゃなくてだな。
この辺りは君みたいな可愛らしい女の子を狙う悪い大人が居るので気を付けろと言っているんだ。
君はどこの家の娘だ? 
その恰好、この辺りのパーティーから抜けてきたと言った所か。」

スーツの男は口をへの字に曲げ、少女の格好をじっと観察していた。
(どこかで見たことのある顔だなあ…。
確か貴族のご令嬢だった気がする。)
男の顔はそう言っている。

フラヴィア > 「う、うぐ。はい、いえ、そのぉ……」

 内心でだらだらと汗を流す。焦っていらないことを口走ったし、現状を当てられてしまった。
 もしや――パーティに同席させた兄が、『さっさと戻って来い』とばかりに探させたのではないか――
 そう警戒し、びくつきながら男の顔を見上げる。
 しかし彼の格好は少々変わっており、ともなれば印象に残ろうが兄の周囲で見た記憶はない。
 ……気がする。とは言え家を聞かれた以上、兄の使いと言うことはなかろうが。

「わ、私はルカーノ家の……」

 いっそ走って逃げようか、とも考える。
 だがこのヒールではろくに走れないし、下手にドレスを汚しでもしたら何を言われるかわからない。
 とにかく穏便に事を済ませねば、と額に汗を浮かべながら彼に笑顔を向けた。

ヴィンセント・ミラー > 随分と分かりやすく狼狽えているものだ。
言葉には出さないでいるが、男の口元は僅かににやけていた。

こちらを恐れている様子はない。
となると、家の人に見つかる事を恐れているのだろうか。

「お前さんはルカーノ家のお嬢さんか。」

家の名前を聴いただけで色々と思い出すことが出来た。
当時、ご令嬢の誘拐事件があった事をボスから聴かされたことがあるからだ。
ご家族は嫌な思いをされたことがあるだけに娘さんを大層可愛がっているとも。

もし抜け出したことが明るみになれば大事になるだろう。

「まあ、落ち着け。
別に君のご家族の依頼で君を連れ戻しにきたわけじゃない。
俺はミラーって言う通りすがりの騎士だ。
ただ君のご家族のことを思うとこのまま一人で行かせるのは賛成しかねるな。
このまま戻るにしても、夜遊びに出るにしても結構だが俺も同行させてもらうぞ。
なあに、男が居るのなら俺はそいつと合流する所で帰ってやる。」

男はおせっかい焼であった。
それに上司であるボスがルカーノ家と交友がある。
彼女が嫌がっても男は無理にでも付いてくるだろう。

フラヴィア > 「あっ、はい。ご存知でした? それでは私はこれで……」

 と、お嬢様スマイルでその場を去ろうとするものの、それより早く彼が言葉を続けた。
 だがその内容に、少女は思わず『へぇ』と感心し、少し驚いたように目を丸くする。

「……ふふ、全然騎士らしくない格好をされているのに。紳士的な方なんですね」

 そう小さく笑いながら考える。行動は制限されるだろうが、それほどでも無いだろうと。
 やがて彼を見上げては、分かりましたと頷いた。

「あ、でも別に殿方に会いに行くとかじゃありませんから。その……普通に色々見て回ろうと思っていただけで。
……あなたは、ミラー様はこの辺り、詳しいのですか?」

ヴィンセント・ミラー > 「ルカーノさんとはうちの上司が仲良くさせてもらっていてな。
また娘さんが居ないとなれば大変なことになるだろう。」

驚いているお嬢さんに話を続ける男。
ダルそうな表情をしているが根は真面目なのかもしれない。

「よく言われるよ。 俺は見た目よりは真っ当な騎士をしている方だからな。」

剣も紋章も鎧も付けていない姿はとても騎士には見えないだろう。
言われ慣れている男は少女の言葉に苦笑を浮かべていた。
そして、少女が承諾の意を表すと少女の顔と周囲の店を交互に見渡して。

「この辺りは俺みたいな悪い大人のたまり場だからな。
この辺の店なら大抵知っている。
どこに行きたい? お嬢さんの歳なら酒は駄目だが、喫茶店でもバーでもカジノでも闘技場でも
どこでも連れて行ってやるぞ。 但し、家の人に聴かれたら健全な店に行ったと言えよ。」

先程とは打って変わって表情が良くなる男。
ダイラスのどんな店であっても少女がご要望なら喜んで連れて行きそうだ。

フラヴィア > 「うぐ。その、別にみんなを心配させるつもりは……ただ少し窮屈で……」

 家のことを出されれば、言葉に詰まってしまう。
 ばつが悪そうに俯いては、口を尖らせるのだった。
 それでも彼が明るい表情で頷いてくれれば、少女もまた顔色をよくして。

「本当ですの? ふふ、頼りになりますね。
……そうですね、お腹は空いていませんから……こう、思い切り遊べるような場所がいいです」

 当てもなく一人ではいるよりもずっと有意義な時間になりそうだ、と上機嫌で彼を見上げた。
 そうして彼と揃って歩き出すだろうか。

ヴィンセント・ミラー > 「パーティーが面白くなかったんだろ?
俺もこの歳になってまだあれの楽しさが分からないからな。」

口をとがらせている少女にケラケラと笑う男。
少女の倍以上の歳であったが窮屈と言う言葉に凄く親近感を覚えた。

「それならカジノはどうだ?
場所はこの近く…ほら、あの店だ。」

少女を連れて歩き出す。
ヒールを履いている少女に寄り添うようにゆったりと歩く男。
やがて、二人は男が知るカジノ店の前に辿り着く。
大きな扉の前では厳つい警備が二人並んでいた。

「お嬢ちゃん一人だと断れるだろうが、俺が一緒なら大丈夫だろう。
軍資金は今日の所は俺が貸してやる。」

今日の男はあくまでご令嬢のお供だ。
なので彼女がこの店で良ければ入るし、他の店を希望するならそちらに向かうだろう。
ちなみに店の中はこの辺りではよくあるカジノ。
上等な服を着た紳士淑女がポーカーやルーレットなどに興じている。

フラヴィア > 「そう! そうなんです。
お兄様も気を使ってくれてはいますし、お料理も美味しいんですけど……」

 ぶちぶちと口を尖らせる少女に対し、彼は顔を上げて何ともからっとした笑みを見せる。
 思わず釣られる様に、少女も自然と笑顔になった。彼に希望を告げれば――

「カジノ……! いいですね! なんだかどきどきしちゃいます」

 慣れないヒール故に少々遅れがちになる歩調へと、彼が合わせてくれていることがわかる。
 ――少女扱いには当に慣れていたはずだが、妙にくすぐったいものを感じていた。
 二重にそわそわとしながらも、彼に連れられカジノを覗き込んでみれば――

「わー……って、お金、いいんですか?」

 煌びやかな店内を目にしては、眼と口を丸くしてしまう。
 彼が資金について触れれば、あ、と思い出したように顔を上げて。