2016/12/17 のログ
ホウセン > 目隠しのされているスペースは、何も客と湯女だけではなく、客同士で利用することも差し支えない。とはいえ、この事あれと心構えの出来ているであろう湯女に声をかけるのと、そうではない異性の客に声をかけるのでは、前者の方が気楽だというのも分からないでもない話だ。元々小奇麗にしている妖仙は、今の所サラリとした黒髪まで濡らすつもりは無いようで、手早く体を洗ってしまう。仕上げに幾度か風呂桶に湯を溜めて体に流し掛け、完全に泡を駆逐する。若い、というか幼いとの端境期にある異国出身者であることを表わす肌は、水を弾き、しっとりとした質感。最後に石鹸に塗れさせた手拭を、手桶の中でジャバジャバと洗って泡の成分を抜き取り、非力そうな細腕に鞭を打って固く絞る。勢いをつけてピンと伸ばしつつ風呂椅子から立ち上がり、再び手拭を腰に巻く。

「郷に入っては…と言うが、聊か窮屈じゃのぅ。」

妖仙の出身地の辺りでは混浴が定着しており、手拭の類で局部を隠す習慣が皆無といってよかった。それが、この王国では少々奇異に映るらしいと知ったのは、ほんの数ヶ月前のことだ。そんな文化圏の出であるが故に、そのまま並々と湯を湛えた湯船に身を投じるかと思えば素通りし、石造りの浴場の中で、其処だけ木で設えられた場へと足を向ける。取っ手を回して扉から入るか否かのところで、既に高温多湿の風呂場さえも生易しいと感じられるだけの熱気が顔に掛かる。怯まずに歩を進めるのは、北方の寒冷地に端を発するといわれる蒸し風呂の類。薄暗いサウナの中は、段々になった腰掛があり、汗を吸い取る為の目の粗い布が敷かれている。室内の明度に目が慣れるまでの間、先客の有無も分からぬが、出入り口と最奥の中間地点に腰を下ろす

ホウセン > 後刻、母国の蒸し風呂とも、聊か趣の異なるその部屋の中、滝のような汗と共に心身の澱を流し出し、リフレッシュした妖仙の姿があったとか――
ご案内:「歓楽街内にある浴場」からホウセンさんが去りました。