2016/12/16 のログ
ご案内:「歓楽街内にある浴場」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > 寒い季節ともなれば、温かい湯に浸かりたくなるのが人情である。妖仙もご多聞に漏れず、その様な衝動に駆られたようで、卑猥な催し物が繰り広げられている劇場や、シンプルに事を愉しむ売春宿が軒を連ねているにも拘らず、歓楽街の中に存在している大浴場の暖簾を潜った。洗体やらマッサージやらをサービスに組み込んだ性風俗もある中で、敢えて風呂に主体を置いている珍しい物件。公衆浴場ほど安価でもないが、前述の性的サービスを前提とした業態よりは余程懐に優しい。脱衣所に現れるや否や、いっそ小気味良い程の脱衣っぷりを見せつつ、顔立ちと同様に美的感興をそそりそうな、線の細い裸体を露にする。
「おぉ、少しばかり賑やか過ぎるきらいもあるが…」
悪くないと、湯気の立ち込める浴場に足を踏み入れ慨嘆する。受付で買った手拭一枚を、腰骨の辺りに巻き付けて、シミも弛みも出来物もないサラリとした肌を晒しつつ、場内を闊歩する。この街らしいというべきか、殆どの施設が混浴で利用されており、男女問わず入り乱れている。全裸やら全裸に近しい装いながらに、乱交が横行していないのは、風呂場としての機能が充実しているからでもあるらしい。単純に湯を楽しみたい者も多く含まれ、遅い時間帯だというのに、それなりの人影が散見できるのだ。
■ホウセン > 賑やか過ぎるといっても、実際に騒がしい訳ではない。比較対象が、山奥の鄙びた露天温泉だった為に、ある種の娯楽性を内包しているこの場の雰囲気を、その様に感じただけの話。相応に広い浴場には、単純に湯を沸かしたものから、鉱泉をどこかからか運んだという触れ込みのあるもの、果物を漂わせているものまで。他には、魔法仕掛けで湯の中が見通せない程の密度と勢いで気泡を噴出させるものや、大柄な男が両手を頭上に伸ばしたぐらいの高さから湯を注ぎ落す打たせ湯などもある。湯気のせいで決して良好とはいえない視界の中だが、殆ど全裸の客以外に、水濡れに備えて薄手の布地で出来た水着のような装いの女が見受けられよう。彼女らは湯女。稀に男性もいるが、主たる仕事は入浴客の体や髪を洗うことだけれど、個別に交渉が成立すれば性的なサービスにも応じてくれるという存在だ。
「今宵は…嗚呼、兎にも角にも温まらねば話にならんのぅ。」
一瞬、彼女らと交渉することも考えたが、そのまま石造りの床の上をペタペタと洗い場の方へ。目を凝らすと、交渉が成立した客と湯女がしけこめるように、観葉植物などで目隠しのされている区画が点在している事にも気付けるだろう。洗い場の端に積み重ねられた風呂椅子と風呂桶を手にし、己のスペースを確保すべく陣取る。壁に設置された蛇口を捻ると湯が流れ出る仕組みらしく、風呂桶に湯を溜めてザバリと掛け湯。左肩から一度、右肩から一度。腰巻にしていた手拭を解き、備え付けの石鹸を泡立てて、柔らかそうな肌の上を撫で擦って泡だらけに。