2023/07/18 のログ
■シシィ > 互いの笑みは、ある意味同種の……商いに携わるが故に身に着けたスキルとでもいうべきだろう。
感情を伺わせない、あるいは相手の気分を損ねないための。
とはいえ、知己であれば、そこに多少の感情が乗るのも事実ではあるのだが。
「ええ。あまりにぎやかな場は好まれないと思っておりましたが」
名を呼ばれると自然に頷いた。
己を見つめる眼差しに宿る柔らかな色合いに、少し眉じりを下げる。
少々彩がこの国の人間と違っているだけで、珍しくもないでしょうに、と以前も言ったか、言わなかったか──。
少しだけくすぐったさは感じている模様。
「そうですか。……ええ、私はそのどちらも、といったところですね」
この街を訪れるのは商用としてが主な理由。
ここを訪れたのは軽い息抜きとして、先ほどまで興じていたカードのことを思えばどちらにも是、と応じる返事となった。
「ありがとうございます。では───」
掲げられたグラスに応じるように、己もまたグラスを上げる。
軽く合わせる仕草を返して、目を細めた。
こちらが口にするのは変わらず果汁で割った甘めのものだ。
そのままグラスを軽く傾けて、一口。既になれた甘みがのどを滑り落ちるのを静かに味わい。
「レベリオ様もお変わりないようで、嬉しく思います」
女としては変わらぬ相手の壮健ぶりを讃える、社交の言葉ではあったが──。
それがどう相手に響くのか、までは意図はしていなかった。
■レベリオ > 互いの瞳に映るのは、互いの笑み。
その裡に秘めるものを悟らせないそれ。
利益にせよ、血肉にせよ――求めるものを得るための鎧。
けれど、今宵のそれはそう呼ぶには些か、互いの情が乗ってしまうか。
彼女だけではなく、彼の微笑も。
「その通りだ。
けれど、たまには好みに合わないことをしてみるものだ。
このような出会いも、あるのだからね。」
珍しくもない――そう問いかけた彼女に彼は答えたのを覚えているか。
“それでも、否、それだからこそ。君は美しい。”
そんな、混じり気のない称賛。
もし、叶うならばと髪の毛に触れようと手を伸ばしたかもしれない。
尤も、彼女がそれを赦したかどうかは、また別の話だけれども。
「成る程。確かに、この街ならば商機も多いだろう。
では、しばらく此処に滞在を――?」
告げる内容に頷いた。
定位置を持たぬ旅商人にも、この街は居心地が良いだろう。
そして、賭けの“息抜き”とはいえ、この若い商人が負けるとは思わない。
だから、触れ合うグラスが涼やかな音を奏でる刹那に。
“おめでとう”と添えておいて、そうして次いだ言葉に。
「“様”は要らないといつも言っているのに、シシィ。
私は変わりようもないが、君こそ、変わらず美しいね。」
軽やかに、笑声を弾けさせる。
強い酒、喉が焼けるようなそれを容易く唇から喉に流し込めば
向ける眼差しが、微かに彩を増したように感じるか否か。
吸血鬼は酒に酔わない。血に酔うのだ。血に酔いたいのだ。
――その場にいる誰も気付かない程度に込められた邪視。
催眠、とも呼べない程にさり気ない。
ただ、酒精による酩酊感を強めるだけのもの。
賭けは好きではない。けれど、蜜色の女神を酔わせることが叶うかどうか。
そういう運試しも悪くない。そんな稚気にも似たそれ。
■シシィ > 「商いをする以上は避けられませんが───そうでした、レベリオ様はすでに隠居されているのでしたね」
好むと好まざるとにかかわらず、こういった場所──あるいは食事会などに顔を出すのは商人としての仕事の一つでもあるのだが。
すでに隠居を宣言している相手にとっては、好みで決めてよい場だろう。
己との再会を喜んでくれる言葉には素直に感謝の意を紡ぎつつ。
すい、とのばされた手が己の髪束を掬い取るのを止める理由は特になかった。
スツールの距離は近くそういった行為を阻害するほどではない。
己を美しいと称賛してくれる相手の行動を見やり、彼が満足するまでそうさせながら。
「ええ、そのつもりでした。オークションもいくつか開催されるようですし、新しい劇場もできたとか?」
そのすべてに顔を出せるとは限らないし、ある程度格式のある場所では己にその資格があるかは怪しかったが──、折角訪れた機会を活かしたいところでもある。
商いの上で敵対しているわけでもないし。口にしたところで差しさわりのないことを言葉にしながら頷いた。
グラスを合わせての賛辞には困ったように笑う。
賭け事の勝敗自体にさほど意味はないのだ。ただ、テーブルに着いた人々の会話から有益な情報が得られればそれで。
「それは……一応けじめはつけねばなりませんから」
年齢も上、資産も上。
平民だと聞いてはいるが、その物腰は有閑階級のそれの様。
自然と周囲の人々が尊称を添えて呼ぶのに己一人がそれに背くなどできようはずもない、と首を横に振る。
あくることなく告げられる賛辞に対して、擽ったそうに肩を揺らす。
向けられた眼差し、そこに宿る毒に気づけるほどの魔術の素養があればそも、こうして席を近くすることなどなかったろうに。
「─────、……お上手なことです」
酒精にはさほど強くはない。だから杯を重ねても問題のない果汁割を口にしていたのだが───。
今宵はそれがいささか過ぎたのだろうか、確かに彼に声を掛けられるまでも口にしていた自覚はあったが。
つ、とテーブルにグラスを置くと吐き出す呼気に思ったより熱が混じった。
■レベリオ > 指の狭間を滑り落ちる銀の感触。
儚く流れ落ちるそれを指先で愛でるように触れる。
滑らかに指先を愉しませるそれで遊ぶ時間はほんの刹那。
名残惜しく思わなくもないが、彼女の言葉に答えを返す頃には指は離れ。
「なるほど。
それならば、私も少し遊んで行っても良いかも知れないな。
良ければエスコートしようか? 顔が利く場所もあるかも知れない。」
“楽隠居の身で役に立てば、だが”と冗談めいて笑みを添える。
富裕、と呼ばれる身分を得ている。
それなりに格式のある場にも出入りすることは叶うだろう。
好むわけでもない社交のいくつかは、それを維持するために行っている。
「けじめ、と呼ばれる程の何かを持っている訳ではないがね。
まあ、仕方がない。シシィと気軽に呼ばせてもらうだけで満足しよう。」
取り繕い、装い、偽った紳士然とした仮面。
ほんの僅かにだけ、その仮面の下からケダモノの素顔が覗く。
こんな場所では、あまりにも危険。あまりにも無防備な行為だ。
けれど、獣の毒を滲ませてしまった所以はきっと――
彼女の血に酔いたいから、氷の瞳に毒を滲ませたかったから。
「中身のない世辞を告げる程、世渡りは上手くないつもりだが。
それより、シシィ――酔いが回ったのかい?」
そして――彼女が“酔う”様が見たいから。
美貌と知性を併せ持った強かな女性。そこから毀れる熱い吐息は酷く甘く感じる。
グラスを置いてもきっと、酩酊感は強く、強くなっていくか。
まるで、その身を流れる深紅の血潮が、彼女を酔わせるような錯覚。
「―――それならば、送っていこうか?」
そして、そんな誘うような言葉。もう一滴の毒が
赤い瞳に乗って、氷の瞳を融かそうと滲んでしまおうと。
■シシィ > 少し癖はあるが、柔らかさとしなやかさを備えた髪は、する、と指の間をすり抜ける。
梳られるくすぐったさに僅かに目を伏せる。
ささやかな触れ合いは、こんな街では控えめに過ぎるようにすら映るのかもしれない。
「そうなさいますか?予定が合うようでしたら是非」
誘い言葉に、受ける言葉。
実際の予定のすり合わせはともかくも、そうやってともに楽しんでくれる姿勢がうれしく思うし──。
何より彼とともに一緒であれば訪れる場所の選択肢が増えるのは事実だった。
添えられた言葉が、それを加味してのものだということも十分理解しているから、気遣いに対しての礼を告げて。
「そういう、わけにもいきませんでしょう…?私は持たざるものですから問題はないのですが」
己の名については特に否もないし、彼はそうできる身だ。
────若干思考に間が生まれるのに、己の酩酊を感じて眉宇を寄せた。
だから彼の言葉にはやや間をおいて、静かに首肯を返すことになった。
噓をついても仕方がない、とグラスから手を放して────。
「え、え。……ですのでそろそろお暇致したく──」
礼儀正しく、暇の言葉を紡ぐ。
きちんと言葉はまだ紡げているだろうか、と少し不安になりながらも言葉を発した。
テーブルにそれまでの代金とチップを置いて。
ふつ、と熱を帯びてゆく感覚が少し強くなったようにも感じながら。
「………、………あ」
普段であれば、おそらくはそつなく断りの言葉を伝え、辞去するだろうし、今もそうするべきだろうとはわかるのだ。
ただ、何故か──釣り込まれるように頷いてしまっていた。
「………お手数でなければ、よろしくお願いいたします」
紳士な相手は断らないだろう。だから甘えないようにするのもこちらの義務のはずなのだけれど。
■レベリオ > 「もちろんだとも。
何、ご存知の通り――暇を持て余している身だ。」
紡ぎ出す言葉も、彼女の思考にどこまで届くだろうか。
冗談めかした言葉の響きの狭間に潜んだ毒。
赤い瞳が齎す毒は、どこまで浸透したか。
彼が口にして、飲み干した蒸留酒よりずっと強く
彼女が唇を濡らした果汁割よりもずっと甘い毒。
明晰に、明朗に返される言葉の間が開く。
そして、暇を乞う言葉はまだ礼節を装ってはいるが――
その思考に霞みがかかりはじめているのはわかる。
置かれる代金とチップが正確なのは称賛に値するだろう。
けれど――もう囚われている。捕らえている。
「そうだな。その方が良いだろう。」
首肯して、自分も代金と少し多めのチップを置く。
そして、次いだ言葉。普段の彼女ならば決して口にしないだろうそれ。
けれど――紡ぎ出された、紡ぎ出させたそれを拒絶する筈もなく。
「―――喜んで。」
あくまでも、紳士としての仮面はほんの僅かにずらすだけ。
スツールから降りれば、控えめに手を差し伸べる。
彼女がその手を取ってしまえば、あとは歩き出すだけだろう――。
■シシィ > 「───まあ、社交の招待状が引きも切らないことは存じていますよ?」
穏やかに、冗談めかした言葉に対して笑みを浮かべる。
差し込まれる毒がその量を増しつつあることを知る由もないが──。
ただ今宵は飲みすぎてしまったのだと自戒の念を抱いていた。
抱いて、そうして理性的に行動できる程度の経験は積んでいたというのに。
何故、と理由を知らない以上は思うほかない。
いうべきでない言葉を紡いでしまったところで、もう戻れはしないのだと差し出された手に視線を向けて。
スツールを降りる足元はまだ確かだ。
そうして差し出された手に、女は自身の手を重ねて───。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からレベリオさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からシシィさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にビーンさんが現れました。
■ビーン > カジノの中を颯爽と歩く一人の男の娘。
脚に酒を運んだり、躊躇っている客の背中を押したり、勝っている客をさらに煽ったりしながら、きらびやかななホールの雰囲気を楽しんでいる。
その姿に普段のおどおどとした少年の姿はなく、むしろ自信に満ち溢れきらきらと輝いている。
女装をしているせいか普段の自分ができないことをしているえも言えぬ楽しさと、女の子の格好をしているという背徳感がちりちりと神経や脳、心を焙り、少年の艶やかさを増している。
今いる店はキャストへの無理やりの手出しは基本的に禁止だが、なんだかんだと、なし崩しにしたり、交渉をしたり、オプションの媚薬を持った飲み物を飲ませたりすれば、店だけではなく併設の宿の褥まで連れていける。
そんなお店である。
ゲームは基本的なカードや、キャストを相手にした勝負などさまざまである。
様々な者たちの欲望を隠しながらも、歓楽街のきらびやかな明かりや酒、かけ事、売春にクスリと、非日常が客もキャストも狂わせていく。
■ビーン > 綺麗な女性や、おじさま達にかわいがられながらも、仕事をし、誘いにはひらりと交わしていたずらな笑みを向けたり、舌を出してからかってみたり。
爛漫な笑みを振りまいていく。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からビーンさんが去りました。