2023/07/17 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にシシィさんが現れました。
シシィ > 不夜城とうたわれる歓楽街ハイブラゼール。
その賑やかで猥雑な喧騒に花を添えるカジノの一つ。この街の規模としては中規模程度とされるひとつ。

カードのテーブルから離れた女がゆる、とバーのスツールに腰を預けた。
緩くまとめられた髪は少し癖のある銀、褐色の肌がその出自が異邦であることを伝えるようだった。

賭け事の調子を問うバーテンダーに穏やかに目を細めて、さほど収穫はなかったわ、と可もなく不可もなくな態度を崩すことはなかった。
実際大して勝ちもしなかったし、負けもしなかったのは、テーブルを誰かが見ていれば知れることだった。
のどを潤す為の飲料を注文しつつ、頬杖をついてカジノの様子に見るともなしに視線を向ける。
賭け事のテーブルでは表面上は表情を崩すことはなく、けれど、歴然たる結果が手元のチップで示されているのは面白い。……先ほどまでは己もそのうちの一人ではあったのだが。

シシィ > 差し出された果汁割のグラスを受け取ると、礼の言葉を添えた。

氷こそ浮かんではいないものの、ひや、と指先を冷やせる程度には冷やされたグラスが心地よい。
ふぅ、と淡く息をついて、グラスを傾ける。

柑橘系、それにいくつか果汁を混ぜ合わせているのか、酸味と甘みがバランス良く配合されている中に、舌を甘くしびれさせる酒精が忍ぶ味わいを舌の上で転がして楽しみながら。

「───あまりお酒には強くはないのだけれど──これなら美味しくいただけるわね?」

グラスを緩く手の中で弄びながら紡ぐ声音。
潤いを得て唇が艶を帯びるのを、そ、と舌で拭って機嫌よく。

肌の色味のせいか、熱を帯びても顔色でそうと悟られづらいのはいいことか悪いことかは、場合によるものの。
今この場においてはまださほど問題はないといえるだろう。

今は仕事も何も関係はなく、ただ純粋に場所を、そして酒精を楽しんでいるだけだから。
穏やかな表情も、仮面として、というよりは素の色の方が強い。

裾丈の長いワンピースの裾を払って足を組む。
サラ、と揺れる衣擦れの音は絹程洗練されてはいないが、柔らかなリネンの生地は着心地の良さを重視していた。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にエリビオさんが現れました。
エリビオ > 贅を凝らしたシャンデリアの綺羅びやかな光が華美に取り繕う調度品の数々を照らし。
紅蓮の絨毯の上で博打を楽しむ人々の目を眩ませる。
そんなカジノに訪れたのは日雇いのバイトで働いているから。
テーブルで楽しむ人々へと片手で抱えた銀皿からカクテルを渡し。
遊興に勤しむ人々の合間を縫うようにめぐりめぐっていた。
そして今はバーにと戻ってきて。上司から客の相手をしろとの命令に頷いて先客に近づく。

「お客様、楽しんでいらっしゃいますか?
 酒は余興を円滑にする油。
 どうか心ゆくまでお楽しみ下さい。」

眦下げた営業スマイルのまま、胸に手を当てた慇懃な会釈を1つ。
邪魔だと言われるまではにこにこと人懐っこい笑みでその場に佇む。

シシィ > 「─────」

愉しんでいるのか、あるいは踊らされているのか。
それぞれの立場でみなそこにいる。己自身もまたそのうちの一人にすぎないという自覚はそれなりに。

ゆるゆるとグラスの中身を減らしていると、絨毯を踏む靴音が己に近づくのに視線を上げる。
背の高いスツールに腰かけているせいもあって、視線の高さはさほど変わらないように思うが、実際は相手の方が上背は高くのなるのだろう。

しなやかな体躯を征服に包んだ瑞々しさや伸びやかさのようなものを感じるけれど───

「ええ、楽しんではいるわ。でも話し相手を探しているわけではないの。ほかのマダムのもとへいらっしゃいな?」


若い燕をつまむような趣味もない。頬杖をついて言葉を返した。
貴族夫人の様にチップをはずんであげられるわけでもないしね、とゆるく肩をすくめて。

あるいは己の無聊を慰めようとした店の計らいだったのかもしれないが──先走りすぎよ、とたしなめるような目線をグラスを渡してきたバーテンダーへと向けた

エリビオ > 「……そうでしたか。」

別に会話で終わるも良し。1人で寂しく過ごしている客を相手するように命令されただけだ。
まるで値踏みをするような眼眸に微笑みの裏に侮蔑の色を滲ませながら去っていった。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からエリビオさんが去りました。
シシィ > 「ええ、ごめんなさいね」

ただいつものように穏やかな笑みを口許に揺蕩わせたのみだ。
こちらの返答にあっさりと見切りをつけた相手の態度に何を言うでもない。向けられた蔑んだ色合いには相手の矜持の高さを想って少しだけ口角が上がったが、取り上げたグラスを口にすればその表情も一度途絶えた。


空になったグラスを返して、もう一杯、と注文をさしむける。
特に何も言わずに注文を受けたバーテンダーが同じように果汁割を作る手元を淡い色の双眸を向けて眺めながら。

ほ、と小さく息を吐き出す。
疲れでも?と向けられる他愛のない言葉へと、ゆるく首を傾ける。

「気候の違いは確かにあるのかもね、こちらほど湿度は高くない土地だから……多少は堪えているわ?」

それだけ水が豊かなのでしょうけど、と言葉を重ねて。
新たに差し出されたグラスを受け取った。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にレベリオさんが現れました。
レベリオ > 賭けごとにはそれほど興味はない。
ディーラーの熟練した手管も、集中すれば容易く見破ることが叶うし
幸運、不運に行く末を賭けるのは、それこそ好みではない。
けれど――…こういう場に訪れるのは嫌いではない。
勝ったもの、負けたものの悲喜を眺めるのも悪くはないし。
何よりも―――。

「――おや、これはこれは随分お久しぶりだね。」

――時として思わぬ出会いが楽しめるからだ。
言葉をかけながら、褐色の肌の女性の方へ歩み寄る。
絨毯の上を滑るように、足音も、気配も殆どない挙動。

言葉をかけた美しい女性との間柄をなんと表現するべきか。
少なくとも見知った間柄――とは言っても許されるだろう。
彼の屋敷に眠っている多数の古美術品。
それらの処分を依頼したのが、彼女だ。優秀な鑑定士で旅商人。
彼女が此方をどう思っているかは知らないけれど――…。

「もし、よければ同席しても?」

緩やかに、首を傾げて問いかける。
紅の瞳が形作るのは、穏やかに見える微笑。
その奥底の牙を、隠した侭。

シシィ > しばらくグラスを開けることに専念していた己に掛けられた声音に。視線を上げた。
その声音が聞き知ったものだったのと、こういった場所で耳にするには意外なものだったからといえるだろう。

「………こんな場所でお声を聴くとは思っていませんでした」

柔らかな笑みを浮かべ、体をそちらへと向ける。
滑るような歩みは気配が薄く、己もどちらかといえば気配のない方ではあるのだが───。
それ以上に、というべきか。

軽く頭を下げると、柔らかな質感の髪が緩く肩の上を滑り落ちる。

己とはまた違う異彩をまとう男性は、己にとっても既知の存在だった。
きっかけは彼の屋敷の美術品を処分してほしいという依頼からの付き合いではあるが。
仕事ぶりを気に入ってもらったのか、時折声がかかる。

己にとっても貴重な品々を目にする機会でもあるし、また同じ商いをする身として、よい関係を築いていけたらと思っている。

「ええ、かまいません。王都にいらっしゃるのかと思っておりましたが、何かご用向きで?」

特に警戒したそぶりもなく、同席について頷いた。
彼がその身に隠すものを知ってか知らずか、といったところ。

レベリオ > 氷色の眼差しが此方の姿を捕える。
それに触れる深紅の瞳は、柔らかな微笑を浮かべる。
知己に意外な場所で出会ったそれに似付かわしい、控えめな笑みだ。

「それは此方の台詞だよ。シシィ。
 こんな場所で出会うとは、奇遇だね。」

気安く、彼女の名前を口にする。
緩やかに頭を下げて、銀糸の髪の毛が流れ落ちる様
そして、再び触れ合う眼差し。
蜜色の美貌。さながら異国の女神のようなその様を瞳に映して
刹那だけ、淡く吐息を解けさせてから。

「何、話すまでもない野暮用という奴さ。
 君は商売か、それとも運試しかな?」

問いかけながら、彼女の隣のスツールに腰を下ろす。
注文するのは、氷の入った蒸留酒。
バーテンが慣れた手つきで、それを差し出せば左手で掲げてみせ。

「―――では、予期せぬ再会に。
 君とこうして飲むのも、久しぶりだからね。」

そう言って、乾杯の仕草をしてみせる。