2022/10/29 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にシシィさんが現れました。
シシィ > ハイブラゼール内、ラウンジ。

夜の婀娜な雰囲気を演出するように間接照明だけで店内を彩る中。人々の会話を彩るように小ステージで室内楽が演奏されている。

そんな中スツールに身を預ける褐色肌の女がいた。
緩く癖のある銀の髪を軽くまとめ、肌の色のコントラストを引き立てるようなロングドレスのスリットから伸ばした脚線を軽く組み合わせ。

商談はもう終えたのか、あるいはこれからなのか。
コーディアルグラスのステムに指を絡め、戯れに揺らして香りを楽しんでいる。

「────」

バーテンダーと二言三言、戯れめいた会話に相槌や、小さな笑みを返していた。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にクライヴさんが現れました。
クライヴ > 間接照明の薄明かりと、落ち着いた音楽を背後に会話を愉しむ人々の声。
そんな空間の中、銀の髪と白のロングドレスから覗く褐色の肌を持つ女性の隣へと、緩やかな足取りで近寄る人影。

ブロンドの髪と、翡翠の瞳を持った男が一人、彼女の隣のスツールへと腰を降ろすと、
目の前のバーテンダーへと軽めの酒精を一杯、注文してから背後の棚からグラスを取り出すその背中を見遣って。

「―――………今晩は。隣、失礼しても?」

それから、隣に腰掛ける先客の方へと視線を移し、挨拶と共にそんな問いを投げ掛けた。

シシィ > 「─────?」

傍らのスツールが引かれる音に視線を向ける。
薄い色の双眸が、照明を弾いて僅かに虹彩の輝きを変じ。
知っている顔ではないことを認識しつつ、目を伏せて目礼を向けた。

「こんばんは、ええ、貸し切り席ではありませんものどうぞご自由に?」

おっとりとした声音が柔らかく響く。
薄い口紅をひいた口許は穏やかな微笑みを象っている。
こういった場に慣れているようではあるが、年若くも見える。
そう判じながら、手にしていたグラスを口許に寄せ、軽く傾けた。

クライヴ > 翡翠の視線は隣客の脚先から、ロングドレスの裾から覗くしなやかな脚線を、女性的な肢体を観察するように一瞥してから、
最後に氷色の瞳を覗き込み、彼女の目礼に倣う様に此方も頭を垂れて見せ。

「―――………では、失礼して。
 異国の方とお見受けしますが、ハイブラゼールには物見遊山で?
 カジノや歓楽街の方は、もうご覧になりましたか?」

投げ掛けたのは特に他愛の無い世間話。
もし女性が無闇な詮索を嫌う素振りを少しでも見せるのであれば、それ以上を問う事はしない。
やがて目の前のカウンターに置かれたグラスを受け取り、バーテンダーへと礼を述べてから、
矢張り隣の女性に倣うように其れを口許へ寄せ、軽く傾けて。

シシィ > 向けられる値踏みの視線に、何を言うでもなく。表情を変えることもないのは、商いに身を置く人間としてそれに慣れているからでもあるだろう。
もう一度頭を下げる仕草にはくす、と喉奥を鳴らした。


ただ、問いかけは存外に意外だったのか、グラスを傾けたまま僅かに沈黙を挟んだ。

「───、……物見遊山。……そう取れる向きもありますわね
………ええ、一通りは。そうおっしゃる其方は、『遊学』などで?」

そういったところに足を運ぶのも、顔を出すのも。
あるいはこうすることさえも女にとっては仕事の一部ではあるが、初対面の相手にそこまでを告げる必要もない。

己の容姿に抱く疑問はもっともだし、それについてを訂正する必要もないだろうと首肯を返す。
代わりにこちらも当たり障りのない言葉を返しながら、女のペースで酒精を楽しんでいる。

半ばほどを干してテーブルに戻したグラスに視線を向けながら。
店の演出や空間を楽しむ風情。

クライヴ > 無遠慮にも思えたであろう視線を臆した様子も無く受け止めながら、小さく笑みを零した女性の仕草に、
気が付けば翡翠の視線は強く関心を示したように釘付けとなっていた。

「―――と、違っていたのなら失礼。
 遊学………成程、後学の為という意味であれば、それも間違っていないのかも。」

訊ね返されたその問い掛けに、ふむ―――と顎に手を添えて思案顔。
あながち間違いでは無い、と得心するとクツクツと可笑しそうに笑い声を零して。

「自分は知人の伝手で、仕事に使う道具を幾つか融通してもらったところです。
 此処では、王都では滅多に手に入らない様な珍しい品も山程ありますからね。」

良かったら、幾つかご覧になりますか?と。
商いに身を置く彼女の素性を知ってか知らずか、その興味を引こうとする様に。
その問い掛けと同時に指し示すのは奥の個室。
幾らかの金銭、或いは伝手があれば自由に利用できるその部屋の方を見遣りながら。

シシィ > 己の仕草の何が相手の興味をひいたのかは、女にはわからない。
それは普段の仕草でもあるし、そういった態度をとる女などいくらでもいるだろう。

女にとって相手は、隣席した年若いラウンジの客、といった程度であり、まだ当たり障りのない会話しかしていない状態だ。

相手の言葉に単に若いだけではないことを理解はするものの、テーブルに肘をつくと手を組み合わせ、そこに顎をのせて。

「どうでしょう?其方にとってそう見えたのなら真実かもしれませんわ?
ええ、お若く見えますもの───どこぞのご令息、のよう………あてずっぽうですけれど」

くつろいだ様子で言葉を返しながら、紡がれた言葉にはあいまいな笑みを浮かべるにとどめた。
酒精に親しんではいるがそこまで思考は濁っていない。
年若い男の言葉から、彼が見た目通りの人物ではないことを推察することは容易いことだが───。

示された個室に視線を向けて、ある程度この店のシステムを理解している女は首を横に振った。

「────遠慮しておきますわ。興味深いお話を伺えそうですけれど───物事には代価がつきものでしょう?」

今の己に其方が満足しうる何かを支払えるとは限らない、と軽やかに告げて。
肘をついた姿勢を崩すとグラスを手に取り、残りを干した。

己のアルコールの代金とそれから相手のその一杯分の代価をテーブルに置くと女は組んだ足を崩して立ち上がり、暇の言葉をバーテンと相手に告げて。

ドレスの裾を優美にさばき、ラウンジを後にした。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からシシィさんが去りました。
クライヴ > 「―――残念ながら、それは外れ。
 ご令息など恐れ多い、しがない『何でも屋』に過ぎませんよ。」

あてずっぽうだけど、と付け加えて投げられた女性の推測に、悪戯っぽく笑って見せるが。
やがて、二言三言を交わした後に、優雅な所作でラウンジを去ってゆくその後ろ姿を、名残惜しげに見送って。

「………あーあ、フラれちゃいましたねぇ。」

間延びした口調でそう独白を零すと、カウンター越しのバーテンダーに先程よりも強い酒精を注文するのだった。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からクライヴさんが去りました。