2022/08/17 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にフェリーチェさんが現れました。
フェリーチェ > ハイゼラブールでも有数の巨大カジノに今宵やってきたのは、おっかなびっくりといった様子の少女。
VIPルームにも入れる身形でやってきながら、居座る場所は身分を問わぬ開けたフロア。
振り返ればオーケストラとポールダンスとショートコントがそれぞれ別方向を向いて共演し、区画ごとに雰囲気が様変わりする混沌ぶりだった。
しかしその少女はといえば、この華やかさと危険な香りが渦巻く空気を楽しみに来たわけではなかっった。

「次はポジション赤に金貨1枚、ベットします」

上等なビロードを敷いたテーブルの手前に立ち、ルーレットの上を転がる玉を緊張気味に見守る。
掛け金は初っ端から金貨、それでいて大勝負に出る様子はない……けれどそれで良い。
床におろしたバッグには今日のための軍資金が詰め込まれ、程よく「カジノで儲けた泡銭」になって戻ってくれば構わない。
いわゆる、マネーロンダリングである。
近頃は何かと入り用で、今手元にある「入手した記憶のない資金」を早々に使えるお金に変えたかった。

お澄まし顔で気軽に賭けているようでいて、実は少々後ろ暗い思いが目元に出ている。
そのせいか来る者拒まずのていで周囲からの勝負を引き受け、安定しない状況下で何度か掛け金を回収するということを繰り返している。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にタマモさんが現れました。
タマモ > ざわりと、カジノの一部から、賑わい以外のざわめきが僅かに起こる。
そちらへと視線を向けたならば、そこに見えるのは一人の少女。
場の雰囲気に合わぬ、異国風の着物姿、狐の耳と複数の尻尾を持つ姿は、変わったミレー族と受け取られるか。

「いやはや、久し振りと言うのに、覚えられておるものじゃのぅ。
まぁ、今日も、軽く楽しませて貰う訳じゃがな?」

周囲の視線は様々だ、その見た目だ、奇異の瞳で見られるのは、仕方無いと思われるのだが。
不思議とその中には、羨望の含まれた視線も混ざっている、そう感じ取れるだろう。
当然だ、知らぬ者ならば、変わった少女が現れた、と見るだろうし。
知っている者ならば…ほぼ負け無しのギャンブラー、と受け取られているのだから。

そんな視線の中、普段通りの飄々とした様子を見せるも。
ふと、その視線が、ある場所…ルーレットの方に向けられた。

「ん…?…んん…?」

かくん?と首を傾げ、そちらへと、歩み始める。
理由は簡単だ、どこかしら、覚えのある気配を感じたからだ。
もし、その先に居る相手が、こちらに気付き確かめたならば。
同じく、覚えのある少女が近付いて来るのが見えるのだろう。

フェリーチェ > 「ーーーーベットします」

爆発的ではないさざ波のように一部から広がるざわめきは、こういう場なら珍しくない。
大勝、大敗、はたまた大逆転劇があったのかもしれない。
それ故にフェリーチェの関心を即座に引くことはなかった。
存外に安定しだした手付きで金貨をマス目に据えて、一言告げるだけ。

「んぅ?……………ッ!?」

不意に振り返ったのは何か直感的な、それこそ虫の知らせでもあったかのような偶然。
だが何気ない顔で振り返った顔はそのまま何気ない笑顔で凍りついた。
傍目に見る分にはちょっと裕福な子供が遊んでいるだけなのだが、その実、持ち込んだお金が後ろ暗いモノだけに知り合いには見られたくなったのだ。

のんびりと頬に掌を添えて、小首を傾げながら笑みを深める。
どうぞ通りすがりのご挨拶だけで終わりますようにと、内心で必死に祈りながら。

タマモ > うん、振り返ってくれた事で、それが確信に変わった。
そこに感じたのは、どこか、変わった感覚。
首を傾げたまま、その相手の側で足を止めれば。

「もしや、とは思うたが、珍しいものじゃのぅ。
ふーちゃんも、楽しみに来ておるのか?
妾は、ちと間を空けねば悪いと思うがから、久々じゃがな?」

ひらり、挨拶代わりに手を振れば。
そんな少女の期待を裏切り、よいせ、と隣の席に腰掛けた。
まぁ、誰かと楽しむような場所ではないが、誰かと居るのも悪いものでもないだろう、と。
…そんな時は、大概、相手を陥れたりするとか、そんな性質の悪い時だが。
さて、今回はどうなるのか?

フェリーチェ > 不自然にならぬように添えた掌でさり気なく頬を揉み込み、凍りついた笑みを解きほぐす。
それから努めて自然体での会釈……場の空気的に丁寧にカーテシするのも憚られる。

「お久しぶりです、タマモさん。
 このような場所にいらっしゃるなんて、少し以外でした」

隣に腰掛けた相手を目にすれば、前のテーブルに広げてあったものを少し除けてスペースを作り出す。
主に支払いとして貰った金銭や換金可能な専用コイン、それから飲み物など。
これほど腰を据えて幼い少女が賭けに興じる方が意外性抜群の筈だが、そこは棚上げする。
邪魔になっている儲け分の貨幣はジャラジャラと音を立てて鞄に戻し、騒がしかった辺りにちょっとだけ目配せ。

「けれど、見知った方もちらほら居られる様子ですね。
 もしかして、よく遊びにいらっしゃるんですか?」

ひょっとしたことで超然的な悪意が表出しかねない火薬庫を横に、とりあえず無難な話題で乗り切りたいフェリーチェはそんな問いかけを投げる。

タマモ > 良く知っている、とまではいかないが、それなりには知った少女だ。
その様子に疑問は抱いたままだが、とりあえず、そこは見せないように普段通りに。

「うむ、なかなかに会う機会も見出せねば。
こうして、会えた時は、嬉しいものじゃろうて。

いや、ちょくちょくとは、来ておったんじゃぞ?
でもまぁ、来過ぎても悪いからな、間を空けるようにしておるんじゃ」

気を利かせ、場所を空ける少女に、ぽんぽんと頭を撫でながら。
少女の言葉に、さらりとそう返す。
言葉の取り方次第では、不思議に思える部分も聞き取れる、かもしれない。
と、続く言葉に、ちらりと一度背後を一瞥し。

「覚えはあるが、客として見掛けた連中じゃな。
ほれ、この姿じゃからな、一度見れば、そう忘れられんじゃろう?
それに…まぁ、それ以外も、ちとあるじゃろうし?」

そう伝え、ゆらりと、己の尻尾を示すように揺らした後。
再び、そんな意味あり気な事を言うのだった。
気になるのは当然だが、時折、視線を少女の手元に。
こんな場所で遊ぶような資金、持つような女子だったっけか?と、そう思えるからだ。

フェリーチェ > 「えぇ、お知り合いと楽しく遊べるのは嬉しいですよね。
 んふふっ……散らかしていくお客さんなら困るでしょうけど、そんな悪いなんて…ことは……」

頭を撫でられてちょっと気分良く返しておいて、ふと自分の言葉に引っかかる。
散らかしていく?そんな行儀の悪い人のように見えないからこそ、冗談になると思って言ったことだ。
ともあれその振り返る様子から、店側ではなく付き合いのある客の方に申し訳無さを抱いていると気づく。

ーー散らかす、散らばる、荒れる、荒らす、場を荒らすーー。

ちらっと振り返った方をフェリーチェも見やり、確信に近いものが脳裏に浮かび冷や汗を垂らす。
まさか全員が全員、そんな思いを抱くほどの凄腕なら、入り浸って研究に没頭しているハズでぶらぶら歩き回っているなどありえないと、胸中で色んな反証材料を集めながら…………。

「そうなんですね、でしたら皆さんもご一緒されたいのではありませんか?
 あ、今度もポジション赤に金貨1枚、ベットします」

周囲も乗ってくることを期待して、また金貨をテーブルのマス目に置く。
他人の事を気にしている余裕など無かったと思い出し、隣からの目を誤魔化すために努めて自然に、楽しげな笑みを貼り付けながら。

タマモ > 「あー…ここで遊ぶのは、大体は一人でじゃぞ?
ここで見知った者は、知り合いとなる、と言うよりも…
………まぁ、良いか。
と言う訳で、普通にこうして、接せられる相手は、そう出会わんのじゃ」

さて、少女の言う散らかすが、何を意味するのか。
それによっては、己に当て嵌まる場合もある、それが現実だ。
少々勘違いの入ってた少女の言葉に、軽く説明をするのだが。
そんな言葉にさえ、深く意味を探れば…と、そんなものが含まれてしまうのは、それを気にしてないからだ。
そこに、もし到ってしまったならば。
別の意味での心配を、増やしてしまう事だろう。

「そうじゃのぅ…多分、そんな思いはあるじゃろうな、妾が参加するのであれば、な?
とりあえず、まずは少しだけ、のんびり見させて貰うとしよう」

己が参加するのであれば、己を知る者であれば、間違いなく参加をしただろう。
だが、少女の言葉に、己がそう答えれば、周囲の一部からは、残念そうな吐息が零れたりしていた。

ただ、そう答えるも、そんな少女に対し。
その耳元に、唇を寄せれば。

「赤ではなく、黒に置いてみると、良いかもしれんぞ?」

まだ締め切りの合図をしていない、それを見計らい。
そんな言葉を、少女にだけ聞こえる小声で、囁くのだ。

フェリーチェ > 「あぁ、お一人でじっくり勝負に挑まれたい方も珍しくないと聞きます」

それは賭場においては確かに一定数居るだろうタイプ。
スリルに身を浸したいわけではない少女でも知っている。
納得行く話に少し違和感を残しつつも、頷いてテーブルに視線を戻す。
高レート専用のチップや高価な貨幣をそのまま使う場合、長く目を離すのはご法度だ。
ただ、確信を感じさせる声には、反応せざるを得ない。

「え……えっ、でも二分の一ですよ?
 まだすごく勢い有るのに、そんなこと分かりません」

ルーレットと隣に座る女性へと交互に視線を行き交わしながら、フェリーチェも小声で応える。
ちゃんと聞こえるように斜めに倒した身を寄せる様子は、こんな場所でなければ一緒に遊んでくれるお姉さんとの内緒話だが、信じきれないが何かありそうだと感じ取ったフェリーチェは真顔。
と、そんな話をしている内に締め切られたルーレットは、やがて黒の上に玉を残して止まる。

タマモ > 「うむ、じっくりと言うか…
まぁ、遊び方にも、色々とある、と言う訳じゃな」

少女の言葉に、なぜか視線を逸らし、そう答える。
さすがに、勝つのも楽しみ、負けるのも楽しんでいる、とは少女に言うものでもないだろう、と。
ともあれ、そんなやり取りをしていれば、配置時間は締め切られ、ゲームが開始される。

少女が、そう言う気持ちは分からなくもない。
だが、こうした誰かとの勝負でない、そうした時の勘は異常と言える程に鋭いのだ。
…もっとも、今回のルーレットのようなものの場合、ボールの滑る速度等で、実は判断出来るのだが、今回はそれをせずに、この結果。
それが、ほぼ勝ちを得、こうした店では好まれない理由である。
実際に、その結果が、少女へと答えを出した。

「おや、残念じゃのぅ、ふーちゃん?
次は当たるよう、頑張らねばのぅ?」

そんな結果の出た後、今度は普通の声で少女へと声を掛ければ。
ぽんぽんと、その手が今度は肩を叩く。
ただ、少女へと向けられた視線は、ほら、当たっただろう?と言わんばかりのものではあったが。

フェリーチェ > さも上から何か言いたげなドヤ顔に、フェリーチェは唇をちょっと突き出すむくれ顔で応じる。
たかが二分の一、されど二分の一、金貨があっさり持っていかれてしまうのは変わらぬ事実。
信じていたらアレが二枚になって返ってきたのではないか……なんて、危険な思想が頭をよぎる。
賭け事の典型的な沼である。

目を瞑って深呼吸し、惑わされるなと、自分に言い聞かせる。
手元の資金が程々に換金できればよいのだと初心を一生懸命に思い返し、また一枚金貨を握りしめる。

そんな少女の葛藤などお構いなしにルーレットは回り出す。
どこに置くのも大して興味が無かったフェリーチェは、今回に限って迷いながら金貨の端をコツコツとテーブルの縁に当て、チラッとタマモに目配せする。

「ところで、タマモさんなら次どこに置きますか?」

所詮は人生の殆どをぬるま湯の中で過ごしてきた少女、心が揺らぐのにそう時間は必要なかった。

タマモ > こちらの様子に、むくれた表情を浮かべる少女。
くす、と笑ってみせれば、つん、と指先で頬を小突く。
そんな顔をするものじゃないと、そう言うかのように。

隣で少女の様子を見ていれば、そんな雰囲気は、自然と感じ取れる。
負の感情を糧とするのもある関係か、それなりに、感じ取り易い。
それを感じれば、少女に見えぬところで、その笑みを深めてしまう。

さて、それはさて置き。
そうしていれば、次のゲームの準備が終わる。
回り出すルーレット、そちらへと、視線を向ければ。
隣から、少女から掛ける声に、すぅ、と瞳を細めた。

「ふむ、そうじゃのぅ…」

問われれば、少しの間、ルーレットの回転を眺めるも。
その視線を外し、少女へと向け。

「赤か黒ならば、黒じゃろう。
もっと細かく言えば、20番ではないか?」

そう、少女へと答えるのだ。
まだ回転は続いているが、締め切るタイミングはもうすぐだろう。
そして、少女がそれを信じるも、信じないも。
もう少し経てば、その間違いない結果が出る訳で。

フェリーチェ > 黒、そう聞いて伸ばした手が途中で引っ込められる。
数字にも賭けるならもう一枚いる。
高レートのVIP席と違ってミニマムは銅貨程度で構わないのだが、躊躇った時間分で鞄から新たに取り出すのは間に合わない。

見送ればいいという声と、手元にもう一枚金貨があるだろうという声。
脳裏に響く心の声は、フェリーチェを更に惑わす。
一枚はそうしている間にポジション黒へ。
数字のマスは少し奥にあり、小柄なフェリーチェにはやや遠い。
生唾を飲み込み、ぐっと背伸びして20番に金貨をまた一枚置いたのは、締め切り寸前のタイミングだった。

「ベット」

ただ一言だけの宣言で両手をテーブルに押し付け、見開いた双眸がルーレットを睨みつける。
別に総額で勝っているわけでもないのにやる気だけは十分だった。

タマモ > そんな少女の様子に、細められた瞳が、じっと向けられていた。
それは、少女の仕草を可愛らしく思い、微笑ましく向けられているものなのか。
ぶら下げられた餌を前に、飛び付く姿、それを楽しむように向けられているものなのか。

少女が黒に、そして、20番へとコインを置いて。
強い意気込みで見詰める、その姿を見詰めながら。
改めて、その耳元へと唇を寄せ。

「どうせ暇で来たんじゃ、ふーちゃんが良いと言うならば、じゃが。
もう少し、付き合っても良いぞ?
代わりに、ふーちゃんも、妾の遊びに付き合ってくれるなら、のぅ?」

再び、少女だけに聞こえる言葉と共に。
その体を、伸びる腕が、抱き寄せる。
もちろん、ルーレットを見ているのに、邪魔にならないように、だが。

その言葉から、少し後。
その言葉の通り、ボールは20番へと入り。
一点賭けの36倍、カラーでの賭けで倍のコインが少女へと戻ってくるのだった。

フェリーチェ > 「私は持ってきた分だけ使ったら帰らなきゃならないんです。
 資金が尽きるまで遊んだら、宜しければお外でお茶ーーーーッ!?」

停止したルーレットがその目に映る。
次の瞬間、細く息を吸う笛の音みたいなものが聞こえた。
遅れてフェリーチェ自身が漏らした音だと気づき、両手で口元を覆い隠す。
信じられないと言いたげな目がタマモに向き、実際に今すぐ手を除ければそんな疑惑より先に歓喜の叫びが口をつくだろう。
ディーラーが営業スマイルで積み上げた72枚の金貨を押し返せば、少女のか細い肩が震える。

「つっ、付き合ってください、お付き合いさせてください!
 えっ、えっ、なんで分かっちゃうんですか?
 イカサマですか?魔法ですか?グルなんですか?」

ついさっき言った言葉を忘れてしまったかのように、返ってきた金貨を鞄に入れず、そのまま手元において軍資金として握りしめた。
その小さな手に、金貨の彫込みのギザギザ模様が付いてしまうくらいに。
寄せ合った身体を仲睦まじく擦りつけ、着物の袖をちょんちょんっと引っ張って次のゲームへのやる気満々である。
もう疑いの余地なく、賽銭箱に投げ入れる勢いで賭けてしまうことだろう。

タマモ > 確実に得られる甘い蜜を前にして、それを見過ごすのか?
例外を除き、そんな者は居ないだろう。
もちろん、それは目の前の少女も同じだ。
大勝ちとも言える結果に、手で口を塞ぐ少女の姿に、その笑みを崩さぬまま。
己の言葉に、賛同の言葉を得る事が出来れば、満足そうに頷いてみせる。

「ふふ…まぁ、それは企業秘密、と言うもの。
だが、付き合うと言っても、もう数度程度じゃ。
でないと、相手が可哀想じゃからな?
………それで良い、じゃろう?」

少女の様子に、営業スマイルを浮かべているディーラーだが、その内はきっといい顔はしていないだろう。
先までと違い、勝ち分を鞄に入れぬ少女に、苦笑くらいは浮かべるかもしれない。
そうした中、言葉の末はディーラーへと向けているかのように、そう伝えれば。
その間に、次のゲームの準備が、また整えられる。

相手からすれば、ある意味それはありがたい申し出だと思う。
己が参加すれば、大打撃と言える程に勝ちを持っていかれてしまうのだから。
そんな事も知らぬだろう隣の少女、嬉しそうに、やる気満々に、意気込む少女の腰を抱き。
三度、その視線をルーレットへと向けて…

後に続くのは、負けの無い、ボーナスタイムと言わんばかりのもの。
それを前にして、少女がどんな姿を見せてくれるのか。
己から言えば、その後も…楽しみで。

フェリーチェ > うんうんと物分り良さげに頷くフェリーチェ。
唇に添える程度に片手を翳してお淑やかさを演出するのは、もう遅いかもしれないが。

「そうですよね、秘伝をそう口にすることなどできるハズがありません。
 えぇ、えぇ……勿論楽しく遊ばせてもらうだけですから♪」

遊ぶという言葉を使いながら、目先の物欲に踊らされたフェリーチェ。
とりあえず先に消費すべき金貨を手前に持ってきつつ数枚ずつの山を作り、高額で一点賭けする気満々である。
ホクホク顔で色指定の金貨一枚と数字指定の金貨10枚の山が、少女の両手の下に出来上がる。

「次はどこに賭けましょう?
 黒か、赤か、ん〜数字にも入れましょうか」

白々しく言うフェリーチェの目は、ギャンブルを楽しむ者でも儲けを求めたギラギラした者のソレでもない。
疑いなく良いことがある予感を胸に出かける無邪気な少女そのものだった。
胸中が物欲でなければ。

タマモ > 素直に頷くも、そんな少女の姿に、どこか楽しげな瞳を向ける。
今、己の楽しみが何かと問われれば。
賭けに勝つ事ではなく、そんな少女の姿と、その後どうするか考えを巡らせる事だ。

最初見た、緊迫したような様子はどこへやら。
今や喜々として、ルーレットを前にする、そんな変化もまた、面白い。

「うむ、良い良い。
何事も、楽しむ事こそが、良い方向へと進むもの。
それを、忘れるでないぞ?」

まぁ、どんな意味でか、までは言わないが。
そう伝えながら、賭け金を前にする少女を見遣り。
続く言葉を聞けば、視線を一度、ルーレットへと向け。

「ふむ…この感じならば、赤、25番じゃろうな。
さて、せっかくならば…少しだけ、と」

回転を確認し、そう少女へと、また小声で教え。
少女が賭けた後、その体を抱き上げ、膝の上へと座らせるように下ろすのだ。
もちろん、身を乗り出し易くする意味もあり、少女の感触を楽しむ意味もある、そんな行為で。
そこから、加え始まる楽しみの前準備に、何かしらの力をじわりと注ぎながら。
ひとまず、この場では、少女の稼ぎに貢献もするのであった。

…どこかに、裏があるのかどうか?
それも面白いのだが、たまには、こうした協力を少しはするのも良いものなのである。

フェリーチェ > 「ポジション赤、25番一点でベットします」

自信満々の……例えるなら最初に隣の女性が仕掛けてきたときの顔で、フェリーチェは金貨を惜しげもなく押し出す。
また背伸びして身体を乗り出した小柄な身体を膝の上に持っていくのは容易いものだろう。
寄り添っていたために信頼できるーーできそうなーー女性の手によるものと本人が分かっていたため、さしたる抵抗もない。
衆人環視の中であまり子供っぽく甘やかされるのは少しばかり恥ずかしく、膝の上でモジモジと身体をくねらせはしたけれど……。

止まりかけているルーレットを一心不乱に見つめる目には、疑いというものがない。
かといってもう興味も何も失ったのではなく、何かの力を注がれるのに気づかないほど、集中していた。
フェリーチェの身体には豊富な魔力で抵抗力こそあれど、常に自分の管理下にある状態とは異なる。
自分で張った幕が押されれば気づくだろうが、纏わり付いただけの布地が揺らされても気づかぬのと同じように。

そんな無警戒な少女に、今日だけは女神が微笑んでいたようだけれど……。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からフェリーチェさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からタマモさんが去りました。