2022/07/16 のログ
エレン・ローズマリー > ハイブラゼール内 高級酒場一角

いくつかの店を回る途中に最近寄る、お気に入りの店。
立場上 付き人程度は後ろに備わるものの護衛などはいない。
幼げな姿にかかわらず、丸みの取れた整いは化生の匂いを漂わせる。

そんな、両翼持ちのエレンは柔らかい革と綿の詰まったソファの上で一人過ごす。
手元には味を損なわないように鉄や真鍮ではなく不透明なガラスの器。
中には真っ白なアイスクリームが備わっている。
銀ではなく、金の合金か、銀色を帯びた しかし手元になんら害のない匙を用いて小さく掬ったそれ
小さな口元に運びながら、笑みを浮かべる姿。


「ん~……♡、氷は便利ね。 雨がうっとおしいけれど、これがあると違うもの。」


ここ最近、ハイブラのような金廻りのいい現場は氷の術師の雇用が高まっている。
室内の温度管理 食材 酒に水に茶 そして塩と混ぜて氷点下にさせた素材を用いて
適当な筒回しでもあればこうして材料を投下し、ふんわりと舌に溶けるデザートが提供できる。

地下室や氷室といったものを所持していればともかく、現在人を雇えば罷り通ってしまう現実。
中にはとても味の軽いチーズに果肉ジャムなどもさっぱりとしていて、紳士淑女に人気だろう。

戦闘と冒険 ロマンの代わりに 金と酒と女を提供する。
この国では、夢を捨て目の前の欲望に走らせるくらい、簡単なものだった。
手元の白桃ワインも、氷水の詰まったケースにボトルごと冷やされているから、言うことはない。


「ストリッパーみたいな踊り子や娼婦も簡単にぶっ倒れなくて済むし、取り合いに給金上昇は困りものね。」


冬場は一気に人気が失せて現場に戻っていくのだから、一時のモテ期とやらに
エレンは氷術師の現状をクスリと笑んだ。

エレン・ローズマリー > チョコレートとライズベリーに白桃ワイン
その口元の牙と翼のように、口に運ぶものは数が少ない
酒精 チョコレート そして赤

それ以外で自身で口に運ぼうとする数少ないものの一つだろう
このバニラとて、元を辿れば 血 の生成物なのである。
小さな笑みのまま、バニラを食べてしまうとこれ以上は体が冷えてしまうというように。
老いない体 冷たい肌 男の熱い肌の上よりも、宝石は冷たい女の肌を好むというかのようなアルビノスキン。

空の器 名残惜しむ気もないように、口の中の甘さを洗い流すように白桃ワインを片手に余韻に浸るエレン。
顔を出すには、この店のオーナー 敵情視察ととられるわけではなく、こういった品に対する純粋なファンとして訪れるならば
歓迎の意と供に無駄な敵対意識を避ける 互いに避けれるものは避けるだろう 会話も和やかなもの。


「ここのデザートには敵わないわね。 私のところももっと育てたいところだけど。
 氷の当てが無くなったら言ってちょうだい? 代用品がくるまで格安で提供してあげる。」


無くなってしまうのは惜しいもの、とクスクスその爪先に爪化粧が色づき、口元を隠して笑みを向ける。
挨拶を終えたなら、今日という夜は雨が多いせいか、外に出歩くこともない。
馬車や傘による、屋内活動がどうしても多くなってしまうだろう。

外の治安も、雨の音に紛れるネズミ以外 わざわざ濡れて食もうとする野良犬など少ないだろう。
雨の静けさ 空気の冷たさ そして少しの蒸れる湿度。
グラスの中の白桃色をゆっくり円を描いて揺らしながら、足を組んで背もたれに寄りかかるようにしながら
その両翼の骨が当たらないように、広げて肩にかけるようにしてしまうだろうか。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からエレン・ローズマリーさんが去りました。