2022/05/23 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 不夜城たる歓楽街。
煌々と人工の光が点されている空間に、その小さな人外の姿があった。
常日頃から袖を通している北方帝国辺境由来の装束ではなく、王国の、それも当世風の装いをして。
黙っていても聊かの威圧感を与えるかもしれぬ整い過ぎた容貌も、多少なりとも世俗に塗れて鳴りを潜めているかもしれぬ。

「のう、そこの御仁。
この後、特に用事もないというのであれば、洗体なんぞどうかのぅ?
勿論、只の風呂ではないが故、ちぃとばかり財布に余裕がある場合に限るのじゃがな。」

――口を開くと、どうしようもなく胡散臭さが醸し出されてしまうのは変わらないが。
それにしたって、ちっこい体をふんぞり返らせて紡ぐ物言いも、少しばかりオブラートに包まれている。
客引きの口上にしては謙り感の薄い台詞を吐いて、小さな手でちょいちょいと道行く男を手招き。
そう、妖仙が興じているのは、客引きだ。
正確に言うなら、客引きの立場に身を窶して遊んでいるのだ。

ホウセン > 尤も、空言かといえば、そうでもなく。
己が間々顔を出す特殊な風呂屋――を称する、性的サービスを提供する店に紐づいている。
酔狂な客が、給与も不要で客引きをするというのだから、益があるかは兎も角、不利益は無いしと。
足を止めた船乗りらしい様相の男に、ちょこちょこと近付く。
屈強な体躯と並び立つと、妖仙が如何に華奢な身体つきをしているかが如実に露わとなって。

「ほほう、呼びかけに聞き耳を立てるなんぞ、この助平め。
嗚呼、勘違いするでない、これは褒め言葉ぞ。
今なら好みの娘の手が空いておるか懇切丁寧に手配する故、希望があったら告げてみるがよい。」

そう嘯いて右手を自身の耳元に当て、内緒話を聞く姿勢に。
一つ一つの動作を大仰にした分、コケティッシュさが補強されるのを計算している辺り、無駄にあざとい。
店には、好みに合致する嬢がいるかのような口ぶりだが、リクエストとの近似値を見出して口八丁で丸め込むのが売り込みの神髄であろう。

「ふむ、背は小柄…分からぬでもない、組み伏せた時の万能感があろうからのぅ。
顔立ちは幼め…確かに縁を紡ぐのが難しかろうから、この折にというのも分からんでもない。
髪も瞳も黒…嗚呼、シェンヤン系かのぅ?件の皇女降嫁の折に目にする機会が増えて、そういう好みが掘り起こされたのかもしれぬな。
――で、男が好い?」

調子よく相槌を打っていた言葉が、最後に微妙な間を生んでしまい。
条件に合致する娘は居るかと思考を巡らせる前に、嗚呼、と天を仰いだ。
そういう趣味を否定するつもりもないが、今日の遊興においてはハズレである。
”提示された好みに完全合致する”子供の姿をした何かが、俄かに困ったように眉に皴を寄せて周囲を見回す。
猫被りが極まっており、如何にも保護欲を擽るような…演技である。
義侠心に駆られた通行人や自警団、或いは娼館関係者の助力があれば――引っ掻き回して遊べようと。

ホウセン > 絢爛たる夜の街、性悪な妖仙が如何に振舞ったかは――
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からホウセンさんが去りました。