2022/05/02 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」に亞夢さんが現れました。
亞夢 >  
夜の街
ダイラスのこのエリアに関してはそう称する者も少なくはないだろう
静寂とは程遠いそんな街の一角ではちょっとした騒ぎが起こっていた

「アンタが金ももたずに店に来たのが悪いんだからね
 身包み剥がすだけで勘弁してやってんだからさっさと失せな♪」

勝ち気な女の声と、同時に聞こえてきたのは喚くような男の声

風俗店まわりでトラブルが起こるのは珍しくもない
ただ、その場では男に一方的に上から目線で言葉を投げつける女に注目が集まっていた

亞夢 >  
店から叩き出されたらしい男はプライドを著しく傷つけられたのか、怒気を孕んだ大声をあげる
しかし両者の言い分は周囲から見ても店側がもっともなものであり、周囲の野次馬もそれに同調
形勢が不利とみた男も酔いが冷めるほどに劣勢を自覚し──

覚えてやがれ、淫売が

耳にタコが出来そうなくらいよく聞くような、そんな捨て台詞を吐き半裸の状態で通りを走り去っていった

「テメーみたいなクサレチンポ記憶の残滓にも残んねーよウジムシ」

走り去る男の背中に向け、んべっと舌を出して見送ると、ざわめきも次第に落ち着き初めた辺りをみまわす
下着同然の装いに、目立つ立ち耳と尻尾をもつ女はうふっ♡と可愛らしく微笑んで

「お騒がせしちゃった~♪
 ごめんなさいねぇ、変な客が来たもんだからつい。
 ご迷惑かけちゃったお詫びに今から2時間、お酒の割引しちゃおーっと。
 よかったら『桃幻境』遊びに来てねぇ♡」

あざといセールストークを振りまきながら、ゆらゆらと周囲の男を誘うように尻尾を揺らす

騒ぎの中心となった女に向けられるのはその美貌への羨望と下心の入り混じったいくつもの視線
女はそういった視線を浴びるのがどうにも好きだった

亞夢 >  
目立つ騒ぎが起こったこともあってか、その後店の客入りは平常時よりも多いくらいに賑わい
朝日が昇る頃、女狐は再び表通りへと姿を現す

「は~い、お疲れ様~♡
 帰ったらちゃんと湯浴みもして、身体冷やさないようにしな~♪」

仕事を終えた幾人かのまれ人を見送り、労いの言葉をかける
ミレー族はもちろん、様々な亜人種、異種を雇っているのがこの店の特徴である
普段抱けないような珍しい娼婦を抱けるとあって、特に王都からの客に好評なのだ、が…

「──ったく。今日みたいなのが来るとほんっとタルいわー。
 うちも用心棒かなんかいよいよ雇わないとダメな感じ~?」

見送りを終えるとやれやれと小さく溜息
客が増えれば当然、質の悪い客も出てくる
今日のように普通の人間の客程度ならともかく、暴れ始めて手がつけられないようなヤツが来たらそれは大事になりかねない

亞夢 >  
オーナーである女狐自身、腕に覚えがまったくないわけでもないものの、加減を効かせるのは難しい
やはりそういった荒事は専門の連中に任せるに限る

「そのうち酒場にでも求人張りにいこっかなー。いくらくらいが相場なのやらね」

肩を竦め、自身の店を振り返る
店の中では清掃がはじまり、店じまいの準備が進められ、あとは戸締まりのみ
また日の沈む時間まで、桃幻境は眠りにつく
オーナーである女狐もまた、普段なら塒へと変えるところなのだが

「求人ついでに、飲んで帰ろーっと」

酒場に用が出来たならと即断即決、一杯やって帰ることに決める
ついでに好みの男の一人や二人、なんなら三人四人でもお持ち帰りできたらいいなと思いつつ

「ってもこんな時間にロクな男は落ちてないかぁ」

独りごちるゆらゆらと尻尾を揺らし、酒場へと向けて歩きはじめていた

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にグラハムさんが現れました。
グラハム > それは店主が酒場へと足を進めた時だった。
従業員の一人が焦った様子であちこち覗き込みながら路地を駆けてくる。
そして、オーナーの特徴的な後ろ姿を見つけると慌てて駆け寄り声を掛ける。
息を乱した従業員が報告したのはいわゆる厄介客の使いが来たこと。
王都に居を構えるその王族は、すでに何人も娼婦を潰してしまっている本来なら出禁の客であるものの、その権力と財力故に断ることが難しい立場にある。

しばらく顔を見せなかったその厄介客の使いが宿に娼婦を寄越せとやって来た、と。
すでに閉店時間であること、オーナーも帰ってしまったと説明しても当然聞く耳は持たない。
もっとも主の命令に逆らうわけにはいかないし、達成出来なければどんな目にあうかわからないのだから、使いのほうも必死である。

そんな報告と共に従業員は困り果てた顔で如何致しましょうと尋ねる。

亞夢 >  
さて、足軽く酒場に向かおうとすると血相を変えたスタッフに呼び止められた

「──はぁ?また来たのアイツ!?」

一瞬で不機嫌そうになる女狐はすぐさま踵を返し、足早に自らの店へと向かう

その客の悪評はここハイブラゼールではそれなりに耳にするもの
特に有名店などではある意味有名であるともいえる扱いを受けている

「いいわ、アタシが対応するから。他のスタッフにはもうあがってもらって」

酒気分もすっかり醒め、やや険しい顔で男が待つであろう自らの店先へと足を早めた

グラハム > 店へと戻ったオーナーを迎えたのは閉店作業を進めながらも不安そうな従業員達。
そして、高圧的ながらも追い詰められた表情の身なりのいい男。
オーナーの顔を見るなり、「早く女を用意しろ!」と叫ぶものの、オーナー自身が対応すると聞けば心底安堵したような表情を浮かべ、準備を急がせ、用意が出来た魅惑的な狐娘を迎えの馬車へと押し込んで主が待つ宿へと向かうのだった。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からグラハムさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」から亞夢さんが去りました。