2022/02/20 のログ
■シシィ > 眠らぬ夜の街、の名を恣にする港湾都市ダイラスの歓楽施設ハイブラゼール内の小劇場を訪っていた。
その名の通り、劇の上演から、オークションまで手広く演じるその場所で、今宵は───小規模のオークションを兼ねた会に、女は足を向けていた。
骨董品、異国の美術品、あるいは貴石の原石等、各地の品物が品書きに並んでいる。規模としては、小から中程度といったところか。以前のようなシェンヤンのオークション……は少々異質な規模と言えたから、己の目を鍛えるにもこのくらいがちょうどよかった。
訪れているのも、名品を掘り出すことを好む貴族階級から、己のような商人、鑑定を生計とするものも見られる。
単に、場の空気を好むものもいるのだろうけれど。
とりあえず、オークションは小休止、軽い酒宴と歓談。それから次に競りにかけられる品々を舞台上に一度展示してくれる。壇上に上がれるわけではないが───、それでも十分と言えた。
少しの休息の間を、女は申し訳程度盃を口にして、並んだ品を見やる。
骨董品であればその真贋を、年代を。それから状態を。己の中の知識と当てはめるのは、パズルのようで、少し楽しくもある。
「───……人よりは、こういったものの方が助かるわ」
歓談の談笑に紛れてしまうような小さな声音で、そう嘯いた。
生き物が、人が、商品となることを否定するつもりはないが、それでも、やはり思うことがないわけではない。
■シシィ > 水晶グラスの、カット面を指先で柔らかく撫でながら、己が見たかったものへと視線を向けている。古ぼけた骨董品はどのようなルートでここに送られたのか。……詮索するのは己の仕事ではなく、その真贋を見極めることが求められる。
土汚れなどは入念に落とされ、万一の破損もない様に布張りの箱に収められているものは、オークションの主催者の手腕や、抱えの鑑定士の仕事にもよるのだろうが、それでもこういった場所に出展されるものの中では小ぶりの、石造りの丸箱は、おそらくはとくに実用性があるわけじゃない。
好事家向けの品をどう、より魅力的に見せるかは、商人としての仕事だろう。
つらつらと、とりとめもない思考を、酒精を嗜みながら女は巡らせ、静かに楽しんでいた。
■シシィ > そうして──、オークションの再開を告げる言葉に、己を含めた参加者の視線が壇上へと向けられる。一つ一つの品物の由来に耳を傾けながら───
ひとまずは、競売の時間を楽しむとしよう。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 劇場」からシシィさんが去りました。