2021/11/27 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」にジギィさんが現れました。
ジギィ > しんと冷えた月の無い夜。
不夜城は今宵も色とりどりの光にあふれ、天空に劣らぬ地上の星となって夜空へ光を放っている。
街へ入れば、冬など感じさせない熱気で以て人が行き来している。ひとびとは酔ったように頬を紅潮させて、あるいは青ざめてはいるが眼だけは爛々と光らせて、或いは狡猾な光を瞳に灯して光あふれる街中で濃い闇に紛れて――――

そんな都市の、ある意味ありふれたカジノのひとつ。
大ホールに大丈様々な遊戯の卓が並び、其処ここに酒を提供するカウンターがあり、または小さなステージがあってちょっとした『お楽しみ』を提供している。
その『お楽しみ』ステージのほど近く。
地味で小さな机にぽつねんと居る女エルフが一人。

「……――――♪」

机の上に並べたタロットを『如何にも占い師です』な手つきで混ぜては一つ弾いたりしながら、鼻歌で隣のステージで歌っている歌姫のコーラスめいたものを唸っている。
当然の如く誰にも注意を払われておらず、客たちはエルフの周囲を行き過ぎるばかりだが、本人はとんと気にしていない様子…どころか、よくある『目が合った客に微笑みかける』等という基本的な客引き手口さえ放棄している。

(ちょっと変わり種の『出し物』のお飾りで、それっぽい雰囲気だけ醸して居ればいい)

というのが仕事、というわけではなく女エルフ独自の拡大解釈なのだが、『客を取れ』とも言われなかったのでこうして適当に時間を過ごしている。客が取れればボーナスとなる事になっているが、こういう施設の客など碌なものでは無さそうなので、大いにやる気が無かった。

かくしてカジノの片隅で、怪しげな占い師はヴェールで隠された唇で鼻歌を歌い、タロットをかき混ぜたり、独りポーカーをしたりして過ごしている。

ジギィ > そうこうしている内に夜は更けて、ヒトも少なく…と思っていたらそうでもない。
なんだか酒場でひとしきり盛り上がってからやって来たような勢が増えてきたようで、騒めきに入り混じって陽気な大声が聞こえてくるようになった。

(嫌いじゃないんだけどー…)

手元に集中していた振り、ちらっと上目で辺りを見る。
思った通り、外の酒場でかこのホールでか、兎に角出来上がった人が増えてきていて、代わりというのか相対的にと言うのか、羽振りの良さそうな人物は見当たらなくなってきている。
そんな折。

「――――…」
(うっ)

ばっちり目が合ってしまった人がひとり。
幸いだったのは、相手が女性だったことだろうか。
不運だったのは、彼女の悩みがカジノの事だけではなさそうだという事だろうか。

女エルフは彼女ににっこり笑いかけて目の前の席を目線で促して、意味深にタロットを切り始める。目が合った夫人はきょろきょろと辺りを見回してから、意を決した様に、というよりはややいそいそと女エルフの前まで足を運んだ。

――――そうして『彼女』の打ち明け話は、カジノホールから客足が遠のくそのときまでかかったとか―――

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」からジギィさんが去りました。