2021/09/26 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にヘルティナさんが現れました。
■ヘルティナ > 「―――へぇ……。」
大歓楽街の中でも複雑に入り組んだ区画に存在する商業地区の一角。
富裕地区の宝石店と見紛うばかりに煌びやかに彩られた店内のショーケースに並ぶ品々を眺めながら、
真紅のドレスを纏った一人の女が、思わず感嘆の声を漏らした。
その視線の先に映るのはしかし眩い宝石類などでは無く、
一見すれば何の変哲も無い小瓶や、華やかさの欠片も無い安っぽい装身具ばかり。
けれど其れらはどれも希少な魔法薬や魔法具、或いは魔導機械などの類で、
すぐ傍に置かれた値札には途方も無い桁の金額が記されていた。
「道理で、このような見つかり難い場所に店を構えた訳ですわね……。」
その中にはただ希少というだけでは無く、正当な手段では決して手に入らないような品も数多く。
しかしそれ故に、女の興味を引くには十分過ぎる程の存在感を放っていた。
■ヘルティナ > 其の侭、ヒールを履いた女の足が緩やかに進んで行けば、次の品を物色するように店内の散策を続ける。
ショーケースの中に飾られるのは小瓶に指輪、耳飾りといった小型のもの。
しかし商品は其れだけでは無く、其処から少し視線を外せば刀剣類や鎧、
果ては女の背丈程はあろうかという大がかりな魔導機械までもが視界に入り。
「此れ、もしかして王家が秘密裏に所持しているっていう噂のものかしら……。
良くもまぁ、そのような品まで手に入れたものね……。」
純粋な賞賛とも呆れによる皮肉ともつかぬ物言いで、傍らに控える黒服の店員へと投げ掛けるも、
当の店員は恐縮です―――と無機質に答えを返すだけで、それ以上口を開こうとはせず。
そんな様子を、赤いドレスの女はほんの少しだけ退屈そうに見遣ってから、店内の散策を再開し―――
やがて、不意に何かを思い付いたかのように、その先に鎮座していた矢張り大がかりな魔導機械の方へと歩み寄って行き。
「―――ねぇ……此れは一体、どうやって使うものなんですの……?」
そう投げ掛けた問い掛けは、純粋に女の目から見ても皆目見当が付かなかったが為の質問が半分と、
まるで置物のように寡黙な件の店員が、饒舌に話す処を見てみたいという、ちょっとした好奇心がもう半分で。
■ヘルティナ > しかしながら結局、彼の口から返ってきたのは簡素かつ無機質な、一切の無駄のない説明ばかり。
その結果に、ハァ―――と女は落胆した風な溜息をひとつ零して。
実はこの店員も精巧に作られた魔導機械や人形の一種なのではなかろうか―――
そんな感想を心の内に抱きながら、女は店内の散策を再開するのだった。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からヘルティナさんが去りました。