2021/03/26 のログ
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”武具通り」にスピサさんが現れました。
スピサ > 王都に鍛冶工房を構えるスピサは、滅多に来ないダイラスへと足を運ぶ機会があった
ほかの鍛冶屋でも、作成した武具を並べるマーケットの開拓にと、ハイブラゼールのような場所へ赴くことはある
しかし、スピサの場合は少し事情が違っていた。

二週間前、お気に入りのアケローンの闘技者に送りたいと武器の依頼を賜った
金払いのいい貴族の彼は、その武器と共にアケローンやダイラス産の武具を見る機会に共に行かないか
そうスピサへ提案してくれた。 もちろん、その闘技者への紹介や武具への手入れなど
仕事の側面もあったものの、最近は研ぎから修繕 作成の依頼は割と静かなもので鉄を打つことが多かったスピサ
この提案を人見知りの側面があれど、まだ見ぬ武器を目にしようと、呑む。

宿の手配もしてもらっていたため、愛用の武器と小盾を備え、革の装備で身を立てた姿
冒険者寄りな姿で武具の店を見て回る。
目元には革製の、バイザーのように巻かれた眼帯。
薄青い肌など、人とは違う見た目でも、この混ざり合った都市で目立つことは少ない

「……はぁ。」

店のスタイルは屋内型 入り口を受け付けの状態にした開放的なもの
色々なものがある。 ダイラスは潮風のイメージが強いものの、複合施設のこの場所ではそれも弱い。
一つのゴツい鉄腕を手に取ってみる。

「こ、これは?」

店主とは、武器の話で多少通じることがり、会話は弾む方向が多かった。
腕を通す空洞もない重いそれ。 まるで金属製の義手だ。

『そいつぁ魔導機械製だな。 あんたみたいな鍛冶屋には縁がない話だ
 だがアケローンで片っぽが無くなるやつなんざ大勢いるだろう?』

遺跡や似たような場所からの掘り出しもんさ と〆る店主。
スピサには確かに縁の無い話だ。 魔導機械に頼るとすればおそらく、合いの手の槌を欲しがる老人鍛冶屋
重く、正確な強さを刻むそれだろうと思いながら、シゲシゲと眺めていく。

スピサ > 「魔導機械製……。」

木製や鉄の義手を欲しがられたことは、ある
何も手の形をとる必要もない フックやブレード 時には火薬筒のアタッチメントを備えた武器の腕
隻腕の戦士には珍しくもない処置だ。

魔導機械に興味もなかったものの、手指を拳の形に丸めてみると正確に握られているそれ。
興味本位で、色々なものを見て回る相手を、冷やかしといっても武器屋と鍛冶師
邪見にすることもない。 初めて見る武器屋や、初めての冒険ほどでもないものの、心躍る場所には、違いない

王都と港湾都市の血の匂いが香る場所では、夢も希望も抱けないだろうけれども
それでも、武器はやはり、カッコイイ。

「これは?」

受信用の、音声のみの水晶でアケローン闘技場の様子を聞いているらしい武器店主
映像系は内部だけの特権故か、音声受信で勝ち負けの把握や、流れを把握するのに使っているらしい。
聞いた指さす質問に、耳を片方だけ利かせたように、反応には少しのラグがあった。

『あ、あぁ 言ってみりゃ、一種のガントレットさ。
 さっきのに比べちゃインパクトがないが。」

そう言って店主が近づくと、自身の腕に嵌めるようにして見せる。
親指から順に曲げ、拳を造ると手首のある宝玉が ギンッ と光輝いた。

『力を増強させる腕輪の宝玉で、ガントレットを造る
 腕がついていても中の筋肉がオシャカになっているやつは、茹でた芋を潰すのが限界だ。』

こいつは、そんな腕を元の力程度には引き出せるのさ。

なるほどなぁ、と補助器具 治療の術や防具で聞く、銀のガントレットを再現したかのような代物だ。
作成意欲が湧く代物に、試しにと互いに手をがしりと握り合う。
サイクロプスの握力と、増強のガントレット ミ シ リ と互いに、なかなかの力を感じ取りながら。

「すごい……負傷兵が多いから、です、か。」

アイディアの方向性の違いか、と隠すバイザー眼帯の奥では、単眼の瞳を輝かせた。