2020/09/29 のログ
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”【イベント開催中】」にフィリさんが現れました。
フィリ > 最近少しずつ肌寒くなってきたと思う。
吐く息が白い色を帯び始めるのも…そう遠くはないのかもしれない。
膿からの強い風が吹き付けて、急激に体温を奪われるような。港湾の近くなら尚のこと。

だから今日は少しだけ、普段よりも厚着を心掛けてきたものの。目的地についてから後悔する事になってしまった。
思っていたよりずっと暑い。否、熱い。人の熱気に満ちている。
そろそろオークションの熱気も落ち着いてきたと思っていたのに。まだまだ、参加者は尽きていなかった。

お陰で、熱狂の坩堝を避けて会場の外。この辺りで売られている物は割と安価な。競売するまでもなかった品々で。

「――む…む。大変興味は尽きなぃの――です、が…」

悲しいかな、少女は少女である。実年齢的には寧ろ幼女。
所持金イコールお小遣いであり、過度な散財など出来る筈もなく。
お陰で先程から、露店の前で悩みっぱなしだった。
仄かな呪力を感じる、古ぼけた木彫りの置物。なんともけったいなそれを買うか否か。

フィリ > とてもとても古い呪物。
こういった物がひょっこり出て来るから、この辺りは面白い。
色々首を捻って考えたものの。結局、これはいかなる物なのか。手持ちの知識では、まだまだ分からなかった。
以前、シェンヤンの小物を売ってくれた、あの皺の多い老路店主に。訪ねてみるしかなさそうで)

「――ぇと、す…すみません。これは。…はぃ、どぅぃった謂われが、ぁるのかと――――」

ぼそぼそと低い声が応対し。真剣に頷いていた少女の顔に、ぽんと紅く色が付いた。
…確かに、なかなかにふくよかな造形だな、とは思っていたが。どうやらそれ即ち、地母を崇める為の物。
農作物の豊穣を祈願する物であり、同時に、民族の繁栄を――早い話が、産んで増えてを祝福する物。

そういえば、今日の品揃えには…何だか。
赤子を思わすヒトガタやら、石で出来た陽神やら。いかにも「それ!」という物がちらほらと。
直ぐ隣では露骨に、とってもいやらしい品々を売っているような市であり、街だから。仕方ないのかもしれないが。

「――――こぅ、ぃったものは。…早ぃの、です、私には…はぃ――――」

そして。少女も其処の住人だから。言葉と裏腹、ついちらちらと。色々なグッズに目を向けてしまう訳で。

フィリ > 一度意識してしまうと。その他の、極々普通の魔導具、呪物、おまじないグッズまで。そちら方面の物に思えてきてしまう。
…実際、その通りの品物も多々混じっているので。品揃え的に、今日来たのはまずかった、という事だろう。

使う側。使われる側。どちらを想像したのかは、少女自身の名誉の為に伏せるとして。
ともあれ最終的に、今日の所は魔術に絡む品の蒐集を諦めてしまい。
早熟な熱を帯びた紅い表情を隠せもせずに。小走りで逃げ出す姿が有った…とか。

ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”【イベント開催中】」からフィリさんが去りました。