2020/05/25 のログ
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”【イベント開催中】クリュソス」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 細い月が中天に掛かる夜更け。
ハイブラゼールは今宵と手毎夜のごとく煌々と不夜の灯りに溢れ、人々の喧騒は昼にも増して嬌声やら歌声やら怒声やらで彩られ活気に満ちている。
その歓楽街の中でも一際大きな影となって聳える『クリュソス』の屋上に、雑踏を見下ろすように佇む女が一人。
黒髪を夜風に靡かせながら手すりに頬杖をつくようにしてもたれ、眼下の彩に翠の瞳を細めている。
物見遊山にオークションを覗きに来たものの、夜が更けるにつけ『出し物』は不穏になっていった。
それに合わせるように熱を増していく周囲にやや白けた気分になって、カジノの従業員に無理を言って―――多少鼻薬も効かせて――屋上への通路を通してもらった。
石畳で覆われて周囲に鉄柵があるだけの屋上は、だだっ広いだけで何もない。
装飾過剰な内装や外壁を思うと、何となく『舞台裏』を覗いた気にもなる。
「―――…」
見下ろす女は頬杖を左右反対へと切り替える。
潮の香りを含む風は心地よく、眼下にひろがる人間模様も眺めるのは飽きないが…何となくの手持無沙汰は否めない。
「…こういう時は、煙草のひとつでも
趣味だったら、と思うな…」
何とはなしに独り呟いて
指先を煙草を持つ風に掲げてみる。
■ジナイア > 掲げた手の先から空へと視線を移す。
真っ黒な夜の帳にか細い月が朧に滲ませる光が灰色の染みの様に広がって、その淡い色に黒い影となって渡り鳥の影が見える。
この季節に何処へと向かうのか、果たしてあちらは――――西だったろうか?
ぼんやりとそんな事を思うと、淡い光が目に滲んだのか不意に欠伸がこみ上げる。
手を当てた口元で吐息のようにして零して、潤んだ翠をふたつ、瞬かせて。
(―――オークション中に、少しワインも貰ったしな)
深夜という時間もそうだが、久しぶりの人混みに聊か草臥れた感もある。
女は手すりから身を剥がすと、独特の香りを含む夜風を楽しむようにゆっくりと、階下への階段へと続く扉へと向かって歩く。
女の姿が消えれば、そこだけしんとした殺風景が
弱い月明りの下に残される…
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”【イベント開催中】クリュソス」からジナイアさんが去りました。