2020/03/22 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にアルヴィンさんが現れました。
■アルヴィン > やがて港町の陽も暮れ果てた。馬をゆかせて街を進んだ騎士は、愛馬を預けられる宿を求めてひとつの宿へとたどり着いた。
既に、酒場は喧騒に満たされている。
所々で酒杯が交わされ、吟遊詩人の歌声も届いてくる。とにかく鼻をくすぐるのは、なんともいえぬほど香辛料の効いた料理の匂いだ。
騎士は、最も奥、壁際のテーブルへとつくと、壁を背にして鎧を鳴らし腰かける。それは、可能な限り死角なく、酒場を見渡せる位置を心掛けた、ということだ。
左の腰間に佩いた剣は、鞘ごと外してすぐ脇に。
そして、改めて旅の疲れをほぐすように、ゆっくりと賑わいを見せる酒場を見渡し、眺めてゆく…。
■アルヴィン > 忙しなく行き交う女給に尋ねられ、騎士は一杯のよく冷えたエールを注文した。合わせて頼んだのは、この港町では好んで食べられるという、壺煮だ。
素焼きの壺に、海で獲れたばかりの魚や野菜を、たっぷりの香辛料と共に煮込んだものだ。魚のアラや野菜から出た出汁と香辛料とが合わさって、労働者たちにとっては日々の疲れを癒してくれる安価な食事であり、酒のあてとしてもそれはそれは旨いのだと、そういう女給の触れ込みに、思わず頼んだものだった。
騎士の前に運ばれた冷えたエールと熱々の壺煮。
立ち昇るなんともいえぬ香気に、つい、騎士の口許が緩む。
なんとなればこの騎士は若い。
さも美味そうに素焼きのジョッキに口を付け、騎士の食事が始まった。
■アルヴィン > どうやらこの若い騎士は、決して酒が強くはないらしい。ジョッキ一杯のエールに頬を染めているところを見れば、それはよくわかる。若く健康な騎士はまた、健啖家でもあるようだ。
見る間に壺煮をそれはそれは美味そうに平らげると、まだまだ食い足りぬとばかりに、固い黒パンと塩味の効いたスープを追加する。
よく噛み、よく味わい、御恵みに感謝し…。
騎士はゆっくりと、酒場の喧騒の中静かに一人の食事を済ませてゆく。
明日からはまた、見知らぬ土地での修業が始まるのだ。
英気を養い、身体を休め…そうして新しい大陸での、この騎士の初めての日は無事に暮れてゆく…。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からアルヴィンさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にアルヴィンさんが現れました。
■アルヴィン > 騎士の若く鍛えられた身体は、短い睡眠をしっかりととることで、一晩で長い船旅の疲れを癒していた。その成果は、幼い頃から騎士を鍛え上げてくれた師の賜物とそう言ってよい。
そしてまた、騎士は朝も早くから起きだし、宿の中庭にて剣の素振りを行って、しっかりと汗も流したのだった。
歓楽の街と、そういってよいハイブラゼールの中で、そのような苦行めいた鍛錬に朝から勤しむなど、どこの田舎者だ、と。周囲からは物珍しさと侮蔑の間にあるような視線が注がれたが、騎士にはそれを気にした気配は毛ほどもなかった。
庭の井戸にて水をかぶり、そのまま汗を流してしまう。
早春の冷たく硬い風の中だとて、水浴びを苦にして気配も見せずに、むしろ騎士は清々しいとばかりの有様であった。
そして…。雫を垂らす金色の髪を乱暴に拭うと、青々とした春の空を見上げたのだった。
■アルヴィン > 路銀は、幸いにしてまだまだ余裕がある。
髪の水気を乱暴に払った騎士は、春の空を見上げながらにのんびりと、長閑に行く末を思った。
この身は剣の修行の最中にある。これという目的があるわけではない。
ただ、この地にくれば戦乱の気配は濃く、魔族の住む地も近いという。
剣と、そして聖騎士としての修行の機会にも事欠くまいと、精々その程度のことしか考えていなかったというから、融通無碍も太平楽も極まったものだ。
■アルヴィン > 聞けば、この街には闘技場もあるという。
見世物、娯楽としての殺し合いなど、軍神に仕える身としては言語道断ではあるが、路銀を稼ぎ、修行の機会にもなろうかと、それくらいのことを考える程度には、この騎士はやはりそのあたりの聖騎士のような頑迷さとは無縁だった。
裸の上半身の汗を流して、鞘に納めた剣を握る。
気づけば、朝も食わぬままにすっかりと鍛錬に没頭してしまっていた。
盛大に鳴って空腹を知らせてくれる腹の虫を、掌でなだめながらに若い騎士は、閑散とした酒場に朝昼を兼ねた食事を求めて歩いてゆく…。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からアルヴィンさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にアルヴィンさんが現れました。
■アルヴィン > 一日を、この喧騒極まる港湾都市にて過ごした若い騎士は、昨夜から泊り続けている宿へと再び戻り来た。一日、港を巡って見聞を広め、幾度かは荒事にも巻き込まれて、気風の荒い港湾都市の“歓迎”を受けて戻ったというところだ。
「冷たいエールを」
昨夜同様、最も奥、壁際の席へとついた騎士は、左の腰間の剣を剣帯から鞘ごと外すと己の傍らに立てかけ、通り過ぎた女給へとそう告げる。
そして、港の市場にて購ってきた地図をテーブルの上へと広げてゆく。
港湾都市から北へと伸びる山賊街道。その傍らにあるという遺跡。そして、その後東へとゆけば魔族との戦いが断続的に続くという砦がある。西へとゆけば王都へと。
遺跡にて、路銀稼ぎを兼ねて探索をするもよし。
砦にて、魔族との闘いの前線に立つのもよいのかもしれない。
一見呑気に長閑に地図を眺める若い騎士は、そうして己のゆく道へと思いを馳せる…。
■アルヴィン > やがて、騎士の前に冷たいエールの満たされたジョッキと、肉汁の滴るソーセージとベーコンの盛り合わせがサーヴされた。
「…これは?」
頼んでいないけれど、と。そう告げかけた騎士へと、忙しなく立ち回る赤毛の女給が、サービスです、とそれでもにこやかに告げてゆく。昨夜、宿へと入った折に、たっぷりと心づけを弾んでおいた。どうやらその礼ということであるようだ。
こういうところも、この騎士は妙に世間ずれしているところがあるように見受けられる。歳と生来の身分には不相応な心遣いは、幼い頃から剣の修行の旅暮らしをしてきたことと、その旅暮らしを共にした師の薫陶によるところ大、であった。
騎士もまた、悪びれず妙に遠慮をすることもなく、ありがたくその馳走に預かった。
パリ、と音立ててフォークを受け止めたソーセージ。そこかにもまた、肉汁が飛沫と飛ぶ。健康的な音を立てて騎士の前歯が肉を噛み切れば、口腔内にも熱々の肉汁が散ってゆく。
それを、冷たいエールで流し込むというのは、これはまたなんとも贅沢な時間であった。
■アルヴィン > 騎士としては、いささが行儀が悪いというのは否めない。片手のフォークでソーセージとベーコンとを突き、もう片手で地図のそこかしこを確かめるようになぞっては、時折冷たいエールを喉へと流し込む。
騎士、貴族というには粗にして野だが、卑ではない。
やはりそれは、融通無碍というに相応しい。そういう気配をこの騎士はまとう。
ゆっくりと、騎士の指が山賊街道を上下する。
どうやら、遺跡探索に随分と心を惹かれているのだろう。
その一方、砦への道筋をも指は何度か辿っている。
また、パリ、と音立ててソーセージが食いちぎられた。
いずれかを決めるには、やはりまだまだ情報が足りない。
ソーセージをエールで飲み下し、騎士はなんともいえぬ溜息をつく…。