2020/02/01 のログ
■カーレル > 一筋の煙が立ち上って消えていく
階下からはカジノを楽しむ客たちの声が遠くに聞こえるのは一仕事終えた達成感と安堵からだろうか
時折、灰皿に灰を落としながら時折、人の行き来する足音が聞こえると意外と利用者がいるものだな、なんて思ったり
紫煙を吸い込み乾く唇を酒で湿らせるようにしていれば、此方に近づく足音が1つ
大金を持っているせいか、いやに人の気配に敏感になっている自分が小心に思えて苦笑した
「…こんな所で珍し…くもないか、二度目だものなあ
久しぶり、女主人(マダム)、酒は今ひとつ良し悪しが判らないんだよな…」
もっぱら此方のほうが良い、と手にし煙草を軽く持ち上げて
改めて彼女の方へ視線を向ける。相変わらず背後に控えている護衛も、顔見知りであったからそちらへも
視線を送り自分であるという事を知らせる…そうすれば、幾らか警戒も緩むであろう
「仕事と言ってもこっちは報酬を受け取るだけだったけどね…
どうぞ、掛けてくれ。1人で盃を傾けるより美人がそばにいてくれたほうが華やぐ」
彼女に席を進めれば手にした煙草を灰皿に押し付けて火を消した
■ルドミラ > 「ええ、2度目。
微妙に釈然としない顔でグラスを傾けているあなたを見つけるのは、ね──ありがとう」
可笑しそうな響きを帯びた声は、相変わらず落ち着いたアルト。
ご相伴に預かる許しを得て、毛皮の合わせを開いて軽く腕を広げると、護衛が素早く歩み寄ってコートを預かり。
何でも屋の挨拶にも目礼を返し、また元の位置へと戻って行った。
「こちらも『配達』帰りよ。あなたと一休みしたらまたすぐ王都へ戻るわ。
あなたは? 今日は泊まり? 今夜中に帰るのなら、ついでに馬車で送るけれど」
対面の席へ腰掛けつつ、近寄ってきたウェイターにシェリー酒を言いつけ。
まずもって変わりのなさそうな男の様子を、いささか無遠慮にまじまじと眺めた。
結構危ない橋を渡ることもあるようなのだが、とくに怪我の痕跡などもないようだ。
翻って、女主人の方もとくに変化は見られず。久闊を叙す目つきが、他意なく男を見つめている。
■カーレル > 彼女の言い様にそんな顔をしていただろうか?と無意識に自らの顔に触れてしまう
今日などは懐具合を暖かくてニッコリ笑顔でいたつもりだが…まあ、依頼人と別れて気が抜けていたのかもしれない
「…そんな顔をしてたかね?懐も暖まって気分的にはいい気分のつもりなんだけど、な…」
彼女の指摘に小首を傾げ口元に微苦笑を浮かべる
相変わらず女主人の機微を理解しているかのような、護衛の動きに感心したように視線を向けていたが、
彼女が腰を下ろせばそちらへと視線を向けて、手にした杯を軽く掲げるようにしてから一口、酒を飲み
「相変わらず景気が良さそうで何より…女主人、自ら配達に来るって事は相当な上客でもいるのかな…?
…この後、か…何にも考えてなかったな…その辺で宿をとっても良かったし…盛り場で時間潰しても良いし…」
本当になんにも考えていなかったらしい
どうするつもりでいたのだろう、と薄らぼんやりと考えていればマジマジと向けられる視線と、
自分の泳いでいた視線がかち合い何となく彼女の瞳を見つめ返す
「…ひょっとして、心配してくれているのか?
それだったら、馬車に相乗りさせてもらうかな…?せっかくの儲けを一晩でチャラにするのも馬鹿馬鹿しいし…」
彼女が無遠慮に此方を観察するものだから、にやりと笑みを浮かべて冗談で返す
■ルドミラ > 「お酒を飲む時の癖なのかしら。口をつけた後、かるく視線を泳がせているように見えるのよ」
注文の品がすぐに運ばれてくる。小ぶりなグラスを手に取ると、軽く掲げて唇を湿らせてから、
「こんな風に」と、自分が目にしたことのある飲酒時の彼の目つき──はてこれは美味いのかどうか、と自問するような──を真似てみせて、小さく笑うのだった。
得意客についてはそんなところだ、と頷き返し、酒をもう一口、二口。
それなりに気の張る相手だったようである。
カジノのざわめきが、シャンパンの泡のように吹き抜けに立ち昇っては消える。
真夜中過ぎという時間帯は、この街では宵の口も同然であり。
このVIPルームがクールダウン目的の利用客たちで混み始めるまでにはまだ、間があった。
階下の賑わいもやや遠い、適度な静けさの中。
視線がぶつかると、女主人はグラスに唇をつけたまま、上目遣いになった。
黒い瞳がうっすらと濡れた光沢を帯びる。
「いいえ。下心があるからよ。ちょうどまた仕事を頼みたいと思っていたところだったの──それに、」
そう、臆面もなく返事をしておいて。鼻先をもたげ、男の方へ身を乗り出すと低く、何事かをささやいた。
■カーレル > 彼女が自分がしているらしい仕草を真似て見せてくれる
自覚がなかったのか、くつくつ、と笑いながら自分を真似る彼女へと視線を向けて
「そんな風だったかね…まあ、確かに言われてみるとそんな事を考えているかも…
案外、自分の事でも判らないことってあるもんだ」
一頻り笑った後、どうやら結構な上客が相手だったらしい彼女に短く『お疲れ様』と告げる
彼女ほどのやり手が気を使う相手である…市井のなんでも屋如きが深堀りはしないほうが良さそうだ
そうしたやり取りの後、しばし、沈黙が流れた…互いを観察しているような、ただ杯を傾けているだけのような
そんな静かな時間………僅かな沈黙に先に耐えられなくなってしまうのは自分の方であったけれど
「下心…?とりあえず、それはあとあと、聞くとして先に仕事の話を済ませようか…―――ん?」
薄っすらと濡れた質感の瞳が此方を見上げている
相変わらず、睫毛長い…と感心するような、懐かしむようなで見つめ返していると、
不意に彼女が身を乗り出し何事かを囁いた
ささやき声になるほど…と1つ頷いて見せれば、グラスに残った酒を一息に煽った
■ルドミラ > 酔えぬ酒をそれでも飲むのは気分というものなのだろう。
もっとも、その癖に気付いたのは大分気心が知れるようになってからのことだが。
男の一笑を得て満足したのか、続く労いの言葉は肩をすくめて受け取り──。
「仕事の直後に仕事の話をしてしまって、悪いわね。
それだけ腕の良さを評価されているものと思っていただけると嬉しいわ。……まあ、」
そして、目の前で一気にグラスを干した男に、目をみはり。長い睫毛が、ゆっくりと瞬いた。
これは意思表示ととるべきなのだろう。つまり、早く馬車へ、と。
女主人も彼に倣い、白い喉を仰向けて残りの酒を飲み干してみせ。は、と酒精で熱くなった息を吐いた。
もう一度ぶつかった視線は、今度は先ほどまでとはいささか趣を変えている。
「……話の続きは、馬車に乗ってからね。それに、『祝杯』の続きも──」
酒に酔えぬ体質の彼とともに酔うことのできる手段は限られている。
グラスのふちをそっとなぞってからテーブルへ置くと、男とともに立ち上がった。
こうして、女主人と便利屋は、静かなラウンジを後にする──。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からルドミラさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からカーレルさんが去りました。