2019/08/15 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 酒場」にジナイアさんが現れました。
■ジナイア > 太陽の熱気や漸く収まろうかという夜半。
港湾都市ダイラスの大歓楽街ハイブラゼールは今なお人が多く行き交い、その夜になってこその熱気を漂わせている。
老若男女、様々な種族の大小の影。
カジノや娼館、はたまた劇場なのか、兎に角も人が押しかけている派手な装飾が成された建造物。
それらは街灯や建物自体の光に照らされ、毎夜のことながら祭りが開かれているよう。
その喧噪からすこし外れ、港にもほど近い場所にある酒場は
仕事を終えた海の男、カジノで負けが込んで今宵だけは身を遠ざけようとしている様子の者、明日早い船で出立する予定のものなど、比較的お祭り気分からは遠い様子の人々で賑わっている。
(……所変われば、というやつかな)
その酒場のカウンターの片隅に座る、黒髪の赤銅色の肌の女。
注文が来る前らしく前には何もないまま、肘をついて酒場の内側の様子をぼんやりと、しかし翠の瞳には好奇心を浮かべて眺めている。
■ジナイア > 今までダイラスに来る度『ダイラス』らしいハイブラゼールの中心とも言えそうな場所で過ごしてみる事が多かったが、そろそろあの賑わいと熱気にも中てられそうな頃。
少し海でも見ようと、港へ向かう途中で立ち寄った酒場だったが…
ひどく賑やかな訳でもなく、殺風景でもない。
どうやら商売や何等かの仕事のついでに立ち寄っている者が多いらしく、店内を埋める喧噪も単なる言い合いやおしゃべりというより、何等かの意見や議論をしている者が多いようだ。
ただひたすら享楽にふけり、融けたような者たちで溢れる中心部とは、一風変わった雰囲気だ。
(――どちらが好ましいとも、言わないが)
兎に角も、ひとつの都市にこういったグラデーションがあるのが不思議でもあり、面白い。
■ジナイア > 程なくして、カウンターの向こう側から店員が赤い液体の入ったグラスを滑らせてくる。
女はありがとう、と熟れた唇を笑ませると、入れ替えのようにコインを滑らせた。
食事は宿で済ませてきた。
今宵は1杯を飲み干したら辞去するつもりだ。
別段考え事をするつもりもないが、何となくグラスに付いた水滴を眺め、指先でその雫をすっとなぞる。
指先についた雫をふっと吹いてからグラスを手にして、一口呷ってカウンターの上へ戻した。
その表面に、酒場の灯りがぼやけて揺れる。
「…悪くないな」
■ジナイア > トマトベースの酒らしいが、アルコールの具合が丁度いい。
思わずカウンターの奥へと翠の視線をやると、目の合った店員が笑いかけてきて、思わず女も笑みを返した。
移動するのに喉が渇いていたらしい。
2口目、3口目ですっかりグラスは空になる。
ごちそうさま、と女が奥へ掛けた声は喧噪に紛れたが、店員とまた視線を合わせて笑う。
そうして女は黒髪を揺らしてスツールから滑り降りると、すこし人を避けるようにして店外へと歩み出た。
■ジナイア > 外の風は、海風も混じって少し湿っぽい。
天を見上げれば、白い月が黒い空にぽっかり穴を穿っている。
極彩色の都市との差異を思い浮かべるとまた可笑しくなって、くすりと笑みを零した。
その、熱気あふれる都市へと身を翻して
女の姿も、喧噪の中へと消えてゆく。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 酒場」からジナイアさんが去りました。