2019/06/04 のログ
カーレル > 彼女の言葉に耳を傾けていると始めは褒められているようで何やらそわそわするような気分でいたが、
次第になんとも言えぬ表情を浮かべる…彼女の表情が悪びれること無く柔和であるのも拍車をかける

「マダムにお願いされたら頷いちまいそうだな…でも、それは約束できないわ
 依頼してきた相手の名前をポロッと口にしたら、俺の信用が無くなるしな…
 だいたい、マダムにしても、口の軽いやつを雇おうなんて思わないだろ?」

冗談に聞こえてこないのが恐ろしくもあり、女の身1つでのし上がってきた彼女らしいようにも思える
ただ、自分としても譲れない部分はあるようで、それだけはハッキリと伝えると、
最後に一言、俺は何時だって金貨銀貨の味方だもの、と冗談っぽく付け加える

彼女がグラスを掲げれば、失礼、と一言告げてから軽く彼女と杯を合わせる
そうしてから軽く唇を避けに湿らせてグラスを置いた

「ああ、ここのカジノのオーナーの依頼を受けて一寸した仕事をこなしたばかりでね…
 依頼料とは別に、世話になったからって、宿とカジノで遊ぶ金、今夜は好きなだけ飲んでいってくれって
 言われてるから…まあ、おすそ分けみたいなもんだよ。マダムからすれば微々たるもんだろうけど…
 1人で飲むよりゃ、美人が隣りにいてくれたほうが花があって良いしな」

仕事の内容にあまり突っ込む事はせず、どうして高級な酒をご馳走できるのか、その経緯を掻い摘んで伝える
彼女がグラスの口をつければ、いい酒何だってさ、と伝えればバーテンダーは会話を小耳に挟んだか、
苦い表情を浮かべた

ルドミラ > 言葉を選んではっきりと、依頼主の秘密は守るという一線を明確にした相手。
途中から目を閉じ、首を軽く傾げて彼の言葉を聞いていた女主人に、気分を害した風はなく、

「……つまり、依頼主の名前を漏らすことはなく、相手以上に高い金貨の山を積めば、
あたくしに不利なお仕事は断ってくれる、という理解でいいのかしら?」

相手が引いた一線のぎりぎりのあわいを即座にそう突いてきた上で、もの思わしげに酒杯へ目を落とす。白い指にきゅ、と力が入り、氷が涼しい音をたてた。

「だって、あなたが敵に回ってしまったらあたくし困るわ。
困るあまりに、あなたをさらって、閉じ込めて、あれこれして、
あなたの口の硬さが本物かどうか試してしまうかも……というのは冗談にしても、」

冗談よ? と相手の反応の如何によらず視線をあげて、笑顔でもう一度念を押してから、

「口の軽い人を雇おうとは思わないのはその通りね。失礼なことを言ってしまってごめんなさい。
けれど、覚えておいて欲しいわ。あたくしは、金貨銀貨を味方にしたい優秀な人の一番の友人になる準備があるということを」

そして、おすそ分けに預かったという酒を、一口含んで喉を潤した。

「ありがたくいただいているわ。あなたのグラスは何杯目? 祝杯にしては、
ほろ酔いになっている様子もないのね」

カーレル > 時折、グラスを傾けつつ彼女の言葉に意識を向ける

「依頼料以上に金貨が積み上げられていれば一応の言い訳は出来るって話だよ
 敵対する依頼主が『それなら仕方ない』って納得させる事ができる金額が出てくれば相手も諦めるだろ?
 まあ、女手一つでここまで来たマダムからすれば、俺如きの妨害行為なんてどうということも無かろうがね…」

物思いに酒杯に視線を落とす様子を肴に酒を飲む
思案に耽る美人の横顔を眺めつつ飲む酒はまた格別であった…ように思う
その後、彼女が口にした一言で、ぞくぞく、と背筋が冷たくなって台無しであったが

「それが出来てしまえるように思えるから冗談には聞こえんのだよなあ…
 笑顔に免じて冗談ということにしておくけど…気の小さいやつの前ではやらないほうが良いよ、それ」

背筋に感じた冷たさを振り払うように笑ってみせると酒を煽る
こういう場面でこそ、酒に酔いたい気分になるが身に宿した精霊は身体に取り込んだ傍から酒を無毒化させていく

「商売人が友人なんて作るもんじゃ無いと思うけれどね
 敵か、味方かなんてのはご時世に寄って流動的だろうし…それこそ、財貨を友とするべきさ
 ………と言っても、まあ、今後共ご贔屓に」

スツールにかけたまま、すっ、と頭を下げてみせる
どんな時でも依頼主に成り得る人物との線は切らないでおくのが食いっぱぐれない為の処世である

「さて…四杯か五杯か…
 酒に酔えない体質でね、それでもこんな場所じゃ酒を呑むくらいしかすることはないし…
 マダムも商売柄、付き合いで飲む機会があるだろうけれど程々にしておいたほうが良いよ
 二日酔いで肌が荒れようもんならせっかくの美貌が台無しだ」

冗談交じりに彼女に伝えれば僅かに肩を竦ませながら笑みを浮かべて

ルドミラ > 「あら。カーレル、あなた、一個人としてはわりと実直なタイプのようね?
友人という言葉は、花束と一緒。本来の意味の有無など考えずにとりあえず受け取っておくものよ」

また、ころころと鼓膜を撫で転がすような笑い声。
冗談交じりの脅しだの、政治的方便だのを厳しめコースで投げれば投げるだけ
ばしばしと捕球するような相手とのやりとりが愉しいようである。
こちらこそ、と軽く頷いておいて、バーテンダーにチェイサーの水を頼んだ。

「では、どんなお酒も水と変わらないということ? それでも飲むの?」

今度の返答は思いがけないものであったらしく、不思議そうに瞬きをした。初めて相手の目をまともに覗き込み、

「ではあなた、何になら酔うことができるの? 祝杯をあげたい気分の時にはどうしているのかしら。
代わりにお薬の類でも?」

カーレル > 空になったグラスを手の内で弄びながらも視線は彼女に向けられている

「さあどうかな。口ではなんとでも言える…実際に眼の前に金貨が積み上げられてる訳じゃなし
 …花束に背筋の冷たくなる文言の認められたカードが添えられてないならそうかも知れないな」

やり取りを楽しむような気配の彼女に対して此方は慎重になってしまうのは、
彼女の背後にいた護衛がどう、という事では決して無い
護衛よりも余程、目の前の彼女のほうが底が知れないというか、掴みどころが無いと言うか
ただ、笑い声を零す彼女を見ているとコロッといってしまいそうなのがなんとも情けない
…しかし、男であったら誰だって少なからずそうであろうと思う。なるほど、こうして伸し上がって来たのか、
なんて思わぬでもない

「飲むよ…酒には酔えないけど、酒を供する場所の雰囲気は嫌いじゃないしな
 正直なことを言ってしまうと、どんなに高い酒だろうが、密造酒だろうが味の違いなんて俺にゃ判らんけど…」

何になら酔うことが出来るのだ、と不思議そうに此方を覗き込む彼女
そんな事は聞かれた事も考えたこともなく、しばし、考え込み黙り込んでしまった

「…薬はまず論外だな。効くかはともかく、アレに関わると碌な目に合わねえのは知ってる
 祝杯を上げたい時…は、まあ一寸良いもの食べたりする、位か…酔いはしないけど
 ………そうだ、眼の覚めるような美人にだったら酔ってみたいねえ」

視線を下に向けたまま思案していたが、視線を彼女に向けて
悪戯っぽく笑みを浮かべれば、そんな冗談を口にして笑い声を零す

ルドミラ > 気さくに話しているようで、否、事実そうであったとしても、完全に警戒を解かない男の判断は、おそらく正しい。
表の世界と裏の世界の双方で場数を踏んできたからこそなのだろう。
危険だと分かっていても籠絡されてしまう、そう仕向けるための手管を暗器のようにいくつも呑んでいる。
それがいま、彼の目の前にいる女であった。
うーむと考え込んだ男をいくら面白そうに眺めていても、だ。

「そういう体質だということを、覚えておくわね。次にお仕事をお願いする時に、うっかりお酒を出さないように。……ああ、それなら、」

相手の視線がこちらへ戻ってきた時、女の白い頰には浅く笑窪が浮かんでいる。
頬杖をつき、顎を軽く引くようにして男を見つめた。

「美人もいろいろよ。どんな娘がお好み?」

将来的に仕事のインセンティブとして店の従業員を見繕う時が来るかもしれぬと、そう続けて問いかける。

カーレル > 彼女にコロッといってしまう商売敵や商人たちの気持ちが少し判るような気がする
彼女の舌鋒と美貌とで迫られたら何か頷かなくてはいけないようなそんなに気になってくる
心なしか、身の内に宿した精霊たちもざわざわするような、そんな気配が確かにあった

とはいえ、酒の席であるし他所のカジノである
更に言えば一介の何でも屋相手であるから、彼女が手練手管を持ってして欲するようなものはないはずである
そもそも、正式に依頼すれば、以前のように彼女の仕事を請け負うのは吝かではない
それが人の命を奪うことでなければ

「マダムが出してくれた酒なら飲んでも良いけどな…素面じゃ頼めないような仕事とか、な
 まあ懸命な貴女がそんな仕事を俺に頼むとも思わないけれどね」

娘の好みを問われれば、そうさな、とまた少し考える
彼女の口元に浮かぶ笑窪には妖しさの中に何やら可愛らしさを感じたのは意外な発見であった

「あんまり幼すぎるのはな…どうにも後ろめたさがあってイマイチだな
 …黒髪の女は好きだ、賢い女も嫌いじゃない。それと高嶺の花には手を出してみたくはなるかな」

明らかに視線が纏め上げられた彼女の黒髪に向けられ、その後で彼女の瞳に視線を向ければ冗談っぽく笑い
それから、痛い目を何度も見たけれど、と付け加えて苦笑を浮かべた
あまり参考にはならないような曖昧な返事だったかも知れない

ルドミラ > 夜が更けて、ますます賑やかになってきたカジノの片隅で。
談笑する若い男と年上の女、というのは想像力を掻き立てる図なのではあろうが、
女主人としては剣戟を楽しむような気分であった。手強ければ手強いほど燃える、という一面もあるのかもしれない。

そして、質問への暗示的な答えが返ってくると、女主人の笑う口元に今夜初めて、かすかに白い歯列が覗いた。
黒目がちの両眼は半ば伏せられているが、その瞬間が一番、男に内側の精霊がざわめき泡立ったかもしれなかった。
チェイサーの水のグラスに浮かぶ氷を、からり、からん、と人差し指で浮き沈みさせながら。

「……次に何かをお願いする時が楽しみになってきたわ、カーレル。本当よ。
それまで、」

白い指先が、氷のかけらをつまんだ。そのまま、男の口元へ差し出して、無言のうちに「あーん」を促す。
相手が拒まなければ、女の指はかけらを彼の口の中へ滑り込ませ、ついでのように舌先を擽り撫でて出て行くだろう。

「黒髪の女に痛い目に遭わされないように、くれぐれも気をつけて。……今夜はこれで失礼するわね。
祝杯のおすそ分け、ごちそうさま。近いうちに連絡させていただくわ、いい?」

カーレル > 彼女との会話のやり取りも次第に慣れてきたように思える
しかしそう思わせる事が彼女の手管なのか、自分にはハッキリとした事は判らない

身体の内に宿した精霊がやけにざわめくのは好奇心からなのか、それとも身の危険を感じてなのか
どちらとも言葉を持たぬ精霊に確認する術は無かったが、命の危険を感じるほどであれば、
此方の身体の支配を奪うようなことまでやらかすのだから、それ程、危機的状況というわけではないだろう
そういう点では相手が誰であろうと身の内から危機を知らせてくれるのだから便利である

「そん時は誠意は金額で見せてくれると嬉しいねマダム」

軽口でそんな風に返せば、彼女が摘んだ氷の欠片が口元に
突然のことであったから、反射的に口を開いてしまえば、欠片を放り込まれ舌先を白い指先が撫でていく
ほっそりとした指先を、唇で捕まえてやろうとも思ったがそう思った時には舌から指先が離れていく
…こういう所が女手一つで身を立ててきた所以ではないだろうか?

「女に痛い目に合わされるんなら構わないけどね…笑ってられるうちは
 ………どうぞ、ご贔屓に。おやすみマダム、良い夜を」

去っていく彼女に挨拶をして
彼女の背後にいたであろう護衛の面々達にもふわっ、と軽く手を上げて挨拶を
彼女たちが去っていくのを見送ってから、スツールから立ち上がれば軽く伸びをして
バーテンダーにご馳走様、と一言伝えれば、人々の雑踏の中に溶け込むように姿を消した

ルドミラ > 口の中へ滑り込ませた氷のかけらは舌の上で溶けきることはなく、小さくなりながら冷たく男の喉の奥へ落ちてゆく。

その濡れた唇に絡んだ水の雫に視線を当てていたのも、そう長いことではなく。また元どおり、女主人は柔和そのものの顔つきに戻り、

「おやすみなさい、カーレル。あなたもよい夜を。
ええ、この次は報酬と、味のしないお酒よりもっと酔える何かをお約束するわ」

女主人が席を立つと同時、背後で待機していた護衛たちが出立の準備をする気配。
それじゃ、と一度肩越しに振り返って最後の挨拶をすると、ほのかな香水の残り香だけを置いて、もう後は振り返らない。
ほとんど上下動のない、滑るような歩き方で。
黒づくめの後ろ姿は、護衛の男たちとともにカジノの雑踏の向こう側へ。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からルドミラさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からカーレルさんが去りました。