2019/01/26 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にフラニエータさんが現れました。
■フラニエータ > 今日女が足を運んだ場所はとあるカジノ施設。
施設の壁際に並んでいるソファに座り、ワインを優雅に傾けつつ、賭博に興じている人々をじっと見つめている。
今日の女もまた、所謂“間抜けなお金持ち”を探している…のではない。
「…さぁて…どうなるのかしらね…ククク…」
女がこっそりと口角を上げ、妖しく微笑む。その時、女の視線の一部に入っている一人の男が慌て始めた。
内ポケットやスラックスのポケットを目まぐるしく動く男の両手。
時々動作が止まり、考える男――刹那再度動き始める両手。無くなった財布を捜す、ソレ。
女はそんな様子を見ながらワインを傾ける。
「今頃気づいたって遅いのに…馬鹿な男…愉しいわ…」
女が仕事をしようかと思っていた矢先、同業者が先に仕事をしているのを目撃した女。
既にその同業者は居らず、“間抜けなお金持ち”が残された状態だった。
女は今夜の仕事をあっけ無く諦め、傍観する事に決めたのだ。
青い顔をして慌てるその男を、見世物として眺め酒を飲む女。
――こんな女である。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にイーシャさんが現れました。
■イーシャ > 「楽しんでもらえてるみたいで、よかったよ」
不意に、声が掛けられる。
こういったカジノ施設に来る客にしては、ずいぶん若く見えただろうか。
彼女に先んじて、仕事をしていたのはこの青年。
本来であればさっさとこの場を後にするところだが、こちらのことを認識していながらただ傍観していた女性に興味を持ち、声を掛けたのだ。
その青年はミレーだが、こういった場においてはその特徴である黒い猫耳と尻尾を魔術によって隠している。
「おねーさんは遊ばないの?」
ゲームに夢中になっている金持ち相手に仕事をするのは単純であり、なおかつ程よいスリルも味わえる。
彼女もそういったものを楽しむために仕事をしに来た同業者であると、なんとなく思ったのだ。
もしかすれば裏稼業を行うもの同士、顔を見れば見知った間柄だったかもしれないが。
■フラニエータ > 「…ええ、好い趣味をしてるわ…あの男、どうなっちゃうのかしらね…心配だわ…
…私?…賭け事、嫌いなの…」
不意にかけられた声。内容から察するにこの見世物の企画者の様子。
心配している素振り等全く無い女は、声の方向に顔を向けずに返答する。
女は言葉を終えると、やっと彼に向けて視線を向ける。見ればフォーマルを纏った青年。女は彼の事を知っていた。
裏の世界に足を踏み入れていれば、他人の活躍というものは否応無しに耳に入るものである。
彼の素性を調べた女の瞳が、また彼から離れた。
「もっと愉しい遊びがあるのなら別だけれど…何かあるのかしら…」
女は彼に視線を合わせないまま、言葉を続ける。
ワインの香りを含んだ吐息、それを彼に送りながら、甘くも妖しく微笑み、言葉を続けた。
「――お姉さん、期待しちゃうわ…フフ…」
■イーシャ > 「さぁ…親の脛でも齧りに行くのか、はたまた金貸しのトコか…どうなっちゃうか、ホント心配だね。
意外だな、スリルは嫌いか」
彼女の素振りからして、心配など微塵も感じていないのは明白。
それは青年もまた同じく、元よりあの男か小狡い男だと知っていたからこそターゲットに選んだのだ。
どこに泣きつきに行くか見ものではある…どうなってしまうか実に心配だ。
さて、視線を向け合わせると青年もまた、彼女のことを認識する。
間違いなく同業者、それも青年とは年季の入り方が違うベテランだ。
そんな言い方をすれば年寄り臭いと言われかねないが。
「んー、確かに…もっとこう、刺激的な遊びがあってもいいよね」
彼女はまた周囲を眺めるよう視線を戻し、青年はそんな彼女に視線を向けている。
ほんのりと漂うお酒の香りと混ざり合うよう感じるのは、一種の妖艶な気だったか。
尻尾が実体化していたら、さぞフリフリと興味深そうに揺れ動いていたことだろう。
「じゃあ、お姉さん。
どっかの誰かからもらったお金あるし、一緒に愉しいことしてみない?」
にんまりと笑いかけつつ、懐から小袋に入ったゴルドを見せる。
ジャラジャラと心地よい音色が聞こえるあたり、十二分な額な様子。
もし愉しい遊びをするのであれば、ホテルであれなんであれ、行き場には困らないはずだ。
■フラニエータ > 女にとっての同業者、それは2つに分けられる。1つは邪魔者、もう一つは道具。
少なくとも今現在は前者に当たる彼。しかし腕と若さを備え持つ彼は後者にする価値がある。
さて、どう誑し込むか…女は顎に人差し指を添え、そんな事を思案していた。
「…嫌いじゃないけれど、賭け事で得ようとしていないだけ、よ…」
彼の言葉に答えつつも、意識は別の所にあった。視線は彼を値踏みする様に動いている。
その体躯は使えるか、返答に怜悧さはあるか…じっくりとねっとりと、蛇の様な視線が彼を舐める。
「――刺激的な事、ねぇ…
…刺激が欲しいのなら…そうね、警備を呼んであげるわよ?財布を盗んだ人がここに居ます、って…ククク…」
無論そんな事は出来る筈が無い。同業者を売れば己もまた売られる。
唯単にからかい、彼の反応を見ているだけだ。言葉にどう反応するのか、挙動は変化するのか…
顎に人差し指を当てながらくつくつと嗤っていた女は、そこでソファから腰を浮かせ、立ち、彼に一歩近寄る。
一度視線を下から上、彼の爪先から瞳へと動かした。そして更にもう一歩詰め寄る。
「一緒に?私と?…貴方、本当にスリルが好きみたいね…
――賭け事以上に嵌っちゃっても…後悔しない?…ボウヤ…」
女はその言葉と共に己の顎から彼の顎へ人差し指を動かし、添え、彼の顎を持ち上げた。
そして指を曲げ、爪先で掻く様に一度撫でる。
■イーシャ > 「ああ、こっちの賭け事ね…どうせ胴元が儲かるようになってるし…。
言ってたら、胴元の金庫の中身を拝みたくなってきたな」
こちらを使えるかどうか、シビアに吟味する彼女と異なり。
青年は彼女のことをどういう人物か見極めようとしていた。
と言っても、一緒に仕事をしてみてもいいかもしれない…ぐらい前向きな評価だった。
彼女の視線が、値踏みするようにこちらを眺めている。
視線が合えば、愛想良く笑ってみせたりして。
「えぇ、マジで?
さっき食べたばっかりだから、あんまり走りたくないなぁ」
彼女のからかいに対し、眉をひそませてそんな冗談で返した。
警備を呼ばれたら呼ばれたで、軽く運動する程度たと言わんばかり。
ユーモアがあるとも取れるし、はったりが効く性格とも取れる。
まぁ実のところ、走りたくないのは本心だったりするかもしれないが。
「なになに、そんな誘い方されたら、余計突っ込みたくなっちゃうじゃん。
後悔?賭け事よりは、健全なんじゃないかな」
彼女が近寄れば、露骨なまでに強くなる妖艶さ。
指が顎に触れ、くいと持ち上げて撫でてくる。
ほんのりと青年の頬が染まった。
そんな状態にもかかわらず、冗談を言ってくるあたり図太いところがあるのか。