2018/12/22 のログ
カーレル > 王都からの届け物を指定された相手に届ける頃にはとっぷりと日が暮れていた
こんな事なら陸路でなく海路を来れば良かったと思わぬでないが、荷物が曰く付きのものらしい予感がしたので、
時間を掛けて陸路をぐるりと回りこの港町までやってきた。陸路であれば逃げようもあるが、船の上では如何せん…

「あんまり好きじゃねえんだよなあ、この街…」

見るからに怪しい風体の男からひらっひらの布切れみたいな服を身にまとった姐さん、
通りをギラリとした瞳で睨みつけるおっかない亜人種の男…
そして、人種以上に綺羅びやかな街並み…なんというか、人間の欲望を街に象ったら
こんな風になるんではないか、そんなふうな事を思わずにはいられない

とまあ、娯楽には事欠かない街であるけれども、高い酒も賭け事も、ましてや非合法のアレコレにも
さして興味はなく唯一、この街に来て良かったと思わせたのは舶来品を商う商人から買った煙草であった
それを一本、咥えて火を灯せば宿を探しつつ、寒さをしのぐためちょっと一杯、安酒でも煽ろうかという事になり
ふらふらと明らかに流行ってない、草臥れた酒場の軒をくぐり適当な席に座る
ギャンブルで大損こいた人間が集まる吹き溜まりのような店のせいかひどく湿っぽい雰囲気であった
…がまあ、気にすることもなくジョッキに強めの酒を頼むとごくごく、と喉を鳴らした
酔うことはないがまあ、このあと安宿で眠ることを考えれば睡眠導入にはもってこいであると思う

「おなじの…おかわりね」

年齢不詳の女主人にそう告げるとニヤァと笑うのが気味が悪い
キツい酒を飲んだはずがふるり、と寒気がするのは気のせいか…とにかく、二杯目の酒を半分ほど
一息に飲めばはふ、と息を吐いた…場末の酒場であるから目の保養も出来ようはずがない
まあ、良いけどさ。なんて思いながらちびりとジョッキを傾けながらぼんやりと視線を彷徨わせた

カーレル > ジョッキに残った酒をぐい、と飲み干せば身体というか胃の中がかーっと熱くなるような感覚
しかし、酔っ払う、ということはなくありがたいことにどんな安酒であっても翌日に残ることがない
煙草もすっかり短くなり、灰皿に押し付けて吸い殻を手放して立ち上がる

「ごちそうさん」

テーブルに代金を置けば軽く伸びをしてコートの襟を立てる
店の外に出てしまえば夜風を遮るものがなく…屋内に比べてやはり寒い

「さて…安い宿でも探すか」

くああ、と欠伸を零せばポケットに手をツッコミ宿を探すべく酒場を後に繁華街の人混みに消えていく

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からカーレルさんが去りました。