2018/08/02 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」にララ=ラートリーさんが現れました。
ララ=ラートリー >  ハイブラゼール。それはカジノ施設を含む無数の商業施設が重なり合った夢の島。不夜城である。
 ギャンブルを生業とする(少なくともそう言い張っている)女からすれば、まさにそこは天国に他ならない。
 無一文状態だったので、空腹に耐えかねとある船に忍び込みコンテナの中に満載されていた果物をかじっていると、コンテナごと施設に搬入されてしまった、というのがいきさつである。
 気の緩んだ金持ちからサイフを刷り全額をカジノにぶつけたが、あえなく惨敗。マイナスまで振り切れたサイフの額。女はトンズラをこいたのだった。
 そしてカジノ施設の外に出る道に通じている倉庫を見つけてなんとか這い上がり、窓につかまり出ようとしたところで事件は起こる。

「およ?」

 上半身は外に出た。丁度裏通りの窓から外に。
 肝心の後ろ半分が窓に挟まった。

「うひひひひ! うひ………うーーーーん!
 うんっ! うががががががが!」

 女は体をよじり、そして悟った。

「抜けない………うっそだろお前! おい! おいこの尻! ぬ、け、ろ! 抜けない……やばくねあの金持ちのおっさん追っかけてこないかな」

 気がかりなのはそれだ。
 サイフをすったあの中年が追いかけてくるかも。あるいは、倉庫に用事のあるものが。

ララ=ラートリー > 「これは……あれやで、尻百叩きの刑やで」

 なぞの訛りを披露しつつも、腰をくねらせたり足をばたつかせたりしてみるが、抜けない。
 あるいは尻や腰ではなくズボンの金具が引っかかっているのかもしれない。
 ジャストミート腰骨あたりが窓枠にはまっている感覚があるので、複合要因なのかもしれない。
 ここは自分の能力を披露するときだ。女はどこからともなくトランプを取り出すと、指先に挟んだ。

「一か八か……世の中丁半コイントスの表裏一体幸運こいこい!」

 呪文らしい何かを叫びながらトランプを投擲。不自然な角度で曲がった弾道は見事顔面に戻ってきた。

「ぎゃああああっ!?」

 かろうじてかわしたところで上着がざっくりと裂ける。ズボンのベルトまでざっくりとお亡くなりになられた。
 それでもかぶは抜けません。

「おーいだれかー……」

 助けてくれそうな人を探して足をぶらつかせる女だった。

ララ=ラートリー > 「そうだ。こう、関節を抜けば手錠を抜けられるらしいじゃん?
 関節を……骨盤って抜けんの? ねぇどうなの?
 死ぬの? 我輩はばかなの?」

 骨盤を抜いたらきっと十中八九死ぬことだろう。
 不健康そうな顔の割りに発育のよろしいでん部がぷりぷり揺れている。

「ここで数日待機してお尻が痩せるのを待つとか……その前に死にそう。じゃ、プラン2よここは」

 誰かが助けに来てくれる。他力本願丸出しの願望を口にして周囲をちらちらうかがってみる。
 しかし現実は非情である。
 脱出できなくなった女はつまらなそうに指でコインを弄びながら考えていた。

「窓枠を壊す。壊せる道具がない!
 わたしが痩せる! 何日かかんの?
 実はこれは夢でした! 覚めねぇじゃん……」

 ぶつぶつぶつ。
 おおきいかぶはそれでも抜けません。

ララ=ラートリー > 「消去法でいくぜ。抜けない壊せない誰も来ない。
 死亡確定! あはははははは! あは」

 腹を抱えて笑い、しばし押し黙る。
 宙吊りのまま沈黙しているさまはさぞ滑稽なことだろう。

「あはは…………ふぬぐぐぐぅ! うべぼっ!?」

 気を取り直して再チャレンジ。力いっぱい前進しようとした。
 次の瞬間体が抜け自由の身になった。当然の帰結として顔から落ちた。そのメガネをぶち壊すと重力さんが仰ったからだ。
 丁度数秒後に倉庫の扉が開くと警備員を引き連れた中年男性が入室してきたではないか。
 女は顔から地面に落ちたせいでメガネが半壊し鼻血まで流しながらも、元気よく中指を立てて舌を出した。

「ひょっひょひょーい! 抜けたってぇの!?
 鬼さんこちら手のなる方へ!!」

 逃亡開始。中年男が慌てて窓枠に飛びつき、そして次の犠牲者となったとかならなかったとか。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」からララ=ラートリーさんが去りました。