2018/04/07 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にイーリスさんが現れました。
イーリス > ハイブラゼールで一番の豪奢なカジノ、と言われるこの場所は、昼夜問わず、眩いばかりの輝きに満ち、
それと同じくらいの欲望に満ちた場所であった。
まだ陽も明るいうちから、その欲に塗れた老若男女が集うカジノの一角にあるポーカーテーブルで一勝負ついたところだった。

手持ちのチップはすべて消え、残念ながら儲けはゼロ。
周りの連中は勝敗に合わせて悲喜こもごもの反応を見せていた。
それを眺めたところで、ひょい、と首を竦めるだけに留め席を立ち、テーブルを離れる。
もう終わりか、と誰かが声をかけたが、それに応えることはせず、ひらりと片手を上げるに留め、
向かう先は、ホールの端に位置するバーカウンター。

他の連中は知らないが、賭けに熱くなって散財するほど熱心ではないし、そもそも儲けが欲しいわけでもない。
単にカジノに顔を出しただけ、とも言える状況だから、のんびりとバーカウンターへと腰を下ろすと、
泡銭とは別に所持金もあるから、気負わず酒を注文し。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にガマグルマさんが現れました。
ガマグルマ > ルーレットコーナーよりバーに現れる男。
読みが冴えるとはこの事か。適当に勝ってる客に乗っかるようにして賭け続けた結果が皮袋1つや2つではない、腰からぶら下げてなお余りある数の皮袋が大勝ちした事を示していた。
ただし当然のことながら、彼に博打の才能などなく、たまたま乗っかり続けた客に勝たせてもらった、と言うだけの話。

バーカウンターに足を運ぶと――まだまだこの時間は勝負の熱が弾かない客が多いのだろう。
賑わうと言うよりも静かに酒を楽しむ客が多いように感じられた。

「あれぇ?あそこにいるのは…?」

そのバーの一角、目に入る女性の姿に目を留め、そちらのほうに自然と足が向って行く。適当にナッツと魚類の燻製を注文してから――足音を下手糞に忍ばせるように。もっともブーツを履いていて、不慣れな歩き方。かつ、静けさを保つ一角であれば当然、足音もするだろう。気配も当然するだろうが。

イーリス > 強めの蒸留酒が注がれたグラスが置かれると、それを引き寄せ口へと運ぶ。
くい、と傾けて喉へと流せば、一瞬焼けるようなアルコールの強さに目を細め、
味わうというより、それを楽しむように半ばほど飲み、グラスをおき。

「相変わらずの荒稼ぎだな、ここは。…いや、別に負けた腹いせにイカサマに言及してるわけじゃ―――…ん?」

バーテンダーに声をかけたあと、ふと何やら気配を感じて言葉を区切る。
ゆるりと視線を向けるように顔をそちらへと向け、双眸を細め。

「………まぁ、荒稼ぎをしてるのは、向こうも、だろうが。
…―――やぁ、ずいぶんと勝利の女神に好かれたようだな」

どうやら相応の勝ちに恵まれたらしい男の様子に前言撤回とばかりに苦く笑い首を竦める。
そして、通る声で随分儲けたらしい様子に、やや冗談めいた言葉をかけて。

ガマグルマ > 「こりゃまたイーリスの旦那。陸に上がる旦那を見るのは久々…でもなかったか。いやぁ、勝利の女神っていうよりあぶく銭の邪神ってとこですかね。」

良く通る声に導かれたようにふらふらと女性のほうへ。
予想通り以前見識のある相手でもあり、一度取材を行ったこともある。後――それなりに、お願いも聞いてもらっているので、最悪命乞いをすれば自分の命は無事だろうという打算が少し。
それと、運がよければと言う下心も男としては、持ち合わせがあった。評判の――男装海賊。その女性としての側面に興味は尽きない。
年齢は明らかに自分のほうが上だろう。それでも相手を旦那と呼ぶ理由はある。相手がどう思うかは別としてだが。
届けられたスモークされたナッツに、小魚の燻製が彼女のすぐ隣にバーテンダーにより並べられた。一人分よりは少し多く、彼女も摘む分くらいはサービスされたのかもしれない。当然の様に、横のイスに腰を下ろし――追加でたのむのはラム酒。
彼女が女性と言うのは知っているが、一応相手の立場には配慮しているのか。呼び方は旦那で定着していた。

「いやいや、取材目的ついでに足を運んだらこんな事もあるんだなぁって思うよ。……あんまり勝ちすぎて気持ち悪いんで、良けりゃ一杯奢らせてくれませんかねぇ。…旦那も儲けてたら別だけど。今回は何時まで陸にいる予定で?」

イーリス > カウンターテーブルに片腕を預け、身体を開くようにしてそちらへと向き直る。
返ってきた言葉に、はは、と軽く笑って頷けば、

「確かに、あぶく銭の邪神とは言い得て妙だな。ここなら特に、だ」

同意するように頷いて見せながら、隣へと腰を下ろした相手を見れば、
向けていた身体を正面へと戻し、顔だけそちらへと向け。

「勝ちすぎて気持ち悪いなんて、邪神サマの怒りを買うぞ。
とはいえ、奢られるのは悪くはないな」

揶揄しながらも、ちゃっかりご相伴に預かる心算。
断りも入れずにナッツに手を伸ばす辺り、知らぬ相手でもなし、遠慮もなし、というところだろう。
香ばしいナッツを噛みながら、ん、と短く声を発しては、

「ここのところ風待ちってところだからな、風次第、獲物次第ってところさ」

特に当てがあるわけでも、予定があるわけでもない自由業ゆえに、苦笑いと共に告げ。
そういえば、とふと気になったように相手をみながら、

「取材目的と言っていたが…君はそういう仕事をしていたのか?…至って真っ当な仕事過ぎて意外なんだが」

かなり失礼な言いぐさなれど、遠慮がないのは…という前述同様。
思わず顎を引き、まじまじと相手を見てしまい。

ガマグルマ > どうやら命の危険もないようだ。安心したように肩の力を抜くと、自分の肩のラインがまるで女性のようななで肩のラインになるのが服の上からも見て取れるかも知れない。
相手の顔が、表情が良く見える様になっているので、酒の肴としては目の前のナッツや小魚よりよほどの上物ともいえる。グラスに注がれているラム酒はすぐに届けられ、会話を把握しているのだろうバーテンダーが静かに革表紙のメニュー表を2人の目の前に並べていく。

「いやだってそうじゃないか?大金見慣れてる様な人なら兎も角、俺のような一般人がこういう金を手にすると『あぁ怖い、この後どんな不運に見舞われるんだ!』ってなるのも仕方無いんだし。まぁ実際はイーリスの旦那に久々に会えた幸運が待ってたんだけどな。」

まじまじと見てくる相手にはヒョイ、と肩を竦めて見せる。嘘を一つ織り交ぜながら会話に乗るように相手の目の前に懐から一枚の――名刺が出されている。
どこかのギルドに所属しているわけでもない、フリーの自称ジャーナリストである事を示す様に。そして名前は彼女が知っている自分の本名ではなく、仮名がかかれていた。明らかにニセモノっぽい。

「仕事なんて幾つか持っていないと喰っていけない世界だからねぇ。いやそりゃ昔旦那にデートしようぜ!っていいよったナンパ男とか、ヒモ男とか客引きしてる情けない姿を見られたりもしてるけどね。割と情報だとか、こういう場所に興味ある中間層は結構多いから。ギルドに現地の情報――あぁ、まぁ平和かどうかとかそういうのを伝えるだけでも小銭にはなるんでさ。」

コンコン、と指で分厚い木製のテーブルを突き、そっとバーテンダーには目で合図。次に彼女が酒を注文したら、特性…自分の精液混じりの氷を混ぜておいてくれという合図。ただしそれを隠すように――音を立てた後で干し肉の炙りなども注文をしていた

「やっぱ船は風が命かぁ。まぁ旦那達の操船技術は結構有名になってるからなぁ。正規軍でさえ、鮮やかに荒波を抜けていく操舵に操帆の技術は未だに語り草になってるらしいよ?その内王国からも水軍練成の依頼いくんじゃないかな?……あ、お酒は好きなのどうぞどうぞ。ボトル入れても困らないくらいには、なんか勝っちゃったしな。」

イーリス > カウンターテーブルへと並べられたメニュー表を一瞥したものの、すぐに、同じもの、と相手と同じラム酒をオーダー。
奢ってもらう気はあれど、さすがに集る気はないようで、その辺は妙に常識的な対応をし。
まだグラスに残る蒸留酒を口へと運びながら、相手の言葉に時折相槌と共に、軽く笑ってしまいながら、

「はは、アレか、幸運と同じだけ不幸がある、と考えるのか。
ふぅん、私に逢えたことが幸運、とは、君は面白いことを言う。
…ひょっとすれば、とんでもない不幸かもしれんぞ。君のその大金、気付けば身ぐるみ剥される可能性だってある」

琥珀色の眸をすっと細め、やや声のトーンを落とす。
強欲で高慢な海賊稼業、目の前で不用心に大金があることを示そうものなら、ありがたく頂いていく気もないわけでもない。
などと、冗談なのか、本気なのか、いまいち判別しづらい口振りで告げるも、
すぐにはっと笑いを零す辺り、前者であろうことは解るだろう。

「……へぇ、これはまた。ずいぶんと手の込んだことをしてるんだな。
そして、偽名を…―――あぁ、こういう場合はペンネームと言えば聞こえがいいか。
それを使う辺り、君がどういうモノを取材しているのか解るね」

差し出された名刺を受取り、へえ、と興味深そうに眺める。
まるで別人の名前であり、その仮名から目の前の相手の名を類推することさえ難しいから、目を瞬かせたのち、
相変わらず揶揄するような口振りで冗談めかしつつ。

「ご苦労なことだ。まぁ、だからといって真っ当な仕事を勧められるほど、私も真っ当な世界に生きているわけじゃないからなぁ」

彼のような仕事と己の仕事を天秤にかけたかのように、しみじみと呟く声。
少なくとも彼の仕事のほうが、己のそれより真っ当な気がしないでもない、などと思案気にしていたから、
相手がバーテンダーに示した合図には気付かぬまま。

「ははっ、褒めても何も出らんぞ」

目下どこかしこから追われる身であるから、相手の言葉に吹き出すように笑ってしまう。
首を振って、残りの蒸留酒を一気に呷り、グラスをカウンターの向こうへと押し返して一息ついていれば、バーテンダーがグラスを持ってくる。
注文したラム酒、という認識しか持たぬまま、そのグラスを引き寄せ、

「君の勝利に。今後もあぶく銭の邪神サマの加護があることを祈って」

そう声をかけ、グラスを掲げて口へと運んでいく。

ガマグルマ > 「ははは、まぁツキに愛された人とツキを信じてない人の違いってのもあるかもしれないかなぁ。……え、旦那怖い事言わないで。昔ナンパした時、カットラスで自分の体の1ミリ外を刃先で素早くなぞって、高級木材に自分の体の切抜き細工みたいなもの作った時のこと思い出すから!」

それは以前、迂闊にも声を掛けてナンパよろしくデートに誘った時だ。素早く刃物で実力の差と怖い存在が世の中には沢山いる事を教えてくれた。
…ただ、それでも命は奪われてなかった。だから根っからの悪人というようには自分は考えていないフシはある。だからこその、今のこの時間なのだが。

「旦那がそもそもその気なら、暗がりにでも誘って脅せば良い話じゃないかー。それをしないんだから、旦那がそれを今回はしないって信じてるんだよねぇ。
 あ、ちなみに今度陸で発行される『今もっともホットなデートスポットはここだ!』って雑誌あったらそれに俺の記事かいてるからよろしく。」

ラム酒に含まれている氷から静かに、少しずつ特殊精製された精液が溶け出していく。
苦味ある精液や粘り付くような感触は無い。あくまで、少しだけラム酒の風味が強調されているかのような隠し味があるかどうか、くらいの味の差だろう。

「旦那の海での幸運と、陸でも幸運がある事を祈って。乾杯。」

カツン、とグラス同士を軽く触れ合わせてから、自分もラム酒を口に含んでいく。その後でじっと相手の顔を見てしまうのは――もしも、これまでのお願いで一定量のポイントがたまっていて、自分のお願いを断りにくい。もしくは断れない状態になっていれば、彼女の額に薄く、ぼんやりとした紅のバラの紋様が浮かび上がるかの確認もある。
その紋様は自分にしか見えないが――それが浮かんでいれば、ちょっと変態チックなお願いをするつもりもあった。

「かー!勝利の酒は美味い!…今度旦那が海から帰ってきたら冒険や海での安全確保のコツを聞いて本にしてみようかねぇ?」

イーリス > 「まぁ、重々気を付けろ、という話さ」

相手の言葉に思い出したみたいに吹き出してしまうと、目を細めつつ頷いて、親切心から忠告を。
何しろこの辺りは、それこそ身ぐるみ剥された連中だっているのだし、彼らはその負けを取り返すべく別の獲物を狙っているのだから。
それに、相手がいうように、実行するのであれば、こうして暢気に話すこともなく、強奪など容易ではあるが、
それをしないのだから、そもそも実行する気も、しようと考える思考も皆無のよう。

「デートスポット、ねえ。まぁ、楽しみにしていよう」

思わず目を瞬かせて復唱。
海賊稼業の己には縁がないし、そもそも風体からすれば、男であるし、女性を連れる嗜好はないし、かといって男性を連れるには目立つ。
彼が取材して起こした記事とはいえ、その情報を活用する日がくるかというと…その日は遠そうだが。
君は面白い記事を書くねえ、としみじみしながら、掲げたグラスを口へと運ぶ。
先ほどまでアルコール度数の強い酒を呷っていたからか、ラム酒の味は勿論、その中にある氷から溶けだす精液さえ、
味覚の鋭敏さを失っていて解らない。
ただ、グラスを傾けただけ、そのまま喉を鳴らして半ば飲み下していく。
ふぅ、と満足そうに息を吐き、グラスを置くと、ナッツに手を伸ばしてそれを口へ。
味わうように咀嚼しながら、相手の言葉にそちらへと顔を向ければ、
額に淡く紋様が浮かぶのが相手の視線の先に映るだろう。

「海賊に海の安全確保のコツを聞くのかい?それこそ、私たちにとっては、商売あがったりだからな、それは却下」

安全な航海などされては、海賊としては商売あがったり。故に無碍もなく一蹴して首を振り。

ガマグルマ > 「えぇ~?旦那旦那、そこは寧ろ安全の嘘ネタを教えてカモを増やすっていう手法もアリじゃないかい?」

安全なルートを教えるフリをして、その安全なルートに網さえ張っておけば得物に困るという事も無いだろう。
追い込み漁の様に得物を増やす為の偽情報といえば判りやすかったかと思いながら――額に浮かぶ薔薇の華の紋様。何度か貌を併せていた分、お願いを繰り返しかなえてもらった分もあるのだろう。

「できれば本は盗む、奪うよりも買ってくれた方が俺の懐もあったまるんで、そこはよろしくぅ。で、今日は旦那にナイショのお願いがあるんですけどね。ちょっとだけ耳を貸してもらっていいですかい?」

紋様の効果もある、精液も含ませた状態だ――少しずつ難しい難度のお願いをかなえていってもらって、何れ彼女を抱く為の第一歩とでも言うように――そっと甘い声音で彼女に「お願い」を試みる。

「最近ご無沙汰なんで……旦那の、その身につけている下着を何とか一つ貰えないでしょうかね……いやその、タダとはいいません!この今日の勝利の儲けの半分を旦那に差し上げますから。――旦那も船で待つ子分に少しくらいのお土産は持っていってあげたくないです?」

お願いしたのは下着の注文。それも目の前で脱いでくれる特約付きのもの。普段なら首が胴から離れても文句はいえないだろう。
ただ、身体を要求するよりもリスクは低い。そういう判断からのお願いでもある。……彼女の精神状態はわからないが、もし下着を着用せずに船や宿に戻るリスクに興味や関心があるなら、お願いはさらに聞いてもらいやすくもなる、かもしれない。

「旦那!どうか、どうかお願いします!俺を男にすると思って!」

なんとも情けない男ではあるが。

イーリス > 「あぁ、なるほど。………―――というわけないだろ。そこまで堕ちちゃいない」

相手の言葉に理解をしたように頷いた…ものの、すぐに半目になって大げさなほどの深いため息を。
強欲・高慢な海賊サマとはいえ、何やら一定のルールを持ち合わせているらしい。故に相手の言葉にやれやれと呆れたように首を竦め。
それに、下手に情報操作などすると、あとあと面倒が多いことも知っていた。

「本ぐらいは買うに決まって…―――なんだ?
…言っておくが、碌でもない情報を掴ませてみろ、今度はこことそこが離れるぞ」

言いながら、相手のこめかみあたりを指さしたあとで、肩口に指先が動く。
脅しをかけるように低めの声で牽制したのち、なんだ、と訝しがるように眉を顰めつつ耳を傾け。

妙に甘い声が耳に届く。
相変わらずカジノのホールは喧騒に包まれてはいるが、その中でもなお、相手の声は妙に頭の芯に響く色を持っていた。

「は?」

とはいえ、思わず、と言ったように声が零れ落ち、刹那、羞恥とも怒りともつかぬ情で、頬が朱に染まる。
同時に咄嗟に周囲へと視線を馳せてしまうのは、この突拍子もない申し出を聞かれたのでは、という警戒からでもあった。
忙しなく相手は交換条件を口にしてはいるが、正直その言葉はあまり耳には入っていないようで、
ただただ眉を顰めて、不機嫌さ全開の表情で相手を見るだけ。

何とも言い難い時間が暫し続き…―――。

「解ったから。解ったから、余り大声を出すな」

発した言葉は、己でも意外なものであり、思わず頭を抱えるようにため息を付いたものの、
拒絶するモノではなかったことに、自分が驚いたようだった。
同時に、朱に染まった頬は更に朱を強くし、辺りへと視線を馳せながら、声のトーンを落とし、解ったから、と念を押すと、
何ともいたたまれぬ表情で相手を見て。

ガマグルマ > 「旦那はやっぱり正統な海賊だなぁ。ここで悪魔と契約するような連中だと、ひょいひょい情報を渡すんだけどね。まぁだからこそ旦那を尊敬する様な陸の連中もいるんだけどねぇ。俺とか。」

海賊にも様々な種類がいる。自分の儲けの為ならどんな悪事だろうと手を染める事を厭わない、それこそ悪魔や人間ではない存在と手を組み、無法の限りだけを尽くす者。
目の前の相手のように、一定の矜持を貫き、その線を決してはみ出さない。悪人と分類されようとも、その悪には筋を貫き通す事で己を、周囲を律する存在。
後者は、例え悪であろうと――慕う人間は必ず出てくるものだ。

「やだなぁ。旦那に嘘情報流したくはないね。こう見えて旦那のファンですよ、ファン。――…………。」

そこで言葉が途切れたのは相手が此方を不機嫌に睨みつける時間だった。心が凍える、今日ふという感情が芽吹きそうになるのを必至で堪え。刻印された薔薇の紋様がゆっくりと相手の思考。脳裏。理性に絡みつき、自らの声がさながら触手の先端の様にして相手の拒絶の意思という防壁に突き立ち――それを突破していく事を信じて、瞳を見つめ続けていた。

幸いにして、周囲には自分達しかいない。バーテンダーも奥で仕込みをしているのか、此方に視線は向けていない様だ。
そうして時間が経過していくと、彼女が承諾した声を向ける。――大声を出すなといわれたので、頭を熱心に下げて感謝の意を示しつつ――酒場での、彼女のストリップ、下着を脱ぐまでの間の短い時間ではあるがそれを楽しみにしていた。

……自分がどんな表情をしていたのか。それは歓喜と感謝の念が渦巻く表情。好色さも勿論あるだろうが、やはりお願いを聞いてくれた事への前者2つの感情が強く押し出されていた。

「有難う御座います、旦那。……ささ、他の人が来る前にお願いします。」

男装の海賊。そのヴェールに包まれていた身体が露になる瞬間を心待ちにする様に、視線は熱心に彼女を見つめていた。

イーリス > 「…聞くが、尊敬している相手に、その、…し、下着を、とかいうのは、どういう思考か、甚だ疑問が残るが…!」

恐らく彼の言葉は、その場限りの嘘だとか、そういう類の物はないだろうことは理解している。
であるから、時に剣呑な雰囲気を漂わせはしても、こうして普通に会話を楽しんでいるのだが、
それを差し引いても、先ほどの「お願い」はどういう心算なのか、判断し兼ねたし、
それを拒絶もせずに承諾した自分自身にも疑問が残ったわけだが。

「ファン…とはまた都合のいい」

やれやれ、とため息を付いて、呆れた表情を作る。
まったくもって目の前の男は、口が上手い。これでどれだけ上手く乗せられたのかと自分自身にも呆れてしまうし、
結果として、スツールから腰を上げ、相手へと距離を削ぐように立ち上がったところからも、乗せられた自覚はある。

忙しなく周囲を見渡す琥珀の眸。
幸いにして人はいないし、バーテンダーもこちらへと視線は向けてはいない。
煌々と照らす明かりの下で、相手の視線を一身に受けて、逡巡するように瞳が揺らぎ、震えるように手が下衣へと向かう。
風貌からすれば完全に男のそれであるとはいえ、ここで下衣を脱ぎ、下着を脱ぎ去るなどという痴態を行うには、
己の風貌など、何の気休めにもならないことを理解して、唇を噛み。
ただ、どういうわけか、身体も思考もそれを拒絶する意思がないように、かちゃかちゃと金属の音を響かせベルトを外していく。

「っ…解って、るっ…解ってるからっ…見るな…っ」

のんびりしていれば誰かがこちらに気付く危険性もあるから、急かすのも解る。
とはいえ、震える手がベルトを外し、スラックスに手を掛け、僅かに躊躇するように間があったのち、するりとそれが足元へと布擦れの音を残して落ちて。
露わになった素足は女性のそれに間違いなくしなやかでほっそりとしている。
そしてその付け根には純白の女性物の下着に包まれた恥部が。
ぐ、と奥歯を噛み締め、息を顰めて羞恥に耐えつつ、ゆるりと片脚を上げ、下着を脱ぎ去っていく合間も感じる視線。
慎ましく手入れされた秘所は、当然のように女のそれであり、どうにかこうにか下着を脱ぎ去ってしまえば、
慌ただしくスラックスを吐き、手の中で丸まった下着を、半ば相手の腹を殴るかのような勢いで差し出してしまう。
視線は合わせぬよう、相手の首筋辺りを睨んだまま、

「い、いいかっ…絶対、誰にもっ…このことはいうなよ」

と震える声で忠告し。
その下着が興奮と劣情を覚えた身体を示すようにしっとりと濡れていることに果たして己自身気付いているかどうか。

ガマグルマ > 「尊敬しているからこそ、ファンだからこそのお願いって奴です!」

ひそひそと小声を続けながらも、語尾に力が込められる。声量こそ必至に抑えているが、最初に念を押されてなければ飛び上がってのガッツポーズさえしていたかもしれない。
夕食を取るには早い時間、ティーブレイク、アルコールブレイクには少し時間が離れている事も幸いしたのだろう。目撃者はどうやら自分だけで――だからこその至福の一時とも言える。

視線がじっくりと――ファンだという言葉の通りの情熱を持って。彼女の指先を追いかける様にして外されていく金具を見送った。
スラックスが下ろされると女性としての魅力が込められている太股は細く、贅肉が無いなだらかなラインを描き――そして派手な物ではない白い清潔さを伺わせる下着だ。それを脱ぎ去り、手入れをされていた女性の象徴とも言える箇所は少し己の予想外だった。
海賊なのだから――当然、手入れというのはそこまで気合を入れていないのではないか、と言うのが一つの考えでもあったのだから。

ギャップのある表情、そして下着、秘所の佇まいを目に焼き付けるように――そして差し出された、丸められた下着を、まるで下賜するかのように恭しく受け取る――大切に一度掌の上で広げ、丁寧に折りたたむようにして懐にしまいこんでいく。
しっとりと濡れた箇所は当然気がついていたが、そこは敢えて口にしない。今のこのバランスを無理に壊さず――また機会に恵まれた時に、そこを吐くようにして陸の上で女性として――性の虜にさせようという欲望は、今は心の奥底にしまいこまれていた。

「勿論ですよ、旦那……これは家宝にしますから。海の上での幸運をお祈りしてるよ!……また陸の上で顔を合わせたら、お酒を呑みましょうや。……ファンとして、旦那の無事と旦那の幸運を祈ってますから。」

小声の遣り取りの後、戻ってきたバーテンダーにはゴルドを支払う。当然の様に2人分の支払いを済ませ、店の外に向うのだろう。
スラックスの素材はわからないが――通気性の良い物であれば、何時もよりもすうすうとする頼りなさが彼女の心理にどの様に変化を揺らぎを齎すのかは楽しみではあった。

イーリス > なるほど、と理解したような、していないような。
それでも、熱意?のようなものだけは確りと受け取ったようで、拒絶できぬまま、
素肌を晒し、その上何とも言えない表情で下着を差し出す痴態を見せてしまう。
兎に角、羞恥に耐え、一刻も早く手にしている自らの下着を手放したい一心で、相手の腹に押し付けていれば、
どうにかそれが手を離れて行くと、はぁ、と息を吐き、漸く視線を上げれば、思わず睨むような眼光で相手を見遣る。
場所が場所なら血を見るところ、ではあるはずなのに、なぜだか拒絶できない不可解さとも相まって、
帯刀しているそれに手を掛けることはしないが、兎も角恨めし気に相手を見上げ。

「かっ、かほう…」

思わず眩暈が、とばかりに額に手を当てて復唱。
いや、困る、それは、と大きく首を振ってから、兎も角!といきなり声を上げると、

「とにかくそれは、そのっ………あぁっ、もう。
…―――あぁ、解っているっ!お前の方も、背後に気を付けろ」

相手の祝福の言葉に感謝しつつも、羞恥が織り交ざった思考では上手く言葉にならず、あたふた。
ともかく礼のつもりで言葉を返したものの、微妙に剣呑な色を含んでいるが。
そんなこんなで、下着がない、という不安に包まれながら、カジノを出るころには、何ともぎこちない足取りだったとか―――………。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からイーリスさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からガマグルマさんが去りました。