2017/12/25 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にイーリスさんが現れました。
イーリス > 昼を過ぎた頃合いとはいえ、ハイブラゼールのカジノは相変わらずの賑わいである。
眩いばかりの明かりと熱狂、時に悲鳴と嬌声とが交じり合うカジノのホールの端にあるバーカウンター。
そこの一番端へと腰を下ろし、琥珀色のアルコール度数の強い蒸留酒を舐めるように飲んでいる一人の男、の風体の人物。

「ん、あぁ、聞いているよ、勿論。
………シェンヤンの連中ってのはアレだろ、妖術?法力?そういうのを使うっていうんだろ?」

少し苦笑いを浮かべ、話を聞いていたことを伝えるように相槌を打ち、グラスを口へと運ぶ。
バーテンダーの青年は、気を付けたほうがいいですよ、と念押しをしてはくれたが、言われたこちらは、あぁ、と気のない返事。
何しろ、「シェンヤンの連中が女海賊を探している」というのだから、穏やかな話ではないのだが、
「どのシェンヤンの連中」なのか、いまいち判然としない。
何しろ、このところ見境なく「仕事」に邁進していた所為で、シェンヤンの船も襲撃した記憶があるが、
果たしてどれが理由で探されているのか、正直見当がつかないのだ。

そんな穏やかならぬ話ができるのも、さすがに昼間ということもあって、カジノのホールは賑やかだが、
バーカウンターは閑散としていて、年若い青年のバーテンダーと客は己一人だけだからであった。
そして、バーテンダーの青年は顔見知りであるし、言えばこのカジノのオーナーも既知の人物であるから、
海賊稼業の人物が、こうして昼間から暢気に酒を呑めている、というのである。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にエズラさんが現れました。
エズラ > 「ああっ……っくそ、この!」

めくられたカード。
手元から消えていくチップ。
妖艶な笑みを浮かべる女ディーラー。
大きな声で悪態をつく男が、テーブルから立ち上がる――

「……少しは加減してくれたっていいだろ?」

捨て台詞を吐きながら、バーカウンターへ移動。
「ツイてない」だの「あと少し」だのとぶつぶつ呟きながら席に座ると、手を挙げて青年バーテンダーの名を呼ぶ。
どうやらそれなりに常連であるらしい。
既に酒を飲んでいる者の存在には、まだ気付いてはいないようである――

イーリス > グラスに注がれていた琥珀色の蒸留酒が底をつくと、グラスをカウンターの向こうへと押しやる。
そのグラスを受け取り、2杯目を作る手を止めることはせず、バーテンダーの青年が忠告めいた言葉を発したから、

「解ってる解ってる。十分に用心しろ、だろ。
とはいえ、海賊サマが掴まるのが怖くてナリを潜める、なんてのも恰好が付かん」

追われるのはこの仕事には付き物の話であるから、軽口叩きつつも、こちらへとグラスが返されると、
忠告に感謝する意も込めて、チップを多めにテーブルへと置く。
そのゴルドをスマートに、実に自然な所作でカウンターから回収したのと、
新たな客から声をかけられ、返事をしたのはほぼ同時ながら、不躾な様子が一つもないのは、さすが躾けられている証拠と見える。
グラスに手を伸ばし、口へと運びながら、ごく自然に視線を新たな客へと流す。
何しろ、バーテンダーと追う、追われる、なんていう話をしたあとだ、多少の警戒も合って、ではあったが。

「…誰かと思えば、エズラじゃないか。………景気がいいな、昼間からカジノかい?」

視線が捉えた青年。
見知った人物だったことに警戒を解き、揶揄するような軽口で声をかけて。

エズラ > 「酒くれ、酒――んっ?」

うんざりした様子でカウンターにうつ伏せになりそうだったまさにその時、名を呼ばれた。
――いつものことながら、一見するだけではその性別を推し量ることが困難である。

「イッ、イーリス……――」

珍しくばつが悪そうな表情。
どうしてこんな場所で――否、ここは港湾都市ハイブラゼール。
名にし負う女海賊の居る場所として、船の上以外ならこれ以上相応しい場所もない。
運ばれてきた酒をあおるのも忘れ――

「いやなに……まあ確かに景気は良かったぜ――ほんの数分前までだがよ」

格好を付けなければならないような間柄でもない。
はっきりと言外に「今しがた大きな負けを食らった」ことを告げる。

イーリス > こちらに気付いたらしい相手の様子を見て、久しぶりだな、と声を掛け。
バーカウンターへとやってくる際の様子や、ずいぶん荒れた模様を伺えば、
彼が言うように、景気がよかったのは過去の話、のようではある。
悪びれる様子もなく、声を上げて笑って相手の様子を眺めながら、

「幸運の女神は気まぐれ、というだろ。
しかし、君が負けたというなら…まぁ、あの女神サマは、男を見る目がない、というところかな」

言いながら、視線はホールへ。
多くのディーラーがいるが、視界の範囲に「女神」といえる女性ディーラーは一人。
妖艶な笑みを浮かべて手際よく捌く様子が見て取れる。
彼女から負けを食らったかどうかは知る由もないが、
からかい半分の言葉遊びなら、彼女を「女神」と見立てて話すのも悪くはないだろう。

視線を相手へと戻すと、大負けに?などと更に冗談を重ねながら、グラスを掲げ、乾杯でもしようと。

エズラ > 「ま……ツイてねぇってばかりでもねぇ――捨てる「女神」あれば拾う「女神」、ってな」

乾杯に応じながら、ジョークを返す。
その台詞を聞いて青年バーテンダーがわずかばかり苦笑を漏らす。
ここに座る女海賊を知る者ならば、彼女が「女神」ではなく「女傑」であるということを理解して居るであろう。
喉に染み渡る酒精で腹の底を熱くし、嘆息――
そして、おもむろに相手の隣の席へと移動して。

「……それで、だ。賭に負けた傷心男に、ひとつ「女神」様の祝福をくれねぇか?」

バーテンダーからは見えないよう――その隠しようもなくくびれた腰へと手を伸ばし。
そっと耳元へ囁きかける――「どっかへ消えねぇか?」と。

イーリス > 小気味良いグラスの音を立てて乾杯をし、グラスを口へと運ぶ。
相変わらず舐めるようにゆっくりと酒を愉しみながら、ふ、と軽く笑えば、

「拾う「女神」ね。その女神サマは、さて、祝福を与えられるほど、寛容で慈悲深いと思うかい?」

相手の言う台詞に笑みを湛えたまま、己の強欲さも、残忍さも理解しているがこそ、
そんな否定的な言葉を発しては見たものの、腰へと回るその腕を厭うことはしない。
勿論、バーテンダーの青年も、こちらの素性を知っているがこそ、女神と比喩された台詞に笑いも出よう。

「祝福は高くつくぞ?」

何処まで本気か冗談か、笑いながら言葉を続けつつ、腰の革袋から相手の分の代金とチップもカウンターへと置いておき。
傷心の相手を癒すにふさわしい場所…へと二人して向かうはず。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からエズラさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からイーリスさんが去りました。