2017/12/12 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」にティーアさんが現れました。
ティーア > スタッフルームで身体のラインを際立たせるようなバニースーツに着替え、
作り物ではないウサギ耳の女はホールへ出て来る。
手にはカクテルグラスと軽食を乗せたトレンチ。
ホール内を歩く彼女の役目は客に酒を運ぶ事だけではなく、彼らの仕草や質を見極める事である。
ときに、怪しいと感じれば屈強なガードマンにコッソリと伝えるのだ。

しかし今夜は客自体が少なかった。
こういう夜はつつがなく、だが退屈に過ぎるものだ。
ウサギ娘は欠伸を噛み殺しながら窓の外をチラと見る。

「(まだ王都への船出てるかしら。このままお客様少ないなら、早めに切り上げて今夜発つっていうのも…)」

ダイラスと王都を定期的に行き来する身。
ぼんやり、算段しながらホールを歩くが習慣付いているのでお客様にぶつかったりはしない。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」にエズラさんが現れました。
エズラ > カジノのホールの隅に、警備服に身を包んだ男が慇懃に突っ立っている。
上背のある体躯が背筋を伸ばしているのものだから、それなりの威圧感を周囲に振りまいていた。
しかしながら、制帽の奥の双眸は、ホールを行き来する女性従業員――つまりバニーガール達の姿を追っているのである。
今日のように客の少ない日ぐらいは、こうして楽しんでも罰は当たらないだろう、と考えているのであった。

「おっ……――」

そんな時、である。
やけにリアルな耳を付けているバニーガールの傍、カードゲームをプレイ中の客が、テーブルの下で不審な動き――
ここからでは確かめられない。
チラッ、とそのバニーガールに視線を送り、目配せする――

ティーア > ぼんやりはしていたが仕事はきちんとこなしていたらしい。
その視線に気付くと、自然な足取りで客の手元が見える位置へと移動する。
疑惑ではいけない。

「(――――やった)」

確信となる所作を確認し、背後からそれはそれはにこやかな声色で声をかけた。

「お客様、カクテルはいかがですか?」

一瞬客の背が驚きに満ちたのはわかったが、こちらを振り返った顔は逆ギレとばかりにぎろりと睨むものだった。
それでもバニーガールは幾度か似た経験をしているため、変わらぬ笑顔で応対。
ただ客にしか聞こえない程度の声で、艶に濡れた唇はこんな言葉を。

「どうぞ、あちらの部屋へ」

こういう客には担当の者がいる。
店の"裏"への移動を促すと渋々立ち上がるものの、当然足取りは重いし、
いつ逃げる隙があるだろうかと考えているのが見え見えだ。
堪え性のないバニーは警護をしている彼に、今度はこちらから視線を送り、目で言う。

この客をさっさと裏に連れて行ってください。と。

エズラ > どうやら、こちらの意図はしっかりと伝わっていたらしい。
さりげなく現場を押さえ、にこやかに誘導。
それを確認した男が緩やかに歩み、音もなく男の背後へ。
そしておもむろに手首を、表向き柔らかく――その実、しっかりと極めながら捕まえる。

「お客様――さ、ご案内申し上げます、お足元にお気を付けください」

冷ややかに、かつ義務的に定型句を告げると、バニーガールにぱちりとウインク。
そして、顔面蒼白になった男を、スタッフルームの入り口に陣取る、己よりもさらに巨漢の男――こちらは警備服ではなくフォーマルなブラックスーツ姿である――に引き渡した。
この後中で何が起きるのかは、職務の外。
ぱんぱん、と両手を打って首を鳴らすと、バニーガールの元へ戻り――

「よく気付いてくれたな――助かったぜ。この格好で、ジロジロと見張るわけにもいかねぇからよ」

打って変わった、粗野な口調。
しかしその顔には、彼女に対する確かな敬意と――その胸元に遠慮なしに注がれる視線が、混在していた。

ティーア > こんな街だからこの程度よくある事で、一応“つつがなく”問題解決と言って良いだろう。
それもこれも不審な客に逸早く気付き、こちらの意図もすぐ理解してくれた人がいたからだ。
素の口調で話し掛けてきた相手には先ほどの営業スマイルとは違う、朗らかな笑顔を向け。

「こちらこそです。 …いつもの方ではありませんよね?私はティーアです」

自分も毎晩ここにいるわけではないので見知らぬ顔がいないという事もないのだが。
臨時雇いも含めて知っている顔は多く、それに当てはまらない相手に軽くご挨拶。
こんな格好をしているため胸元だけでなく、身体のそこかしこに視線を受ける機会は多い。
そのため露骨な視線は特に気にする様子がなく、ついに押さえ込めなかった欠伸がふわぁ、と。

「ん……。今日は退屈な夜ですね。休憩まであとどれくらいですか?
 今日新しいお酒入ったんですよ。男性には甘いかもしれませんけど。あとで一緒に飲みません?」

ミレー族だし従者の立場ではあるものの、だいぶ自由に過ごさせてもらっている身。
こちらの方は好きに休憩し、好きに仕事を終えても叱られないようで暢気な提案をするのだった。

エズラ > 「エズラだ――たまに人数合わせに雇われる、街のゴロツキってやつ」

くっくっ、と喉を鳴らして笑い、よろしくな、と片手を挙げて。
続くお誘いの言葉に、さらに口角を上げる。

「おっ、そりゃ嬉しいね――オレもちょうど、そう思ってたとこだ――」

わざわざ呼ばれて来たというのに、今日は客の入りが悪い。
おまけに手癖の悪いのまで来る始末――今日はこのカジノにとって厄日と言えよう。
しかし、先ほどの一件で場の空気が締まり、店内に程よい緊張感が戻っていた。

「この客の数じゃ、今日はもうオレのようなのは用なしだろ――そっちに合わせるぜ、ティーアちゃん」

どこへでも連れてってくれよ――と嬉しそうに。

ティーア > こんなトラブルが起きる前から早めに戻ろうかと思っていたところだ。
応じてもらったのを良い事にふんわり尻尾を揺らし、踵を返しながら。

「じゃあ早めの休憩をとりましょう」

まだトレンチの上のお酒も軽食も残っているが。
それを抱えたまま向かうのはスタッフ用の通路。
途中酒瓶の並ぶ棚から1本拝借して、奥にある休憩室へと。

「果実酒なので男性のお口に合うかは分からないんですけど、味見にしても1人で飲むのは味気ないと思ってたんです。
 いつも付き合ってくれる娘がいるんですけど…今日はお休みなので」

悪戯めいた笑い声を零しながら言い訳を並べ、部屋の隅に置かれたテーブルにトレンチを置いた。
おつまみは客用の軽食にするつもりのようで。
カクテルグラスに本日入荷のお酒をとくとくと注ぐ。
赤みがかったピンクのそれは見た目にも男性よりは女性向けといった様子で、香りも甘い。
それでも一応2人分用意し、簡易の酒席ができあがり。

エズラ > 案内されるまま休憩所に到着。
手慣れた様子で酒の準備をする様子を眺めながら、制帽を脱いで壁に掛ける。
ついでに、剣帯ごと腰の物を外し、それも一緒に壁に吊ってしまう。
窮屈だった警備服の襟を開けた頃には、主席の準備が整っていた。

「ほうほう……こういう酒は初めてかもしれねぇな……――」

グラスに注がれた酒は、何とも華やかな色。
それじゃ乾杯、とグラスを掲げて相手のそれと打ち合わせ、一度香りを確かめてから少量を口に含み、嚥下。

「フムン……なかなか美味いじゃねーか、悪くねぇ――カクテルにすりゃもっと楽しめそうだ」

酒にはうるさい質であったが、好き嫌いはない。
もう一口、唇を濡らしつつ、さり気なく相手の方を見る――
ただし、今度は胸元ではなく、耳や尾。
多くの女性従業員が身につけているものとは、やはり異なる。

「なあその耳――ほんものか?ひょっとして」

ティーア > 相手の感想を聞いてから自分も1口。
元々酒好きとは豪語できないような、ジュースに近いものを好むため甘い酒は口に合う。

「良かった。男性が好きそうなお酒もあるんですけど、くすねるのがちょっと大変な所にあるので。
 味見して良いって言われてますから、もっと飲んでくださいね」

などと共犯を作りつつ、自らも酒精を堪能。
すぐに頬の赤みが目立ってくるのは色白の肌のせいらしく。
ふいに問い掛けられて顔を上げた。

「分かります? 神獣族…この国ではミレー族ですよね、それです。
 ここでは安全を確保してもらってますけど、外ではバレないようにと言われて…不便なんですよ、結構」

本物をアピールするようにウサギ耳をひょこりと動かし、相手の反応を窺う。
ミレー族を蔑む者は多いはずである。
気軽に誘ってしまったが相手が気を害さないか少々気にする様子で。

エズラ > 酒を味わい始めてすぐ、白い頬に朱が差し始めたことに気付き、おおっ、と一人で勝手に盛り上がる。
衣装のせいもあるが、やはり柔肌が染まるのは艶めかしい――

「おおっ、やっぱりか!」

そんなことを気にしていると、ぴょこりと動くうさぎの耳。
男に気分を害した様子はまったくなく、むしろ嬉しそうですらあった。

「いやぁ、昔の傭兵仲間に同じような奴が居てよ――危機察知っつうのか――とにかく戦場じゃ助けられることが多かったぜ」

耳の良さ、勘の鋭さ、そういったことにかけて、右に出る者は居なかった、と。
ミレー族以外にも、様々な種族の者達と親交のある男にとっては、異種族とはむしろ人間を超えた能力を持つ存在として、一種の憧憬の念すら懐く存在である。
まじまじと身を寄せて、その耳や――ふわふわとした尾を眺める。

「なあちょっと……触ってみてもいいか――?」

そんな不躾なお強請りをしつつ、ちゃっかりその耳に手を伸ばしている――